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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効としない L2
管理番号 1058423 
審判番号 無効2001-35282
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-06-29 
確定日 2002-04-26 
意匠に係る物品 みぞぶた 
事件の表示 上記当事者間の登録第0831293号「みぞぶた」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び請求の理由
1.申し立て及び理由
請求人は、「登録第831293号意匠の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第15号証(枝番を含む)を提出した。
(1)理由の要点
登録第831293号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状に基いて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に違背して意匠登録を受けたものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。
(2)本件登録意匠について
(ア)本件登録意匠に係る物品は、意匠公報(甲第1号証の1)に記載の通り、 「みぞぶた」であり、道路等の側溝に施設される排水用側溝の集水蓋として使用するものである。
(イ)意匠に係る形態は、(a)基本的構成態様について、やや肉厚の方形状の板状体を蓋本体とし、この蓋本体の左右両側の裏面に、蓋本体の左右両側面と面一に断面形状を略逆台形状とする角柱状の脚部を設け、正面形状を扁平な略逆U字状に形成し、蓋本体には略横長々方形状を呈する複数の排水孔を、中央に僅かな間隔部分を設け左右に並列して穿設した態様であり、(b)具体的構成態様について、脚部の裏面に細幅帯状の底板を貼着し、排水孔を左右に7個ずつ計14個を並列し、該排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成して、中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥したことにより左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様である。
(3)本件登録意匠の要部について
甲第2号証の審決では、本件登録意匠の要部について、「意匠の全体の基本的構成態様は、この種の態様をなす側溝用溝蓋の意匠にあっては、引用の意匠(注:本件登録意匠)の出願前より普通に見受けられる態様であって、引用の意匠(注:本件登録意匠)のみに限られた形態上の特徴を現しているところとは言い難い。」と認定したうえで、「意匠の特徴は、前記に共通するとした各部の具体的な構成態様のうち、『略横長々方形状を呈する排水孔を中央に僅かな間隔部分を設け左右に7個ずつ計14個を並列して穿設し、該排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成し、中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥していることにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様に表した』ところにある。」といえると認定された。
しかしながら、本件登録意匠の要部及びこれを基本的に認容した甲第2号証審決で認定された本件登録意匠の特徴(要部)についても、本件登録意匠の出願前から普通に見受けられる形状であり、いわゆる当業者に広く知られた形状に基づいて容易に創作をすることができた態様である。特に、これらの形状は、甲第4号証以下の各甲号証においてすでに当業界では広く知られた形状であった。
よって、本件登録意匠は、先に認定されたところの要部はもとより、全体としても創作性がない意匠として登録されるべきではなかったものである。
(4)本件登録意匠の特徴を分節すると、(a)略横長々方形状を呈する排水孔を中央に僅かな間隔部分を設け左右に7個ずつ計14個並列して穿設し、(b)該排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成し、(c)中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、(d)該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥していることにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続する態様ということになる。
(5)上記分節毎に創作容易性についてみていくと、
(a)については、排水孔の中央に僅かな間隔部分を設け左右に7個ずつ計14個を並列して穿設した形状も甲第5号証及び甲第6号証に見られる如く極く普通の形態のものである。
(b)の形態についてみると、甲第2号証審決では、この形態を特徴の一つとして挙げていながら、登録第1048996号意匠との対比の中で、「縁取りの表現手段としては、当該物品分野に限らず各種の物品分野において、極めて普通に知られた態様であって、」と認定されているので、何ら特徴となる形態ではないといえる。これを裏付けるものとして、「みぞぶた」の分野においても甲第7号証乃至甲第9号証を挙げることができる。
