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審決分類 |
審判 査定不服 工業上利用 取り消して登録 D2 |
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管理番号 | 1070646 |
審判番号 | 不服2001-16152 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-09-11 |
確定日 | 2003-01-08 |
意匠に係る物品 | 椅子 |
事件の表示 | 意願2000- 29442「椅子」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願の意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする平成12年10月18日の意匠登録出願であり、その意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「椅子」とし、形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものであり、実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である(別紙参照)。 すなわち、その形態は、椅子において、意匠登録を受けようとする部分が略長方形板体状の操作レバー4本に係るものであって、それを、椅子の座部下面直下に設けた左右一対の座部支持杆の片方に付設した奥行きの長い操作レバー取付台に、奥行き方向に一列に等間隔で配したものである。なお、操作レバー取付台前端には、略長方形板体状の操作レバー1本を配した小台を付設しており、その結果、操作レバー5本を奥行き方向に一列に配した椅子となっている。 2.原審の拒絶の理由 これに対して、原審において、「この意匠登録出願の意匠は、添付図面の記載によると座面の下に5本の操作レバーが並列配置されている椅子に係るものであって、この操作レバーの内最前部の1本を除外し、残り4本を意匠登録を受けようとする部分として選択されたものですが、本願意匠の場合、当該部分は5本一組として通常視認され、機能的にも各種の操作をすると言う意味において5本のレバーは一体不可分の関係にあると認められますので、本願の意匠の意匠登録を受けようとする部分は創作としてまとまりある単位とは言い難く、他の椅子の当該部分の形状と対比できない部分の形状を表したものであり、意匠法第2条に定義する意匠を構成しないものと認められます。」とし、本願の意匠は意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとして、拒絶の理由を通知し、その後、「本願意匠のような単位、即ち、操作用レバーという同種の機能を有する部位であって、形態的にも5本一組のまとまりある形態単位として視認される状態になっている部位をさらに細分し、請求部分と請求しない部分との機能的、形態的な意味での分割理由が曖昧なままの単位の部分意匠を認めることは、当該部分意匠の位置、大きさ、範囲の要旨認定に際し、常に同質の形態要素がその周辺に存在することを前提としつつも、その境界意味が不明確なまま判断しなければならないことになり、他の椅子の当該部分の形状との対比が著しく困難となりますので、創作の的確な保護が図られず、結果として、創作者の不利益となる恐れを生じかねません。」として、本願について拒絶をすべき旨の査定をした。 3.請求人の主張 これに対し、請求人は、請求の理由として、要旨以下のとおり主張する。 本願は機能的観点から見れば4本のレバーでも5本のレバーでも機能を満たすものである。また、基本的機能はレバー4本で満たされ、5本目のレバーは付加的な機能のレバーであることから、5本目のレバー形状のみ他の4本とは異なる形状になる場合が考えられる。また、5本目のレバーは配されない場合も考えられる。したがって、本願は、変更要素の多い5本目のレバーを非請求部分とした。 審査官は機能的観点からも形態的観点からも特段の境界を見いだすことができない、と主張するが、本願程度の境界を見いだすことができれば、部分意匠の請求範囲として認められるべきである。 5本のレバーの内、端部の1本を除く4本を請求範囲としていることは図面により明らかであり、境界意味は決して曖昧ではない。また、他の椅子の形状との比較は困難なわけではなく、非請求部分が(この場合1本のレバー)が特定されていないだけであるから、特定されている部分(この場合4本のレバー)について、位置、大きさ、範囲について他の意匠と総合的に比較検討すれば十分に類否判断は行えると思料される。 本願における非請求部分である手前のレバーは、レバーの配置としては5つが連続して設けられているが、設置場所である椅子の座部は、手前レバーのみ別の部品に配されており、この観点から見ても5つのレバーが必ず一体不可分の創作としてまとまりある単位とは言えないものである。 したがって、本願部分意匠としての請求範囲は、意匠法第2条第1項に規定される、視覚を通じて美感を起こさせるものに十分該当するものと思料される。 以上のとおりであるから、本願の意匠は意匠法第3条第1項柱書に該当するとして、意匠登録をすることができないものであるとした原査定は理由がなく不当である。 4.当審の判断 そこで、原審の拒絶の理由の妥当性について検討する。 本願の意匠登録を受けようとする部分に係る4本の操作レバーは、操作レバー取付台に等間隔で配したものであり、各操作レバーが相互に物理的に分離した状態のものである。しかしながら、各操作レバーは、操作レバー取付台に配された一組の操作レバーとして、機能的観点からも、形態的観点からも、相関連して、一体的に創作されたものであると言える。 一方、4本の操作レバーの前方の操作レバーは、操作レバーである点では、4本の操作レバーと共通すると言えるとしても、4本の操作レバーが配された操作レバー取付台とは別部品の小台に付加的に配されたものであることから、4本の操作レバー相互間の関係のように、機能的観点からも、形態的観点からも、4本の操作レバーと相関連して、一体的に創作されるものである、とは必ずしも言えない。 以上によれば、本願の意匠登録を受けようとする部分は、物理的に分離した部分であっても、意匠創作上の一体性を有するものであるから、一意匠として意匠登録を受けることができるものであり、他の意匠との対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されているものであると言え、原審が、本願の意匠の場合、5本の操作レバーは一体不可分の関係にあり、本願の意匠の意匠登録を受けようとする部分は創作としてまとまりある単位とは言い難く、他の椅子の当該部分の形状と対比できない部分の形状を表したものであり、意匠法第2条に定義する意匠を構成しないものであるとした点は、理由がない。 5.むすび したがって、本願の意匠は意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとして本願を拒絶すべきものとした原査定は、当を得ないものであり、取消を免れない。 また、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2002-12-10 |
出願番号 | 意願2000-29442(D2000-29442) |
審決分類 |
D
1
8・
14-
WY
(D2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 行久 |
特許庁審判長 |
遠藤 京子 |
特許庁審判官 |
木村 恭子 伊藤 晴子 |
登録日 | 2003-01-31 |
登録番号 | 意匠登録第1168268号(D1168268) |
代理人 | 日高 一樹 |
代理人 | 渡邉 知子 |