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審決分類 審判 無効  意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 無効としない K8
審判 無効  1項1号公知(類似も含む) 無効としない K8
管理番号 1056923 
審判番号 無効2001-35396
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-09-10 
確定日 2002-03-11 
意匠に係る物品 点火用高電圧発生器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1024448号「点火用高電圧発生器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、「登録意匠第1024448号(以下、本件登録意匠という)の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として概ね次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第17号証及び証人尋問申立書を提出した。
本件登録意匠は、本件意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠であるから、意匠法第3条第1項第1号または第3号の規定に該当し意匠登録を受けることができなかったものであり、意匠法第48条第1項の規定により、無効とされるべきものである。
すなわち
(A)本件登録意匠と実質的に同一または極めて類似した意匠に係る点火用高電圧発生器の見本及びこの見本の図面が被請求人からそのユーザにそれぞれ提供されたこと(以下、「上記(A)項に記載の事実」という)、
(B)被請求人側からそのユーザに上記試作高電圧発生器の見本及びこの見本の図面が提供されたときまたはそれ以前に、被請求人側は上記ユーザに対し上記提供について秘密を保持することを要請していなかったこと(以下、「上記(B)項に記載の事実」という)、が明らかである。
そして、上記(A)項及び(B)項に記載した事実から、
(C)本件登録意匠と実質的に同一又は極めて類似した意匠が公然知られていたこと、が明らかである。
第2 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として概ね次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)争点
請求人が、上記の申し立て及び理由において述べているように、被請求人は、上記(A)項記載の事実、即ち、点火用高電圧発生器の見本及びこの見本の図面が、被請求人側からそのユーザにそれぞれ提供されたことについては争わない。
従って、本件無効審判において争点となるのは上記(B)項記載の事実について、被請求人がこれを否認する具体的理由及び証拠を本件無効審判において示し、その結果(C)項記載の事実が存在しないことを主張し得るか否かという点に絞られる。
(2)証拠の提出
被請求人は、(B)項記載の事実を否認する証拠として「資材取引基本契約書」(以下、「基本契約書」という。)(乙第1号証)を提出する。
基本契約書は、上記ユーザである東芝ホームテクノ株式会社(以下、「ユーザ」という。)と被請求人との間で平成5年6月1日付けをもって締結されたものである。
(3)形式的証拠力及び有効性
次に、基本契約書における実質的な証拠力、即ち秘密保持義務について検討する。
この基本契約書は成立を証するために2通作成され、ユーザと被請求人とによって記名捺印され、各1通が保有されるものであり、ユーザの代表取締役社長今西正一氏と被請求人の代表取締役である箕浦勝支氏によって記名捺印されている。
従って、基本契約書の成立については真正であることが推定される。
同契約書第48条1項では、「この基本契約の有効期間は、平成5年6月1日から平成6年3月31日までとする。」と規定され、さらに同項但書において期間満了の1ヶ月前までに、ユーザ又は被請求人から「書面による何らの申し出のない時は、この基本契約と同条件で更に1カ年間更新するものとし、更新された期間についても同様とする。」と規定されている。そして、本答弁書提出の本日現在まで基本契約書の解除についての申し出がなされた事実は見当たらないため、基本契約書は、上記但書のいわゆる自動更新条項がはたらき平成5年6月1日から現在まで有効に存続していることになる。
(4)秘密保持義務
基本契約書の第36条(秘密保持)では、第2項においてユーザ及び被請求人は、「この基本契約並びに個別契約の遂行上知り得た相手の業務上の秘密を第三者に開示し、又は漏洩してはならない。」旨規定され、この秘密保持義務の例外として、ユーザが「発注品(これを組み込んだ商品を含む。)の営業活動を行う場合」および
