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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) L4
管理番号 1083359 
判定請求番号 判定2003-60053
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-10-31 
種別 判定 
判定請求日 2003-07-07 
確定日 2003-09-25 
意匠に係る物品 建築用軸組接合具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1019792号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「建築用軸組接合具」の意匠は、登録第1019792号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1. 請求人の申し立て及び理由
1.請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、イ号意匠を示す図面、甲第1号証(登録意匠第886906号の意匠公報)、甲第2号証(登録意匠第1036283号の意匠公報)、甲第3号証(登録意匠第1038994号の意匠公報)を提出した。
2.本件登録意匠の説明
本件登録意匠に係る物品は、柱に横架材(梁)を架け渡す際などに使用される「建築用軸組接合具」である。形状においては、板材を断面視略コ字状に屈曲形成し、そのうち長方形状の基端部から突出する2つの矩形突出片には、それぞれ、上下対称位置に略円弧状の切欠き部が形成され、その略中央に円形の挿通穴が1つずつ形成されていると共に、該切欠き部に近接する対称位置にも、円形の挿通穴が2つずつ形成されている。また、前記基端部には、本物品を柱に取り付けるための円形の取付穴が2つ形成されている。
使用方法としては、前記切欠き部は、横架材などの切欠溝を横切って設けられたボルトを引っ掛ける部分であり、ボルトが引っ掛けられた後、横架材を介して、本物品の挿通穴にピン等を嵌挿することによって、柱に該横架材が固定される。また、基端部に形成される取付穴は、基端部の上端から上部の取付穴までの距離と、基端部の下端から下部取付穴までの距離とが相違して形成されているため、一方の接合具を上下反転して使用することにより、交差するボルトを衝突させることなく使用することができる。
3.イ号意匠の説明
イ号意匠は、板材を断面略コ字状に屈曲形成して構成されている。そして、長方形状の基端部からコ字状に突出する2つの矩形突出片には、上下対称位置に、略円弧状の切欠きが形成されている。また、2つの矩形突出片には、前記切欠きに近接して対称位置に2つの円形の挿通穴が形成され、これら上下2つの挿通穴に連続して、中央に更に2つの円形の挿通穴が形成されている。前記切欠きと挿通穴とは、それぞれ上下対称に形成されているので、本物品を上下逆にしても使用することができる。
イ号意匠に係る物品の長方形状の基端部には、基端部の幅にほぼ等しい大径の円柱部が3つ突出形成されている。そして、各円柱部の中央には、本物品を柱に取り付けるための円形の取付穴が形成されている。この取付穴のうち、長方形基端部の上端から上部取付穴までの距離と、長方形基端部の下端から下部取付穴までの距離とが、相違して形成されている。また、中央の取付穴も、長方形基端部の上下方向中央から少しずれて形成されている。そのため、イ号意匠を柱の隣接する面で同時に使用しても、一方の接合具を上下反転して使用することにより、交差するボルト等を衝突させることなく使用することができる。
4.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(1)本件登録意匠とイ号意匠の共通点としては、
(a)板材を断面視略コ字状に屈曲して形成している点、(b)長方形状の基端部からコ字状に突出する2つの矩形突出片には、上下対称位置に、略円弧状の切欠きが形成されている点、(c)2つの矩形突出片には、該切欠きに近接して対称位置に円形の挿通穴が形成されている点、(d)長方形状の基端部には、本物品を柱に取り付けるための円形の取付穴が形成されている点、(e)(d)の取付穴のうち、長方形状の基端部の上端から上部取付穴までの距離と、長方形状の基端部の下端から下部取付穴までの距離とが、互いに相違して形成されている点においてそれぞれ共通する。
(2)一方、本件登録意匠とイ号意匠の相違点としては、
