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審決分類 審判 無効  意10条1号類似意匠 無効としない K8
管理番号 1079844 
審判番号 無効2002-35122
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-04-02 
確定日 2003-06-11 
意匠に係る物品 点火用高電圧発生器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1024448号の類似第1号意匠「点火用高電圧発生器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.手続の経緯及び本件類似登録意匠
本件類似登録意匠は、平成10年10月28日に出願(意願平10-31484号)され、平成12年2月10日に設定の登録がなされ、平成12年5月15日に意匠公報が発行された意匠登録第1024448号の類似第1号意匠であって、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「点火用高電圧発生器」とし、その形態を同添付図面に記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
第2.請求人の主張
これに対し、請求人は、「意匠登録第1024448号の類似意匠登録第1号の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」と申し立て、その理由として、意匠登録第1024448号の類似第1号の意匠(以下、「本件類似意匠」という。)は、その意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠に類似する意匠であるから、意匠法第10条第1項の規定に違背して類似意匠として登録されたものである旨主張し、証拠方法として甲第1号証乃至第8号証を提出している。
請求人の主張は、概ね以下のとおりである。
1.甲第3号証〜第8号証の説明
(1)東芝熱器具株式会社と浜井エレクトロニクス株式会社との間で昭和56年10月1日付けで締結された「取引基本契約書」(甲第3号証)
甲第3号証において甲として記載されている東芝熱器具株式会社は、その後の社名変更を経て、現在は東芝ホームテクノ株式会社になっている。また、乙として記載されている浜井エレクトロニクス株式会社は、その後の営業譲渡および社名変更を経て、現在はサナーエレクトロニクス株式会社になっている。そして、東芝ホームテクノ株式会社とサナーエレクトロニクス株式会社との間には、甲第3号証が締結された時点以降に締結された新たな取引基本契約書は存在せず、この甲第3号証が現在でも実質的に有効に機能している。なお、東芝熱器具株式会社および浜井エレクトロニクス株式会社がそれぞれ東芝ホームテクノ株式会社およびサナーエレクトロニクス株式会社の前身であることは、本件審判被請求人も十分に承知している筈である。
(2)東芝ホームテクノ株式会社からエイチ・イー・シー株式会社に宛てられた平成10年(1998年)4月13日付けの「図面・仕様書等送付案内兼受領証」(甲第4号証)
甲第4号証の添付図面「部品名:点火トランス組立(図番2X0163)」の「11A仕様」および同証の1に示されている「点火トランス(すなわち、点火用高電圧発生器)」の意匠(以下、「上記他人の公知意匠」という。)は、本件審判請求人の社員によって創作されたものである。
したがって、甲第4号証の「図面・仕様書等受領証」の備考欄には、東芝ホームテクノ株式会社によって「HEC製追加」と記載されている。また、甲第4号証の「No.11A」の項には、下方に「テンカトランスK」および「2X01631100」と記載されるとともに、上方に「HEC」と記載されている。
(3)甲第4号証の添付図面「点火トランス組立(図番2X0163)」の「11A仕様」の拡大図(甲第4号証の1)
甲第4号証の添付図面の「11A仕様」には、ケーブル、コネクタなどの配線具も記載されている。したがって、蛍光ペンによってこれらの配線具を茶色に、また、点火トランス自体を青色に着色して見易くした上記「11A仕様」の拡大図を甲第4号証の1として提出している。