(c)及び(d)の形態についてみると、まず、甲第10号証は、「マンホール鉄蓋」に係る実用新案登録出願の公開公報に掲載された形状であるが、第1図及び策2図によれば、蓋上面の間隔部分a、a’の上端を縁部の段差bの深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分の上面(受枠2)は蓋本体の表面から僅かに凹陥していることにより、縁部の段差bと受枠2とが連続する態様となっており、(c)及び(d)を充足する構成となっている。
次に、甲第12号証及び甲第13号証共に第1図及び平面図が不鮮明なため正確に視認できないので、甲第13号証に係る意匠登録出願(意願昭58-52672号)の願書に添付された図面を入手したところ鮮明なものとなっている(甲第14号証)。
すなわち、この図面をみると排水孔の中央には間隔部分が設けられており、各排水孔の周縁には細幅の縁取り部分が形成されており、中央の間隔部分は明らかに細幅の縁取り部分の深さと同じ深さに形成されているのが看て取れ、図面上、中央の間隔部分が縁取り部分の下端面より上方に形成されているとは到底認識されないのである。
但し、B-B線断面図からみると確かに齟齬があるようでこの意匠の正確な形状を把握することはできないが、請求人が本件請求の理由として問題にしているのは、甲第12号証乃至甲第14号証に開示されている溝蓋の意匠の排水孔の形状が上記説明のとおりに看取される以上、本件登録意匠の出願前にはすでに知られていた若しくはすでに実施されていた形状であるので、これらの排水孔の形状を本件登録意匠の排水孔の形状に転用することに何ら困難性はなく、当業者にとっては極めて容易であったということである。
甲第15号証は、昭和48年12月、熊本市の下水道工事仕様書写しであり、汚水桝とその蓋の構造図面であるが、4枚目、第30頁における「汚水桝2型(歩道用)」の蓋の構造において、二つの取っ手を収納する個所が、蓋本体の平面から凹陥した形態に形成されている。
このことは、「側溝用ブロック」、「みぞぶた」、「マンホール」あるいは「汚水桝・排水桝・雨水桝」などの分野において、いわゆる当業者にとって、溝の部分、孔の部分あるいは間隔部分などを必要に応じて、物品の表面・平面から僅かに凹陥させることに何ら困難性はなく、日常的に行っている設計的事項である。
よって、排水孔内の間隔部分の表面を排水孔周縁の縁取り部分の深さと同一の深さに形成して、排水孔同士の縁取り部分が連続する態様に形成することは、甲第10号証、甲第8号証乃至甲第9号証、甲第12号証乃至甲第15号証などからは当業者にとっては極く容易に創作をすることができる程度の差異にしかすぎないのである。
(6)以上のとおり、無効2000-35049号事件において、審決で認定された本件登録意匠の特徴とされた構成は、本件登録意匠の出願前からこの種製品及び関連分野の製品に普通に見受けられる形状であり、いわゆる当業者に広く知られた形状に基づいて容易に創作をすることができた範囲の態様である。
したがって、本件登録意匠は、意匠全体の基本的構成態様はもとより、その具体的な構成態様においても意匠の要部と評価された部分にも何ら特徴は存在せず、全ての構成において創作性がない意匠であるといわざるを得ない。
2.答弁に対する弁駁
請求人は、弁駁書において、要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第16号証ないし甲第18号証を提出した。
(1)意匠の創作性について
被請求人は、「請求人の主張は、本件登録意匠の細部の形状についてだけの観察に終始し、物品全体の観察を怠ったものであり、全く的を得ないものである。」と主張するが、請求人は、本件登録意匠の新規な態様であると認定された要部について分節し、その新規な態様であるとする形状も、すでに開示されている公知の形状であって、当業者が容易に創作できるものとして新規性を欠如し創作性がないと主張しているのである。
(2)「新規な態様である」とした形態部分の創作容易性について
(ア)甲第8号証及び第9号証について
被請求人は、「甲第8号証及び第9号証に基づいて「蓋本体の上表面に表れた仕切り体の上端を段差の分だけ低くした形状」が広く知られた形状であるとの主張は成り立たないのである。」と主張しているが、本件登録意匠は、公知の形態に基づいて、仕切り体の上端面を更に数mm下げたにすぎないものであって、普通に知られた態様の縁取りに沿って形成される仕切り体の上端面をどの位まで下げるかは単なる設計的事項に過ぎないのであり、そこに創作性は存在しないのである。
(イ)甲第12号証乃至甲第14号証について
甲第12号証乃至甲第14号証の溝蓋の形態を被請求人の主張のようにすると、物品の要部として観察しなければならない表面の形態を図面に示されたとおりに素直に見ることなく、その図面に表された現実の表面の形態を表現的に曲げて事実と違う認識をしなければならないのであり、到底許されるべきものではないのである。
被請求人は、「甲第12号証乃至甲第14号証に開示される意匠を斜視図で表すと、乙第4号証のようになる。」と主張しているが、この主張は明らかに誤っている。即ち、甲第16号証で示された平面図からして、排水孔の周囲において、全周に渡って細幅の縁取り部分が繋がって形成されているのであるから乙第4号証のようにはならないのである。敢えて、斜視図で表すとすれば、甲第18号証のようになると推測されるのである。
