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審決分類 審判 無効  意9条先願 無効としない L3
審判 無効  1項1号公知(類似も含む) 無効としない L3
審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L3
管理番号 1053560 
審判番号 無効2000-35361
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-07 
確定日 2002-01-28 
意匠に係る物品 フェンス 
事件の表示 上記当事者間の登録第1049637号「フェンス」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、「意匠登録第1049637号は無効とする、審判の費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、請求の理由を要旨以下のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし第14号証を提出した。
1.本件登録意匠を無効とすべき理由
本願の意匠は、その出願前に公知となった意匠(甲第1号証及び甲第2号証)と同一若しくは類似であるか、又は先願に係る意匠(甲第1号証及び甲第2号証)と同一若しくは類似であるから無効とすべきである。
2.本件登録意匠を無効とすべき詳細な理由
(1)本件登録意匠
本願のフェンスは、基本的に縦線材と横線材をほぼ直交するように組み合わせた線格子フェンスの構造を有しており、該横線材を周期的に折り曲げて、波形のフェンス形状を構成し、縦線材の上下2カ所に横直線材を配設した構成になっている。
(2)甲第1号証及び甲第2号証の意匠
甲第1号証及び甲第2号証の意匠は、いずれも縦線材と横線材をほぼ直交するように組み合わせた格子フェンスであって、横線材を周期的に交互に折り曲げた波形のフェンス形状を構成し、縦線材の上下2カ所には横直線材を配設した構成になっている。
(3)本件登録意匠と甲第1号証及び甲第2号証の意匠との類否
甲第1号証及び甲第2号証の意匠は、基本的に本件登録意匠の構成と同一であることは明らかである。
本件登録意匠と甲第1号証及び甲第2号証の意匠は、A.横直線材の位置、B.横線材の曲げ形状の2点において相違している。
A.横直線材の位置の相違について
イ)上下方向のずれ
本件登録意匠では、正面図において横直線材が上下2カ所においてそれぞれ2本現れており、正面図の形状において甲第1号証のものと何ら変わらない。また、甲第2号証では横直線材が表裏で重なっているので、正面図において1本しか現れない。しかし、フエンスが実際に設置されている状態では、正面図的にみることはほとんどなく、実際には斜視図的に見ることが殆どだから、横直線材の設置位置の差は殆ど問題にならない。このことは、他の登録事例から見ても明らかである。例えば、甲第3号証と甲第4号証とは、甲第3号証が横直線が正面図において重なっているのに対し、甲第4号証では上下方向にずれており、正面図において2本現れている点において相違しているが、甲第4号証は甲第3号証の類似として登録されている。したがって、本件登録意匠の横直線材の構成は、正面図形状の観点から甲第1号証と同一又は類似であり、斜視図的形状の観点から甲第2号証と同一又は類似である。
ロ)横直線材の長さ
本件登録意匠では横直線材の一方の長さが短くなっている。これはC-C拡大図から明らかなように、一方の横直線材を波形の頂部において終わらせているためである。このような構成は、外観デザイン状の問題ではなく、必要に応じて適宜採用される技術上の構成の相違に過ぎず、特に類否の判断に影響を及ぼすような形状ではない。例えば、甲第5号証と甲第6号証をみると、甲第5号証においては横直線材がフエンス端部からはみ出しているが、甲第6号証においては、横直線材がフエンス端部で丁度終わっている。しかし、両者は類似と認定されている。この登録例から見ても、一方の横直線材の短い本件登録意匠と長さに相違のない横直線材を用いた甲第1号証及び甲第2号証の意匠は類似する。
