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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) F4
管理番号 1063009 
判定請求番号 判定2001-60111
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2002-09-27 
種別 判定 
判定請求日 2001-10-04 
確定日 2002-07-25 
意匠に係る物品 弁当箱 
事件の表示 上記当事者間の登録第1032315号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「弁当箱」の意匠は、登録第1032315号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、イ号図面およびその説明書に示す弁当箱の意匠(以下、「イ号意匠」という)は、登録第1032315号意匠(以下「本件登録意匠」という)およびこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を大要以下のとおり主張し、立証として甲第1号証ないし甲第9号証を提出し、他に検甲第1号証ないし検甲第3号証、及び検甲第5号証を提出した。
両意匠は、基板下段左側の主食用凹部の位置、形状と、この主食用凹部の周囲に配置される4個の惣菜用凹部の形状、個数、配列態様との点で、互いに類似していることが明らかである。本件登録意匠とイ号意匠の惣菜用凹部は、上段左側が正方形か長方形かの違い、上段中央部が円形か長方形かの違い、上段右側が木の葉形か円形かの違い、下段右側が正方形か長方形かの違いにすぎず、各食器状凹部の形状的違いは微差である。さらに両者とも、上段右側の惣菜用凹部が他の惣菜用凹部よりも若干大きくなるようにして基板の右隅上部を大きく占有しており、この形状が本件登録意匠は木の葉形、イ号意匠は円形の違いはあるとしても、本件登録意匠の木の葉形凹部は、右隅上と左隅下とを大きな円弧としているので、円形として感じさせる要素を備えている。
また本件登録意匠は、各食器状凹部の開口縁部に、基板の表面よりも僅かに上方に突出させた縁取り状の周縁部が設けられており、この周縁部によって、あたかも、予め基板に各食器の開口部よりもやや小さい内径の穴をそれぞれ開設して、これらの穴内に本物の食器を落とし込み、従って、これら本物の食器の開口部が基板表面に突出しているかのような形状を形造っており、この点でイ号意匠は、本件登録意匠の創作的要素をそのまま備えている。
更に、本件登録意匠には類似1の意匠と類似2の意匠とが登録されており、凹部の個数と配列が共通していれば、凹部全体の配列位置が互いに左右逆の対称形の場合であっても、また一部の凹部の形状が異なっていても類似範囲が及ぶことを示唆している。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、本件判定の請求は成り立たない、判定費用は請求人の負担とする、との判定を求める、と答弁し、その理由を大要以下のとおり主張し、立証として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
各食器状凹部の形状について、基板の下段左側に主食用凹部を、その周囲に4つの惣菜用凹部を設け、合計5つの凹部を設けた弁当箱は、乙第1号証からも明らかなとおり、本件登録意匠の出願日以前から被請求人や他の同業者も既に製造販売していたものであり、基本的な配置形態である。従って本件登録意匠とその類似意匠は、このような基本的な配置形態をベースとして、各凹部の形状自体にそれぞれ変化をもたせた点に創作性が認められていると考えるべきである。ことに、主食用凹部は単なる長方形で、他の3つの惣菜用凹部はありふれた円形又は正方形で、基板面において占有面積も小さいが、上段に位置する木の葉状凹部は、下部が下段にまで張り出す程他より占有面積が大きく、その形状自体がこの意匠によって初めて採用された、全く斬新的な形であり、そのため取引者や需要者は、一見してその木の葉状部分に引きつけられる特徴的な要部となっている。イ号意匠はこの木の葉状凹部を有しておらず、従来から極めて一般的な凹部の基本的配置形態に、これまた極一般的な正方形、長方形、円形等のありふれた形の凹部を、普通に組合わせただけの公知の形状に過ぎない。
また請求人が意匠の要部として主張する「各凹部外周縁を基板上面から突出させ、複数の食器状凹部を落とし込んで保持させたような形状にさせること」は乙第2号証ないし乙第4号証にもみられるとおり、本件登録意匠の出願前から完全に周知の形状であるから、この部分の形状については、何ら意匠の要部とはなり得ないことは明白である。またイ号意匠は全体が横長の長方形であって、本件登録意匠のような縦長の長方形ではなく、惣菜用凹部の円形凹部以外4つの凹部は全て長方形に形成してなる。以上の通り、イ号意匠は本件登録意匠の特徴的な要部形状を有しておらず、従って全体としての意匠感が全く相違しており、対比観察及び離隔観察の何れでも類似していない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年6月18日に意匠登録出願をし、平成10年12月4日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1032315号の意匠であり、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「弁当箱」とし、その形態を、別紙第一に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書のイ号図面、並びにイ号図面の説明書により示されたもので、意匠に係る物品が弁当箱と認められ、その形態は別紙第二に示すとおりのものである。
3.両意匠の対比検討
両意匠を対比するに、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
