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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない K2
管理番号 1055262 
審判番号 審判1998-35325
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-07-16 
確定日 2002-03-05 
意匠に係る物品 釣用リ―ル 
事件の表示 上記当事者間の登録第0964965号「釣用リ―ル」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び請求の理由
請求人は、「登録第964965号の意匠登録は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として甲第1号証乃至甲第2号証を提出した。
1.申し立て及び理由
(1)意匠登録無効の理由
第964965号登録意匠(以下、本件登録意匠という。)は、その出願前にアメリカ合衆国において頒布された刊行物に記載の意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同法第48条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
(2)本件登録意匠の要旨
(A)基本的構成態様
本件登録意匠の基本的構成態様は釣り竿に取り付け可能な支持桿を有する異形の本体に挿入した回転軸を中心にして、回転するローター機構、その上にはめ込まれた、道糸を巻き取る為のスプルーを有し、該スプルーとローターの回転抵抗を調整する為のドラッグ調整ノプを前面に有し、該前面には道糸のスプルー上での位置を決めるためのガイドである針金状のベールアーム及び道糸のよじれ防止の為のラインローラーを有し、本体の側面にはローターとスプルーを人力で回転させるためのノプ付きハンドルを有するものである。
(B)具体的構成態様
本件登録意匠の具体的構成態様は、釣り竿に取り付けの為の支持桿は長径対短径が略1:5の棒状であり、その先端には釣り竿に勘合可能な凹面を有し、各角面は滑らかなRを有する角柱状にして長辺と短辺の比率は略1.7:1であるような本体部(軸受け)に連結し、該本体には前後に貫通すると見られる回転軸を中心とするローターを有し、ローターにはめ込まれたスプルーはいわゆる糸巻き状の異形体である。本体に接合しスプルーを左右から挟む形の支持台があり、該支持台にはめ込まれた、平たいU型に曲げられた針金からなるベールアームを有する。該ベールアームの縦横の比率は略1:2である。該ベールアームの片端には前記スプルーの直径の1/2以下の直径の小型の糸巻き状のラインローラーが設置されている。スプルーの前面はドラッグ調整用ノブを有している。本体の側面に設置されたハンドルは横縦横のフック状の形状であり、縦長とそれぞれの横長は略2:1:1の比率である。
(3)甲第1号証の要旨
(A)基本的構成態様
甲1号意匠の基本的構成態様は釣り竿に取り付け可能な支持桿を有する異形の本体に挿入した回転軸を中心にして、回転するローター機構、その上にはめ込まれた、道糸を巻き取る為のスプルーを有し、該スプルーとローターの回転抵抗を調整する為のドラッグ調整ノプを前面に有し、該前面には道糸のスプルー上での位置を決めるためのガイドである針金状のベールアーム及び道糸のよじれ防止の為のラインローラーを有し、本体の側面にはローターとスプルーを人力で回転させるためのノブ付きハンドルを有するものである。
(B)具体的態様
甲1号意匠の具体的態様は釣り竿に取り付けの為の支持桿は長径対短径が略1:5の屈曲棒状であり、その先端には釣り竿に勘合可能な凹面を有し、各角面は滑らかなRを有する角柱状にして長辺と短辺の比率は略1.7:1であるような本体部(軸受け)に連結し、該本体には前後に貫通すると見られる回転軸を中心とするローターを有し、ローターにはめ込まれたスプルーはいわゆる糸巻き状の異形体である。本体に接合しスプルーを左右から挟む形の支持台があり、該支持台にはめ込まれた、平たいU型に曲げられた針金からなるベールアームを有する。該ベールアームの縦横の比率は略1:2である。該ベールアームの片端には前記スプルーの直径の1/2以下の直径の小型の糸巻き状のラインローラーが設置されている。スプルーの前面はドラッグ調整用ノブを有している。本体の側面に設置されたハンドルは横縦横のフック状の形状であり、縦長とそれぞれの横長は略2:1:1の比率である。