ハ)一方の横直線材がフェンスの厚さ方向内側に配設されている点
本件登録意匠においては、B-B拡大図に明らかなように、一方の横直線材がフエンスの内部に位置するように配設されているが、この相違もまた、軽微な相違であって、類否に影響を与えるものではない。B-B拡大図において唯一現れる相違に過ぎず、正面図などにおいては、全く影響を与えない構成である。また、実際にフエンスを見た場合にも、横直線材が縦線材の表側にあるのか、内側にあるのか等を一見しただけでは判別不能であり、近寄って子細に観察して初めて分かる構成の相違である。また、過去の登録例をみても、甲第7号証は、横直線材がフエンスの一面側だけに設けられているが、フエンスの両面側に設けられた前記甲第5号証の類似意匠として登録されている。
B.横線材の曲げ形状の相違について
本件登録意匠では、平面図及びC-C拡大図に示すように、横線材の台形状が交互に幅広と幅狭になるように曲げられている。これに対して、甲第1号証及び甲第2号証の意匠は台形状の同一の幅のものが連続している。しかし、このような相違も両者を非類似とする程の相違ではない。台形状の波形に曲げられているという共通点が、看者に最も大きな印象を与えるからである。例えば、甲第8号証と甲第9号証を見れば、甲第9号証においては横線材が形成する台形形状が幅広、幅狭の交互になっており、一方甲第8号証では台形状が同一幅で連続しているが、両者は類似と認定されている。また、甲第10号証と甲第11号証とを見ると、甲第10号証では台形状が幅広となっており、甲第11号証では台形状が幅狭となっているが、両者は類似と認定されている。
(4)結論
以上説明したように、本件登録意匠は甲第1号証及び甲第2号証に記載の意匠と類似しており、意匠法第3条第1項或いは第9条第1項の規定に違反するから、意匠法第48条の規定により無効にされるべきである。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として乙第1号証及び第2号証を提出した。
1.請求人の主張に対する反論
(1)相違点イ)について
本件登録意匠における横直線材は、上下端から2本目の横線材に対して、その上下位置へ間隔を密にして隣接した平行状態でそれぞれ1本ずつ配設されており、横直線材によって2本目の横線材は、他の横線材とは異なる強いアクセントが付与された状態で正面図に現れる。一方、甲第1号証における横直線材は、上下端と2本目の横線材との間に対して、3等分する間隔を疎にした平行状態で2本が配設されているので、本件登録意匠とは著しく美感が異なる意匠として正面図に現れる。また、正面図的に見ることがほとんどないとの請求人の見解は詭弁であり、本件登録意匠と甲第2号証における横直線材との間には、甲第1号証における横直線材の関係以上に意匠上で相違がある。請求人が論拠として提示した甲第3号証と甲第4号証は、本件登録意匠が甲第1号証、第2号証と類似である立証にはならない。
(2)相違点ロ)について
本件登録意匠における前記構成を見れば、相違点イ)と有機的に結合して美的効果を奏するものである。なお、甲第5号証と甲第6号証によって本件登録意匠の創作性を否定することはできない。
(3)相違点ハ)について
本件登録意匠における甲第1、2号証との相違点ハ)は、需要者が通常の観察によって十分に認識できる大きさと特徴を具備しており、B-B拡大図にのみ現れることを理由に軽微な相違であるとした請求人の主張は失当である。なお、甲第7号証と甲第5号証によって本件登録意匠の創作性を否定することはできない。
(4)相違点B.について
本件登録意匠における横線材の曲げ形状は、順次縮径して先端を円弧状にした折り曲げ部を、後面側から前面側へ所定間隔毎に突出させ、後面側の幅広部分と前面側の幅狭部分とが交互に現れるものであって、請求人が主張するような台形状の波形に折り曲げられているものではなく、甲第1、2号証の横線材とは形態の異なる非類似の曲げ形状である。また、請求人提出の甲第8号証ないし甲第11号証によって本件登録意匠の創作性を否定することはできない。
2.結論
以上のように、本件登録意匠を無効とする請求人の主張には論拠はなく、本件登録意匠は請求人の提示した甲第1号証及び甲第2号証にはない構成要素を備え、これらの構成要素が有機的に結合されたものである。