(A)矩形突出片に形成される挿通穴について、本件登録意匠は、矩形突出片の略中央に挿通穴が形成されているのに対して、イ号意匠は、上下位置に設けられた上下2つの挿通穴と、鉛直方向の同一線上に2つの挿通穴が、ほぼ中央位置に形成されている点、(B)長方形状の基端部に形成される取付穴について、本件登録意匠は、基端部の上下位置にのみ2つの取付穴が形成されているのに対して、イ号意匠は、この2つの取付穴の間に更にもう1つの取付穴が形成されている点、(C)同じく長方形状の基端部について、本件登録意匠は、長方形基端部のフラットな面に取付穴が形成されているのに対して、イ号意匠では、長方形基端部から大径の円柱部を突出させ、その突出頂面に取付穴が形成されている点において相違する。
(3)イ号意匠が本件登録意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
しかしながら、上記(A)、及び(B)の相違点は、本質的なものではなく、横架材などの上下方向の長さに対応させた単なる設計変更に過ぎず、作用効果において何ら異なるものではない。また、上記(C)の相違点は、取付穴に挿入するボルトの頭部を隠すためのものに過ぎず、これまた単なる設計変更に過ぎず、作用効果において特に相違するものではない。
そもそも、この種の接合具に接する当業者は、建築現場での作業に精通しているか、少なくとも、この種の物品の使用方法を十分理解している。したがって、上記(A)、及び(B)の差異点に注意を払うことはあり得ず、単に、縦方向の長さが相違すると認識するに過ぎない。また、上記(C)の差異点についても、大径の円柱部によって特別の機能を発揮するというものではなく、しかも、使用状態では柱の中に隠れてしまうため、それほど重視されるものではない。
これに対して、矩形突出片の上下対称位置に設けた略円弧状の切欠きと、長方形基端部の上下非対称の位置に設けた取付穴の各構成は、従来、この種の物品には無かった新規な構成であり、その機能的価値の高さから、極めて重視して評価される部分である。すなわち、矩形突出片の上下対称位置の切欠きと、長方形基端部の上下非対称位置の取付穴とを有するがゆえに、2つの接合具を、柱の隣接する面に上下反転して使用すれば、ボルト等を衝突させないで交差させることができるのであり、当業者にとっては、意匠の要部となる部分である。
(4)むすび
以上のとおり、両意匠は、看者に注意を喚起する本質的部分において一致し、挿通穴や取付穴の数の相違は、共通点に埋没するものである。また、イ号意匠における円柱部の存在も、この種の物品の機能からすると非本質的部分であり、両意匠の共通部分を凌駕するほどの差異とはならない。
よって、本件登録意匠とイ号意匠とは、同一物品についての類似形状を具備したものに他ならず類似範囲に入るものである。
第2.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠公報、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成9年1月7日の出願に係り、平成10年6月19日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1019792号の意匠であって、願書の記載、及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「建築用軸組接合具」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、全体形状を、長方形の板材を平面視略横長コ字状に折曲し、その縦細長長方形状の板部を柱固定用の基端部とし、その両端部から略縦長長方形状の横架材(梁)固定用の突出片を対称状に形成したものとし、具体的な態様は、基端部の中央上下端部寄りにそれぞれ1個ずつ円形の柱固定用の取付穴を設け、その上部の取付穴は基端部上端からの距離が、下部の取付穴の下端からの距離の略2分の1とし、突出片の上部の先端隅部とその上下対称位置となる下部の先端隅部に、それぞれその角部から内側へ斜状を成し突き当たり奥側を弧状とする大略直角三角形状に切り取って切欠部とし、先端部を手術用メスの刃先を呈するように形成し、その切欠部近傍上、下方寄りに横架材固定用ボルトを挿通させるための円形の挿通穴を1個ずつ設け、さらに突出片の略中央部付近にも同大の円形の挿通穴を1個設けている。また、全体の構成比について、すなわち基端部、及び突出片の縦横の長さの比をそれぞれ、約5.5:1、約1.7:1としている。
