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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L5 |
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管理番号 | 1047115 |
審判番号 | 審判1999-35645 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2001-11-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-11-05 |
確定日 | 2001-09-17 |
意匠に係る物品 | 戸車用レ―ル材 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0930663号「戸車用レ―ル材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本件登録意匠 本件登録意匠は、平成2年7月10日に出願(意願平2-23310号)され、平成7年5月12日に設定の登録がなされ、平成7年7月27日に意匠公報が発行された意匠登録第930663号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「戸車用レール材」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。 2.請求人の主張 これに対し、請求人は、「登録意匠第930663号(以下、本件登録意匠という)の登録は、これを無効とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、本件登録意匠は、その出願前に外国において頒布された刊行物に記載された甲第1号証意匠または甲第2号証意匠に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に該当する旨主張し、証拠方法として、甲第1〜5号証を提出している。 (1)甲第1号証の1 ![]() 1980年版表紙及びコラム4の写し (2)甲第1号証の2 ![]() 1980年版表紙及びコラム4の写真(別紙2参照) (3)甲第2号証 「TROLA technic」の写し(別紙3参照) (4)甲第3号証 意匠登録第930663号の類似1号意匠公報(本件登録意匠の類似登録意匠) (5)甲第4号証 意匠登録第930663号の類似2号意匠公報(本件登録意匠の類似登録意匠) (6)甲第5号証 意匠登録第930663号の類似3号意匠公報(本件登録意匠の類似登録意匠) 3.被請求人の主張 一方、被請求人は、平成12年1月17日付で答弁書を提出し、本件登録意匠は、甲第1号証意匠または甲第2号証意匠に類似するものではない旨主張している。 4.当審の判断 4.1 甲第1号証意匠との対比 はじめに、本件登録意匠と甲第1号証意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。なお、甲第1号証意匠については、天地を逆にして認定するものとする。 [共通点] (1)断面視左右対称形の溝型鋼状レールにおいて、開口部両縁に外側に向かって水平に張り出すウイング状鍔を形成し、レール側壁の大部分に長手方向に続く断面視鋸歯状の突条を数本形成して成る全体的構成。 (2)鍔の態様について、外側の隅を丸面に形成していること。 [相違点] (1)溝の態様について、本件登録意匠においては、開口端内縁部に側壁の肉厚程度の幅で溝中央に向かって傾斜する戸車転動面を設け、溝全体を断面視略Y字状としているのに対し、甲第1号証意匠においては、開口端内縁部に戸車転動面を設けず、溝全体を略矩形状としていること。 (2)溝底部両隅の側壁内面における凹部の有無について、本件登録意匠においては、該部位に長手方向に続く断面視半円形の凹部を形成しているのに対し、甲第1号意匠においては、そのような凹部を設けていないこと。 (3)鍔の幅について、本件登録意匠においては、鍔の幅を溝の最小幅(側壁中間部付近)よりも多少大きくしているのに対し、甲第1号証意匠においては、鍔の幅を溝の最小幅の2分の1強程度の小幅なものとしていること。 (4)側壁と底部の肉厚について、本件登録意匠においては、側壁の肉厚を溝の最小幅と同程度の比較的厚めのものとし、底部の肉厚をその3分の1程度としているのに対し、甲第1号証意匠においては、側壁の肉厚を溝の最小幅の3分の1程度の比較的薄めのものとし、底部の肉厚を側壁と同程度としていること。 (5)側壁外面の態様について、本件登録意匠においては、該部位の下端から高さの3分の2程度の部分に鋸歯状の突条を片側4本ずつ形成し、残りの3分の1程度の部分を垂直面としてその中央部に断面視二等辺三角形状の切り込みを設けているのに対し、甲第1号証意匠においては、側壁外面の略全域にわたって鋸歯状の突条を片側5本ずつ形成していること。 (6)レールの全高に対する全幅の比率について、本件登録意匠においては、略1:2としているのに対し、甲第1号証意匠においては、略1:1.2としていること。 上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す態様は、意匠の全体的な共通性ではあるが、多分に概念的で具体性に欠けるものであり、また、共通点(2)の鍔の態様は、常套的な面取り手法に基づくありふれたものであって、いずれも両意匠を全体的に印象づけるものではないため、これらの共通性に基づく両意匠の類似性は希薄であり、各差異点に基づく両意匠の基調の違いを凌ぐものではない。 