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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立不成立) D4
管理番号 1047117 
判定請求番号 判定2001-60060
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-11-30 
種別 判定 
判定請求日 2001-05-11 
確定日 2001-09-10 
意匠に係る物品 エアーコンディショナー用室外機の脚台 
事件の表示 上記当事者間の登録第1092524号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠並びにその説明書に示す「エアーコンディショナー用室外機の脚台」の意匠は、登録第1092524号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1092524号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
本件登録意匠とイ号意匠の全体の基本的形態、すなわち、平面視で4:1の縦長長方形状で、且つ高さが側面視で5:1の四角錐台形状で、上面中央が平面視で正方形の浅い凹部となり、底面外周に幅狭の縁部を備えているものとした共通性は、公知意匠にも認められる点であり、意匠の類否への影響は小さい。「突条を備えている形態」の共通性は、意匠の類否への影響は大きいが、突部の「凹部側端部の形態」の相違によって共通感が弱められ、而も全体の基本的構成に埋没して目立つ形態とは言えない。
被請求人が本件登録意匠に係る意匠登録出願事件において主張した本件登録意匠の特徴点、すなわち、被請求人が自ら認めた本件登録意匠の要部のうち、イ号意匠は、「突条を備える形態」のみが共通し、強弁した「突部側面形状:凹部形状」並びに「艶出しによる縞模様」の形態を備えていない。「突部側面形状:凹部形状」の相違は、物品全体の形状が単純な形状であるため、この相異点は大きな美感の相違となる。さらに本件登録意匠の艶出しによる縞模様は、本件登録意匠の大きな特徴点であり、模様が存在しないイ号意匠との相違感は大きい。
以上の通り本件登録意匠とイ号意匠は、公知である基本的形態が共通する他、突部上面左右の突条の存在が共通するにすぎなく、イ号意匠は、本件登録意匠が備える特徴的形態を備えておらず、異なる形態で構成されており、明らかに相異点による印象が共通点による印象を凌駕しているもので、イ号意匠は本件登録意匠の範囲には属さない。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証を提出した。
クーラー設置業者が室外機の脚台を選択するにあたり、脚台主体の上面形態、特に、室外機の脚部を載置する部分、即ち、前後突部の上面形態に注目するのは明白であるから、本件登録意匠の類似範囲を判断するにあたり、室外機の脚台における前後突部の上面形態が特に重要になるのは明々白々である。
本件登録意匠とイ号意匠とを総合的に判断するに、両意匠は、これらの類否判断において最も大きく影響を受ける前後突部の上面形態、即ち、「前後突部の上面左右に突条を突設している」という点において酷似し、美観を同じくし、又、外周側面の模様の有無及び凹部形状において差異を有するものの、外周側面の模様の有無については、本件登録意匠の模様は、艶をだすことによって盛り上げることなく形成されており、斜め上方から見た場合には、模様の周囲部分から僅かに識別できるにすぎず、模様自体はそれほど目立つものではなく、凹部形状における差異については、斜め上方から見た場合、イ号意匠はその凹部形態において本件登録意匠と同様の美観を与えるものであり、それらの差異は僅かなものであって同一の美観を奏し、よって、両意匠は全体的に観察した場合、看者に与える美観は同一であって、両者は類似すること明らかであり、イ号意匠は本件登録意匠の類似範囲に属すること明白である。