そして、甲第4号証の1の記載から特に明らかなように、本件類似意匠が上記他人の公知意匠と実質的に相違する点は、出力コード差込み用の円筒部(甲第2号証の右側面図の左側に上部に突出した状態で示されている)が多少長いこと、入力側の2本のコードの差込み部(甲第2号証の正面図の右側に2本の縦長のほぼ長方形状で示されている)が2本の半円筒形で多少長くかつ前方に突出していること、ほぼ直方体形状のトランス本体部分の下方から上方にかけての傾斜が多少大きいこと、である。なお、入力側の2本のコードの差込み部を前方に突出させたのにともなって、これら2本のコードのための2個の接続端子(甲第2号証の平面図の右側下部に示されている)は前後方向に長く延びている。
したがって、本件類似意匠は、上記他人の公知意匠と類似している。
(4)エイチ・イー・シー株式会社から東芝ホームテクノ株式会社に宛てられた平成10年4月15日付けの「納入仕様書」の御返却用(甲第5号証)
甲第5号証は、「納入仕様書」の御返却用であるが、この「納入仕様書」の正本には、甲第4号証の添付図面と実質的に同一の図面が添付されていた。そして、甲第5号証の「品目コード」の欄には、上記添付図面の「11A仕様」に相当することを示す「2X01631100」と記載されている。
(5)東芝ホームテクノ株式会社からエイチ・イー・シー株式会社に宛てられた平成10年(1998年)5月22日付け注文の「注文書」(甲第6号証)
本件審判請求人は、甲第6号証でもって東芝ホームテクノ株式会社から56,000個の「点火トランス」の注文を受けている。
(6)東芝ホームテクノ株式会社からエイチ・イー・シー株式会社に宛てられた平成10年(1998年)6月4日付け発行の「納入日程表」(甲第7号証)及びエイチ・イー・シー株式会社から東芝ホームテクノ株式会社に宛てられた平成10年(1998年)6月10日付けの「納品書」の控(甲第8号証)
甲第7号証および第8号証に示すように、平成10年(1998年)6月10日には、700個の「点火トランス」を東芝ホームテクノ株式会社に納品している。また、甲第7号証の「品目コード」の欄には、「2X01631100」と記載されている。そして、甲第8号証の「注文番号」の欄には、甲第6号証の「注番」の欄と同一の番号である「075218」が記載されている。
2.意匠法第10条第1項の違背について
本件類似意匠と類似した他人(すなわち、自己の登録意匠以外)の意匠は、甲第3号証〜第8号証の記載から明らかなように、本件類似意匠の出願日前に日本国内において公然知られていたものである。
東芝ホームテクノ株式会社は、平成10年6月〜7月にかけて本件審判請求人から多数の点火トランス(これらの点火トランスの意匠は、上記他人の公知意匠である)を購入している。そして、東芝ホームテクノ株式会社は、当該業界における当然の行為として、上記点火トランスを組み込んだ「ファンヒータ」を7〜8月頃から卸売り業者にサンプル出荷し、また、上記「ファンヒータ」を8〜9月頃から卸売り業者に販売している。また、甲第3号証の記載から明らかなように、東芝ホームテクノ株式会社は、本件審判請求人から納入された上記点火トランスの意匠を秘密に保持する義務はない。
したがって、上記点火トランスの意匠(すなわち、上記他人の公知意匠)は、その納入の時点から日本国内において公然知られたものとなっている。
3.むすび
本件類似意匠は、本件類似意匠の出願前に日本国内において公然知られた他人の意匠に類似した意匠であるから、意匠法第10条第1項の規定に違反して類似意匠登録されたものであり、このために、本件類似意匠登録は、意匠法第48条第1項の規定により無効とされるべきものである。
[証拠方法]
甲第1号証:意匠登録第1024448号の意匠原簿謄本
甲第2号証:意匠登録第1024448号の類似意匠登録第1号公報
甲第3号証:東芝熱器具株式会社と浜井エレクトロニクス株式会社との間で昭和56年10月1日付けでもって締結された「取引基本契約書」
甲第4号証:東芝ホームテクノ株式会社からエイチ・イー・シー株式会社に宛てられた1998年(平成10年)4月13日付けの「図面・仕様書等送付案内兼受領証」
