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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) F2
管理番号 1078142 
判定請求番号 判定2003-60002
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-07-25 
種別 判定 
判定請求日 2002-12-27 
確定日 2003-05-30 
意匠に係る物品 マグネットホルダー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1126548号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真並びにその説明書に示す「マグネットホルダー」の意匠は、登録第1126548号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号写真並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1126548号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の範囲に属するとの判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。
本件登録意匠の創作ポイントは、ホルダー本体の裏面の両側に小型のマグネットを設けることを前提としながら、ホルダー本体の裏面側長手方向に直線状の面取り部を形成することにより、容易にホルダーを掲示体から離脱できるように創作した点であり、ホルダー本体の裏面側長手方向に形成された直線状の面取り部は、看者の注意を特に惹く部分である。
ホルダー本体が横長の略長方形状で透明な薄板状の板状体からなり、その裏面の左右両側近傍部分ほぼ対称位置にマグネットを埋め込んでなる構成態様を基調とし、しかもこの態様にホルダー本体裏面の長手方向に沿って直線状の面取り部を形成してなる構成態様は、甲第4号証の意匠マップにあげた公知意匠の中には全く存在しないことから、この種意匠の分野では極めて斬新で特徴あるものと評価でき、本件登録意匠は、基本的構成態様を基調とした上記面取り部の構成態様に創作性があり、かつ看者の注意を喚起せしめる部分であることは明らかで、これが意匠の要部である。
そこで、本件登録意匠とイ号意匠とを対比し、両意匠の類否判断について検討する。
ホルダー本体が透明であることを基調とし、かつ、ホルダー本体が四隅を丸みのある横長の略長方形状の薄板状の板状体からなり、その裏面の左右両側近傍部分ほぼ対称位置に短円柱状のマグネットを埋め込んでなる基本的構成態様の共通点1は、形態全体の骨格をなすものであり、意匠の類否判断に重要な影響を及ぼす。ホルダー本体の裏面長手方向に直線状の面取り部を形成してなる共通点2は、看者の注意を喚起せしめる部分である以上、類否判断を左右する重要な要素である。ホルダー本体の表面側において、裏面側のマグネットに対応する部分にマグネットの径と同一の円形状部が表れてなる共通点3は、看者をして目玉の如くの共通した印象をもたらす要因になることから、類否判断に影響を与える。左右両側のマグネットの中心間の距離及びマグネットの径の大きさに関する共通点4は、ホルダー本体裏面全体に対するマグネットの露出面が小さいという共通した印象を看者に与え、類否判断を左右するものである。
ホルダー本体について、本件登録意匠が下辺部を円弧状に形成し、正面視左右両辺がほぼ垂直状であるのに対し、イ号意匠は逆に上辺中央部分を膨出して本件登録意匠よりもカーブの程度の大きい円弧状に形成し、左右両辺が外方に傾斜してなる差異点1は、本件登録意匠はイ号意匠と同様に円弧状の下辺が上側に位置するように使用することも適宜可能であり、また、透明性故にホルダー本体の輪郭が目立つはずもなく、ホルダー本体の輪郭が特に看者の注意を喚起するとは考えられないため、類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。ホルダー本体の裏面において、上下端部に沿って面取り部を形成したか上端部分のみを半透明な面取り部としたかの差異点2は、面取り部の個数の差異に過ぎず、面取り部がホルダー本体長手方向に直線状に形成してなる点で共通していることからすれば、共通点よりも看者の注意を惹くとは考えられず、また、ホルダー本体全体が透明であるため、イ号意匠の面取り部が半透明であること自体、特別他の部分に比べて目立つとはいえず、差異点2も微弱なものである。ホルダー本体の表面において、マグネットに対応する部分を、凹部としラベルを貼付したかエンボス加工して半透明状とし、この部分を通じてマグネットの裏面が円形状部として表れるかの差異点3は、円形状部がラベルか半透明状部を通じてマグネットの裏面が表れるかの違いであり、円形状部の形状、不透明性及び形成部位が一致しているため、一致点よりも看者の注意を惹くことはあり得ず、類否判断に影響を及ぼさない。マグネットのホルダー裏面全体に占める比率についての差異点4は、比率の改変に過ぎず、いずれもホルダー本体裏面に対しマグネットの露出面が小さいという共通の印象をもたらすことを前提としている以上、類否判断に与える影響は微細なものである。
