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審決分類 |
審判 無効 意9条先願 無効とする L5 |
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管理番号 | 1073449 |
審判番号 | 無効2002-35195 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-04-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-05-17 |
確定日 | 2003-03-03 |
意匠に係る物品 | 戸車用レール材 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0999086号「戸車用レール材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第0999086号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本件登録意匠 本件登録意匠は、平成7年5月22日に出願(意願平7-14340号)され、平成9年9月5日に意匠権の設定の登録がなされ、平成9年12月18日に意匠公報が発行された意匠登録第999086号意匠であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「戸車用レール材」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。 2.請求人の主張 これに対し、請求人は、「意匠登録第999086号の登録を無効とする、との審決を求める」と申し立て、その理由として、本件登録意匠は、その出願日前の平成6年5月2日に特許出願(特願平6-93560号)され、その後、平成13年7月4日に意匠登録出願に変更されて、平成13年8月17日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1123280号「引戸用レール」の意匠(以下、甲第1号証意匠という、別紙2参照)に類似するので、意匠法第9条第1項の規定に反して登録されたものである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証を提出している。 請求人の主張は概ね次のとおりである。 (1)両意匠は、中央に断面略U字状の溝を有し、ウイング状の鍔を左右外方へ突出させ、鍔の上面側の内側端部付近の位置から中央の溝内方へ向けた傾斜面を経て僅かな垂直面を形成した突出部を形成している点が共通する。 (2)溝内方への突出部の下端面について、本件登録意匠は、僅かな垂直面から直角に下端面を形成しているのに対し、甲第1号証意匠においては、僅かな垂直面から斜め下方へ傾斜状の下端面を形成している点が相違する。 (3)上記(1)の共通点の印象の方が、はるかに(2)の相違を凌駕し、看者にレールの意匠としての類似性を強く印象づけているものである。 よって、本件登録意匠は、甲第1号証意匠と類似するものである。 [証拠方法] 甲第1号証「登録第1123280号意匠公報」 3.被請求人の主張 一方、被請求人は、平成14年6月28日付で答弁書を提出し、両意匠の大きな相違点は傾斜面の角度の違いであって、それが意匠の類否を左右するものであることから、本件登録意匠と甲第1号証意匠のは非類似である旨主張し、証拠方法として、乙第1号証の1〜3を提出している。 4.当審の判断 4.1 甲第1号証意匠 甲第1号証意匠は、本件登録意匠の出願日前の平成6年5月2日に出願された特許出願(特願平6-93560号)を平成13年7月4日に意匠登録出願(意願2001-12576号)に変更し、平成13年8月17日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1123280号「引戸用レール」の意匠であって、原特許出願の願書の添付図面中、図3に記載されていた引戸用レールの意匠であると認められる。 4.2 対比 本件登録意匠と甲第1号証意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。 [共通点] (1)断面視左右対称形の溝形鋼状レールであって、溝の側壁上端部に外方に突出するウイング状の鍔を形成するとともに、開口部に小幅なリップ状迫り出し部を形成し、該迫り出し部の上面に傾斜する戸車転動面を形成した全体の基本構成。 (2)鍔上面の中央部を平坦面とし、外縁部に面取りを施している点。 (3)リップ状迫り出し部の先端に小幅な垂直面を形成している点。 [相違点] (1)戸車転動面の傾斜角について、本件登録意匠においては、比較的急傾斜であるのに対し、甲第1号証意匠においては、比較的緩やかな傾斜である点。 (2)リップ状迫り出し部の下面の態様について、本件登録意匠においては水平面であるのに対し、甲第1号証意匠においては傾斜面である点。 (3)鍔外縁部の面取りの態様について、本件登録意匠においては平面状であるのに対し、甲第1号証意匠においては丸面である点。 (4)レール底部両隅の面取りの態様について、本件登録意匠においては猿頬面状であるのに対し、甲第1号証意匠においては丸面状である点。 (5)全体的な寸法比率について、本件登録意匠においては、全幅が全高の略1.7倍程度であるのに対し、甲第1号証意匠においては、全高が全幅の略1.9倍程度である点。 4.3 判断 上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す全体の基本構成は、意匠全体の骨格を成すものであるとともに、両意匠の基調を形成するもであり、これに共通点(2)に示す鍔上面の態様と共通点(3)に示すリップ状迫り出し部先端の態様が加味されて、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。 これに対し、相違点(1)の戸車転動面の傾斜角における差異については、それが数量的に僅かなものであるため、視覚効果における差異も微弱であり、相違点(2)のリップ状迫り出し部の下面の態様における差異についても、隠れた部位における目立たない差異であって、いずれの差異も共通点(1)及び(3)に示すリップ状迫り出し部の形態における共通性、すなわち、上面に戸車転動面を形成し、先端に小幅な垂直面を形成した共通性を凌ぐものではない。 次に、相違点(3)の鍔外縁部の面取り及び、相違点(4)のレール底部両隅の面取りの態様における差異については、当該各部位における本件登録意匠の面取りの態様が部材の縁部或いは出隅部等におけるありふれた平面状の面取りであって、本件登録意匠を特徴付けるものとは成し得ないものであり、同じくありふれた態様である甲第1号証意匠の平面状の面取りとの見かけ上の差異も僅かであるため、その差異は、共通点(1)に示す全体の基本構成における共通性を凌ぐものではない。 また、相違点(5)の全体的な寸法比率における差異については、それが僅かであるため、両意匠の全体的な基調に影響を及ぼすものではない。 さらに、これらの相違点に係る態様が相俟って表出する効果を勘案しても、前記各共通点から惹起される両意匠の圧倒的な類似性を凌ぐ視覚効果を認めることはできない。 すなわち、本件登録意匠は甲第1号証意匠に類似するものと認められる。 5.むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第9条第1項の規定に違反して登録を受けたものであるから、同法第48条第1項第1号に該当する。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2002-12-26 |
結審通知日 | 2003-01-07 |
審決日 | 2003-01-21 |
出願番号 | 意願平7-14340 |
審決分類 |
D
1
11・
4-
Z
(L5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 須田 紳 |
特許庁審判長 |
藤木 和雄 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 岩井 芳紀 |
登録日 | 1997-09-05 |
登録番号 | 意匠登録第999086号(D999086) |
代理人 | 稲岡 耕作 |
代理人 | 川崎 実夫 |
代理人 | 亀井 弘勝 |