(4)本件登録意匠と甲第1号意匠の対比
(A)共通点
(イ)基本的構成態様は一致するものである。
(ロ)具体的態様は取り付けの為の支持桿が甲1号証では僅かに屈曲している点を除き共通するものである。
(ハ)両意匠の特徴は、一致するものである。
(B)差異点
具体的構成態様の内、甲第1号意匠における支持桿が僅かに屈曲しているのに対し、本件登録意匠では、直線状である点のみが相違する。
(4)本件登録意匠と甲第1号意匠との類否判断
(A)意匠に係る物品
両意匠に係る物品はともに「釣用リール」であって、一致する物である。
(B)本物品の釣用リールに於いて、取り付け支持桿を直線的とするか、僅かに屈曲するものとするかは、該リールの使用目的、方法と結果に対して、大きな効果を有するものでは無く、当業者の通常の知識に属するものであり、その多少の屈曲の有無は類否判断の際の重要な要素となるものでは無い。
してみれば、この支持桿の屈曲は、本件意匠の判断要素にきわめて微細なものである。両意匠は、唯一この点のみ差違が認められるものであり、基本的構成態様が一致し、この点を除き、具体的態様が共通するものである以上、互いに類似する意匠であると判断すべきものである。
2.答弁に対する弁駁の要旨
(1)被請求人主張の誤り
(A)スピニングリールにおいて、意匠の類否判断を左右する重要な要素とは決してギアケース、脚部、回転枠のみから構成されるものではなくて、スプール、ハンドルも重要な要素である。被請求人はそのように主張しようとする目的は恐らく前記に説明した両意匠のギアケース、脚部、回転枠における徴差を読者に顕著な差異と認めさせたいものである。
(B)本件登録意匠と引用意匠とはギアケース、脚部、回転枠の外観態様に顕著な差異ではなく、徴差という差異しかない。更に、引用意匠においてのギアケースが「本体と本体から尻部が突出して看者に両者が別異の部分としての印象を与えるもの」であるという被請求人の言い方は目を閉じて想像してできたものに過ぎない。同一看者にとって、もしも引用意匠において「尻部」が見えるとしたら、本件においてもその「尻部」が見えるものである。
(C)本件登録意匠と引用意匠との脚部における差異は徴差にすぎない。両意匠脚部外観基調は一致し、その微差は決して看者の注意を惹〈ところではない。従って、該差異によって「看者に裾野が広がったどっしりした印象を与える」と「頭でっかちなアンバランスな印象を与える」というのは被請求人の独りよがりの言い方に過ぎず、有り得ないものである。
(D)前記の見地から、両意匠外観態様は全体として同様な基調にしており、徴差があっても、看者に両意匠を別異のものと認識させることが決して有り得ない。従って、被請求人の主張は非常識的理屈を損ねるものであると言わざるを得ない
(2)結論
以上のとおり、本件登録意匠と甲第1号意匠とは類似するものであるから、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3号に該当するものである。
第2.被請求人の答弁及びその理由
1.答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として乙第1号証乃至乙第18号証を提出した。
2.本件登録意匠と甲第1号意匠との対比
(1)本件登録意匠と甲第1号意匠は、側面視横倒しした略凸形状からなるスプールを後方の回転枠を介してギアケースに取付けてなり、係るギアケースの上方に一体的に略T字状の脚部を形成すると共にその側面にクランク状のハンドルを突設してなる基本的構成態様は共通する。
(2)ギアケースの形状につき、本件登録意匠が甲第1号意匠のごとく本体とその本体から突出した尻部とを区分して形成したものではなく、前方側は垂直面としつつさらにその上端を後方に若干傾斜させてなり、他方後方側も略垂直面とし、且つその上端部を上方の脚部の傾斜面と面一となるよう同じ角度に傾斜させてなり、全体として上部がいびつな略台形状を呈してなる函体に形成されてなる点で、両意匠には顕著な差異が認められるのである。