第2.被請求人の答弁及び答弁の理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下のとおり主張し、立証として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1.答弁の理由の要旨
(1)請求人の主張について
請求人は、本件登録意匠の特徴を(a)〜(d)の4つの形状に分説し、それぞれの形状が当業者に広く知られた形状であることを理由に、本件登録意匠の全体の構成に創作性がないとの主張を行っているが、意匠は物品の美的外観であることから、意匠の創作性は、物品全体を観察することによって判断されるべきものである。たとえ物品全体を細分化することによって、個々の部分の形状が当業者に広く知られた形状であり、それらを寄せ集めたものである場合であっても、物品全体の外観を観察することによって、看者の美観を起こさせる創作性のある意匠であるといえることがあるのである。
(2)本件登録意匠の特徴である(b)の形態について、請求人は、甲第7号証を挙げて「排水孔内側に斜状に形成した縁取り部分が明確に看取される」旨を主張するが、甲第7号証の「A-A線における断面図」に表されているように、排水孔内側は、表面側から裏面側に向けて僅かに傾斜しているだけであって、排水孔の表面側には、縁取り部分が全く形成されていない。
(3)本件登録意匠の特徴である(c)及び(d)の形態について、請求人は、「蓋本体の上表面に表れた仕切り体の上端を段差の分だけ低くした形状」が、広く知られた形状である旨主張しているが、その形状は、請求人が提出した証拠に記載されておらず、広く知られた形状とはいえない。
以下、請求人が提出した証拠に沿って説明する。
(ア)甲第10号証は、マンホール鉄蓋に係るものであり、蓋本体に排水孔が全く設けられていない。請求人が仕切り体と主張する部分は、受け枠を裏側から補強するためのリブであって、排水孔間を仕切る仕切り体とは全く異なるものである。
(イ)甲第8号証及び第9号証は、いずれもC-C断面図及びD-D断面図から明らかなように、仕切り体の上端面が段差(縁取り部分)よりも高い位置に形成されている。
(ウ)甲第12号証乃至甲第14号証は、乙第4号証に図示するように、明らかに仕切り体の上端面が段差(縁取り部分)よりも高い位置に形成されているのである。
(エ)甲第15号証は、汚水桝蓋に係るものであり、蓋本体に排水孔が全く設けられていない。甲第15号証からは、「仕切り体の上端」自体及び「縁取り部分」自体が全く観念できないのである。
以上のように、請求人が提出するいずれの証拠にも、「蓋本体の上面に表れた仕切り体の上端を段差の分だけ低くした形状」は全く開示されておらず、この形状は当業者に広く知られた形状であるとはいえないのである。
(4)まとめ
以上のように、請求人の主張は、本件登録意匠の形態を細分化した形状についてだけの観察に終始し、意匠全体の観察を怠ったものである。
しかも、本件登録意匠の細分化した形状についてみても、いずれの証拠にも、「蓋本体の上表面に表れた仕切り体の上端を段差の分だけ低くした形状」が開示されておらず、これらの形状が当業者に広く知られた形状であるとは到底いえないのである。
したがって、本件登録意匠は、当業者に広く知られた形状等に基づいて創作された意匠ではなく、意匠の創作性を有しているものであり、本件登録意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当することは有り得ない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類の記載によれば、昭和62年7月8日の意匠登録出願に係り、平成3年11月29日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「みぞぶた」とし、その形態を次のとおりとしたものである。(別紙第1参照)
すなわち、基本的構成態様について、やや肉厚の方形状の板状体を蓋本体とし、この蓋本体の左右両側の裏面に、蓋本体の左右両側面と面一に断面形状を略逆台形状とする角柱状の脚部を設け、正面形状を扁平な略逆U字状に形成し、蓋本体には略横長々方形状を呈する複数の排水孔を、中央に僅かな間隔部分を設け左右に並列して穿設した態様のものである。そして、各部の具体的構成態様について、脚部の裏面に細幅帯状の底板を貼着し、排水孔を左右に7個ずつ計14個を並列し、該排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成して、中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥したことにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様のものである。
2.本件登録意匠の構成態様の周知性について
(1)本件登録意匠の構成態様は、前記のとおりのものであるから、これらの形状が、本件登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において広く知られていたものであったか否かについて検討する。