第3.請求人の弁駁の理由
(1)横線材の位置や数を調整することにより横線材の疎密を形成してアクセントをつけることは、本願出願前から採用されている公知の構成に過ぎない。例えば、甲第12号証ないし甲第14号証を挙げる。これらにより、横線を疎密としてアクセントをつけることは一般的な構成に過ぎず、このようなアクセントをつけることは、本願出願前から採用されている公知の構成に過ぎない。
(2)また、全体観察においても、本件登録意匠は、横線材を波形状に曲げた格子フエンスを基本とし、そこに横直線材を配設したことを基本的な形態としており、このような基本的な形態が甲第1号証及び甲第2号証に示す公知意匠に類似するものであることは明らかである。
第4.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類の記載によれば、平成10年9月4日の意匠登録出願に係り、平成11年6月11日に設定登録された登録第1049637号であって、意匠に係る物品を「フェンス」とし、その形態を別紙第1に示すとおりとしたものである。
2.甲号意匠
(1)甲第1号証は、本件登録意匠の出願前の平成8年1月22日に特許庁が発行した意匠公報に掲載された登録第943156の類似3号の意匠(以下「甲1号意匠」という。)であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「フエンス」とし、その形態を別紙第2示すとおりとしたものである。
(2)甲第2号証は、本件登録意匠の出願前の平成8年1月22日に特許庁が発行した意匠公報に掲載された意匠登録第943156の類似4号の意匠(以下「甲2号意匠」という。)であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「フエンス」とし、その形態を別紙第3に示すとおりとしたものである。
3.本件登録意匠と甲1号意匠の比較検討
(1)対比
本件登録意匠と甲1号意匠は、ともにフェンスに係るものであるから意匠に係る物品が共通する。
次に、その形態については、以下の共通点と差異点がある。
すなわち、基本的構成態様において、(イ)多数本の縦線材と横線材を格子状に組み合わせて全体をやや厚みのある横長長方形板状に構成した点が共通しており、その具体的な態様においても、(ロ)縦線材と横線材の態様について、縦線材を直線に、上下辺寄りの直線横線材を除く横線材を折曲横線材とし、折曲横線材の山部及び谷部中央で縦線材と結合した点、(ハ)格子状部の態様について、上下辺寄りに直線横線材を設けて間隔の密な部分を形成し、その他を間隔が疎の縦長長方形の格子状とした点が共通すると認められる。
一方、両意匠の形態には主として、(い)全体の縦横比について、本件登録意匠は、縦対横が略1:1.7であるのに対し、甲1号意匠は、略1:1.1である点、(ろ)直線横線材の態様について、本件登録意匠は、長さの異なる直線横線材を上下辺からやや離して上下2カ所の表裏に各1本合計2本設け、その中間に折曲横線材を1本配し、正面視間隔の密な3本の横線束を形成しているのに対し、甲1号意匠は、長さの等しい直線横線材を上下辺から等間隔に上下2カ所の表裏に2本ずつ合計4本配設し、正面視3等分された間隔がやや疎の格子を形成している点、(は)折曲横線材の態様について、本件登録意匠は、正面側に幅狭の波状突出部と略台形状凹部を交互に形成しているのに対し、甲1号意匠は、同形の略台形状突出部と略台形状凹部を交互に形成している点、(に)正面側の直線横線材と縦線材の結合態様について、本件登録意匠は、直線横線材を縦線材の内側に配設しているのに対し、甲1号意匠は、外側に配設している点に差異が認められる。
(2)類否
以上の共通点と差異点が、本件登録意匠と甲1号意匠との類否判断に及ぼす影響について検討する。