以上により、両意匠の共通点は両意匠の類否判断に重大な影響を及ぼし、かつ看者に共通の審美感を与えるものであるのに対し、差異点はいずれも意匠全体からみれば微細な部分的なものに止まるため、差異点が共通点を凌駕することはあり得ず、意匠全体として、イ号意匠は本件登録意匠に類似する。よって、イ号意匠は本件登録意匠の範囲に属する。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、イ号意匠は、登録第1126548号意匠の範囲に属さないとの判定を求める、と答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張した。
イ号意匠は全体形状をこの種マグネットホルダーの形状としては極めて斬新な上縁部分の円弧状膨出部分と両側部の内方向への傾斜が印象的な櫛形状としてなるものである。また裏面部の上方には円弧状膨出形状の大径な面取り部が形成され、しかもこの面取り部は磨りガラス状の半透明加工が施され、裏面からは勿論のこと正面からも明確に視認できるものであり、透明体の逆台形状横長長方体の組み合わせと相俟ってこれまた看者の目をひく極めて印象的な意匠部分である。これに対し下縁部にゆるやかな膨らみを有するものの横長長方形体を基調としてなることが明らかな、透明体からなる単なる横長長方形状の本件登録意匠の全体形状及び上下方双方に形状及び幅径の異なる面取り部が明確に表されてなり、この面取り部は半透明加工等は施されていないことと相俟って正面方向から充分に視認することができないものである本件登録意匠の面取り部は、イ号意匠の全体形状及び面取り部とは全く異なる意匠に係るものである。また、請求人はマグネット及びマグネット対応部分に関しことさらに両意匠が共通すると詳述するが、正面における大径の円形ラベルの有無等に起因して当該部分においても両意匠は明確に異なる。
以上述べたように、意匠の類否判断に影響を与える最も看者の目をひきやすい重要な部分においては勿論のこと、全体的美感において両意匠は明確に異なることから双方異別の美感を呈し、両意匠は非類似の意匠であることは明白である。
第3.当審の判断
1.本件の請求の趣旨
請求人は、判定請求書の請求の趣旨の項において、イ号写真並びにその説明書に示す意匠は、登録第1126548号意匠の範囲に属するとの判定を求める、と申し立てているが、判定請求書の請求の趣旨の項及び請求の理由の項において請求人の述べるところによれば、本件の請求の趣旨は、イ号写真並びにその説明書に示す意匠は、登録第1126548号及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める、であると認められる。
2.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書及び願書に添付の図面の記載によれば、平成9年5月23日に意匠登録出願をし、平成13年9月28日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1126548号意匠であり、意匠に係る物品を「マグネットホルダー」とし、その形態を、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。
3.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付の、イ号写真並びにその説明書により示されたものであり、意匠に係る物品が「マグネットホルダー」と認められ、その形態を、イ号写真に現されたとおりとするものである(別紙第2参照)。
4.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、(1)ホルダー本体を、正面視隅丸横長の厚みのある板状体としている点、(2)ホルダー本体背面側において、長辺に沿って略全長にわたり、垂直面とした吸着面部に対して鈍角で交わる切り欠き状の傾斜面部を形成している点、(3)ホルダー本体背面側において、左右端近傍の左右対称位置にマグネットを埋め込んで、背面視円形状のマグネット露出部一対を配設している点、(4)ホルダー本体正面側において、背面側のマグネット露出部に対応する部分がマグネット露出部と略同径同形状の円形状に表れている点、(5)マグネット露出部は、傾斜面部内方に位置し、その径がホルダー本体高さ(上下幅)の半分以下程度の小型のものとしている点、(6)ホルダー本体を透明としている点、がある。