(3)脚部の形状について、本件登録意匠がその側面がギアケース上方から取付部に至る細長い線状の平坦面を中心にその両側に傾斜面を形成してなり、その傾斜面もギアケース側から取付部に至るにつれ徐々に幅狭としてなるのに対し、引用意匠はギアケース側からT字状の根元付近までを凹部としてなる点でも両意匠は全く異なる。
(4) ギアケースの前方に位置する回転枠の形状につき、本件登録意匠は回転枠の基部から立設したベール支持部が側面視前方側が半円形状を呈してなる略長方形状に形成されてなるのに対し、引用意匠のベール支持部は前方側を幅広とした横向きの略台形状に形成されてなる点でも両意匠は異なる。
3.本件登録意匠と甲第1号意匠との類否判断
(1)両意匠に係る物品は共に「釣用リール」であり、かかる釣用リールの中でもスピニングリールのタイプに属するものである。
この種スピニングリールにおいて、両意匠が共通するスブールを後方の回転枠を介してギアケースに取付けてなり、かかるギアケースの上方に一体的に略T字状の脚部を形成すると共にその側面にクランク状のハンドルを突設してなる基本的構成態様は普遍的なものであり、このような各部分を有すること自体は決して類否判断の決定的な要素となるものではないのである。
(2)スピニングリールの分野では、ギアケースの形状を中心にその上方に一体的に形成された脚部、並びにその前方に位置する回転枠の外観態様が、最もよくこの種物品の特徴を表しているところであるので、かかる外観態様こそが意匠の類否判断を左右する重要な要素と認めるのが相当である。
(3)本件登録意匠におけるギアケースが甲第1号意匠のように本体と本体から尻部が突出して看者に両者が別異の部分としての印象を与えるものではなく、全体として一つの纏まりのある函体としての印象を看者に与える点で、両意匠は看者をして全く別異の印象を与えるものである。
(4)脚部における差異は、本件登録意匠の脚部がギアケース側に向けて幅広に表れて看者に裾野が広がったどっしりした印象を与えるのに対し、甲第1号意匠はギアケース側がT字状の部分より綱幅な直線状に表れてなるため、いわぱ頭でっかちなアンバランスな印象を与える点でも、両意匠の看者に与える印象は全く異なる。
そうであれば、両意匠は外観態様の差異に基づき異なる印象を与えるものであり、かかる差異は両意匠を別異のものと認識させるに十分なものであると思料する。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類の記載によれば、平成4年2月6日の意匠登録出願に係り、平成8年7月8日に意匠権の設定登録がなされた登録第964965号の意匠であって、意匠に係る物品を「釣用リール」とし、その形態は別紙第1に示すとおりとしたものである。
すなわち、形態の基本的な構成態様について、駆動部を内蔵したギアケースの上方に釣竿へ取り付けるための脚部を一体状に形成し、ギアケースの前方に突出した回転軸に、釣り糸を巻き取るためのローター部及びその前方のスプール部を同軸回転可能に組み込み、ローター部の前方に釣り糸の巻き取りを調節するためのベイル部を取り付け、ギアケースの片側側面に巻き取り操作用のハンドルを取り付けて構成したものであり、形態各部の具体的態様について、脚部は、上方部分を側面視略T字状とし、下方部分を斜め後方に屈曲し、次第に裾広がり状としてギアケースの上方部分と一体状に形成したやや長いものであり、その背面は、左右両端をやや広幅に面取りして猿頬面状とし、背面下端寄り部分が内反り状である点、ギアケースは、やや縦長の略筐体状であって、背面をわずかに上向きの急斜面状としてその上端が脚部の背面下端と一致し、左右両側面の下方をわずかに外膨らみ状として下端を丸く面取りし、底面の後方を尻上がりに緩やかな曲面状として後端を丸面状とし、左右両側面のローター部寄りに略小円形板状の突出部を形成してハンドル取付部とし、その片方に小円形状の蓋を取り付けている点、脚部の左右の側面の上端から下方へ前後2本の区割り線により細幅の帯状模様を表し、それぞれの下端をギアケースの左右の側面上方で末広がり状とし、前方の区割り線をハンドル取付部寄りの後方から下方へいびつな弧状としてその先端を底面に平行する直線状とし、後方の区割り線をギアケースの背面上端から底面のローター部寄りまで斜め直線状とし、前方の区割り線と後方の区割り線とで囲まれた区割り面がそれぞれ略矢じり状を呈している点、ローター部は、ギアケース寄りを回転軸に対し垂直の肉厚板状に形成してローター部基部とし、その