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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) H2
管理番号 1064551 
判定請求番号 判定2002-60006
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2002-10-25 
種別 判定 
判定請求日 2002-01-10 
確定日 2002-08-12 
意匠に係る物品 電源装置 
事件の表示 上記当事者間の登録第1087941号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「電源装置」の意匠は、登録第1087941号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1、請求の趣旨及び理由
請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張した。
(1)本件被請求人は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するイ号意匠に係る電源装置を、製品名称「ZWS50AF」として製造販売している。
(2)本件登録意匠とイ号意匠とを対比すると、本件登録意匠の基本的構成形態において要部となる、横長な矩形のプリント基板に放熱板を2枚に分けて分離配置した構成形態が、イ号意匠と共通し、また、本件登録意匠の具体的構成形態において要部となる、プリント基板の上端に沿って、右側のプリント基板側を屈曲してそこに半導体素子を取り付けた放熱板が配置された点、及びプリント基板の上側ほぼ中央に、両側を上方に折り曲げ中央で段が形成された放熱板が分離配置された点が共通している。
一方、入力側の電子部品が本件登録意匠では1個であるのに対しイ号意匠では2個である点、及び入力側の2個のチョークコイルが本件登録意匠は横に並列されているのに対しイ号意匠では2個の電子部品に対し対角となる位置に横方向及び縦方向に2個のチョークコイルが配置されている点で相違する。
しかし、これらの相違点は、本件登録意匠の要部ではなく、仮に相違が認識できたとしても、本件登録意匠の要部である2枚の放熱板を分離配置したというデザインコンセプトが強く印象に残り、看る者において両者は類似であると強く認識される。
このように、両意匠は、2枚の放熱板を分離配置するという基本的構成形態の要部が共通し、且つプリント基板の上端に沿って、右側のプリント基板側を屈曲してそこに半導体素子を取り付けた放熱板が配置され、プリント基板の上側ほぼ中央に両側を上方に折り曲げ中央で段が形成された放熱板が分離は位置されるという具体的構成形態の要部も共通し、看者である当業者が誤認混同を生ずることが明らかであることから、類似するということができる。
第2、被請求人の答弁の趣旨及び理由
被請求人は、「本件判定請求は成り立たない。イ号意匠は、意匠登録第1087941号及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように述べた。
両意匠は意匠に係る物品が一致し、(1)その基本的構成において、横長な矩形のプリント基板のほぼ中央に主トランスを設置し、この主トランスの左側に入力側の諸部品を配置するとともに右側に出力側の諸部品を配置した点において共通する。
具体的構成においては、
(2)主トランスが箱型で中央寄りに配置されている点、
(3)主トランスを挟んで入力側となる左側において、左端に入力端子が配置され、この入力端子に隣接して矩形の電子部品が配置されている点、
(4)この電子部品に隣接してチョークコイルが配置されている点、
(5)下側のチョークコイルの右側に箱型の昇圧コンデンサと円筒状の昇圧用平滑コンデンサとが横に並設された点、
(6)出力側となる主トランスの右端に出力端子が縦設された点、
(7)主トランスの左側に円筒状の昇圧用平滑コンデンサと横方向に箱型の昇圧用チョークコイルとが配置されている点、
(8)矩形のプリント基板の上端に沿って配置した放熱板の右端部の下端側を屈曲して折り曲げた点、
(9)この放熱板が分離してプリント基板のほぼ中央に配置され、該放熱板が両端部を上側に折り曲げるとともに、ほぼ中央に段差状に形成した点、で共通した形態を備えている。
