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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない M2
審判 無効  意9条先願 無効としない M2
管理番号 1073448 
審判番号 審判1996-3005
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-03-01 
確定日 2003-02-21 
意匠に係る物品 空調配管用カバ― 
事件の表示 上記当事者間の登録第907619号「空調配管用カバ―」の意匠登録無効審判事件についてされた平成9年12月2日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成10年(行ケ)第22号平成11年4月15日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成3年(1991)10月1日に意匠登録出願され、平成6年(1994)6月21日に設定の登録がなされた意匠登録第907619号の意匠であって、その意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「空調配管用カバー」とし、その形態は、願書の記載及び願書の添附図面に表されたとおりとしたものである(本件審決書に添附の別紙第1参照)。
第2.経緯
本件審判請求人は、平成8年(1996)3月4日に、結論同旨の審決を求めると申し立て、無効理由を次項の(1)、(2)のとおり主張し、甲第1号証、甲第1号証の1ないし甲第1号証の19、甲第2号証を証拠方法とする本件意匠登録の無効の審判を請求し、原審は、平成9年(1997)12月19日付けで、無効理由(2)により、本件意匠登録を無効とすべき旨の審決をした。
本件審判被請求人は、同審決を不服として、平成10年(1998)1月20日に、東京高等裁判所に訴えを提起したところ、同裁判所は、平成11年(1999)4月15日に、原審決を取り消すとの判決を言い渡した。
申立人(本件審判請求人)は、平成11年(1999)4月28日に、同判決を不服として最高裁判所に上告受理を申し立てたが、平成11年(1999)7月14日に、上告受理申立を取り下げたことにより、同判決が確定するに至ったので、当審においてさらに審理を行った。
第3.請求人主張の無効理由
(1)本件登録意匠は、その出願前の昭和60年4月1日に頒布された、意匠登録第647640号公報に記載の意匠(以下、「甲第1号意匠」という。)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号に該当するから、その登録は無効とされるべきである。
(2)本件登録意匠は、その出願前の平成1年8月21日に出願された、意匠登録第647640号の類似第12号の意匠(以下、「引用意匠」という。本件審決書に添附の別紙第2参照)に類似する意匠であり、意匠法第9条第1項に該当するから、その登録は無効とされるべきである。
第4.原審決取消判決の理由の要旨
(1)本体下面の凹溝の形状の差異について
本件登録意匠の筒体は、下辺の中央部分に明確な溝部が形成され、かつ、その溝部の底(審決にいう「内方の突条」)が筒体の下辺とほぼ同一面であるため、いかにも建物等へのねじ止め等が容易であるとの印象を与えるといえる。これに対して、引用意匠の筒体下辺の中央部分には明確な溝部が形成されておらず、その最も低い部分(内方の突条)は筒体の下辺とはかなり離れているため、建物等へのねじ止め等は必ずしも容易でないとの印象を与えるといわざるをえない。
このような印象の差異は、配管を実際に施工する業者等によって見逃されるはずのないものと考えられる。
(2)嵌合部の内部形状の差異について
本件登録意匠の嵌合部がいわば直線によって構成され、しかも、本体と蓋体との噛合い部分に、筒体の厚みあるいはそれ以上の間隙が残されているのに対して、引用意匠の嵌合部がいわば曲線によって構成され、しかも、本体と蓋体との噛合い部分には間隙が全く残されていない点が、両意匠の明確な差異として指摘されるものである。
このような明確な差異は、本体と蓋体との嵌合の難易あるいは確実性に少なからぬ影響を与えることが明らかであるから、配管施工業者等によって決して見逃されるはずのないものである。
(3)審決認定の共通点を含め、両意匠を総合して判断しても、上記の差異点(1)および差異点(2)は、配管施工業者にとって看過しえない重要な態様の差異であると考えられるから、本件登録意匠と引用意匠は非類似の意匠というべきである。
第5.当審の判断
(1)上記判決は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当審を拘束する。
したがって、上記判決の主文及び理由に基づき、本件登録意匠は、意匠法第9条第1項の規定に該当しないから、無効理由(2)によっては、本件意匠登録を無効とすることはできない。
(2)上記のとおりであるから、さらに、無効理由(1)について審理する。
1)甲第1号意匠
甲第1号意匠は、日本国特許庁が昭和60年(1985)4月1日に発行した意匠公報に所載の意匠登録第647640号の意匠であって、その意匠は、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「配管用ダクト」とし、形態は、同公報の記載のとおりとしたものである(本件審決書に添付の別紙第3参照)。
2)本件登録意匠と甲第1号意匠の対比検討
両意匠を、意匠全体として対比検討すると、両意匠の基本的構成態様について、両意匠は、長手方向に連続する断面形状が略「コ」の字状を呈し、長手方向の開口部側面先端部分に嵌合部を設けた稍深めの本体と、稍浅めの蓋体とを上下に嵌着して、断面形状は略正方形状を基本形状とした薄板状の筒体に形成している点で共通しているが、その筒体の各角部について、本件登録意匠は、その各角部を面取り状に表しているのに対し、甲第1号意匠は、隅丸状に表している点に差異があり、また、両意匠の各部の具体的構成態様について、両意匠は、本体下面の凹溝の形状と嵌合部の内部形状に顕著な差異がある。
そうすると、両意匠の各部の具体的構成態様の差異点は、上記の原審決取消判決の理由も勘案すると、看者の注意を十分に引くものであり、その余の差異点と相俟って、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
したがって、本件登録意匠は、甲第1号意匠と意匠に係る物品は共通するが、形態において、上記の差異点は、両意匠に著しい差異感を生じて類否判断を左右するという外ないから、両意匠は、意匠全体として観察すると、類似する意匠とはいえない。
第6.まとめ
請求人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件意匠登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 1997-10-27 
結審通知日 1997-11-14 
審決日 1997-12-02 
出願番号 意願平3-29618 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (M2)
D 1 11・ 4- Y (M2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 芳紀 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 伊勢 孝俊
伊藤 栄子
登録日 1994-06-21 
登録番号 意匠登録第907619号(D907619) 
代理人 瀧野 秀雄 

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