2.イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出した「イ号意匠を示す図面」によれば、意匠に係る物品を、「建築用軸組接合具」とし、その形態については、次のとおりとするものと認められる(別紙第2参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、全体形状を、長方形の板材を平面視略横長コ字状に折曲し、その縦細長長方形状の板部を柱固定用の基端部とし、その両端部から略縦長長方形状の横架材(梁)固定用の突出片を対称状に形成したものとし、具体的な態様は、基端部外側に基端部の横幅と同径の略短円筒状の突出部を、上下端部寄りと、中央やや上部寄りにそれぞれ1個ずつ合計3個形成し、その突出部の頂面中央に円形の柱固定用の取付穴をそれぞれ設け、その上部の取付穴は基端部上端からの距離が、下部の取付穴の下端からの距離の略2分の1とし、突出片の上部の先端隅部とその上下対称位置となる下部の先端隅部に、それぞれその角部から内側へ斜状を成し突き当たり奥側を弧状とする大略直角三角形状に切り取って切欠部とし、先端部を手術用メスの刃先を呈するように形成し、その切欠部近傍上、下方寄りに横架材固定用ボルトを挿通させるための円形の挿通穴を1個ずつ設け、さらにその同一線上略中央部付近にも同大の円形の挿通穴を2個近接して設けている。また、全体の構成比について、すなわち基端部、及び突出片の縦横の長さの比をそれぞれ、約7.4:1、約2:1としている。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠は共に柱に横架材(梁)を架け渡す際などに使用される「建築用軸組接合具」であるから一致している。
(2)形態については、両意匠の基本的構成態様、すなわち、全体形状を、長方形の板材を平面視略横長コ字状に折曲して形成したものとした点が共通し、具体的な態様においても、以下の共通点が認められる。
(ア)基端部の中央上下端部寄りに1個ずつ円形の柱固定用の取付穴を設けている点、(イ)突出片の上部の先端隅部とその上下対称位置となる下部の先端隅部に、その角部から内側へ斜状を成し突き当たり奥側を弧状とする大略直角三角形状に切り取って切欠部とし、先端部を手術用メスの刃先を呈するように形成している点、(ウ)切欠部の近傍上、下方寄りに円形の挿通穴を1個ずつ設けている点、(エ)(ア)の取付穴の位置について、上部の取付穴は、基端部上端からの距離が下部の取付穴の下端からの距離の略2分の1としている点。
一方、両意匠には、具体的な態様において、以下の差異点が認められる。
すなわち、(あ)全体の構成比について、イ号意匠の方が、本件登録意匠よりやや縦長である点、(い)基端部の取付穴の個数、及び位置について、本件登録意匠は、中央上下端部寄りに1個ずつ合計2個設けているのに対し、イ号意匠は、これに中央やや上部寄りに1個加え合計3個設けている点、(う)基端部の取付穴の態様について、本件登録意匠は、平らな基端部の面に取付穴を設けているのに対し、イ号意匠は、基端部外側に形成した突出部の頂面中央に取付穴を形成している点、(え)突出片の挿通穴の態様について、本件登録意匠は、切欠部近傍上、下方寄りに1個ずつ設け、さらに略中央部付近にも1個設けて合計3個設けているのに対し、イ号意匠は、切欠部近傍上、下方寄りに1個ずつとその同一線上略中央部付近に近接して2個設けて合計4個設けている点。
(3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点、及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
まず、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、両意匠の形態についての骨格的な態様であって、形態全体を支配する要素に係るものであるから、看者に共通する印象を与えるところであり、両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。
次に、両意匠は、具体的な態様において、前記のとおり(ア)ないし(エ)の各点が共通し、(あ)ないし(え)の各点に差異が認められるので、これらの具体的な態様が両意匠の類否判断に及ぼす影響についてみると、まず、共通点の(ア)、及び(ウ)については、本体に穿孔し取付穴や挿通穴とすることは、この種物品分野においては、両意匠のみの特徴とはいえないが、いずれも本接合具を柱に固定し横架材との接合を確実なものとするための重要な部位に係り、形態の本質的な要素を形成するものであるから、これらの態様は、類否判断において考慮すべき要素と認められる。(イ)の突出片の切欠部の態様については、該突出片の上部の先端隅部とその上下対称位置となる下部の先端隅部に、その角部から内側へ斜状を成し突き当たり奥側を弧状とする大略直角三角形状に切り取って切欠部とし、先端部を手術用メスの刃先を呈するように形成する態様は、本件登録意匠の出願前に見受けられないものであり、本件登録意匠独自の態様と認められ、また、この切欠部、及び先端部は、目立つ部位であり、この態様における共通点は、類否判断に大きな影響を及ぼす要素と認められる。(エ)の取付穴の位置については、基端部上下の取付穴の位置をずらすことにより、柱の隣接する面に使用する際、本物品を上下反転して使用することで交差するボルト同士の衝突を回避することができるものであるが、この種物品分野においては、本件登録意匠の出願前に他に見受けられる態様であり(例えば、特許庁発行の意匠公報記載の意匠登録第1038994号の類似第1号の意匠。)、本件登録意匠独自の態様ではないから、類否判断を左右する要素としては微弱なものである。
