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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする E3
管理番号 1064549 
審判番号 無効2000-35197
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-04-12 
確定日 2002-08-08 
意匠に係る物品 メガホン 
事件の表示 上記当事者間の登録第0955082号「メガホン」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第0955082号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申し立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求める、と申し立て、その理由として審判請求書及び弁駁書を提出し、以下に要点として摘記するように主張し、立証として甲第1号証ないし甲第15号証、及び参考資料No.1ないしNo.3を提出した。
1.意匠登録無効の理由の要点
登録第955082号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、甲第1〜5号証及び甲第6〜15号証に記載された意匠と同一であり、または少なくとも類似するものであり、意匠法第3条第1項第2号または少なくとも同第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであって、意匠法第48条第1項第1号により無効とすべきである。
2.利害関係について
本件審判請求人シャープ産業株式会社は、甲第9号証及び甲第10号証に示す同社の通販用カタログに記載のとおり、野球等応援用の各種メガホンをはじめとするスポーツ応援用具の製造販売を行っている法人であり、本件登録意匠の有効性の有無について緊急かつ重大な利害関係を有するものである。
3.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成6年(1994)4月25日に出願し、平成8年(1996)3月12日に設定登録されたもので、その構成態様は、次のとおりである。
(1)基本的構成
A.横断面円形のメガホンを中心位置で軸線方 向に2分割した2つの対称な分割半体からなり、
B.両分割半体は、拡声部と歌口部との間のくびれ状境界部において、互いに逆向きく字状に屈折され、この屈折部の対向部が互いに枢着され、拡声部を合わせた状態において両歌口部がV字状に開いた状態を呈するものとなされている。
C.両分割半体の対向面には、中間仕切壁が設けられると共に、該中間隔壁は拡声部において中窪み状に陥没した凹陥部が設けられている。
(2)具体的構成
D.各分割半体の拡声部の径大側先端部外面には、4条の線状膨出リブが周方向に平行状に設けられている。
E.また拡声部の径小側基端部外面、及び歌口部の外面には多数条の細い線条膨出リブがいずれも周方向に平行にローレット状に設けられている。
F.更に、拡声部の両側縁部外面には、3条の細い直線状の膨出リブがメガホンの軸線方向に平行に設けられている。
G.中間隔壁の拡声部側先端縁には、内方に浅く段状に退入した段状切欠部に形成されると共に、歌口部側端縁は、内方に深く切欠かれたU字状切欠部に形成されている。
4.証拠の説明
(1)甲第1〜5号証
いずれの甲号証も、本件登録意匠の出願前に発行されたミズノ株式会社の商品カタログであり、それぞれの発行月及びカタログ名称は異なるものである。
(2)甲第6〜15号証
いずれの甲号証も本件登録意匠の出願前の国内頒布に係る刊行物である。
5.本件登録意匠と証拠の意匠との対比
(1)甲第1号証の意匠との対比
本件登録意匠の基本的構成A〜Cは、各甲号証の基本的構成と一致する。
また、本件登録意匠の具体的構成D〜Gに対し、各甲号証は、Eの点では一致するが、D、F、Gの点で下記の差異を有する。
(イ)Dの線状膨出リブの本数において、各甲号証はその具体的本数が不明である。
(ロ)Fの直線状の膨出リブにおいて、各甲号証は、その有無が不明である。
(ハ)Gの中間隔壁の拡声部側先端縁が浅く段状切欠部に形成されているのに対して、各甲号証は、円弧状円周部と同一平面において一直線状に形成されている。
しかしながら、上記の異同不明点、及び差異点は、いずれも意匠の全体から見て微細な部分についてのそれであり、意匠全体の美感、印象を支配するというような部分の差異ではなく、両意匠の同一性を妨げるようなものではない。
(2)甲第2〜15号証との対比
甲第2〜15号証は、いずれも本件登録意匠の出願前の国内頒布に係る刊行物であり、これらには、甲第1号証と同一構成のメガホンの意匠が記載され、あるいはそれを使用して野球を応援している風景が写真掲載されているものである。