なお、本件登録意匠とイ号意匠とでは模様の有無が問題となっており、この点が両者の類否にどのように影響を与えるか否かが問題であるのに対し、本件登録意匠に係る審査過程において、本件登録意匠と引用意匠〔登録第977877号意匠(甲第11号証)〕とでは共に模様を具備しているものの、それら模様の形成形態が異なり、この点が両者の類否にどのような影響を与えるか否かが問題となっているのであって、これらを混同すべきものでないことは明らかである。従って、本件登録意匠と引用意匠との類否判断において、模様の形成形態について主張したからといって、本件登録意匠とイ号意匠との類否判断において、直ちに模様の有無が大きな影響を与えるという請求人の主張は失当といわざるを得ない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年3月17日に意匠登録出願をし、平成12年9月29日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1092524号意匠であり、願書の記載及び願書に添付の図面代用写真に現されたところによれば、意匠に係る物品を「エアーコンディショナー用室外機の脚台」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付の、写真版により現されたイ号意匠(別紙第2)並びにその説明書、及び、参考イ号意匠図面により示されたものであり、意匠に係る物品が「エアーコンディショナー用室外機の脚台」と認められ、その形態を、別紙第2に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、(1)全体を、下面開放の略縦長(前後に長い)四角錐台形状の箱体とし、その上面前後方向の中央の横一杯に、平面視で略四角形状を呈するやや浅い凹陥部を形成し、また、箱体外周側面下端辺周りには、外方に水平に略細帯状の鍔部を突設した構成態様のものである点、(2)凹陥部を挟んで前後に形成した各突出部の上面左右端辺のそれぞれには、全長に亘って、一定高さのやや低い、正面視で略台形状を呈する略細帯状の突条部を形成した点、さらに具体的に見ると、(3)箱体表側面の各稜線部あるいは各隅部は丸み付けしたものとし、凹陥部を側面視で略隅丸逆台形状を呈するものとしている点、(4)全体の構成比率につき、箱体は、鍔部を含んで見た前後幅を横幅の4倍以内とし、高さを横幅より若干低くしたものであり、凹陥部は、前後幅が突出部上面前後幅よりもやや狭い程度の、広幅のものとしている点、(5)箱体左右外側面下端の前後寄りそれぞれには鍔部上面にかけて小三角板状のリブ片を突設している点、がある。
一方、差異点として、(イ)箱体上部(前後各突出部及び凹陥部)の態様につき、本件登録意匠は、凹陥部前後面(前突出部後面及び後突出部前面)傾斜面を、箱体前後面(前突出部前面及び後突出部後面)傾斜面の傾斜と同程度の傾斜とし、小さな丸みを介して凹陥部底面に至るものとしているのに対して、イ号意匠は、凹陥部前後面(前突出部後面及び後突出部前面)傾斜面を、箱体前後面(前突出部前面及び後突出部後面)傾斜面の傾斜よりやや緩やかな傾斜とし、傾斜面全体が側面視で若干緩やかな凹弧状を呈するものとし、それにより、本件登録意匠よりも大きな丸みを介して凹陥部底面に至るものとしている点、また、本件登録意匠の箱体前後面上端辺の丸みは、側面視でイ号意匠よりもやや小さいものとしている点、(ロ)箱体外周側面の態様につき、本件登録意匠は、その上端辺沿いを除いた略全面に亘って、面艶出しによる細帯状のもの多数を平行等間隔に配して成る縦縞状の模様を表しているのに対して、イ号意匠は、該部に何ら模様を表していない点、(ハ)イ号意匠は、前突出部上面前寄りに小円管状の連結軸を立設しているのに対して、本件登録意匠は、連結軸を有していない点、がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点のうち、(2)の点は、通常観察される方向である斜め上方から俯瞰した際に看者に看取される、エアーコンディショナー用室外機を載置する面である前後突出部上面の態様に係るものであって、形態上の主要な部分に係るところといえ、また、突条部を各突出部上面の左右端辺に全長に亘り形成したことにより、各突出部上面の平坦面とした基本の態様を大きく変えたものとの強い印象を看者に与えるところといえ、しかも、本件登録意匠の出願前には見られない態様であり、以上によれば、この点は、本件登録意匠の特徴を成すところといえ、この点で本件登録意匠と共通するイ号意匠は、本件登録意匠の特徴を成す態様を備えるものといえ、そして、(1)の点は、従来意匠にも見られる態様ではあるが、両意匠の形態の全体にかかわり、その骨格を成すものであり、(3)及び(4)の点は、やはり、従来態様にも見られる態様ではあるが、全体の態様及び構成比率をより具体的に示すところであり、前記のとおり、本件登録意匠の特徴を成すところといえる(2)の点が、(1)、(3)及び(4)の点と相俟って形態全体に一定のまとまりを形成し、本件登録意匠の全体の基調を決定付けており、(1)ないし(4)の点で本件登録意匠と共通するイ号意匠は、本件登録意匠と基調が共通するものといえ、その他、両意匠には、(5)の共通点もあり、これらの共通点は、全体として両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものといわざるを得ない。