一方、差異点(あ)については、本件登録意匠に比べ、イ号意匠は、基端部、突出片共にやや縦長であるが、両者は、基端部、突出片いずれも略縦長長方形状とした共通する中での差異にすぎないものであるから、その差異は、微弱なものというほかない。差異点(い)、及び(え)については、取付穴、挿通穴共に、穿孔される位置、及び数に相違する点が認められるが、これらの穴は、共通するとした(ア)、及び(ウ)の穴に比べてやや付加的な要素が強いものであり、また、この種物品分野においては、取付穴や挿通穴の位置を変更したり数を加減することは本件登録意匠の出願前より普通に行われているところであって、また、意匠全体として見れば、部分的なところにおける差異にすぎないものであるから、それらの差異はいずれも微弱なものである。差異点(う)について、すなわち、イ号意匠が、基端部外側に形成した突出部の頂面中央に取付穴を形成している点であるが、本物品を柱に固定する際、基端部内側から取付穴を介して固定用ボルトを柱にねじ込むときに、当該固定用ボルトの頭部が基端部の内側に突出しないようにするため、基端部の外側に突出部を形成してその内部に頭部を収納することは、この種物品分野において、例えば、特許庁発行の意匠公報に記載される意匠登録第1048971号の意匠にみられることから、イ号意匠独自の態様とはいえず、また、当該突出部は、施工作業時において柱の内部に隠れてしまう部分でもあるから、意匠上さほど評価することができないものであり、この差異は、形態全体からみれば、両意匠の共通点に包摂される程度の部分的な差異にとどまるものであって、微弱なものといわざるを得ない。
(4)以上を総合すれば、両意匠の基本的構成態様は、両意匠の類否判断に影響を与えるものと認められ、具体的な態様における共通点(エ)は、両意匠の類否判断を左右する要素としては微弱なものに止まるものの、具体的な態様における共通点(ア)ないし(ウ)は、類否判断において考慮すべき要素と認められ、とりわけ共通点(イ)の突出片の上部の先端隅部とその上下対称位置となる下部の先端隅部に、その角部から内側へ斜状を成し突き当たり奥側を弧状とする大略直角三角形状に切り取って切欠部とし、先端部を手術用メスの刃先を呈するように形成している点については、本件登録意匠の新規な態様であり、目立つ部位であるから、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められ、それらの共通点が相まって両意匠の類否判断を左右する要素と認められるのに対し、両意匠の具体的な態様における差異点(あ)ないし(え)は、いずれも微弱なものであって、これらの差異点が相まって形成する意匠的まとまりを考慮しても、両意匠を全体として観察した場合、未だ類否判断に与える影響は小さいものといわざるを得ない。
そうすると、意匠全体として観察した場合、両意匠間における前記の共通点は、前記差異点を大きく凌駕して、看者に共通の美感を与えているものと認められる。
(5)したがって、本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、類否判断を左右する要素と認められる共通点があるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しているものというほかない。
4.むすび
よって、イ号意匠は、本件登録意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるから、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-09-12 
出願番号 意願平9-170 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 内藤 弘樹
西本 幸男
登録日 1998-06-19 
登録番号 意匠登録第1019792号(D1019792) 
代理人 野中 誠一 

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