「1、相手方から開示を受けた際に、既に自ら所有していたもの。
2、相手方から開示を受けた際に、既に公知または公用であったもの。
3、相手方から開示を受けた後に、甲(即ちユーザ)乙(即ち被請求人)それぞ れの責めによらないで公知または公用になったもの。
4、正当な権限を有する第三者から秘密保持の義務を伴わず入手したもの。」が規定されている。
そこで、本件について検討すると、請求人が、本件登録意匠が公知であると主張する理由となった点火高電圧発生器の開示を受けた第三者は、甲第16号証及び甲第17号証の証明願の記載からも明らかなとおり、この開示を受けた第三者はいずれもユーザの社員という立場で被請求人の営業部員から点火用高電圧発生器の見本を受け取ったと記載されている。
従って、被請求人の開示行為には基本契約者の適用範囲内でなされたものであり、ユーザには上記第36条が適用されることは明らかである。また、36条2項の但書、即ち、上記例外事項に該当する事実は上記開示行為については見当たらない。
よって、開示を受けた上記ユーザの社員には、基本契約書に基づき秘密保持義務があることは明白であり、上記開示行為のみをもって、本件登録意匠と実質的に同一又はきわめて類似した意匠が公然知られていたという請求人の主張は成り立たない。
(5)新規性の喪失の例外
請求人が、審判請求書で主張する事実の範囲内では、上記のとおり秘密保持義務のあるものにのみ開示行為が行われているに過ぎず、そもそも新規性の喪失の例外規定を云々する必要性は見当たらない。
また、万一、請求人が尋問を申し立てている2人の上記証人若しくはユーザの他の社員から第三者に、本件登録意匠に係る点火用高電圧発生器が開示されて公知になったという新たな事実が、今後請求人側から提示されたとしても、被請求人の意に反して公知になったものとして意匠法第4条第1項の適用可能性がある。
甲第16号証及び甲第17号証の「証明願」によれば、請求人が尋問を申し立てている二人の証人に対しては、平成8年1月から平成8年3月の間に本件登録意匠に係る点火用高電圧発生器が開示されたと記載されている。一方、本件登録意匠にかかる意匠登録出願の出願日は、平成8年7月11日である。従って、仮に上記証人を含めユーザ側の社員が点火用高電圧発生器をさらに第三者に開示したとしても、それは上記出願前6月以降になると考えられる。
以上の事実より、上記証人若しくは「証明願」に記載されている他のユーザ側社員から第三者に本件登録意匠に係る点火用高電圧発生器が開示されたとしても、意匠法第4条第1項が適用され、その開示された事実をもって公知になったということはできない。
以上のとおりであるから、被請求人側からユーザに点火用高電圧発生器の見本及びこの見本の図面が提供されたときまたはそれ以前に、被請求人側は上記ユーザに対し上記提供について秘密を保持することを要請していなかったという請求人の主張は失当であり、本件登録意匠と実質的に同一又は極めて酷似した意匠が公然知られていた事実は存在しない。
第3.当審の判断
1、本件登録意匠について
本件登録意匠は、平成8年7月11日に出願、平成10年8月28日設定登録された意匠登録第1024448号の意匠であって、その願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品が「点火用高電圧発生器」であって、その形態は別紙第1図記載のとおりである。
即ち、略扁平横長直方体状の取り付け用脚台部と略同大の底面で高さのある略直方体の一体状からなり、平面左寄りを小さい円弧状に膨出させ、上面前側左角部に短円筒状の出力コード接続用ポートを立設し、正面右側に2本の筒状の入力コード接続用ポートを略埋設状に併設し、脚台部の左側面には方形状、右側面には凹状のビス取付用突片を設けている態様のものである。
2、請求人主張の無効事由について
(1)請求人主張の(A)項に記載の事実について
請求人の本件登録意匠と実質的に同一またはきわめて類似した意匠に係る点火用高電圧発生器の見本、及びこの見本の図面が被請求人からそのユーザにそれぞれ提供された、旨の主張につき、以下検討する。
上記請求人の主張は、具体的には、被請求人の営業部員が本件登録意匠の実施品の見本及びその見本の図面をその取引相手(ユーザ)である東芝ホームテクノ株式会社の本社工場において、平成8年1月から3月の間に、提示したことであるが、この(A)項に記載の事実については、被請求人も認めているところであり、また、この事実に反する証拠はないものである。
(2)請求人主張の(B)項に記載の事実について
請求人の、被請求人からそのユーザ(東芝ホームテクノ株式会社)に上記の見本及びこの見本の図面が提供されたときまたはそれ以前に、被請求人側は上記ユーザ(東芝ホームテクノ株式会社)に対し上記提供について秘密を保持することを要請していなかった旨の主張につき、以下検討する。
被請求人が、(B)項に記載の事実を否認する証拠として提出の「資材取引基本契約書」(以下、「基本契約書」という。)(乙第1号証)につき以下検討する。