一方、差異点として、(イ)ホルダー本体の形状につき、正面視で、本件登録意匠は、上辺が水平状、下辺が僅かに膨出した円弧状で左右端辺が略垂直状の略長方形状としているのに対して、イ号意匠は、上辺が大きく膨出した円弧状、下辺が水平状で、左右端辺が内下方に向かって傾斜状の、末広がりとした略扇上部状形状としている点、(ロ)傾斜面部の形成部位及び形状につき、ホルダー本体背面側において、本件登録意匠は、上下辺沿いに全長にわたり形成し、上下傾斜面部共に背面視細幅帯状に表れるものとしているのに対して、イ号意匠は、上辺沿いのみに左右端付近を除いた全長にわたり形成し、背面視円弧状膨出形状に表れるものとし、その全面に曇りガラス状(半透明)の加工を施している点、これにより、本件登録意匠は、上下逆転使用可能なものであるのに対して、イ号意匠は、傾斜面部を形成した部位を必ず上として使用するものである点、(ハ)ホルダー本体正面側の円形状に表れる部分の態様につき、本件登録意匠は、浅い凹部を形成して円形状のラベルを貼付しているのに対して、イ号意匠は、円形状の区域に曇りガラス状(半透明)の加工を施している点、がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点のうち、(1)の点は、ホルダー本体を正面視隅丸横長の厚みのある板状体とすることは、この種物品分野の棒状タイプの従来態様に照らし、格別のことではなく、この共通点に係る態様自体は、本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、(2)の点については、吸着面部に対して鈍角で交わる傾斜面部を形成して、ホルダーの取り外し、あるいは、書類の差し込みや抜き取りが容易な態様とすることは、例示するまでもなくこの種物品分野においてありふれた造形手法であり、その上、傾斜面部をホルダー本体の長辺沿いに形成したものも従前に見られることから(例えば、実開平2-111582号公報の第3図及び第4図の傾斜面部。別紙第3)、この共通点に係る態様自体は、本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、(3)の点については、横長のホルダー本体背面側において、左右端、あるいはその近傍の左右対称位置にマグネット露出部一対を配設した態様が従前に見られ(例えば、(A)実用新案登録第3036865号公報の図1ないし図4、及び、(B)実用新案登録第3013272号公報の図4のマグネット露出部の配設態様。別紙第4及び別紙第5)、また、マグネット露出部を背面視円形状とした態様についても、この種物品分野において円形状のマグネットを採用することはありふれたことであることを勘案すると、格別のことではなく、この共通点に係る態様自体は、本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、(4)の点については、透明なホルダー本体背面側に背面視円形状のマグネット露出部を配設したことに起因する態様に過ぎず、この共通点に係る態様自体は、本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、(5)及び(6)の点については、ホルダー本体全体を透明とし、マグネット露出部をホルダー本体より小さな面積のものとして、透明なホルダー本体を通して書類の文字等の読み取り可能な態様とすることは、従前に見られ(例えば、(A)及び(B)の公報。)、また、マグネット露出部を従前のものより小型のものとすることも、小型でも強力なマグネットの出現に起因しており、前記の透明なホルダー本体を通して書類の文字等の読み取り可能な態様とする造形目的を前提として、ホルダー全体における透明区域を広げたに過ぎず、これらの共通点に係る態様自体は、本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、そして、いずれも、それ自体は本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではない、これら共通点に係る態様のみが組み合わさったとしても、当業者であれば組み合わせることに格別の創意は要さず、共通点に係る態様のみの組み合わせ態様をもって、本件登録意匠の特徴を成し形態上の基調を形成するところと直ちに決することはできない。