6.本件登録意匠の無効原因についての参考背景事情
本件審判請求人は、野球等スポーツ応援用の各種用品を製造販売するものであるところ、Vメガホンと称される本件登録意匠に係る物品についての基本的な実用新案登録第1896675号(参考資料No.2-1)の実用新案権を、その元権利者板倉弘昌より譲受け、平成7年5月29日付で移転登録した(参考資料No.2-2)。
同時に、本件登録意匠に係る意匠権も譲り受けた(参考資料No.3)。ところが、当事者間の事情により、本件登録意匠について、当該意匠権の移転登録申請を行わないまま、上記参考資料No.3の念書をもって譲渡人との間での権利譲渡事実の確認のみを行っていたところ、本件登録意匠に係る意匠権が現権利者である尾藤雅彦によって平成12年5月20日に差し押さえられ、同12年3月16日付で移転登録がなされた。
被請求人は、本件登録意匠に係る意匠権が移転登録されるやいなや、この事実を奇貨として、権利主張をなし、請求人の営業活動に制限を加えようとする挙に出てきているところである。
第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と答弁し、その理由として以下に要点として摘記するように主張した。
[答弁の理由の要点]
1.利害関係について
審判請求人は、甲第9,10号証としてカタログを提出し、自らが野球応援用の各種メガホン等の製造販売を行う法人たることから、本件審判請求について利害関係があるかの如く主張する。
しかしながら、請求人は単に自らが本件意匠と同種の物品であるところのメガホンを製造販売する者であるという極めて抽象的な主張をするにすぎないものであり、本件審判請求につき客観的、具体的に利害関係を有するとは認め難いものである。
2.証拠について
審判請求人の提出に係る甲1〜15号証は、いずれも単に各頁を個別に複写して提出したものであり、請求人が引用する意匠も本件登録意匠と対比し得る程度に表されているとはいい難く、且つ現実にいつ頒布されたかも不明である。
従って、かかる不確かな証拠に基づきなされた本件登録意匠との対比は、到底認められるものではない。
3.本件登録意匠の無効原因についての参考背景事情について
請求人は、本件意匠権が判決に従って被請求人に譲渡されるや否や、従前の主張を翻して自らの行為により本件意匠が出願前に公知であったと主張し、また突如として自らの配布に係るカタログ(甲第8〜10号証)を含む証拠資料を提出しているのであり、このような状況下で提出された各証拠はいずれも信憑性に欠けるものであり、到底認められるべきものでもない。
第3 請求人の弁駁の要点
1.利害関係について
被請求人は、本件審判請求人が利害関係を有しない旨、主張されるが、そのことを示す証拠はもとより、何らの根拠も示していない。ただやみくもに、「請求人は単に自らが本件意匠と同種の物品であるところのメガホンを製造販売する者であるという極めて抽象的な主張をするにすぎないものであり、本件審判請求につき客観的、具体的に利害関係を有するとは認め難いもの」と主張するにすぎない。
被請求人自身も認められるとおり、甲第10号証に示すとおり、請求人は野球応援用の各種メガホン等の製造販売を行っている法人であり、この一事をもって必要かつ十分に、請求人は本件審判事件に関して利害関係、請求の利益を有するものであることは明らかである。
2.証拠について
被請求人は、請求人の提出に係る甲1〜15号証は、いずれも「不確かな証拠」であり、かかる「不確かな証拠に基づきなされた本件登録意匠との対比は、到底認められるものではない。」旨主張するが、甲第1〜15号証のいずれも、それ自体に発行日、発行者が明示記載された、本件登録意匠出願前頒布に係ることが明白な刊行物である。そしてまた、いずれの甲号証に掲載されたメガホンの写真から、そのを看取し特定しうるものである。
3.参考背景事情について
請求人が「参考背景事情」として述べた事項に対して、被請求人は「事実と全く相違」するものであり、到底認められるものではない旨縷々主張を繰返し、これに関連する証拠として乙第1〜5号証を提出しているが、この事項は、本件審判事件の審理に直接関係しないことから、あえて反論を保留する。
第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成6年(1994)4月25日の意匠登録出願に係り、同8年3月12日に設定の登録がなされた意匠登録第955082号の意匠であって、願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「メガホン」とし、その形態を同添付図面のとおりとしたものである。(別紙第一参照)
2.甲号意匠
請求人が、証拠として提出した甲第1号証乃至甲第15号証意匠のうち、甲第12号証意匠を甲号意匠とする。