両意匠に共通する基本的構成態様(イ)は、両意匠の全体の骨格を形成するものではあるが、この種物品の多くに共通する極めてありふれた態様であり、この点に看者の注意がひかれるということは考えられないから、両意匠の類否判断を左右する要素として評価することはできない。次に、両意匠に共通する具体的な態様のうち(ロ)については、上下辺寄りに密な部分を有するフェンスにおいてごく一般的な態様であり(例えば、甲第5号証ないし6号証参照)、両意匠の特徴とはなり得ないから、看者の注意を引かず類否判断上も評価することはできない。共通点の(ハ)については、共通点(ロ)と同様、両意匠のみならず他のフェンスにおいてごく普通に見られる態様であって両意匠の特徴とはいえないから、両意匠の類否判断を左右する要素として格別評価することはできない。そして、これらの共通する態様が相俟って奏する効果を考慮しても、ごく一般的なフェンスの態様を脱していないから、未だ意匠の類否判断を左右する要素には至ってないものと認められる。
これに対して、差異点の(い)は、全体の縦横比の差異であるが、この種物品においては、使用する場所や大きさ等に応じて、同じ構成でその幅、高さを適宜変更したものが使用されること等を勘案すれば、その差異は格別評価する程のものではない。差異点の(ろ)は、格別特徴ある態様とは認められないものの、特に、正面視において、また、斜視図的に観察した場合においても、目の粗い単調な格子状の本体中にあって、上下辺寄りの間隔の密な部分は、両意匠のアクセントとなる目を引く部分であること、また、上辺部分は、使用状態で手を触れることもあり得る注目する部分であること等を考えると、その差異は無視し得ない差異であるといえる。
請求人は、疎密を形成してアクセントをつけることは、公知の構成に過ぎないと主張するが、正面又は背面という目に触れ易い態様における差異点であり、差異点の(は)と相俟った視覚的効果を勘案する場合は、その差異は、たとえ請求人主張のように公知の態様であるとしても、両意匠の類否判断上少なからぬ影響があるというべきである。請求人の挙げる甲第12号証ないし甲第14号は、いずれも折曲横線材の態様を同じくする意匠間の類似関係であるから、折曲横線材の態様を異にする本件の場合と同一には論じられない。差異点の(は)は、折曲横線材の態様に類似の構成のものが見られるものの、本件登録意匠のように表面側の波状突出部が幅狭であるのに、凹部の幅は略3倍ある広さのものは、本件登録意匠の出願前には見られないものであるから本件登録意匠の特徴と認められ、また、本件登録意匠の多数の折曲横線材によって形成される波状ないし略棘状突起面と、甲1号意匠の多数の折曲横線材によって形成される略台形状突出面の差異は、両意匠のフェンス面の大部分を占め、両意匠の美感を大きく左右するものであるから、両意匠の類否判断を左右する大きな要素と認められる。
請求人は、台形状の波形に曲げられているという共通点が、看者に最も大きな印象を与えると主張するが、本件登録意匠の凹部は略台形状といい得るものの、波状突出部は、頂部に平坦部を持たない略棘状の態様をなし、それらが集合して形成される立体的態様と、甲1号意匠の略台形状突出部によって形成される立体的態様とは、自ずから異なる態様として看者に印象づけられると言うべきである。そして、その編み目がごく微細なものであればともかく、通常想定されるフェンスの編み目の大きさであって、観察について請求人が主張するように、斜視図的に見た場合においては、その立体的差異は無視できないものである。また、請求人が挙げる甲第8号証ないし11号証は、本件登録意匠及び甲1号意匠の態様と異なり上下辺寄りの直線横線材がなく、また、折曲横線材の態様も本件登録意匠のような略棘状突起面とは異なるから、本件の類否判断に影響を与えるものとはいえず、請求人の主張は採用できない。差異点の(に)は、全体からみれば微細な部分の差異であるから、その差異は格別評価する程のものではない。
そうすると、差異点の(い)及び(に)については微弱な差異にとどまるものの、差異点(ろ)は無視し得ない差異であり、差異点(は)は両意匠の美感を大きく左右するものと認められ、そうして、差異点の(ろ)及び(は)は、他の差異点とも相俟って、看者の注意を最も強く引き、両意匠の美感に大きく係わるものであるから類否判断を左右する要部における差異と認められ、上記共通点及びそれらが相俟った効果を凌駕して両意匠に別異の印象を与えるものと言わざるを得ない。
したがって、本件登録意匠と甲1号意匠は、意匠に係る物品が共通し、両意匠の形態について、上記共通点があるにもかかわらず類否判断を左右する要部において差異があるから、本件登録意匠は甲1号意匠に同一若しくは類似するということはできない。
