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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) A1
管理番号 1045262 
判定請求番号 判定2000-60135
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-10-26 
種別 判定 
判定請求日 2000-10-04 
確定日 2001-05-17 
意匠に係る物品 ハム 
事件の表示 上記当事者間の登録第0770074号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号写真版及びその説明書に示す「メンチカツ」の意匠は、登録第0770074号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、「イ号図版に現されたメンチカツ(以下「イ号意匠」という)は、意匠登録第770074号意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、イ号添付書類1乃至イ号添付書類10(以下、甲第1号証乃至甲第10号証という。)の書証を提出した。
1.本件登録意匠(甲第2号証)とイ号意匠(甲第1号証)の比較
(1)本件登録意匠の説明
下縁は稍内くぼみ、縁形は大きく外膨れ形をなし、これの左右両側縁は、左側縁小円状、右側縁大円状の印象形で全体的に滑らかな丸みのある曲線構成のハム。
(2)イ号意匠の説明
下縁は稍内くぼみ、縁形は大きく外膨れ形をなし、これの左右両側縁は、左側縁小円状、右側縁大円状の印象形で全体的に滑らかな丸みのある曲線構成でパン粉をまぶして全体を形造ってあらわしているメンチカツ。
(3)本件登録意匠とイ号意匠との比較
本件登録意匠の製品であるハムと、イ号意匠のメンチカツを形造って表している両者の形状は、表面態様は異なるが下縁は稍内くぼみ、縁形は大きく外膨れ形をなし、この左右両側縁は、左側縁小円状、右側縁大円状の印象形で全体的に滑らかな丸みのある曲線構成で形造られた特徴形を表している同じ輪郭形の合致符号形状である。
2.イ号意匠が、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由
出願当時、意匠製造食品の項目には、パン粉をまぶしたフライ食品の項目は無く、登録意匠(出願、昭和48年5月4日、審判昭和53-3523、登録538519号)ハムも、柱状態の包装フィルム皮膜を除き、薄切りして、そのまま食べる、又はフライパンに油を引き、油で炒めて食べる、パン粉をまぶしたハムフライとしても食べる等々の慣例からして、登録538519号ハムも薄切り、パン粉をまぶしたハムフライとしても流通している。登録ハム薄切り素材にパン粉をまぶしても、登録意匠ハムの輪郭形は原形状に表れている。イ号意匠に示すメンチカツの意匠も、パン粉をまぶす前の工程では混合した挽き肉原料を成型機の矯整型から平滑状に射出された矯整形輪郭形そのままの平滑状の形状体を第一工程として、次にパン粉をまぶした表面の態様は異なるとしても第一工程では表面の態様は登録ハムの平滑状の状態で表れるもので、この第一工程では視覚を通じて受ける印象は登録ハム意匠公報の輪郭形態様と同似形であり、パン粉をまぶした状態のイ号意匠を表す、メンチカツ、と名称が違うとしても、原形状の輪郭形状にパン粉をまぶした状態の製造食品ではパン粉の下に覆われていて中身の解らない両者のそれぞれは同じ原形状の輪郭形の特徴形の印象を視覚に与えるものであり視覚を通じて受ける印象は本件登録意匠輪郭形状に合致符号形状である。したがって、常識的な考え方として、登録意匠形と混同して、消費者及び業界を混乱させている。
3.被請求人の答弁書に対する弁駁
イ号意匠を表している意匠形態「輪郭形」は、一目して感じさせる印象が通常の小判型と違う点、特徴ある輪郭形を視覚に与えるので視覚を通じて受ける印象は「本件登録意匠の輪郭形の印象」を、与えている。円弧状の微細な比較は社会通念上からすれば、できないものであり、一目して感じさせる、特徴ある輪郭形が判断の基準であって、丸形、三角形、小判形、「まがたま形」等と、大別されて識別されているのが現実である。したがって、被請求人が主張する首位的答弁の超微細な理由等により、いささかも妨げられるもので無いと確信している。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、首位的答弁として「本件判定請求を却下する、との判定を求める。」と答弁し、そして、予備的答弁として「イ号意匠は、意匠登録第770074号に類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、乙第1号証乃至乙第6号証の書証を提出した。
1.首位的答弁「本件判定請求を却下する、との判定を求める。」の理由
請求人が言うところの「イ号意匠」は著しく不明瞭であり、このため、被請求人は、本件判定請求に対して適切に答弁することができない。すなわち、
(1)イ号意匠を示すものとして判定請求書にパンフレット(甲1号証)を添付しているけれども、甲第1号証がイ号意匠の外観全体を特定するものでないことは他言を要しない。
従って、このようなイ号意匠の特定の仕方によっては、少なくとも被請求人においては、判定請求対象であるイ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて適切、且つ、充分な答弁をなすことができない。
(2)甲1号証に示されるイ号意匠は、これが皿に盛りつけられていることからも明らかなように、「油で揚げられた状態のメンチカツ」であることは明白である。