差異点として、(イ)イ号意匠は、昇圧用チョークコイルが縦方向に配置されているのに対し、本件登録意匠では横方向に配置されている点、
(ロ)プリント基板の中央に配置した放熱板において、イ号意匠では、両端部を垂直に折り曲げるとともに中央部を傾斜状に折り曲げた枠体状であるのに対し、本件登録意匠では、全体として直角に折り曲げられていて斜面部を有していない点、
(ハ)イ号意匠は、放熱板の左端側が直角に折り返しているのに対し、本件登録意匠では、左端側が直角に折り返されずに開放している点、
(ニ)イ号意匠では、プリント基板の上縁及び中央部に分離して配置した放熱板のいずれも黒色に彩色されているが、本件登録意匠では、光沢のある無地の金属素材のままである点、で差異を有している。
本件登録意匠の要部を判断するにあたっては、機能に当然由来する形状は除外して個々の構成部品の具体的態様に基づいて判断すべきであり、そうであるとすると、本件登録意匠とイ号意匠は基本的形態において相当の共通点を有していても放熱板の特徴的差異のゆえに、全体として専門家である当業者に与える印象は別異であって、両者間のい誤認混同のおそれはないといわざるをえない。しかも、本件登録意匠の出願前に既に先行公知意匠からも明らかな通り、本件登録意匠の出願前に、既に放熱板を2枚に分けて分離配置した電源装置が存在し、プリント基板に放熱板を2枚に分けて分離配置する点が格別、斬新な形態であるとも言えず、結局のところ、本件意匠の要部は、放熱板の具体的形態といった部分的に極めて限られた形態にあるといわざるを得ない。しかも、イ号意匠は2枚に分かれた放熱板が何れも黒色に施されているが、本件登録意匠では光沢のある無地の金属素材(白色)のままであるから、その美観の相違は顕著である。
以上のとおり、両者は、意匠の要部に顕著な相違点が認められ、その差異は両意匠の共通点を凌駕するものであって、イ号意匠は本件登録意匠の類似範囲に属さない。
第3、当審の判断
1、本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年(1999)1月11日に意匠登録出願をし、平成12年8月4日に本意匠を登録第1087824号意匠とする関連意匠として意匠権の設定の登録がされた登録第1087941号意匠であり、願書及び願書に添付された図面代用写真に現されたところによれば、意匠に係る物品を「電源装置」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとしたものである。
2、イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付されたイ号意匠図面代用写真並びに説明書によれば、意匠に係る物品を「電源装置」とし、その形態を、別紙第2に示すとおりとしたものである。
3、本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠とを対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が、コンピュータ等の機器に電源を供給するため、機器内部に組み込まれ、交流を直流に変換する「電源装置」であって一致し、その形態について、主として以下の共通点と差異点があるものと認められる(なお、両意匠を、そのプリント基板を底面側に、上面の入力端子を左側に、出力端子を右側に位置する方向に置き直して以下観察する。)。
すなわち、先ず共通点について、
(1)全体が、横長方形のプリント基板の上面に、その後辺に沿って略全幅に正面視略横長方形状の放熱板(以後、「後辺側放熱板」という。)を立設し、その前方略中央に、折曲板状のやや短い放熱板(以後、「前側放熱板」という。)を立設し、上面のその余の右寄りに、主トランスを設置し、その左側に、入力側の回路部品、すなわち入力端子、チョークコイル、昇圧用チョークコイル、昇圧用コンデンサ、電子部品等を配して入力部を形成し、右側には出力側の回路部品、すなわち出力端子、平滑コンデンサ、チョークコイル等を配して出力部を形成し、これらの部品と放熱板とを略同高とした基本的構成態様である点、また、各部の具体的な構成態様において、
(2)プリント基板は、横幅が縦幅の略3倍の横長方形の薄板状である点、