即ち共通点として、横長方形板状の上面に複数の食品用凹部を配列した容器本体と、これに伏皿状に被せられる蓋体とからなるもので、容器本体は、上面手前左に稍大きい横長方形状の凹部を表し、その余の逆L字状の部分に、後方に横3つ、手前右に1つの計4つの凹部(以下「惣菜用凹部」とする。)を並べた基本的な構成態様のものである点、各部の具体的な態様について、各食品用凹部は、開口縁に凸状に隆起する周縁を設け、全体が錐台状に窄まるものとし、容器本体の四周に上方に立ち上がる枠取りを設け、これらに挟まれた板面を平坦面状としている点、惣菜用凹部について、略方形以外の形状のものを混在させ、後方右端の凹部の大きさを、他の惣菜用凹部よりも稍大きいものとし、更に後方左端の凹部と手前右の凹部を共に略方形状としている点、蓋体は、四周の側面に段状に張り出して垂下する嵌合縁を設けて、その内側が上方に低錐台状に隆起するものとし、頂面中央に極く低い方形枠を表している点、が共通する。
一方両意匠は、(イ)後方右端の凹部について、本件登録意匠は、略正方形の一方の対角(左前角と右後角)を円弧状に大きく丸み付けた斜め略菱形状(略木の葉状、或いはレモン状)としているのに対し、イ号意匠は全体が真円状である点、(ロ)後方中央の凹部について、本件のものは真円状であるのに対し、イ号意匠は方形状である点、(ハ)蓋体の低錐台状の隆起部につき、本件登録意匠は、稜部を全周に亘り丸面状に表しているのに対し、イ号意匠は、四方の側面を角部を残して斜面状に面取りし、角部を下端で隅切状としている点、に主として差異が認められる。
そこで上記の共通点と差異点について検討する。
まず共通点について、被請求人の提出した乙第1号証によれば、本件登録意匠の出願前に、前記共通点のうち、各食品用凹部の開口縁に凸状に隆起する周縁を設けている点、惣菜用凹部に略方形以外の形状のものを混在させている点、を除き、その余の共通点をすべて備えた弁当箱が、タカギ産業株式会社が配布したカタログ「OBENTO COMMUNICATION 1996」9頁の「副食飛天シリーズ」とする弁当箱(以下「乙第1号証意匠」とする。別紙第三)に認められ、これら共通点は、本件登録意匠独自の特徴とはいえない。
また、各食品用凹部の開口縁に、凸状に隆起する周縁を設けている点については、例えば、意匠登録第668084号意匠、同776652号意匠、実開昭59-7615号第2図の意匠、特開平8-244751号、実用新案登録第3033950号(乙第2号証)等に認められ、この種の物品においては格別特徴的なものとはいえない。
更に、惣菜用凹部に略方形以外の形状のものを混在させた態様についても、例えば、意匠登録第645211号、同785573号、同845974号ないし同845981号、同845987号等にみられるとおり、この種の物品においては極く普通にみられる態様である。
してみると、前記共通点は、何れも本件登録意匠独自の特徴としてさほど大きく評価することができず、相関連した効果を考慮したとしても、前記共通点のみで類否が決定付けられるまでには至らないというべきである。
なお請求人は、本件登録意匠の開口縁に周縁が設けられている点について、この周縁が、単に装飾的機能にとどまらず、色付け等によりあたかも本物の食器を落とし込んだような凹部形状を表すよう形造られているもので、この点でイ号意匠は本件登録意匠の創作的要素をそのまま備えている、と主張する。
しかしながら、本件登録意匠は、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、形状に係る意匠であって、模様や色彩を含むものでなく、また願書に色付け等に言及した記載もなされておらず、願書及び願書に添付された図面の記載に基づく限りでは、開口縁に凸状に低く隆起する周縁が設けられているに止まり、形状に関する限り、前掲の従来事例に対してとりわけ強く本物の食器を印象付けるように形造られているとはいえない。
一方、差異点につき、(イ)の点について、本件登録意匠のものは、確かに請求人の主張するとおり、略正方形の一方の対角(左前角と右後角)を円弧状に大きく丸み付けたもので、円形に近いといえなくもないが、両意匠の食品用凹部の配列自体は、上面手前に稍大きい横長方形状の凹部を配してその余の逆L字状の部分に惣菜用凹部を並べたという、この種の物品において極く普通にみられる配列態様である(乙第1号証意匠のみならず、同カタログの「はるか副食シリーズ」、或いは前掲した、意匠登録第645211号、同785573号、同668084号等の意匠にもみられるとおりである。)ことを考慮すると、各食品用凹部それ自体の形状も、類否判断に大きな影響を及ぼすとせざるを得ず、そして両意匠の後方右端の凹部については、本件登録意匠のものが略正方形の一方の対角を円弧状に大きく丸み付け、他方の対角をそのまま先尖り状に残したもので、乙第1号証意匠に照らせば、この形状が本件登録意匠の独自の特徴をよく表すところに係わり、この点についてイ号意匠は全体が真円状であり、その差異は類否判断に大きな影響を及ぼすとせざるを得ない。そして(ロ)の点は、両意匠のものとも、従来より普通にみられるものであるとしても、食品用凹部の配列自体に格別特徴の認められない両意匠にあっては、その形状の差異は看者の視覚を捉え、類否判断に一定の影響を及ぼすとせざるをえず、そして両意匠については他に(ハ)の差異も認められ、即ち、これら両意匠の差異は、いずれも、本件登録意匠が乙第1号証意匠に対して備える独自の形態、或いは形態上の特徴を表すところに係わるものであるから、類否判断において一定の評価をせざるを得ず、そうしてこれらの差異を総合すれば、差異点は共通点を越えて両意匠を別異のものに特徴付けているというほかなく、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとはいえない。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-07-15 
出願番号 意願平9-58125 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (F4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 太一 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 1998-12-04 
登録番号 意匠登録第1032315号(D1032315) 
代理人 武田 賢市 
代理人 武田 明広 
代理人 永田 良昭 

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