この基本契約書は、被請求人(乙)と上記ユーザである東芝ホームテクノ株式会社(甲)との間で平成5年6月1日付けをもって締結されたものである。
この基本契約書は成立を証するために2通作成され、ユーザと被請求人とによって記名捺印され、各1通が保有されるものであり、ユーザの代表取締役社長今西正一氏と被請求人の代表取締役である箕浦勝支氏によって記名捺印されている。
従って、基本契約書の成立については真正であることが推定される。
同契約書第48条1項では、「この基本契約の有効期間は、平成5年6月1日から平成6年3月31日までとする。」と規定され、さらに同項但書において期間満了の1ヶ月前までに、ユーザ又は被請求人から「書面による何らの申し出のない時は、この基本契約と同条件で更に1カ年間更新するものとし、更新された期間についても同様とする。」と規定されている。そして、本答弁書提出の本日現在まで基本契約書の解除についての申し出がなされた事実は見当たらないため、基本契約書は、上記但書のいわゆる自動更新条項がはたらき平成5年6月1日から現在まで有効に存続していることになる。
そして基本契約書の第36条(秘密保持)では、第2項において以下のように約定されている。
第36条(秘密保持)
甲及び乙は、この基本契約並びに個別契約の遂行上知り得た相手の業務上の秘密を第三者に開示し、又は漏洩してはならない。但し、甲が発注品(これを組み込んだ商品を含む。)の営業活動を行う場合および次の各号のいずれかに該当するものはこの限りでない。
1、相手方から開示を受けた際に、既に自ら所有していたもの。
2、相手方から開示を受けた際に、既に公知または公用であったもの。
3、相手方から開示を受けた後に、甲(即ちユーザ)乙(即ち被請求人)それぞ れの責めによらないで公知または公用になったもの。
4、正当な権限を有する第三者から秘密保持の義務を伴わず入手したもの。」
また、第4項において、「甲及び乙は、自らの従業員その他の者に本条の義務を遵守させるため必要な措置をとる。」と約定されている。
そして、請求人が、本件登録意匠が公然知られた意匠であると主張する理由となった被請求人の営業部員から、本件登録意匠と実質的に同一またはきわめて類似した意匠に係る点火用高電圧発生器の開示を受けたとされる場所は東芝ホームテクノ株式会社の本社工場内であり、開示された者は東芝ホームテクノ株式会社の生産部のA社員と開発部門のT主任、及びT主任からその旨報告を受けたK主任、K主任の報告を聞いた石口幸弘、A社員から報告を受けた小林良一は、いずれも当時東芝ホームテクノ株式会社の従業員である。
従って、被請求人の取引相手(ユーザ)である東芝ホームテクノ株式会社には上記第36条(秘密保持)義務が取り決められており、被請求人の営業部員の開示行為は基本契約の適用範囲内でなされたものであり、開示を受けた東芝ホームテクノ株式会社の従業員(社員)には、基本契約書に基づき秘密保持義務があったことは明白である。また、36条2項の但書、即ち、上記例外事項に該当する事実は上記開示行為については見当たらない。
よって、開示を受けた上記ユーザである東芝ホームテクノ株式会社の従業員(社員)には、基本契約書に基づき秘密保持義務があることは明白であり、上記開示行為のみをもって、本件登録意匠と実質的に同一又はきわめて類似した意匠が公然知られていたという請求人の主張は成り立たない。
なお、請求人が、審判請求書で主張する事実の範囲内では、上記のとおり秘密保持義務のあるものにのみ開示行為が行われているに過ぎず、そもそも新規性の喪失の例外規定を云々する必要性は見当たらない。
また、請求人が尋問を申し立てている2人の証人若しくは東芝ホームテクノ株式会社(ユーザ)の他の第三者に、本件登録意匠に係る点火用高電圧発生器が開示されて公知になったという事実も、認められない。
以上、請求人の主張する本件登録意匠を無効とすべき理由である意匠法第3条第1項第1号または第3号に該当せず、本件登録意匠を意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-01-15 
結審通知日 2002-01-18 
審決日 2002-01-29 
出願番号 意願平8-21095 
審決分類 D 1 11・ 111- Y (K8)
D 1 11・ 16- Y (K8)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 行久飛山 貴子 
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 鍋田 和宣
伊勢 孝俊
登録日 1998-08-28 
登録番号 意匠登録第1024448号(D1024448) 
代理人 土屋 勝 
代理人 東田 潔 
代理人 打揚 洋次 

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