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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立不成立) L2
管理番号 1078146 
判定請求番号 判定2002-60021
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-07-25 
種別 判定 
判定請求日 2002-02-15 
確定日 2003-03-27 
意匠に係る物品 マンホール蓋用受枠 
事件の表示 上記当事者間の登録第1084158号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「マンホール蓋用受枠」の意匠は、登録第1084158号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
1.請求人は、イ号図面に示す意匠(以下、「イ号意匠」という)は、登録第1084158号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証の1ないし第2号証の4を提出した。
2.意匠登録第1084158号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)とイ号意匠との比較説明
(1)両意匠の共通点
両意匠は、その物品「マンホール蓋用受枠」において同一である。形態については、平面から観察した場合において円環状に観取されるものであること、中央寄りで起立する受枠本体部と受枠本体部の下部にあって外向きに張出すフランジ部を備えていること、フランジ部には円周方向等間隔に全12個のアンカー穴が形成されていること、隣り合うアンカー穴の中間位置にリブが形成されていること、において共通する。
(2)両意匠の差異点
両意匠は、その形態において、受枠本体部の上面における凹部の具体的な形態で差異点を有する。
3.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない理由の説明
(1)本件登録意匠の要部
周辺意匠(甲号証)をもとに、本件登録意匠の創作の要点について述べれば、この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、受枠本体部の上面構成にあるということができる。
さらに、この種物品は、道路等への施工後は平面からのみ観取されるものである。その平面形状における差異は、他のどの差異よりも当業者に重要視されるものである。
また、この種物品は、マンホール蓋を支持することを本旨とするものである。受枠本体部上面の各種模様的要素は、マンホール蓋表面に形成された滑り止め模様等と調和するか否か等、この種物品を扱う当業者にとって重要事項であるということができる。
上記事実にかんがみるならば、本件登録意匠については、受枠本体部上面に密に形成した多数の平行四辺形状の凹部により独自の意匠感を観者に与えるものである。
(2)両意匠の類否の考察
両者において共通する各種形態は、この種物品において半ば不可欠なものであるということができる。つまり、それらの共通点は周辺意匠にも多かれ少なかれ開示されているものであって、両意匠の類否に多大なる影響を与えるほどに顕著な形態ではない。
むしろ、本件登録意匠における創作点は受枠本体部上面形状にあり、そこにある多数の平行四辺形状の凹部をもって意匠の要部となし、その形態の類似性により意匠の類否判断を行うのが相当である。
以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察した場合、両意匠の差異点(全72個の平行四辺形⇔全40個の武田菱)は他の共通点を凌駕するに足りる圧倒的な差異として観者に認識されるものであり、両意匠は観者において明確に区別される非類似意匠であると認められる。
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲には属さないので、請求の趣旨通りの判定を求めるものである。
第2.被請求人の答弁
1.被請求人は、『「イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。」との判定を求める。』と答弁し、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし第4号証を提出した。
2.本件登録意匠の要部について
