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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない C4
管理番号 1085037 
審判番号 無効2002-35418
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-01 
確定日 2003-09-22 
意匠に係る物品 自動洗髪機 
事件の表示 上記当事者間の登録第1140774号「自動洗髪機」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.請求人の申立及び理由
請求人は、意匠登録第1140774号の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申立、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
意匠登録第1140774号意匠(以下、本件登録意匠という)は、その出願前に日本国内において頒布された意匠登録916105号の意匠公報(甲第2号証)に記載された意匠に類似するものであって、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定によりその登録は無効とすべきである。
すなわち、本件登録意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が一致し、ともに、本体と本体上部中央に備えられたフードを有し、本体正面には、上方寄りに左右に延びる区画線があって、正面の上辺が中央で下方に湾曲しており、その湾曲部を上方から覆うようにフードが配置され、フードは正面形状が上方に凸湾曲しており、正面中央には逆U字状の切り欠きが下方から形成され、その周りに3つの円形フェイスシールつまみが配置され、本体は、正面右側の角が面取りされていて、平面形状が略五角形状をしており、本体上面には、中央にフードが設けられ、左側中央にはシャワーヘッドが、その奧にはシャンプー・トリートメント容器が、右側奧には2つのつまみが、その手前にはコントロールプレートが配置されている点、が共通し、本件登録意匠は本体正面が前後方向にわずかに波打っているのに対し、引用意匠はほぼ真っ直ぐである点、本件登録意匠のフード後方下端は左右方向に直線状であるのに対し、引用意匠のフード後方下端は、後方に向けて凸湾曲しており、その後部に蝶番が備えられている点、本件登録意匠は右側面に電源スイッチが配置されているのに対し、引用意匠においては右側面の面取りにより作られた面に電源スイッチが配置されている点、本件登録意匠のシャンプー・トリートメント容器は円柱状の容器にキャップが付けられ、キャップ上面より管が本体に延びている形状であるのに対し、引用意匠の同容器は四角柱形状である点、本件登録意匠の本体上面右側奧に配置された2つのつまみは上部が丸く膨らんだこけし状であるのに対し、引用意匠の同じ箇所にある2つのつまみは円柱状である点、に差異はあるが、これらの相違点は、何れも些細な相違、両意匠について看者に異なる印象を与える程の相違ではなく、また、本件登録意匠と引用意匠を全体的に観察すれば、相違点を総合しても看者が両意匠を明確に区別できるほどの相違ではなく、当該相違点は両意匠の共通点から看者が受け取る共通の美的印象に埋没してしまう程度のものであって、看者は両意匠から共通の美的印象を受け取るので、両意匠は互いに類似するものである。
2.被請求人の答弁
被請求人に対して、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても被請求人からは、何ら応答がなかったものである。
3.当審の判断
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、登録原簿及び願書の記載によれば平成11年1月11日の意匠登録出願に係り、平成14年3月15日に設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「自動洗髪機」とし、その形態は、願書に添付した図面に記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)
(2)甲号意匠