(2)まず、本件登録意匠の基本的構成態様、すなわち、やや肉厚の方形状の板状体を蓋本体とし、この蓋本体の左右両側の裏面に、蓋本体の左右両側面と面一に断面形状を略逆台形状とする角柱状の脚部を設け、正面形状を扁平な略逆U字状に形成し、蓋本体には略横長々方形状を呈する複数の排水孔を、中央に僅かな間隔部分を設け左右に並列して穿設した態様については、ほぼ同様の構成態様のものが本件登録意匠の出願前に見受けられるから、一般的なものといえる。
(3)請求人は、排水孔の配列の態様について、排水孔を左右に7個ずつ計14個並列して穿設した態様は、極く普通の態様である旨主張するので、この点について検討すると、甲第5号証の意匠公報(別紙第2参照)によれば、排水孔を左右に7個ずつ計14個を穿設した態様のものが表されている。そして、甲第5号証の意匠公報は、昭和58年7月8日に発行され、その後4年近く経過して本件登録意匠が出願されたものであるから、前記態様は、本件登録意匠の出願前に、既に当業者間において広く知られていたものと認められる。
(4)請求人は、排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成した態様は、極く普通の態様である旨主張するので、この点について検討すると、甲第8号証の意匠公報(別紙第3参照)及び甲第9号証の意匠公報(別紙第4参照)によれば、排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成した態様のものが表されている。したがって、前記態様は、本件登録意匠の出願前に、既に当業者間において広く知られていたものと認められる。
なお、甲第7号証の意匠公報によれば、請求人が排水孔の表面周縁を極く僅かに内方に凹陥する縁取り部分と主張する部分は、平面図の長孔の周縁部に表された2重線の部分であるが、意匠公報の説明の欄の「・・・長孔の各上縁部に夫々金属製の枠材を取付けて成る側溝用ふたである。」との記載及び「A-A線における断面図」からみて、金属製の枠材を表したものと認められるから、当該部分は、排水孔の表面周縁を極く僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成したものとはいえない。
(5)次に、排水孔中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥したことにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様について、その態様が、本件登録意匠の出願前に広く知られていたものであったか否かについて、以下検討する。
(ア)請求人は、「甲第10号証は、「マンホール鉄蓋」に係る実用新案登録出願の公開公報に掲載された形状であるが、第1図及び策2図によれば、蓋上面の間隔部分a、a’の上端を縁部の段差bの深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分の上面(受枠2)は蓋本体の表面から僅かに凹陥していることにより、縁部の段差bと受枠2とが連続する態様となっており、(c)及び(d)を充足する構成となっている。」旨主張するが、この点については、甲第10号証の1及び甲第10号証の2によれば、「マンホール鉄蓋」に係る断面図が記載されているが、その断面図には、受け枠に排水孔が全く設けられていない形状のものが表されており、また、その裏側には受け枠を補強するためのリブが設けられた態様のものであって、排水孔の間隔部分(仕切り体)は形成されていない態様のものである。したがって、本件登録意匠の排水孔中央の間隔部分の態様が、本件登録意匠の出願前に広く知られているものと認めることができない。
(イ)請求人は、甲第14号証として、甲第12号証の実開昭60-130891号公開実用新案公報に記載の実用新案登録出願人がほぼ同時期に出願した意匠登録出願に係る意匠登録第824534号の意匠公報(甲第13号証)記載の図面の原本の写し(別紙第5参照)を提出して、「平面図をみると、B-B断面図と齟齬があるが、排水孔の中央には間隔部分が設けられており、各排水孔の周縁には細幅の縁取り部分が形成されており、中央の間隔部分は明らかに細幅の縁取り部分の深さと同じ深さに形成されているのが看て取れ、図面上、中央の間隔部分が縁取り部分の下端面より上方に形成されているとは到底認識されないのである。」旨主張するので、この点について検討する。
甲第14号証は、意匠登録出願の際の願書及び願書に添付した図面であるが、その図面は、複数の図によって、出願に係る意匠を表したものである。そして、審査において、それらの図に相互に一致しない部分がある場合、一図のみを採り上げて判断するのではなく、それらの図全体を総合して合理的に判断して意匠を把握することが一般的になされているところである。
そうすると、間隔部分について、A-A断面図の記載によれば、各排水孔の周縁、即ち、連結体の形状が台形であり、また、B-B断面図の記載によれば、間隔部分の上面が連結体の台形の下端部より高い部位に形成していることが明らかであり、その台形の傾斜辺が、排水孔の表面周縁の凹陥する縁取り部分に相当することから、間隔部分は、排水孔の表面周縁の凹陥する縁取り部分の深さより高い部位に形成されていると認められる。そして、当該間隔部分を甲第17号証の図面に示すような部分拡大図等により正確に記載すべきところ、平面図に排水孔の表面周縁の凹陥する縁取り部分の傾斜部分が極細の幅で表現されていることから、その幅内で間隔部分を正確に記載していないものと認められる。これらを勘案すると、意匠登録第824534号の意匠は、平面図の間隔部分について、他の図と厳密には一致していないが、その上面が排水孔の表面周縁の凹陥する縁取り部分の深さより高い部位に形成された態様のものと認定するのが自然である。したがって、間隔部分の左右の排水孔どうしの縁取り部分は、請求人が主張するような中央の間隔部分が細幅の縁取り部分の深さと同じ深さに形成されている態様でないことは明らかであるといえる。