本件登録意匠の様な形状意匠は構成要件の全てを具備することによりその意匠が成立するものであるが、敢えて特徴となる要部を挙げれば(1)A-A’線断面は立ち上がり部とフランジ部からなる所謂「L字状」である。(2)B-B’線〜E-E’線断面図はA-A’線断面の立ち上がり部を逆U字状の中空としたものである。(3)隣り合うアンカーボルト用孔の中間位置にフランジの外周縁迄達しない大きさの断面直角三角形状のリブが設けられている。(4)受枠本体内周面には、落下防止枠兼折畳梯子取付孔付ステップが菱形模様(凹み形状の)付で一対、ハの字状に設けられている。が考えられる。何故なら、これらの構成要件には他に類を見ないからである。ちなみに受枠本体上面の平行四辺形の連続模様は、甲第2号証の1で既に公知のものであると同時に、登録第794998号(乙第2号証)、同第1034426号(同第3号証)等の存在が要部足り得ない。殊に(4)のステップ形状は本件登録意匠の創作者が試作に試作を重ねた結果、出来上がったもので、直線を多用した、従来のこの種ステップに見られない力強さを看者に与える様に美的処理された、独自の、独特の形状のものである。
3.イ号意匠は本件登録意匠に類似する。
意匠の類否は終局的には看者が受ける美感に共通性があるか否かである。これを本件に当て嵌めるに看者に強い印象を与える部分、例えば一対のハの字状ステップやアンカーボルト用孔とリブとの関係、受止駒等々、受枠本体上面の平行四辺形の連続模様以外全て物理的にも同一のため、これらを組み合わせられることにより生ずる美感が同一と云える程共通している。であるからイ号意匠は本件登録意匠に類似すると云わざるを得ない。なお、マンホールの蓋であれば、施された表面模様が云わば顔のため取引段階においても施工後においても大差ないも、本件の様に受枠は取引段階における意匠の印象がそのまま要部として認識されるので、甲第2号証の1や乙第2号証、同第3号証が説明可能となる。
4.結び
以上によりイ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属すること明白である。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠公報、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成11年9月7日の出願に係り、平成12年6月30日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「マンホール蓋用受枠」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、やや厚みのある扁平な円筒体を呈する本体部の外周面下端から水平に張り出した一定幅を有する円環状のフランジを形成し、本体部とフランジの角部に垂直方向の板状のリブを等間隔に複数個設け、フランジの各リブ間中央に小長円孔を設け、平面視した本体部内方の上方部に、変形縦長コの字状を呈するステップを間隔をおいて左右対称に一対設けている。
各部の具体的な態様は、(ア)本体部について、厚みをフランジの幅より僅かに小さいものとし、その水平な上面に菱形状の凹部を多数密に並設し、(イ)リブの態様について、その形状を本体部の上面のやや下方からフランジの中央付近まで傾斜する縦長直角三角形状とし、同形のリブを全部で12個設け、(ウ)ステップについて、それぞれの一方の短辺部を他方より長く平行状に形成している。
2.イ号意匠
イ号意匠は、イ号意匠図面によれば、意匠に係る物品を「マンホール蓋用受枠」とし、その形態については、次のとおりとしたものである(別紙第2参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、やや厚みのある扁平な円筒体を呈する本体部の外周面下端から水平に張り出した一定幅を有する円環状のフランジを形成し、本体部とフランジの角部に垂直方向の板状のリブを等間隔に複数個設け、フランジの各リブ間中央に小長円孔を設け、平面視した本体部内方の上方部に、変形縦長コの字状を呈するステップを間隔をおいて左右対称に一対設けている。
各部の具体的な態様は、(ア)本体部について、厚みをフランジの幅より僅かに小さいものとし、その水平な上面に武田菱状の凹部を多数密に並設し、(イ)リブの態様について、その形状を本体部の上面のやや下方からフランジの中央付近まで傾斜する縦長直角三角形状とし、同形のリブを全部で12個設け、(ウ)ステップについて、それぞれの一方の短辺部を他方より長く平行状に形成している。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠は共にマンホール蓋用受枠であるから一致している。
(2)形態については、両意匠は、やや厚みのある扁平な円筒体を呈する本体部の外周面下端から水平に張り出した一定幅を有する円環状のフランジを形成し、本体部とフランジの角部に垂直方向の板状のリブを等間隔に複数個設け、フランジの各リブ間中央に小長円孔を設け、平面視した本体部内方の上方部に、略縦長コの字状を呈するステップを間隔をおいて左右対称に一対設けた基本的構成態様が共通するものである。