これに対し、相違点(1)の溝の態様における差異及び、相違点(2)の溝底部両隅の側壁内面における凹部の有無における差異については、両意匠の基本構成にかかわる差異であるとともに、本件登録意匠の当該各部位が相俟って表出する態様は、その出願前には例を見ないものであって、本件登録意匠を特徴付けているものと認められる。 また、相違点(3)の鍔の幅における差異については、それが相違点(1)に係る戸車転動面の有無及び、相違点(6)のレールの全高に対する全幅の比率における差異とも相俟って両意匠の基調の違いを際立たせているものと認められる。 したがって、相違点(4)及び(5)について検討するまでもなく、本件登録意匠を甲第1号証意匠に類似するものとすることはできない。 4.2 甲第2号証意匠との対比 つぎに、本件登録意匠と甲第2号証意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。なお、甲第2号証意匠については、天地を逆にして認定するものとする。 [共通点] (1)断面視左右対称形の溝型鋼状レールにおいて、開口部両縁に外側に向かって水平に張り出すウイング状鍔を形成し、レール側壁の大部分に長手方向に続く断面視鋸歯状の突条を片側4本ずつ形成して成る全体的構成。 (2)鍔の態様について、外側の隅を丸面に形成していること。 (3)側壁外面の態様について、鍔寄りの部分に小幅な垂直面を形成していること。 [相違点] (1)溝の態様について、本件登録意匠においては、開口端内縁部に側壁の肉厚程度の幅で溝中央に向かって傾斜する戸車転動面を設け、溝全体を断面視略Y字状としているのに対し、甲第2号証意匠においては、開口端内縁部に戸車転動面を設けず、溝全体を略矩形状としていること。 (2)溝底部両隅の側壁内面における凹部の有無について、本件登録意匠においては、該部位に長手方向に続く断面視半円形の凹部を形成しているのに対し、甲第2号意匠においては、そのような凹部を設けていないこと。 (3)側壁と底部の肉厚について、本件登録意匠においては、側壁の肉厚を溝の最小幅と同程度の比較的厚めのものとし、底部の肉厚をその3分の1程度としているのに対し、甲第2号証意匠においては、側壁の肉厚を溝の最小幅の略3分の2程度のものとし、底部の肉厚を側壁と同程度としていること。 (4)側壁外面の鍔寄りにある小幅垂直面の態様について、本件登録意匠においては、該垂直面の中央に断面視二等辺三角形状の切り込みを設けているのに対し、甲第2号証意匠においては、そのような切り込みを設けていないこと。 (5)レールの全高に対する全幅の比率について、本件登録意匠においては、略1:2としているのに対し、甲第2号証意匠においては、略1:1.2としていること。 上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す態様は、意匠の全体的な共通性ではあるが、この種の物品においてありふれた態様であるため、本件登録意匠を特徴付けるものとは成し得ないものである。 これに対し、相違点(1)の溝の態様における差異及び、相違点(2)の溝底部両隅の側壁内面における凹部の有無における差異については、それが両意匠の基本構成にかかわる差異であるとともに、これらの相違点に係る本件登録意匠の態様は、その出願前には例を見ないものであるため、本件登録意匠を特徴付けているものと認められる。 また、共通点(2)の鍔の外側端部隅を丸面に形成すること及び、共通点(3)の側壁外面に小幅垂直面を設けることは、この種の物品において常套的に施される手法であるとともに、その態様もありふれたものであり、しかも共通点(3)については、使用時には裏側に隠れてしまう細部に係る共通性であるため、両意匠を全体的に印象づけるものではなく、これらの共通性に基づく両意匠の類似性は希薄である。 これに対し、相違点(3)の側壁と底部の肉厚の態様、相違点(4)の小幅垂直面における切り込みの有無及び、相違点(5)のレールの全高に対する全幅の比率における差異については、いずれも単独で両意匠の類否を左右する程のものではないが、全体的に見れば、これらの相違点に係る態様は、相違点(1)及び相違点(2)に係る態様と連係して両意匠の基調の違いを際立たせているものであり、両意匠の基調における差異は、各共通点に基づく類似性を凌駕しているものと認められる。 したがって、本件登録意匠を甲第2号証意匠に類似するものとすることはできない。 なお、甲第3〜5号証として提出された意匠は、いずれも本件登録意匠の後願に係るものであるため、本件登録意匠の登録に何等影響を及ぼすものではない。 5.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録意匠を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2000-10-24 |
結審通知日 | 2000-11-06 |
審決日 | 2000-11-20 |
出願番号 | 意願平2-23310 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Y
(L5)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関口 剛、鈴木 公明 |
特許庁審判長 |
吉田 親司 |
特許庁審判官 |
岩井 芳紀 伊藤 栄子 |
登録日 | 1995-05-12 |
登録番号 | 意匠登録第930663号(D930663) |
代理人 | 稲岡 耕作 |
代理人 | 亀井 弘勝 |
代理人 | 川崎 実夫 |