左右両端を外側へ正面視略台形状に形成し、それぞれの端部から前方へやや縦長の前円後方形状の板体状に形成してベイル部の支柱部としている点、ベイル部は、一方の支柱部の外側前端に略長円形板状体を半ひねり状に形成したもの、もう一方の外側前端に略扁平水滴状に形成したものをそれぞれ取り付けてベイルアーム部とし、両方の間を略半円弧状のベイルリングで連結している点、スプール部は、前端部を肉厚状の略皿状としローター部基部寄り部分との間を小径とする略筒状に形成し、その前面に、鍋蓋状に形成した調節摘みを取り付けている点、そして、ハンドルは、ギアケース寄り及びこれと反対側の摘み部寄りを互いに反対方向にクランク状に曲げ、摘み部をやや長い略円柱状に形成している点が認められる。
3.甲号意匠
甲号意匠は、請求人が甲第1号証として提出した刊行物に記載された意匠に係り、本件登録意匠の出願前の平成3年(1991年)2月19日に、アメリカ合衆国において発行・頒布されたアメリカ合衆国特許公報に記載の意匠特許第314,808号の意匠であって、同公報全体の記載によれば、意匠に係る物品を「釣用リール」とし、その形態は、別紙第2に示すとおりとしたものである。なお、同公報のFIG.7に示した図形を正面図として形態を認定する。
すなわち、形態の基本的な構成態様について、駆動部を内蔵したギアケースの上方に釣竿へ取り付けるための脚部を一体状に形成し、ギアケースの前方に突出した回転軸に、釣り糸を巻き取るためのローター部及びその前方のスプール部を同軸回転可能に組み込み、ローター部の前方に釣り糸の巻き取りを調節するためのベイル部を取り付け、ギアケースの片側側面に巻き取り操作用のハンドルを取り付けてなるものであり、形態各部の具体的態様について、脚部は、上方部分を側面視略T字状とし、その下方部分を斜め後方に屈曲し、次第に裾広がり状としてギアケースの背面の上方部分と一体状に形成したやや長いものであり、その左右両側面の略全面を面取りして平坦状としている点、ギアケースは、略筐体状であって後方に略隅丸角錐台状の突出部を形成し、その背面をわずかに上向きの急斜面状としてその上端から脚部の背面下端までを略水平状とし、左右両側面の下方をわずかに外膨らみ状として下端を丸く面取りし、底面を側面視水平状として後端を丸面状とし、左右両側面のローター部寄りに、上方を略台形状、下方を略半円弧状としたやや広い突出部を形成し、その略中央に略小円形板状の突出部を形成してハンドル取付部とし、その片方に小円形状の蓋を取り付けている点、ローター部は、ギアケース寄りを回転軸に対し垂直の肉厚板状に形成してローター部基部とし、その左右両端を外側へ正面視略台形状に形成し、それぞれの端部から前方へ、やや縦長の前円後方形状の板体状に形成してベイル部の支柱部としている点、ベイル部は、一方の支柱部の外側前端に略長円形板状体を半ひねり状に形成したもの、もう一方の外側前端に略扁平水滴状に形成したものをそれぞれ取り付けてベイルアーム部とし、両方の間を略半円弧状のベイルリングで連結している点、スプール部は、前端部を肉薄状の略皿状としローター部基部寄り部分との間を小径とする略筒状に形成し、その前面に、鍋蓋状に形成した調節摘みを取り付けている点、そして、ハンドルは、ギアケース寄り及びこれと反対側の摘み部寄りを互いに反対方向にクランク状に形に曲げ、摘み部を中央部が凹んだ略空豆状に形成している点が認められる。
4.本件登録意匠と甲号意匠との対比
(1)意匠に係る物品
両意匠は、いずれも釣竿に取り付けて使用し、一般にスピニングリールと呼ばれる釣用リールの意匠に係るものであるから、意匠に係る物品が共通している。
(2)両意匠の形態についての共通点及び差異点
両意匠は、形態の共通点として、(A)全体の基本的な構成態様を、駆動部を内蔵したギアケースの上方に釣竿へ取り付けるための脚部を一体状に形成し、ギアケースの前方に突出した回転軸に、釣り糸を巻き取るためのローター部及びその前方のスプール部を同軸回転可能に組み込み、ローター部の前方に釣り糸の巻き取りを調節するためのベイル部を取り付け、ギアケースの片側側面に巻き取り操作用のハンドルを取り付けている点が共通し、形態各部の具体的な態様について、(B)脚部は、上方部分を側面視略T字状とし、その下方部分を斜め後方に屈曲し、次第に裾広がり状としてギアケースの上方部分と一体状に形成したやや長いものである点、(C)ギアケースは、