(3)プリント基板の上面の大きさに対する個々の部品(主トランス、入力端子、チョークコイル、昇圧用チョークコイル、昇圧用コンデンサ、電子部品、出力端子、平滑コンデンサ等)の大きさの比率の点、
(4)後辺側放熱板は、高さがプリント基板の縦幅の略5分の2である略横長方形状の下半部に右側にやや広い余地、左側に狭い余地を残して、下端に沿って長短2個の略横長方形状の切り欠きを設けて透孔部を形成し、右側の余白部下端には、略方形板状の延設部を設け、その上面にやや厚い略矩形盤状の半導体素子1個を載置状に取り付け、放熱板の左右下端には、放熱板を立設支持するための小さい略矩形状の取付片を突設している点、
(5)前側放熱板は、プリント基板の前後略中央の左寄りに後辺側放熱板と略平行状に配置立設されているもので、横長方形板を折曲してなり、正面視、その横幅はプリント基板の横幅の略5分の2で、右端を後方に向けて直角に折曲し、左略3分の1は右に比して一段奥まった屈曲部に形成し、右略3分の2の前面に左右に各1個のやや厚い略矩形盤状の半導体素子を取り付けている点、
(6)主トランスは、側面視略方形状の枠体の内側に何層かの板状体を挿入した略箱形状で、上面の前側放熱板の前側右端の斜め前位置に配置されている点、
(7)プリント基板の上面左略5分の1の面には、入力端子を左辺後方寄りに立設し、その余の面に電子部品、2個のチョークコイル等を配置しているもので、入力端子は、厚みの薄い盤体状の上面に多数の棒状の端子を突設した態様、電子部品は直方体形状で、2個のチョークコイルは同形で、横置きの短円筒の外周面にコイルを巻き付けた態様である点、
(8)前側放熱板の前方側には昇圧用コンデンサと昇圧用チョークコイルを並べている点、
(9)昇圧用コンデンサは、径が、プリント基板の縦幅の略3分の1のやや大きい短円柱状で、主トランスの左側に配されている点、
(10)出力端子は、厚みの薄い盤体状の上面に多数の棒状の端子を突設したもので、プリント基板の右辺前方寄りに立設されている点、
(11)主トランスの右側には、チョークコイルとその更に右に2個の短円柱状の平滑コンデンサが縦列で配されている点、
(12)主トランスの後方には小矩形状の素子の列が配されている点、
(13)後辺側放熱板と前側放熱板に囲まれた区画内に、径の異なる大小の円柱状のコンデンサが間隔をあけて配置されている点、が認められる。
次いで、差異点として、各部の具体的な態様において、
(イ)前側放熱板につき、イ号意匠では、両端部を後方に向けて直角に折り曲げるとともに左略3分の1を後方に向けて傾斜状に折り曲げ、その左を横に延ばし左端を後方に向けて直角に折り曲げた枠体状であるのに対し、本件登録意匠では、右端を後方に向けて直角に折り曲げてやや長く延ばし、左略3分の1を後方に向けて直角に折り曲げ、その左を横に延ばし、左端を折り返していない点、
(ロ)入力部に配した電子部品につき、本件登録意匠では1個であるのに対し、イ号意匠では2個である点、
(ハ)入力端子の左側に配した2個のチョークコイルにつき、本件登録意匠は、並列に配しているのに対し、イ号意匠では、対角となる位置に配置している点、
(ニ)昇圧用チョークコイルにつき、イ号意匠は、縦方向に配置されているのに対し、本件登録意匠では横方向に配置されている点、
(ホ)イ号意匠では、放熱板のいずれも暗調子であるのに対して、本件登録意匠では、明調子である点、が認められる。
上記の共通点と差異点につき、イ号意匠が本件登録意匠の範囲に属するか否かの判断に及ぼす影響について以下検討する。
先ず、共通点については、
(1)及び(2)の点については、プリント基板の形状、及びそのプリント基板の上面に配設されている個々の部品である主トランス、入力端子、チョークコイル、昇圧用チョークコイル、昇圧用コンデンサ、電子部品、出力端子、平滑コンデンサ等の個々の形状は、いずれも本件登録意匠の出願前に一般的であって、本件登録意匠のみが有する特徴ではない。
しかし、2枚の放熱板の形状と共に、プリント基板の上面に配置配列している態様は、プリント基板の上面の大きさに対する個々の部品の大きさの比率が略同比率の主トランス、入力端子、チョークコイル、昇圧用チョークコイル、昇圧用コンデンサ、電子部品、出力端子、平滑コンデンサ等であって、それらを略同数同位置に配設している共通点(3)及び(6)乃至(13)、及び放熱板の形状及びその配置配列の共通点(4)乃至(5)とが相俟って、そのほとんどの部品が放熱板の高さと略同じで、また各部品が密接状に配置されていることから略直方体の塊状に纏まった印象をもたらしており、全体の基調を形成しているもので、類似する範囲に属するか否かの判断に与える影響は大きいものである。
