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審決分類 審判 無効  意9条先願 無効とする L5
管理番号 1075064 
審判番号 無効2002-35228
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-05-31 
確定日 2003-03-14 
意匠に係る物品 戸車用レール材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1033284号「戸車用レール材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1033284号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯及び本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年7月7日に出願(意願平9-60913号)され、平成10年12月18日に意匠権の設定の登録がなされ、平成11年3月2日に意匠公報が発行された意匠登録第1033284号意匠であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「戸車用レール材」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。
2.請求人の主張
これに対し、請求人は、「意匠登録第1033284号の登録を無効とする、との審決を求める」と申し立て、その理由として、本件登録意匠は、その出願日前の平成6年5月2日に特許出願(特願平6-93560号)され、その後、平成13年7月4日に意匠登録出願に変更されて、平成13年8月17日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1123280号「引戸用レール」の意匠(以下、甲第1号証意匠という、別紙2参照)に類似するので、意匠法第9条第1項の規定に反して登録されたものである旨主張し、証拠方法として、甲第1〜3号証を提出している。
請求人の主張は概ね次のとおりである。
(1)両意匠は、中央に断面略U字状の溝を有し、ウイング状の鍔を左右外方へ突出させ、鍔の上面側の内側端部付近の位置から中央の溝内方へ向けた傾斜面を経て僅かな垂直面を形成した突出部を形成している点が共通する。
(2)溝内方への突出部の垂直面について、本件登録意匠は長いのに対し、甲第1号証意匠は短く、さらに、本件登録意匠の側壁に形成されている2つの突条が甲第1号証意匠には存在しない点が相違する。
(3)上記(1)の共通性が、(2)の垂直面の長短の相違や、小さな突条の有無による相違を凌駕し、看者にレールの意匠としての類似性を強く印象づけているものである。 よって、本件登録意匠は、甲第1号証意匠と類似するものである。
[証拠方法]
甲第1号証 意匠登録第1123280号公報
甲第2号証 意匠登録第930663号公報
甲第3号証 意匠登録第930663号の類似4の公報
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、平成14年7月19日付で答弁書を提出し、両意匠の大きな相違点は側壁に間隔をあけて2つの小さな突条を形成している点にあるのであって、この突条の有無が意匠の類否を左右する大きな要素であるから、本件登録意匠と甲第1号証意匠のは非類似である旨主張し、証拠方法として、乙第1〜3号証を提出している。
4.当審の判断
4.1 甲第1号証意匠
甲第1号証意匠は、本件登録意匠の出願日前の平成6年5月2日に出願された特許出願(特願平6-93560号)を平成13年7月4日に意匠登録出願(意願2001-12576号)に変更し、平成13年8月17日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1123280号「引戸用レール」の意匠であって、原特許出願の願書の添付図面中、図3に記載されていた引戸用レールの意匠であると認められる。
4.2 対比
本件登録意匠と甲第1号証意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)断面視左右対称形の溝形鋼状レールであって、溝の側壁上端部に外方に突出するウイング状の鍔を形成するとともに、開口部に小幅なリップ状迫り出し部を形成し、該迫り出し部の上面に傾斜する戸車転動面を形成した全体の基本構成。
(2)鍔上面の中央部を平坦面とし、外縁部に面取りを施している点。
(3)リップ状迫り出し部の態様について、上面(戸車転動面)と下面が先端に向かって断面視楔状に漸次接近し、先端に小幅な垂直面を形成している点。
[相違点]
(1)レールの外側壁における抜け止めの有無について、本件登録意匠においては、該部位に断面視矩形状乃至蒲鉾状の2本の突条から成る抜け止めを形成しているのに対し、甲第1号証意匠においては、該部位に抜け止めを設けていない点。
(2)リップ状迫り出し部の態様について、本件登録意匠においては、迫り出し幅を比較的小さくして、先端の垂直面の幅を比較的大きくしているのに対し、甲第1号証意匠においては、迫り出し幅を比較的大きくして、先端の垂直面の幅を比較的小さくしている点。
(3)全体的な肉厚について、本件登録意匠においては、底部の肉厚を側壁よりも僅かに厚くしているのに対し、甲第1号証意匠においては、底部の肉厚を側壁よりも僅かに薄くしている点。
4.3 判断
上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す全体の基本構成は、意匠全体の骨格を成すものであるとともに、両意匠の基調を形成するもであり、これに共通点(2)に示す鍔上面の態様と共通点(3)に示すリップ状迫り出し部先端の態様が加味されて、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。
これに対し、相違点(1)の抜け止めの有無の差異については、本件登録意匠の抜け止めの態様がその出願前に既に公然知られたもの(別紙3参照)であって、本件登録意匠を特徴付けるものとは成し得ないものであるとともに、全体的に見れば極小部分に係る差異であるため、その有無の差異は、両意匠の類否を左右するものとは成し得ないものである。
つぎに、相違点(2)のリップ状迫り出し部の態様における差異については、それが迫り出し幅の程度に帰着する僅かなものであって、共通点(3)に示す該部の形態的共通性を凌ぐものではなく、全体的に見た場合においても、その差異は共通する両意匠の基調に影響を及ぼすものではない。
また、相違点(3)の全体的な肉厚における差異についても、その差異は僅かであり、両意匠の基調に影響を及ぼすものではない。
さらに、これらの相違点に係る態様が相俟って表出する効果を勘案しても、前記各共通点から惹起される両意匠の圧倒的な類似性を凌ぐ視覚効果を認めることはできない。
すなわち、本件登録意匠は甲第1号証意匠に類似するものと認められる。
5.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第9条第1項の規定に違反して登録を受けたものであるから、同法第48条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-01-08 
結審通知日 2003-01-14 
審決日 2003-01-30 
出願番号 意願平9-60913 
審決分類 D 1 11・ 4- Z (L5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 江塚 尚弘
岩井 芳紀
登録日 1998-12-18 
登録番号 意匠登録第1033284号(D1033284) 
代理人 亀井 弘勝 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 川崎 実夫 

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