甲号意匠は、本件登録意匠の出願前の1991年3月1日に頒布された、株式会社福岡ダイエーホークス発行の雑誌「福岡ダイエーホークス,1991,FAN BOOK」の、 168頁下から2段目中央の12の「ホークスVメガホン」の意匠であって、その形態を、同雑誌の写真版のとおりとしたものである。(別紙第二参照)
3.利害関係について
被請求人は、請求人の本件登録意匠と同種のメガホンを製造販売する者であるという極めて抽象的な主張だけでは利害関係を有するとはならない旨主張をする。しかしながら、これに対し請求人が弁駁するように、甲第9号証及び甲第10号証から請求人は従来より野球応援用の各種メガホン等の製造販売を行っている法人であることは明白であり、しかも、この製造販売している事実自体をもって必要かつ十分に、請求人は本件審判事件に関して利害関係、請求の利益を有する者であることの立証となり得、請求人の主張は何ら抽象的なものではないから、被請求人の主張は採用することができない。
4.両意匠の対比
本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
[共通点]
基本的構成態様(以下、本件登録意匠の正面図を正面視として対比する。)において、全体を、略縦長円錐台状の拡声部の上部に短い倒略円錐台状の歌口部を形成し、その中央位置で左右対称に縦分割した2つの筒状の部材から成り、拡声部側を合わせた状態において歌口部をV字状に拡開している点。
また、その各部の具体的態様について、
(1)正面視、拡声部と歌口部の長さ比を、略4:1とし、その境界のくびれ部において、互いに逆向きく字状に屈折し、この屈折部の対向部が互いに枢着されている点、
(2)拡声部の左右各部材の対向面には、中間仕切壁が設けられている点、
(3)拡声部の下端寄り外周面に、4条の線状リブが周方向に設けられている点、
(4)拡声部の上方寄り外周面、及び歌口部の略全外周面に、多数条の細い線条リブをいずれも周方向に形成している点、
(5)正面視、拡声部外周面の中央縦分割線寄りの左右に、上下に余地を残して3条の細い直線状リブを、メガホンの軸線方向に形成している点、が共通している。
[差異点]
一方、両意匠間の差異点として、主に以下の点が認められる。
拡声部の中間仕切壁において、本件登録意匠は、各部材の略中央から下方に扁平略台形状の凹陥面部が設けられ、また、その中間仕切壁の下端縁に、扁平な略コの字状の切欠部を形成しているのに対して、甲号意匠の写真からはそれらの態様が不明である点。
5.両意匠の類否判断
そこで、上記共通点と差異点が、両意匠の類否の判断に及ぼす影響について検討する。
両意匠に共通する基本的構成態様の点は、両意匠の骨格を形成し、両意匠の大部分を占めるところであり、類否判断の支配的要素というべきである。また、各部の具体的態様の共通点(1)〜(5)は、基本的構成態様の共通点と相俟って、両意匠の類似感を表出しており、その類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
一方、差異点について、甲号意匠においては中間仕切壁の態様が現れていないが、甲第1号証〜甲第5号証に、本件登録意匠の中間仕切壁の態様と実質同様な態様が現されていることから、格別の特異性が認められず、また、それらがメガホンの内方部に係る比較的視認されにくい部位における差異であることを考慮すると、その類否判断に及ぼす影響は微弱なものといわざるを得ない。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においても類似する意匠といわざるを得ない。
6.結び
したがって、本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物に記載された意匠と類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当するものであるにも拘わらず、これに違反して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定により、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2001-11-19 
結審通知日 2001-11-22 
審決日 2001-12-10 
出願番号 意願平6-12005 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (E3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 秋間 哲子 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 西本 幸男
伊藤 晴子
登録日 1996-03-12 
登録番号 意匠登録第955082号(D955082) 
代理人 高田 健市 
代理人 清水 久義 

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