略筐体状であって、背面をわずかに上向きの急斜面状とし、左右両側面の下方をわずかに外膨らみ状として下端を丸く面取りし、底面の後端を丸面状とし、左右両側面のローター部寄りに略小円形板状の突出部を形成してハンドル取付部とし、その片方に小円形状の蓋を取り付けている点、(D)ローター部は、ギアケース寄りを回転軸に対し垂直の肉厚板状に形成してローター部基部とし、その左右両端を外側へ正面視略台形状に形成し、それぞれの端部から前方へやや縦長の前円後方形状の板体状に形成してベイル部の支柱部としている点、(E)ベイル部は、一方の支柱部の外側前端に略長円形板状体を半ひねり状に形成したもの、もう一方の外側前端に略扁平水滴状に形成したものをそれぞれ取り付けてベイルアーム部とし、両方の間を略半円弧状のベイルリングで連結している点、(F)スプール部は、前端部を略皿状としローター部基部寄り部分との間を小径として略筒状に形成し、その前面に、鍋蓋状に形成した調節摘みを取り付けている点、そして、(G)ハンドルは、ギアケース寄り及びこれと反対側の摘み部寄りを互いに反対方向にクランク状に曲げて形成している点が認められる。
一方、形態各部の具体的態様についての差異点として、(1)脚部について、本願意匠は、下方部分の背面の左右両端をやや広幅に面取りして猿頬面状とし、背面下端寄り部分が内反り状であるのに対し、甲号意匠は、下方部分の左右両側面の略全面を平坦状に面取りしている点、(2)ギアケースについて、本願意匠は、やや縦長の略筐体状であって、背面の上端が脚部の背面下端と一致し、底面の後方を尻上がりに緩やかな曲面状に形成しているのに対し、甲号意匠は、後方に略隅丸角錐台状の突出部を形成し、その上端から脚部の背面下端までを略水平状とし、底面を側面視水平状とし、左右両側面のローター部寄りに、上方を略台形状、下方を略半円弧状としたやや広い突出部を形成している点、(3)本件登録意匠は、脚部の左右の側面の上端から下方へ前後2本の区割り線により細幅の帯状模様を表し、それぞれの下端をギアケースの左右の側面上方で末広がり状とし、前方の区割り線をハンドル取付部寄りの後方から下方へいびつな弧状としてその先端を底面に平行する直線状とし、後方の区割り線をギアケースの背面上端から底面のローター部寄りまで斜め直線状とし、前方の区割り線と後方の区割り線とで囲まれた区割り面がそれぞれ略矢じり状を呈している点、(4)スプール部の前端部について、本願意匠は肉厚状であるのに対し、甲号意匠は肉薄状である点、(5)ハンドル部の摘み部について、本願意匠は、やや長い略円柱状に形成しているのに対し、甲号意匠は、中央部が凹んだ略空豆状に形成している点の各点が認められる。
(3)両意匠の類否判断
前記の共通点及び差異点を総合し、両意匠を全体として考察すると、共通点の(A)に示す、全体の基本的な構成態様を、駆動部を内蔵したギアケースの上方に釣竿へ取り付けるための脚部を一体状に形成し、ギアケースの前方に突出した回転軸に、釣り糸を巻き取るためのローター部及びその前方のスプール部を同軸回転可能に組み込み、ローター部の前方に釣り糸の巻き取りを調節するためのベイル部を取り付け、ギアケースの片側側面に巻き取り操作用のハンドルを取り付けている態様は、この種釣用リールの形態の不可欠の構成要素にかかり、また、本件登録意匠及び甲号意匠と同様の態様のものが両意匠のほかにも一般的に見受けられるから、基本的な構成態様についての前記共通点のみでは、類否判断の要素としてはそれほど高く評価することができない。
そうすると、この種釣用リールの意匠については、形態各部の構成態様に意匠上の特徴を形成する創作がなされ、評価すべき要素となり得る場合があるから、形態各部の具体的な態様について、両意匠の類否判断に影響を与える要素となり得るか否かを検討すべきである。
そこで、形態各部の具体的な態様における前記各共通点について検討すると、共通点の(B)、(D)、(E)、(F)及び(G)については、この種釣用リールの分野においては、例をあげるまでもなく多数見受けられる構成態様に係り、観る者の注意を惹くほどの特徴とは認められないものであるから、両意匠の全体的な観察の際に与える影響は微弱にとどまる。共通点の(C)については、この種釣用リールの分野において一般的な構成態様とは言えないまでも、両意匠と同様の構成態様を表した例(平成1年8月1日に財団法人生活用品振興センターが発行した「くらしと産業」5号11巻第13頁に掲載された「スピニングリール」、平成2年12月26日にCabela’s社が発行したカタログ「Cabela’s1990 SPRING」第16頁に掲載された釣用リールの各意匠等。)が他にも普通に見受けられ、両意匠にのみ格別の態様に形成されたものとは言えず、結局、これらの共通点のみでは、両意匠の類否判断を左右するほどの要素とはなり得ない。