4.本件登録意匠と甲2号意匠の比較検討
(1)対比
本件登録意匠と甲2号意匠は、ともにフェンスに係るものであるから意匠に係る物品が共通する。
次に、その形態については、以下の共通点と差異点がある。
すなわち、基本的構成態様において、(イ)多数本の縦線材と横線材を格子状に組み合わせて全体をやや厚みのある横長長方形板状に構成した点が共通しており、その具体的な態様においても、(ロ)縦線材と横線材の態様について、縦線材を直線に、上下辺寄りの直線横線材を除く横線材を折曲横線とし、折曲横線材の山部及び谷部中央で縦線材と結合した点、(ハ)格子状部の態様について、上下辺寄りに直線横線材を設けて間隔の密な部分を形成し、その他を間隔が疎の縦長長方形の格子状とした点が共通すると認められる。
一方、両意匠の形態には主として、(い)全体の縦横比について、本件登録意匠は、縦対横が略1:1.7なのに対し、甲2号意匠は、略1:1.1である点、(ろ)直線横線材の態様について、本件登録意匠は、長さの異なる直線横線材を上下辺からやや離して上下2カ所の表裏に各1本合計2本設け、その間に折曲横線材を1本配し、正面視間隔の密な3本の横線束を形成しているのに対し、甲2号意匠は、長さの等しい直線横線材を上下辺寄りの表裏に1本ずつ合計2本設け、正面視等分された間隔がやや疎の格子を形成している点、(は)折曲横線材の態様について、本件登録意匠は、正面側に幅狭の波状突出部と略台形状凹部を交互に形成しているのに対し、甲2号意匠は、同形の略台形状突出部と略台形状凹部を交互に形成している点、(に)正面側の直線横線材と縦線材の結合態様について、本件登録意匠は、直線横線材を縦線材の内側に配設しているのに対し、甲2号意匠は、外側に配設している点に差異が認められる。
(2)類否
以上の共通点と差異点が、本件登録意匠と甲2号意匠との類否判断に及ぼす影響について検討する。
両意匠に共通する基本的構成態様(イ)は、両意匠の全体の骨格を形成するものではあるが、この種物品の多くに共通する極めてありふれた態様であり、この点に看者の注意がひかれるということは考えられないから、両意匠の類否判断を左右する要素として評価することはできない。次に、両意匠に共通する具体的な態様のうち(ロ)については、上下辺寄りに密な部分を有するフェンスにおいてごく一般的な態様であり(例えば、甲第5号証ないし第6号証参照)、この点は両意匠の特徴とはならないから、類否判断上評価することはできない。共通点の(ハ)については、共通点(ロ)と同様、両意匠のみならず他のフェンスにおいてごく普通に見られる態様であって両意匠のみの特徴とはいえないから、両意匠の類否判断を左右する要素として格別評価することはできない。そして、これらの共通する態様が相俟って奏する効果を考慮しても、ごく一般的なフェンスの態様を脱していないから、未だ意匠の類否判断を左右する要素には至ってないものと認められる。
これに対して、差異点の(い)は、全体の縦横比の差異点であるが、この種物品においては、使用する場所や大きさ等に応じて、同じ構成でその幅、高さを適宜変えたものが使用されること等を勘案すれば、その差異は格別評価する程のものではない。差異点の(ろ)は、格別特徴ある態様とは認められないものの、特に正面視において、また、斜視図的に観察した場合においても、目の粗い単調な格子状の本体中にあって、上下辺寄りの間隔の密な部分は、両意匠のアクセントとなる目を引く部分であること、また、上辺部分は使用状態で手を触れることもあり得る注目する部分であること等を考えると、その差異は無視し得ない差異であるといえる。