甲第4号証の1:甲第4号証の添付図面「点火トランス組立(図番2X0163)」の「11A仕様」の拡大図
甲第5号証:エイチ・イー・シー株式会社から東芝ホームテクノ株式会社に宛てられた平成10年4月15日付けの「納入仕様書」の御返却用
甲第6号証:東芝ホームテクノ株式会社からエイチ・イー・シー株式会社に宛てられた1998年(平成10年)5月22日付け注文の「注文書」
甲第7号証:東芝ホームテクノ株式会社からエイチ・イー・シー株式会社に宛てられた1998年(平成10年)6月4日付け発行の「納入日程表」
甲第8号証:エイチ・イー・シー株式会社から東芝ホームテクノ株式会社に宛てられた1998年(平成10年)6月10日付けの「納品書」の控
第3.被請求人の主張
被請求人は、平成14年6月10日付で答弁書を提出し、「被請求人は、本件についていたずらに争う意思はない。」とし、本件類似意匠の本意匠に関する乙第1号証及び第2号証を提出している。
1.被請求人の答弁
(1)証拠について
被請求人は、請求人が甲第3号証で示す東芝ホームテクノ株式会社とサナーエレクトロニクス株式会社との間で締結された取引基本契約書が、現在でも実質的に有効に機能していること、東芝ホームテクノ株式会社には上記取引基本契約書上、請求人から納入された「上記他人の公知意匠」を秘密に保持する義務がないこと、については争わない。
甲第4号証によれば「図面・仕様書等送付案内兼受領証」は、1998年4月13日付けで東芝ホームテクノ株式会社からサナーエレクトロニクス株式会社に送付され、受領証にサナーエレクトロニクス株式会社によって署名がなされ、東芝ホームテクノ株式会社に返送された日は、同年4月16日である。一方で、サナーエレクトロニクス株式会社から東芝ホームテクノ株式会社に納入仕様書が送付されたのは、同年4月15日である。従って、上記受領証が、東芝ホームテクノ株式会社に送付される前に納入仕様書が送付されていることになる。さらに、上記納入仕様書が同書の「御返却用」欄に東芝ホ一ムテクノ株式会社による署名がなされ、サナーエレクトロニクス株式会社に返却されたのは、1998年5月29日である。ところが、東芝ホームテクノ株式会社からサナーエレクトロニクス株式会社に、「上記他人の公知意匠」にかかる「点火トランス」が注文書によって発注されたのは、上記納入仕様書がサナーエレクトロニクス株式会社に返却される以前の同年5月22日である。上記サナーエレクトロニクス株式会社と東芝ホームテクノ株式会社と間で取り交わされた書簡の時系列上の流れは、通常の工業製品の取引慣行に照らすと不自然なところが多く、証拠としての成立性に疑問がないとはいえない。
しかしながら、被請求人は上記証拠の成立性の疑義については争わない。
(2)類否判断について
請求人は、本件類似意匠が「上記他人の公知意匠」と実質的に相違する点として、出力コード差込み用の円筒部(甲第2号証の右側面図の左側に上部に突出した状態で示されている)が多少長いこと、入力側の2本のコードの差込み部(甲第2号証の正面図の右側に2本の縦長のほぼ長方形状で示されている)が2本の半円筒形で多少長くかつ前方に突出していること、ほぼ直方体形状のトランス本体部分の下方から上方にかけての傾斜が多少大きいこと、を指摘している。なお、請求人は上記相違点に加えて、入力側の2本のコード差込部を前方に突出させたのにともなって、これら2本のコードのための2個の接続端子(甲第2号証の平面図の右側下部に示されている)は前後方向に長く延びている、と指摘している。
しかしながら、請求人は本件類似意匠との対比を上記相違点の指摘のみに止め、両者の類否判断を行わずに直ちに、本件類似意匠は「上記他人の公知意匠」と類似すると主張している。両意匠の構成要素について検討すると、両意匠とも、略直方体形状の本体部分と、本体から突出したケーブル差込用の円筒部と、本体部分の下部で左右に突出した一対の被取付部とから構成されている。両意匠の基本的構成態様はいずれもこれら3つの構成要素からなるものであり、上記請求人が指摘した相違点は、意匠全体の美観に影響を与えるものではなく微差にすぎないと思われる。