他方、請求人は、判定請求書において、「パン粉をまぶした状態のイ号意匠を表す、メンチカツ」と述べており、イ号意匠を「油で揚げられていない状態のメンチカツ」と認識しているようである。
本件判定請求においては、甲第1号証によって特定されるイ号意匠と、判定請求書において主張されるイ号意匠とが異なる。
従って、甲第1号証の特定の仕方によっては、少なくとも被請求人においては、判定請求対象であるイ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて適切、且つ、充分な答弁をなすことができない。
(3)かくして、本件判定請求書はイ号意匠を適切に特定したものではなく、そして、このような本件判定請求書を、イ号意匠を特定するように、補正することは許されないから、本件判定請求書は、意匠法第25条第3項で準用する特許法第135条の規定により、却下されるべきである。
2.予備的答弁「イ号意匠は、意匠登録第770074号の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」の理由
本件判定請求書においては、イ号意匠が特定されておらず、被請求人は、本件判定請求書が却下されるべきであった、乃至、却下されることになると信じて疑わないが、念のため、イ号意匠が、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないことについて、以下の通り、予備的に答弁することとする。
(1)本件登録意匠について
本件登録意匠は、意匠に係る物品が「ハム」であり、かかる意匠に係る物品の形態は、以下の通りである。
(A)基本的構成態様
(イ)頂面及び底面が平坦であるプレート状本体からなり、
(ロ)水平方向から見たときプレート状本体の周囲面が、全面にわたって、垂直であり、
(ハ)このプレート状本体の輪郭は、平面図で見たとき、右側面弧と、左側面弧と、右側面弧の上端と左側面弧の上端との間に延びる凸状上方円弧と、右側面弧の下端と左側面弧の下端との間に延びる凹状下方円弧とからなる。
(B)具体的構成態様
(ニ)右側面弧が右下方に向けられ、
(ホ)左側面弧が左下方に向けられ、
(ヘ)右側面弧の半径と左側面弧の半径との比が、約1.3対1であり、
(ト)右側面弧の上端と左側面弧の上端との間に延びる凸状上方円弧の長さと、右側面弧の下端と左側面弧の下端との間に延びる凹状下方円弧の長さとの比が、約2.2対1である。
(2)本件登録意匠に先行する公知意匠
本件登録意匠に先行する意匠として、乙2号証乃至乙3号証を提示。
(3)本件登録意匠の要部について
乙2号証乃至乙3号証を参酌して本件登録意匠の要部を認定。
(4)イ号意匠について
イ号意匠については、請求人の特定が甚だ不明瞭であるけれども、油で揚げた状態のメンチカツの製造、販売の事実は確認されず、パン粉をつけた状態のものを冷凍にして製造、販売したことがあることのみ確認できた。
しかして、パン粉をつけた冷凍メンチカツをイ号意匠として、ここで特定したいところであるが、実際には、パン粉をつけた冷凍メンチカツを入手することができなかった。
そこで、パン粉をつけて冷凍させた状態では、メンチカツとほぼ同一の形態を有すると考えられる、エビすりみフライの形態を示す写真を乙第4号証として提出し、便宜上、乙第4号証によって特定された意匠をイ号意匠として説明する。
以下、(5)本件登録意匠とイ号意匠との類否判断、(6)結び、省略。
(7)参考文献
本件登録意匠の要部認定乃至類否判断の際考慮すべき公知資料として、乙第5号証乃至乙第6号証を提示。
第3.当審の判断
一.被請求人の首位的答弁「本件判定請求を却下する、との判定を求める。」について検討する。
被請求人は、「請求人が言うところのイ号意匠は著しく不明瞭であり、このため、被請求人は、本件判定請求に対して適切に答弁することができない。」とし、その理由として概略「(1)甲第1号証はイ号意匠の外観全体を特定するものでない。(2)甲第1号証によって特定されるイ号意匠と、判定請求書において主張されるイ号意匠とが異なる。」とし、「(3)本件判定請求書は、意匠法第25条第3項で準用する特許法第135条の規定により、却下されるべきである。」と主張する。
そこで検討すると、被請求人は、却下されるべき理由として、「(1)甲第1号証はイ号意匠の外観全体を特定するものでない。」と主張するが、確かに甲第1号証の図版によって現された図は1図であり、外観全体が表されていない(例えば底面側が表されていない)ものであるが、そもそも加工食品としてのメンチカツは、食品としての材料をある程度の形にまとめ、全周面にパン粉をまぶし、これを揚げて食するということから、この認識をもってすれば、甲第1号証の図版によって現された図が1図ではあるとしても、当該図(斜視図)は、メンチカツの形態としての外形、厚み等外観(立体)の把握に格別に困難が生じるとはいえない範囲の図であり、また、当該図にはメンチカツが複数個現されているが、この種物品が複数個ある場合には、一般的には略同形同大のものが複数個あると想定され、そして、認定判断の対象としては、複数個ある中で1個が意匠として特定できれば要件が足りることである。そうとすると、右寄りにあるメンチカツの図が、それに該当すると認められ、当該図から全周面を特定することができるので、この理由をもって却下されるべき理由とすることはできない。
さらに、却下されるべき理由として、「(2)甲第1号証によって特定されるイ号意匠と、判定請求書において主張されるイ号意匠とが異なる。」と主張するが、請求人は、証拠として甲第1号証を提示し、その甲第1号証のカタログの図版によって現されたメンチカツをイ号意匠とし、そのイ号意匠についての意匠に係る物品及びその形態についての認定判断を請求の理由の中で述べているところであって、請求書の、その認定判断が正しいかどうか、適切であるかどうかはともかく、前記した通り、イ号意匠が特定することができる以上、この理由をもって却下されるべき理由とすることはできない。