これに対し、形態各部の具体的な態様における前記各差異点について検討すると、(1)については、ギアケースの上方部分と一体状に形成したやや長い部位における差異に係り、脚部の態様を特徴づける要素として形態全体に与える影響が大きいから、その差異は、両意匠の類否判断に与える影響が大きい。(2)については、ローター部及びスプール部よりも意匠上の創作の自由度が大きいギアケースの具体的な態様に係り、ギアケースの態様を特徴づける要素として形態全体に与える影響が大きいから、その差異は、両意匠の類否判断に与える影響が大きい。(3)すなわち、脚部の左右の側面の上端から下方へ前後2本の区割り線により細幅の帯状模様を表し、それぞれの下端をギアケースの左右の側面上方で末広がり状とし、前方の区割り線をハンドル取付部寄りの後方から下方へいびつな弧状としてその先端を底面に平行する直線状とし、後方の区割り線をギアケースの背面上端から底面のローター部寄りまで斜め直線状とし、前方の区割り線と後方の区割り線とで囲まれた区割り面がそれぞれ略矢じり状を呈している点については、本件登録意匠の出願前には見受けられない態様のものであり、脚部及びこれと一体状に形成したギアケースの態様を特徴づけ、形態全体の基調を形成する要素の一つであるから、その差異が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。(4)については、スプール部の前端部は、スプール部の交換時など注意を払う部位である点を勘案すると、両意匠の類否判断にも影響を与える要素である。(5)については、限られた部位についての差異であるが、使用時に常に触れ、注意を払う部位であるから、両意匠の類否判断に影響を与える要素として考慮すべきものである。特に、差異点の(2)及び(3)は、ギアケース及びこれと一体状に形成した脚部の態様が、観る者の注意を惹く度合いが相対的に大きい点を勘案すると、両意匠の形態の主要部を構成する態様に係り、形態全体の基調を形成する要素をなしていると言えるから、他の差異点と相俟って、両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。
(4)したがって、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品については共通しているが、両意匠の形態については、前記のように共通点があっても、類否判断を左右する要素と認められる差異点があるから、本件登録意匠は、甲号意匠に類似するものということはできない。
5.むすび
以上のとおり、請求人の主張及び提出した証拠によっては、本件登録意匠は、その出願前に外国において頒布された刊行物に記載した意匠に類似するものということができないから、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものとすることができない。
よって、本件登録意匠を無効とすることはできないので、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2001-10-03 
結審通知日 2001-10-09 
審決日 2001-10-24 
出願番号 意願平4-2599 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (K2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤木 和雄山田 繁和 
特許庁審判長 足立 光夫
特許庁審判官 伊藤 栄子
鍋田 和宣
登録日 1996-07-08 
登録番号 意匠登録第964965号(D964965) 
代理人 瀬谷 徹 
代理人 大内 信雄 
代理人 伊藤 晴之 
代理人 藤本 昇 
代理人 斎藤 栄一 

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