従って、請求人の主張のように両意匠はほぼ同一に近い類似意匠であると思われる。
(3)本件類似意匠と本意匠との関係について
被請求人が乙第1号証及び乙第2号証として提出する本件類似意匠の本意匠(意匠登録第1024448号)は、平成8年(1996年)7月11日に出願され、平成10年(1998年)8月28日付で登録されたものである。本審判で請求人が「上記他人の公知意匠」が公知になったと主張している時期は1998年以降であり、本意匠は上記のとおり1998年以前に出願されている。本件類似意匠登録は、上記本意匠の類似範囲を確認するという効果が認められると解される。そうすると本件類似意匠と「上記他人の公知意匠」とは上記のとおり同一に近い類似意匠であるから、「上記他人の公知意匠」は上記本意匠の類似範囲に含まれるものと考えられる。
そこで、確認的に本意匠と「上記他人の公知意匠」とを比較すると、まず、本意匠では略直方体形状の本体部分の上面に向かって三ヶ月状の突出部が形成されているのに対し、「上記他人の公知意匠」には上記突出部はなく、上記本体部分の上面は平坦である。しかしながら、本件類似意匠も「上記他人の公知意匠」同様上記本体部分の上面は平坦である。従って、上記突出部の有無の差異は本意匠と「上記他人の公知意匠」との美観に影響を与えるものではないと考えられる。また、本意匠の出力コード差込用の円筒部と「上記他人の公知意匠」のケーブル差込用の円筒部とは長さが異なるが、本意匠若しくは「上記他人の公知意匠」にかかる物品が実装された場合は、上記円筒部は出力コードと一体になるため、円筒部の長短の違いは実質的に両者の美観に影響を与えるものではない。また、本意匠の上記本体部分の側面の傾斜は、「上記他人の公知意匠」の本体部分のその傾斜に比べて多少大きいという差異があるが、これは請求人が審判請求書で指摘しているとおり、本件類似意匠と「上記他人の公知意匠」との間でも同様の差異があり、この程度の差異があっても両者が非類似と判断する材料にはならないことは、請求人も認めているところである。さらに、本意匠並びに「上記他人の公知意匠」の本体部分の下部で左右に突出した一対の被取付部は、本意匠では本体部分側から外側に向かって下り傾斜に形成されているのに対し、「上記他人の公知意匠」では上記一対の被取付部にはそのような傾斜は形成されていないという差異がある。しかしながら、本件類似意匠にも上記一対の被取付部にはそのような傾斜は形成されておらず、その傾斜の有無は本意匠と「上記他人の公知意匠」との美観に影響を与えるものではないと考えられる。
以上の類否判断から明らかに、「上記他人の公知意匠」は本意匠の類似範囲に含まれるものと考えられる。確かに、「上記他人の公知意匠」は、本件類似意匠の意匠登録出願前に秘密保持義務を有しない第三者との間で取引されたものである可能性は認められるが、上記本意匠の意匠登録出願前には日本国内において公然知られた他人の意匠ではない。
2.むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、請求人が主張する請求の趣旨については争わない。被請求人としては、「上記他人の公知意匠」と本件類似意匠とが同一に近い類似意匠であり、その結果、上記本意匠の類似範囲に上記他人の公知意匠が含まれることが確認できたので本件類似意匠登録をした所期の目的は達成できたものと確信する。
従って、被請求人は本件についていたずらに争う意思はない。
第4.当審の判断
意匠法第10条第1項の規定は、自己の登録意匠にのみ類似する意匠(以下、「類似意匠」という。)については、意匠法第3条又は同法第9条の規定の例外として、類似意匠として登録を受けることができるとしたものである。換言すれば、類似意匠として登録を受けるには、自己の登録意匠に類似する意匠であることは当然のこととして、意匠法第3条、同法第9条等の登録要件をも充足する意匠であることが必要となる。
よって、本件類似登録意匠が意匠法第10条第1項の規定に違背して登録されたものであるとするには、請求人の提出した甲第4号証意匠が、意匠法第3条第1項第3号に規定する本件類似登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠(以下、「公然知られた意匠」という。)に該当することが必要となる。