(4)及び(5)の点については、後辺側放熱板と前側放熱板の各形状及びその配置態様に関する共通点であるが、被請求人は、この点について、放熱板を2枚に分けて分離配置することは一般的であり、本件登録意匠の放熱板の態様が出願前公知であった旨、乙号証を提出して主張する。
しかし、乙号証に掲載の各図面に表されているところのものは、放熱板が2枚からなるものではあるが、2枚の個々の形状が、本件登録意匠の放熱板とは異なるもので、本件登録意匠の放熱板の形状及び配置態様が出願前公知であった認めるには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
すなわち、フラットな放熱板が間隔をおいて対向配置されている例(乙第1号証)、及びプリント基板の上縁に沿って配置する放熱板とこの放熱板と直交する放熱板とをほぼT字型に分離して配置した例(乙第1号証)、プリント基板の後辺に2枚の放熱板が分離配置されている例(乙第2号証)、プリント基板の後辺とプリント基板の前後のほぼ中央にそれぞれ独立した放熱板が左右に対向するように分離配置されている例(乙第3号証)は認められるが、本件登録意匠の放熱板の個々の形状及びその配置とは大きく異なるものであって、本件登録意匠の放熱板の形状及び配置態様と類似するとまで言える事例は認められず、また、当審の調査によっても、本件登録意匠の放熱板の形状及びその配置態様が、出願前、公知であった事実は発見できず、本件登録意匠の後辺側放熱板と前側放熱板の形状及びその配置態様は、本件登録意匠のみの特徴的態様であると認められ、類似する範囲に属するか否かの判断に与える影響は大きいものである。
次ぎに、差異点について、
(イ)の点は、両意匠の、プリント基板の上面の略同位置に設けた略同大の前側放熱板の左端側における微弱な差異に過ぎず、その前側左に昇圧用チョークコイルを、右に円柱状の昇圧用コンデンサを配設している共通感に埋没する、微弱な差異に過ぎず、
(ロ)(ハ)の各点は、両意匠とも、プリント基板の上面左略4分の1に、略同形同大のチョークコイル2個を略同形同大の入力端子、電子部品等と共に納め配置している共通点に比して、配列における部品の方向性及び数における微弱な差異に過ぎず、
(ニ)の点は、略同位置に設けた同形同大の共通点に埋没する向きの差異であって微弱な差異に過ぎず、
(ホ)の点は、放熱板においては暗調子のものも、明調子のものも極一般的であり、その差異も選択の範囲内のものであって、微弱な差異に過ぎない。
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態についても、両意匠の形態全体の基調を決定づけるところの全体の基本的構成態様及び各部の具体的な構成態様が共通するのに対して、各部の具体的な構成態様における差異点は、いずれも微弱な差異に過ぎず、これらの差異点が相俟って意匠全体に与える影響を考慮したとしても、前記の共通点を凌駕するものとは到底言えない。
したがって、本件登録意匠とイ号意匠とは互いに類似するものというほかなく、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属すると言わざるを得ない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-07-31 
出願番号 意願平11-454 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (H2)
最終処分 成立  
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 鍋田 和宣
西本 幸男
登録日 2000-08-04 
登録番号 意匠登録第1087941号(D1087941) 
代理人 牛木 護 
代理人 小柴 文男 
代理人 竹内 進 

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