甲号意匠は、請求人が提出した甲第2号証の特許庁が発行(平成7年1月9日)の意匠公報に記載された意匠(意匠登録第916105号、平成4年9月30日出願)であって、意匠に係る物品が「自動洗髪機」であり、その形態は、同公報に記載のとおりとしたものである。(別紙第2参照)
(3)両意匠の比較・検討
本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共に自動洗髪機であって一致し、形態については、主たる共通点、及び、差異点として、以下のものが認められる。なお、各部の左・右については、正面視における左・右を基本として以下認定する。
まず、両意匠は、(a)概略直方体状の本体部上面の前寄り左右中央に洗髪槽を設け、その洗髪槽の上に突出した態様のフード部を設けた点、(b)本体部上面につき、フード部の前後幅と左右幅はほぼ同幅であって、その周りの余地部は、左・右及び後側はやや幅広でほぼ同幅とし、前側は極く僅かであって、その前側中央に首を載せる為の凹弧状凹み部を設けた点、(c)本体部前面の右側辺部につき、斜めに面取り部を設けた点、(d)フード部につき、前面は前方斜め上を向いた逆向き幅広U字形状とした平面であって、その逆向き幅広U字形状の内側を頭部挿入孔空間とし、フード部の後側を後方斜め上を向いた湾曲傾斜面とした点、(e)本体部上面の余地部につき、右側余地部には前後に長い矩形平面状操作部を設け、その後方隅部付近に2個のつまみを左右に並べて配置し、左側余地部前後ほぼ中央、フード部寄りにハンドシャワーを配置し、その後方隅部付近に洗髪剤容器体を2個配置した点、(f)フード部前面につき、左・右及び上部中央に計3個の小円形フェイスシール調整つまみを等間隔に設けた点、が共通している。
一方、両意匠は、(イ)本体部前面(右側辺の面取り部を除く、以下同じ)につき、甲号意匠は、平面視緩やかな凸弧状の垂直状湾曲面とし、上下略中央横方向の前方極く僅か斜め下を向く傾斜面部を介して上下面を段差状としたのに対して、本件登録意匠は、平面視前後に緩やかな波打ったような曲線状に表れる垂直状曲面とし、下端付近に横方向の前方極く僅か斜め下を向く傾斜面とした点、(ロ)本体部右側辺の面取り部の幅につき、甲号意匠は前面の左右幅に対して略1/2とやや大きくしているのに対して、本件登録意匠は略1/3.5とやや小さくしてしている点、(ハ)本体部上面フード下端外周形状につき、甲号意匠は、前方後円形状とし、更にその後端中央に小ぶりの扁平直方体状のヒンジ部が表れているのに対して、本件登録意匠は、略正方形とし、甲号意匠のヒンジ部に相当する部分は表れていない点、(ニ)本体部操作部につき、甲号意匠は面取り部の上下中央よりやや上寄りの縦細長矩形凹陥形状部に操作部を設けているのに対して、本件登録意匠は、右側面の略中央極く僅かの段差の縦長矩形凹陥形状部に操作部を設けた点、(ホ)上面配置の2個の洗髪剤容器体につき、甲号意匠は、直方体形状であって左右に配列しているのに対して、本件登録意匠は、円柱状であって前後に配列している点、(ヘ)本体部上面奧に配置の2つのつまみにつき、甲号意匠は、円柱状であるのに対して、本件登録意匠は、上部が扁平球形状で、下部を細くしている点、に差異がある。
そして、これらの共通点及び差異点の類否判断に及ぼす影響を検討すると、前記(a)及び(b)の共通点に係る構成態様は、意匠全体の共通する基本的構成態様を形成するものであるが、自動洗髪機におけるこの基本的構成態様は、甲第2号証の意匠公報発行以前はもとより、甲号意匠の意匠登録出願前からも知られたものであり(例えば、特許出願公開1-97404、FIG.2.参照)、甲号意匠特有の特徴とすることができないから、基本的構成態様の異・同のみによって両意匠の類否判断を直接左右する形態上の特徴とし、類否を決定することはできないことから、各部の具体的構成態様の共通点、差異点の類否判断に及ぼす影響を比較、検討せざるを得ない。そして、その基本的構成態様以外の前記認定の具体的構成態様の多くは、本体前面側及び上面側に関するものであり、本体部前面側全体(右辺面取り部を含む、以下同じ)及び上面側全体における視覚的まとまりの異・同が、類否判断を左右する重要な要素となると認められるから、この点について検討する。
まず、本体部前面側全体に関し、(c)の面取り形状を設けた点は共通するものの、一方、その幅(構成比率)の差異は(ロ)の差異点として指摘したように比較的顕著であって、他方、(イ)の差異点に係る構成態様については、前面であってその占める範囲の大きさを考慮すると、視覚的に大きく訴える意匠の類否判断上の重要な部分であり、これら(イ)及び(ロ)の差異点に係る構成態様は、前面側全体において(c)の共通点から生じる共通感を凌駕し別異の視覚的まとまりを形成しているから、類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