請求人は、横直線材の本数、位置の差は斜視図的に見た場合は問題にならないと主張するが、横直線材同士の比較においては、その差は請求人主張のとおりであるとしても、横直線材と折曲横線材が近接することによって上下辺寄りに形成される格子の疎密の差は、例え斜視図的に見た場合であっても、容易に認識し得るものであり、本件登録意匠が、上下辺から離れたはっきりとした密の帯状部分を形成するのに対し、甲2号意匠は、上下辺と接したややあいまいな帯状部分を形成するのみであって、その差異は無視し得ないものであり、看者の注意をひく部分でもあるから、請求人の主張は採用できない。請求人は、また、疎密を形成してアクセントをつけることは、公知の構成に過ぎないとも主張するが、正面又は背面という目に触れ易い態様における差異であり、差異点の(は)と相俟った視覚的効果を勘案する場合は、その差異は、例え請求人主張のように公知の態様であるとしても、両意匠の類否判断上少なからぬ影響があると言うべきものである。甲第12号証ないし甲第14号は、いずれも折曲横線材の態様を同じくする意匠間の類似関係であるから、折曲横線材の態様を異にする本件の場合と同一には論じられない。差異点の(は)は、折曲横線材の態様に類似の構成のものが見られるものの、本件登録意匠のように、表面側の波状突出部が幅狭であるのに凹部の幅は略3倍ある広さのものは、本件登録意匠の出願前には見られないものであるから本件登録意匠の特徴と認められ、また、本件登録意匠の多数の折曲横線材によって形成される波状ないし略棘状突起面と、甲2号意匠の多数の折曲横線材によって形成される略台形状突出面の差異は、両意匠のフェンス面の大部分を占め、両意匠の美感を大きく左右するものであるから、両意匠の類否判断を左右する大きな要素と認められる。
請求人は、台形状の波形に曲げられているという共通点が、看者に最も大きな印象を与えると主張するが、本件登録意匠の凹部は略台形状といい得るものの、波状突出部は、頂部に平坦部を持たない略棘状の態様をなし、それらが集合して形成される立体的態様と、甲2号意匠の略台形状突出部によって形成される立体的態様とは、自ずから異なる態様として看者に印象づけられると言うべきである。そして、その編み目がごく微細なものであればともかく、通常想定されるフェンスの編み目の大きさであって、観察について請求人が主張するように、斜視図的に見た場合においては、その立体的差異は無視できないものである。また、請求人が挙げる甲第8号証ないし11号証は、本件登録意匠及び甲2号意匠の態様と異なり上下辺寄りの直線横線材がなく、また、折曲横線材の態様も本件登録意匠のような略棘状突起面とは異なるから、本件の類否判断に影響を与えるものとはいえず、請求人の主張は採用できない。差異点の(に)は、全体からみれば微細な部分の差異であるから、その差異は格別評価する程のものではない。
そうすると、差異点の(い)及び(に)については微弱な差異にとどまるものの、差異点(ろ)は無視し得ない差異であり、差異点(は)は両意匠の美感を大きく左右するものであり、そうして、差異点の(ろ)及び(は)は、他の差異点とも相俟って、看者の注意を最も強く引き、両意匠の美感に大きく係わるものであるから、類否判断を左右する要部における差異と認められ、上記共通点及びそれらが相俟った効果を凌駕して両意匠に別異の印象を与えるものと言わざるを得ない。
したがって、本件登録意匠と甲2号意匠は、意匠に係る物品が共通し、両意匠の形態について、上記共通点があるにもかかわらず類否判断を左右する要部において差異があるから、本件登録意匠は甲2号意匠に同一若しくは類似するということはできない。
5.結論
以上のとおりであって、請求人の主張及び提出した証拠によっては、意匠法第3条1項及び第9条1項の規定に違反して登録されたものとして、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2001-11-07 
結審通知日 2001-11-12 
審決日 2001-12-18 
出願番号 意願平10-25345 
審決分類 D 1 11・ 111- Y (L3)
D 1 11・ 113- Y (L3)
D 1 11・ 4- Y (L3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日比野 香 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 岩井 芳紀
温品 博康
登録日 1999-06-11 
登録番号 意匠登録第1049637号(D1049637) 
代理人 高橋 清 
代理人 大島 陽一 

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