一方、差異点につき、(イ)の点は、箱体上部(前後各突出部及び凹陥部)の態様を具体的に表すところであるが、まず、凹陥部前後面(前突出部後面及び後突出部前面)傾斜面の具体的な態様に係る差異については、やや浅く形成した凹陥部の極短い上下幅を有する限られたわずかな面の中での、傾斜、隅丸、及び凹弧状それぞれのわずかな程度差に係るものに過ぎず、斜め上方から俯瞰した際には、真側面視ほど目立たず、さほど顕著な差異ではなく、(3)の、凹陥部を側面視で略隅丸逆台形状を呈するものとした両意匠の共通する態様を凌ぐほどの差異とはいえず、斜め上方から俯瞰した際に看者に看取される箱体上部の態様に係るものであることを考慮してもなお、その類否判断に及ぼす影響は小さいといえ、箱体前後面上端辺の丸みの差異についても、該部に丸みを付けた両意匠の共通する態様の中でのわずかな差異に過ぎず、類否判断にさしたる影響を及ぼすものではなく、(ロ)の点は、箱体外周側面の模様の有無に係る差異であるが、本件登録意匠の箱体外周側面に模様を表した態様は、箱体外周側面の表面に盛り上げることなく面艶出しにより表されたに止まる表面上の造形処理に係るものに過ぎず、箱体外周側面の平坦面とした基本の態様を変えるものではなく、また、面艶出しにより面上に模様を表す手法自体は一般的なものであり、その上、縦縞状の模様自体もありふれた模様であり、しかも、本件登録意匠は、ありふれた縦縞状の模様を、箱体外周側面傾斜面の傾斜する方向である上下方向に素直に沿って流し、かつ、箱体外周側面の略全面に亘って表したものに過ぎず、その模様の具体的な配し方自体に、格別特徴といえるほどの評価すべき点はなく、そして、本件登録意匠が箱体外周側面に模様を表したものであるとしても、その様に、ありふれた模様を格別特徴なく略全面に亘ってまんべんなく配し表したことにより、かえって、無模様のものとの差異点として働く効果は希釈化されており、以上によれば、その類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえず、(ハ)の点は、形態全体において小さく設けられた部分的な差異に係り、類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。
そうして、上記の差異点が相俟った効果を考慮してもなお、それら差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえない。
なお、請求人は、被請求人が本件登録意匠に係る意匠登録出願事件において、イ号意匠とは別の意匠である引用意匠(登録第977877号意匠)と本件登録意匠との類否判断の中で、共通点及び差異点に係る態様が類否判断に及ぼす影響について主張した点を採り上げて、イ号意匠は被請求人が自ら認めた本件登録意匠の要部のうち、「突条を備える形態」以外は備えていない旨述べ、被請求人の当該主張した点を両意匠は類似しないとする拠り所の一つとする主張をしている。しかしながら、被請求人の当該主張した点は、意匠双方を対比することにより、意匠間に存在する共通点と差異点を捉え、それらの点が相互に関連し合いながら類否判断に及ぼす影響を、総合的に検討する中で主張したものであり、主張したからといって、絶対的なものとして、直ちに、引用意匠とは別の意匠であるイ号意匠と本件登録意匠との類否判断の拠り所となるもの、とはいえず、請求人の主張は当を得ないものである。
以上の通りであって、本件登録意匠とイ号意匠とは、意匠に係る物品が共通し、その形態について、両意匠の差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえないのに対し、共通点は、全体として両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものであって、差異点は共通点を凌駕することができず、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものといえる。
第4.結び
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-08-28 
出願番号 意願平9-7674 
審決分類 D 1 2・ 1- YB (D4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 かおる並木 文子 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 市村 節子
橘 崇生
登録日 2000-09-29 
登録番号 意匠登録第1092524号(D1092524) 
代理人 山本 拓也 
代理人 近藤 彰 

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