次に、上面側に関し、(d)の共通点に係る構成態様は、フードの概略に関するものであり、この共通点は類否判断に一定の影響を及ぼすものではあるが、一方、(ハ)の差異点については、上面フード部の下端外周形状であって、全体を正方形状としたものと前側半分を方形状、後ろ半分を半円形状としたものとの視覚的差異は極めて顕著であり、その顕著な差異がフード部形状全体に与える影響は多大なものがあり、それはフード部形状の骨格の差異を形成するというだけではなく、むしろ、上面余地部を含む上面全体の基本的構成態様の差異を構成する要素でもあるから、概括的な余地部及びフード部形状の共通点に係る構成態様が認められるとしても、それは上述した例示からも明らかなように特徴があるともいえず、両意匠それぞれの上面全体において異なる基本的構成態様を形成し、別異の感を呈する訴求力の強い視覚的まとまりを生じさせている。そして、(e)の上面余地部に設けられた操作部等の構成要素の配置構成に関する共通点は、使用状態を考慮して適宜配置されたに過ぎないものであるから、類否判断を大きく左右する要素とすることはできず、右側余地部に設けられた共通する平面状操作部から生じる共通感も上面全体としては、(ホ)及び(へ)の差異により、希釈化、若しくは減殺され微弱なものとなっており、(f)のフード部における3個の円形フェイスシール調整つまみを設けた共通点は、微細かつ付加的なものであり、また従前よりみられるものであるから、類否判断に及ぼす影響は極く僅かであり、これら(e)と(f)の共通点に係る構成態様は、前記上面全体の別異の感を呈する視覚的まとまりに埋没してしまう程度のものである。そして、(ニ)の差異点については、それぞれ意匠全体としてみた場合、部分的差異ではあるものの、本体部に凹陥部を設けた操作部に関するもので、意匠創作の内容としては一定程度着目すべき重要性を有する部分であるから、微差とは言い難く、類否判断に一定の影響を及ぼすと認められる。
このように、両意匠は、(a)及び(b)の意匠全体の基本的構成態様は共通するものの、これらの共通点に係る構成態様は甲号意匠特有の特徴とはいえないからこれをもって類否判断を決することはできず、一方、(c)の共通点に係る構成態様については(イ)及び(ロ)の差異点に係る構成態様がこれを凌駕し、本体部前面側全体において別異の視覚的まとまりを形成し、(d)のフードの概略に関する共通点に係る構成態様については、(ハ)の差異点に係る構成態様がフード部形状全体に与える影響は多大なものがあり、フード部形状の骨格の差異を形成するだけでなく、上面全体における異なる基本的構成態様を形成しており、(e)及び(f)の共通点に係る構成態様については、前記上面全体における異なる基本的構成態様から生じる別異の感を呈する視覚的まとまりに埋没してしまう程度のものであり、両意匠それぞれの意匠の類否判断上の重要な部分と認められる前面全体、及び、前記上面全体何れにおいても夫々別異の視覚的まとまりが生じているものであるから、これらを総合すれば、(ニ)の差異点についての類否判断に及ぼす影響を更に具体的に検討するまでもなく、両意匠は意匠全体として類似しないとするのが相当であり、本件登録意匠は甲号意匠に類似するものということができない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、請求人が提出した証拠では、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するとはいえず、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-07-09 
結審通知日 2003-07-14 
審決日 2003-08-12 
出願番号 意願平11-501 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (C4)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
伊藤 晴子
登録日 2002-03-15 
登録番号 意匠登録第1140774号(D1140774) 
代理人 川崎 実夫 
代理人 亀井 弘勝 
代理人 稲岡 耕作 

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