また、各部の具体的な態様において、(ア)本体部について、厚みをフランジの幅より僅かに小さいものとし、その水平な上面に凹部を多数密に並設し、(イ)リブの態様について、その形状を本体部の上面のやや下方からフランジの中央付近まで傾斜する縦長直角三角形状とし、同形のリブを全部で12個設け、(ウ)ステップについて、それぞれの一方の短辺部を他方より長く平行状に形成した態様が共通するものである。
一方、各部の具体的な態様において、本体部の水平な上面の凹部の形状について、本件登録意匠は、菱形状の凹部であるのに対して、イ号意匠は、武田菱状の凹部である点に差異が認められる。
したがって、本体部上面の凹部の形状に差異が認められるものの、その余の態様は、ほぼ共通するものである。
(3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
まず、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、この種物品分野においては、本件登録意匠の出願前に見受けられるものであるが(例えば、意匠登録第988751号の意匠、意匠登録第1003844号の意匠)、意匠全体に係わるところであり、骨格的要素となるものであるから、類否判断に影響を与えるものと認められる。
次に、両意匠の具体的な態様において共通するとした(ア)ないし(ウ)の各点が両意匠の類否判断に及ぼす影響についてみると、共通点(ア)については、例えば、意匠登録第988751号の意匠、意匠登録第1003844号の意匠に見られるように、本件登録意匠の出願前に見受けられるものであるから、類否判断を左右する要素としては、微弱なものである。共通点(イ)については、例えば、意匠登録第1004606号、意匠登録第988749号の類似第6号の意匠に見られるように、本件登録意匠の出願前に見受けられるものであるから、類否判断を左右する要素としては、微弱なものである。共通点(ウ)については、本件登録意匠の出願前に見られるステップの態様に比べて、やや部分的なところではあるが、本件登録意匠の出願前に見受けられないものであるから、本件登録意匠の特徴といえるものであり、類否判断を左右する要素として考慮すべきものである。
(4)一方、差異点については、本体部上面の凹部の形状の差異であるが、イ号意匠に見られる武田菱は、菱形の内部を×状に区画したものであり、また、この種物品において、本体部の上面に菱形の凹部を設けたものが、例えば、意匠登録第794998号の類似第3号の意匠(意匠公報平成2年9月27日発行)に見受けられ、さらに、マンホール蓋において、武田菱の凹部を設けたものが、意匠登録第995464号の意匠(意匠公報平成9年11月17日発行)に見受けられることを考慮すると、イ号意匠の本体部上面の凹部の態様は、格別評価することができないものであり、この差異は、本体部上面の凹部の形状がいずれも菱形状といえるから、意匠全体として観察した場合、他の共通する態様に包摂される程度の微弱な差異といわざるを得ない。したがって、この差異は、類否判断を左右する要素としては、微弱なものである。
(5)以上を総合すれば、両意匠の基本的構成態様は、両意匠の類否判断に影響を与えるものと認められ、具体的な態様における共通点(ア)及び(イ)は、両意匠の類否判断を左右する要素としては微弱なものに止まるものの、共通点(ウ)は、類否判断を左右する要素として考慮すべきものであるから、それらの共通点が相俟って両意匠の類否判断を左右する要素といわざるを得ないのに対し、両意匠の具体的な態様における差異点は、本体部の上面の凹部の態様のみであって、しかも類否判断を左右する要素としては微弱なものであるから、両意匠を全体として観察した場合、いまだ類否判断に与える影響は小さいものといわざるを得ない。
そうすると、意匠全体として観察した場合、両意匠間における前記の共通点は、前記差異点を大きく凌駕して、看者に共通の美感を与えているものと認められる。
(6)したがって、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、類否判断を左右する要素と認められる共通点があるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しているものというほかない。
4.むすび
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるから、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-03-17 
出願番号 意願平11-24125 
審決分類 D 1 2・ 1- YB (L2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 伊藤 栄子
伊勢 孝俊
登録日 2000-06-30 
登録番号 意匠登録第1084158号(D1084158) 
代理人 福田 賢三 
代理人 福田 伸一 
代理人 井沢 洵 
代理人 福田 武通 

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