一方、差異点については、(イ)の差異点に係る、本件登録意匠のホルダー本体の形状につき正面視略長方形状とした態様自体は、長方形状自体がありふれた形状に過ぎないことから本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、(ロ)の差異点に係る、本件登録意匠の上下逆転使用可能なものとした点は、この種物品分野の棒状タイプの従来態様に照らし、格別のことではなく、そうすると、本件登録意匠の傾斜面部の形成部位をホルダー本体背面側において上下辺沿い全長にわたる部分とした態様自体は、本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、(ハ)の差異点に係る、本件登録意匠のホルダー本体正面側の円形状に表れる部分の態様を、浅い凹部を形成して円形状のラベルを貼付したものとした点は、マグネットを隠すために装飾体をホルダー本体、あるいは、マグネットに装着した態様が従前に見られること(例えば、(A)の公報。)、及び、マグネット露出部に対応する表面側の部分に凹部を形成してマグネット露出部と略同形同大の表面とした装飾体を嵌合した態様が先行意匠に見られること(例えば、実用新案登録第3038769号公報の図1及び図2の装飾体嵌合態様。別紙第6)を総合して判断すると、これ自体は、本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、そうすると、本件登録意匠の特徴を成し形態上の基調を形成するところは、共通点及び差異点に係る各態様がいずれもそれ自体は本件登録意匠のみの特徴といえるほどのものではないことから、結局、各共通点に係る態様にさらに各差異点に係る態様が相関連して組み合わさった具体的な組み合わせ態様のまとまりにあるといえる。
以上によれば、イ号意匠は、本件登録意匠の特徴を成し形態上の基調を形成するところの態様の一部において共通するものであり、一方、(イ)のホルダー本体の形状についての差異点は、ホルダーの使用時において正面側から俯瞰した際に看者に顕著に看取される形態上の主要な部分の態様に係り、形態上の基調の形成に大きく関わるところであって、この差異点に係るイ号意匠のホルダー本体を正面視略扇上部状形状とした態様は、本件登録意匠のホルダー本体の形状につき下辺を僅かに膨出した円弧状とはするものの、長方形状を印象付ける態様とは印象が大きく異なり、その上、イ号意匠のこの態様は、(ロ)の差異点に係る傾斜面部の形成部位をホルダー本体背面側において上辺沿い部分のみとした態様と相俟って、傾斜面部を形成した部位を必ず上として使用するものとした点を看者に強く印象付ける効果を発揮しており、したがって、イ号意匠の(イ)及び(ロ)の差異点に係る態様は、相俟ってイ号意匠の特徴をよく表すところとなっており、イ号意匠は本件登録意匠とは別異のものであると看者に印象付けるに十分なものであり、さらに、(ハ)のホルダー本体正面側の円形状に表れる部分の態様についての差異点は、マグネットを隠すという造形目的が同じではあるものの、イ号意匠の曇りガラス状(半透明)の加工を施した態様と、本件登録意匠のラベルを貼付してマグネットを埋め込んだ部位を強調した態様とはやや印象が異なり、両意匠は別異のものであるとの印象を補強する効果を発揮しており、そうすると、各差異点は、相俟って両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。
したがって、両意匠の形態についての共通点は、前記のとおり、本件登録意匠の特徴を成し形態上の基調を形成するところの態様の一部であるのに対して、差異点は、相俟って両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであって、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとはいえない。
5.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-05-20 
出願番号 意願平9-55484 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (F2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 芳孝清野 貴雄 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 伊藤 晴子
渡邊 久美
登録日 2001-09-28 
登録番号 意匠登録第1126548号(D1126548) 
代理人 田辺 敏郎 
代理人 大中 実 
代理人 藤本 昇 
代理人 鈴木 活人 
代理人 薬丸 誠一 
代理人 岩田 徳哉 
代理人 中谷 寛昭 
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