以上の通りであって、却下すべき理由はないので、被請求人答弁の「(3)本件判定請求書は、意匠法第25条第3項で準用する特許法第135条の規定により却下されるべきである。」とすることはできない。
二.本件登録意匠とイ号意匠との対比、判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、昭和55年7月7日の意匠登録出願に係り、平成1年6月8日に意匠登録第770074号として意匠権の設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「ハム」とし、その形態を別紙第一に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付された甲1号証のイ号図版によって現された意匠であって、判定請求書の記載及び判定請求書に添付された甲1号証のイ号図版によって現されたもの(以下、下方右寄りのものをイ号意匠とする。)によれば、意匠に係る物品を「メンチカツ」とし、その形態を別紙第二に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
両意匠は、その意匠に係る物品については、ともに加工食品にかかるものであって共通する。
そして、その形態については、両意匠は、主として次のような共通点及び差異点があると認められる。
まず、両意匠は、(ア)全体をやや厚い板状のものとし、(イ)その平面を、大小2つの丸みを上辺を凸弧状の曲線、下辺を凹弧状の曲線で結んで、変形匂玉状にしたことにおいて共通する。
一方、両意匠は、
(A)全体板状の態様について、本件登録意匠は、その厚みを均一にして、平面を水平平滑状に、周側面を垂直平滑状にし、その平面と周側面との稜線を角張って形成しているのに対して、イ号意匠は、その厚みを平面の中央付近に向かってやや厚みがあるものとして、平面及び周側面全体を細かいざらざら状の凹凸面とし、その平面と周側面との稜線を曲面状に形成している点、
(B)平面下辺の態様について、本件登録意匠は、滑らかな凹曲線で形成されているのに対して、イ号意匠は、大小2つの丸みの曲線が交わるような態様で凹状に形成されている点、
(C)下辺の凹弧状の曲線にともなう上辺と下辺の間の最小幅部について、本件登録意匠は、ほぼ中央付近に形成しているのに対し、イ号意匠は、小さい丸み寄りに形成している点
に差異がある。
そこで、両意匠を対比すると、極めて単純な態様からなる両意匠において、差異点(A)は、直ちに看者の注意を惹く特徴と言える態様のもので、すなわち、この種物品にあっては、味覚そのものが大切な要素であることはいうまでもないことであるが、食文化においては、味覚とともに視覚的な効果も味覚におおいに影響する大切な要素といえるところであり、看者はその点を注意深く看取し、ときに繊細な選択を求めることからして、両意匠における板状の厚み及び平面及び周側面の態様について、本件登録意匠の、厚みが均一で各面を平滑状とし、その各面の稜線を角張って形成しているか、イ号意匠の厚みが平面の中央付近に向かってやや厚みがあり、平面及び周側面全体を細かいざらざら状の凹凸面とし、その各面の稜線を曲面状に形成しているかの差異、すなわち、全体が、本件登録意匠の角張ったやや固さ感を呈するものとしているか、イ号意匠の曲面状で形成するやや柔らかさ感を呈するものとしているかの差異は、別異の食品を想定されるに充分な異なった態様と看取できるものであり、さらに、(B)乃至(C)の差異点とも相俟って奏でる意匠的効果を考慮すると、これら差異点は、別異感を抱かせるに十分なものであると言うことができる。
そして、共通点とする両意匠の(ア)全体をやや厚い板状のものとし、(イ)その平面を、大小2つの丸みを上辺を凸弧状の曲線、下辺を凹弧状の曲線で結んで、変形匂玉状にした態様は、古来より種々の匂玉形状が存在するなかで両意匠の態様をみた場合、当該変形匂玉状の態様のみでは、多少の評価は考慮されるもののそれほど高い評価を与えることはできない。
そうとすると、その共通点を凌駕し、別異感を抱かせるに充分な前記差異点がある両意匠は、類似するということはできない。
4.むすび
以上のとおりであるので、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するとすることができない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-05-07 
出願番号 意願昭55-26816 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (A1)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内野 雅子 
特許庁審判長 山田 啓治
特許庁審判官 藤 正明
伊藤 晴子
登録日 1989-06-08 
登録番号 意匠登録第770074号(D770074) 
代理人 竹内 英人 
代理人 箱田 篤 
代理人 西島 孝喜 
代理人 大塚 文昭 
代理人 中村 稔 
代理人 今城 俊夫 
代理人 宍戸 嘉一 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 小川 信夫 
代理人 村社 厚夫 

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