1.甲第4号証意匠は、「公然知られた意匠」に該当するか。
原本の存在及び成立について争いのない甲第3号証乃至第8号証を総合すると、甲第4号証意匠は、遅くとも平成10年4月13日頃には図面に表され、平成10年6月10日頃には製品化されていたと認められる。
ところで、意匠法第3条第1項第1号における「公然知られた意匠」とは、「一般第三者としての不特定又は多数の者が現実に知るに至った意匠」を指すものと解される(参照:東京高裁平成8年(行ケ)第190号判決)が、請求人主張のように、甲第4号証意匠をみたと認められる東芝ホームテクノ株式会社社員及びサナーエレクトロニクス株式会社社員が、上記の「不特定又は多数の者」に含まれるとすることについては、東芝ホームテクノ株式会社社員においては、甲第4号意匠に係る物品「点火トランス」が東芝ホームテクノ株式会社の自社製品であるファンヒータに使用される部品であることから、当然、発売前の自社製品を秘密に扱うのと同様の注意を払って当該図面及び部品を掌理していたものと推察され、また、サナーエレクトロニクス株式会社社員においても、東芝ホームテクノ株式会社とサナーエレクトロニクス株式会社との間で交わされた「取引基本契約書」(甲第3号証)の第14条(図面、仕様書等の管理)、及び第29条(秘密保持)の規定によって、図面や製品の取り扱いについて厳格な管理が行われていたことが伺えるところであるから、当該社員を「不特定又は多数の者」に含まれるとすることはできず、この事実に基づいて甲第4号証意匠を「公然知られた意匠」と認めることは困難といわざるを得ない。
また、請求人は、当該ファンヒータを7〜8月頃から卸売り業者にサンプル出荷し、また、上記ファンヒータを8〜9月頃から卸売り業者に販売していると主張しているが、当該点火トランスがファンヒータ内部に組み込まれ、通常外部からみることができない内蔵部品であることを考慮すると、甲第4号証意匠がこのファンヒータの販売の事実から直ちに公然知られた意匠であるとは言い難いことに加え、請求人は当該ファンヒータの販売の事実を証明する客観的な証拠を提出しておらず、この主張を認めることはできない。
したがって、請求人の提示する証拠のみでは、甲第4号証に示された意匠が、本件類似登録意匠の意匠出願前において公知であったと認めることはできない。
2.本件類似登録意匠と本意匠との類否
2-1 本件類似登録意匠の本意匠
本件類似登録意匠の本意匠は、平成8年7月11日に出願(意願平8-21095号)され、平成10年8月28日に設定の登録がなされ、平成10年11月4日に意匠公報が発行された意匠登録第1024448号意匠であって、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「点火用高電圧発生器」とし、その形態を同添付図面に記載のとおりとしたものである(別紙第2参照)。
2-2 本件類似登録意匠と本意匠との対比
両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、その形態については、以下に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)平面視矩形状の取付部を両側面中央下部に形成した矩形板状の基台部に、略直方体状の本体部及び円筒状の出力コード挿入部を載設した点火用高電圧発生器であって、正面右側部分に電源接続端子部を設けた全体の基本的な構成。
(2)電源接続端子部の態様について、本体部の正面右端部分に形成した直方体状の切り欠き部に、下端部に矩形状の切り欠き部を形成した平面視U字状の電源接続端子部を本体部の約2/3の高さにまで並列に2つ立設している点。
(3)出力コード挿入部の配置態様について、円筒状の出力コード挿入部を本体部正面左隅部分に本体部と一体的に形成して配設している点。
(4)取付部の態様について、左側面部の取付部に円孔を一つ形成し、右側面部の取付部にU字状の切り欠き部を形成している点。
(5)本体部の態様について、本体正面部及び背面部を僅かに傾斜させ、側面視が台形状となるように形成している点。