したがって、当該溝蓋の中央間隔部分の位置及び排水孔の表面周縁の凹陥する縁取り部分の形状は、おおむね乙第4号証の斜視図のとおりであることが認められるが、甲第18号証の斜視図に示された排水孔の表面周縁の凹陥する縁取り部分fは、平面図のみから推測したものであって、他の図とりわけA-A断面図及びB-B断面図から認識することができないものである。
そうすると、甲第10号証及び甲第12号証乃至甲第14号証によって、排水孔の中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥したことにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様は、本件登録意匠の出願前に広く知られた態様であると認められない。
3.本件登録意匠の創作容易性について
(1)当業者の立場からみて、広く知られた形状等の結合あるいは改変が一般的でありふれた手法であるか否か、容易に着想できたものであるか否かを検討する。
意匠の形態は、立体的なまとまりを形成しているものであり、一般的な構成要素と新規な意匠的価値を有する構成要素が相俟って形態を形成している場合が多い。したがって、各部の構成態様の評価あるいは周知性のみに基づいて創作容易性を判断するものではない。広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度のものは、問題なく容易に創作することができたものと認められるが、広く知られた形状等の結合あるいは改変によって意匠の創作がなされている場合は、その結合や改変が当業者の立場からみて一般的でありふれた手法であるか否か、容易に着想できたものであるか否かを検討しなければならない。
(2)本件登録意匠の基本的構成態様は、前記のとおり一般的なものである。しかし、この種物品においては、各部の具体的構成態様に意匠の創作上の配慮がなされ、創作上評価すべき要素となる場合があるから、その基本的構成態様が一般的であることをもって直ちに容易に意匠の創作をすることができたものとすることができない。
(3)また、前記したとおり、具体的構成態様における排水孔の配列、排水孔の表面周縁部の縁取り部分の態様は、本願出願前からこの種物品の分野においては広く知られたものであるが、一方、具体的構成態様における排水孔の間隔部分の態様のように周知性の認められないものもある。そして、本件登録意匠の「間隔部分の上端面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成することによって、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様」は、従来見られないものといえるから、意匠的にみれば、新たな意匠的効果が生じ、独創的な要素を表したものと認められるところである。また、この意匠的要素を局部的なもの、あるいは微細なものとして軽視することができないというべきである。したがって、直ちに当業者が広く知られた形状に基づいて容易に創作をすることができたものということはできない。
請求人は、「無効2000-35049号事件において、審決で認定された本件登録意匠の特徴とされた構成は、本件登録意匠の出願前からこの種製品及び関連分野の製品に普通に見受けられる形状であり、いわゆる当業者に広く知られた形状に基づいて容易に創作をすることができた範囲の態様である。したがって、本件登録意匠は、意匠全体の基本的構成態様はもとより、その具体的構成態様においても意匠の要部と評価された部分にも何ら特徴は存在せず、全ての構成において創作性がない意匠であるといわざるを得ない。」と主張するが、この点は上記のとおりであるから、採用することができない。
4.結び
以上のとおり、請求人の主張及び提出した証拠によっては、本件登録意匠は、その出願前に日本国内において広く知られた形状に基づいて容易に創作をすることができたものということができないから、意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものとすることはできない。
よって、本件登録意匠の意匠登録を無効とすることができないので、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-02-20 
結審通知日 2002-02-25 
審決日 2002-03-15 
出願番号 意願昭62-27890 
審決分類 D 1 11・ 121- Y (L2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 裕造 
特許庁審判長 足立 光夫
特許庁審判官 伊藤 栄子
藤 正明
登録日 1991-11-29 
登録番号 意匠登録第831293号(D831293) 
代理人 佐々木 功 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 内野 美洋 
代理人 川村 恭子 

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