[相違点]
(イ)本体上面部の態様について、本件類似登録意匠においては、本体上面部全体を平板状としているのに対し、本意匠においては、正面視円弧状の膨出部を上面部左側部分に一つ形成している点。
(ロ)出力コード挿入部の態様について、本件類似登録意匠においては、本体部に対する該部位の高さの比が略1.8倍程度の円筒形状としているのに対し、本意匠においては、本体部に対する該部位の高さの比が略1.6倍程度の円筒形状とし、上端部正面部分に矩形状の切り欠き部を一つ形成している点。
(ハ)取付部のリブの有無について、本件類似登録意匠においては、該部位にリブを設けていないのに対し、本意匠においては、直角三角形状の板状リブを取付部の上面両端部に一つずつ立設している点。
2-3 判断
上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す全体の基本的な構成態様は、意匠全体の骨格を成す特徴的なものであり、これに共通点(2)に示す電源接続端子部の態様、共通点(3)に示す出力コード挿入部の配置態様及び共通点(4)に示す取付部の態様が加わることによって意匠の全体的な基調が形成され、さらに共通点(5)に示す本体部の態様の共通性が加味されて、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。
これに対し、相違点(イ)の本体上面部の態様における差異については、本件類似登録意匠の該部位の態様が、この種物品においては普通にみられる態様である平板状であるため、本件類似登録意匠を特徴付けるものとは成し得ず、本意匠の正面視円弧状の膨出部も、全体的に見れば、当該膨出部の有無を強く認識できるものではないから、その差異は局所的なものに止まり、両意匠の類否を左右するほどの顕著なものとは成し得ない。
また、相違点(ロ)の出力コード挿入部の態様における差異については、本意匠の該部位上端に形成された切り欠き部の態様は、ありふれた形状である矩形状であるため、本意匠を特徴付けるものとは成し得ず、また、該部位の高さの差異も、本物品を組み付けるスペースに応じて適宜変更されるものであるから、これらの差異は、共通点(1)乃至(5)に示す態様により形成された意匠の基調をなす共通性を凌ぐほどのものではない。
また、相違点(ハ)の取付部のリブの有無における差異ついては、本意匠の当該リブは、取付部と基台部との接合部分の強度不足を補完するため設けられたものであって、適宜施される改変の域をでないものであり、その態様もありふれた形状である直角三角形状であるため、意匠の構成要素としてはさほど評価できず、その有無の差異は、各共通点に示す圧倒的な共通性を凌ぐものではない。
さらに、これらの相違点に係る態様が相俟って表出する効果を勘案しても、前記各共通点から惹起される両意匠の圧倒的な類似性を凌ぐ視覚効果を認めることはできない。
すなわち、本件類似登録意匠は、本意匠に類似するものと認められる。
第5.むすび
以上のとおりであって、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件類似登録意匠が意匠法第10条第1項の規定を受けることができないものであるとすることはできず、本件類似登録意匠を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-04-10 
結審通知日 2003-04-15 
審決日 2003-04-30 
出願番号 意願平10-31484 
審決分類 D 1 11・ 3- Y (K8)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 治子木村 智加 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 岩井 芳紀
江塚 尚弘
登録日 2000-02-10 
登録番号 意匠登録第1024448号の類似意匠登録第1号(D1024448/1) 
代理人 土屋 勝 
代理人 打揚 洋次 
代理人 東田 潔 

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