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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) K2
管理番号 1085048 
判定請求番号 判定2003-60032
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-11-28 
種別 判定 
判定請求日 2003-04-11 
確定日 2003-10-17 
意匠に係る物品 釣用リール 
事件の表示 上記当事者間の登録第1054150号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号写真及びその説明書に示す「釣用リール」の意匠は、登録第1054150号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、イ号写真並びにその説明書に示す意匠は、登録第1054150号意匠の範囲に属するとの判定を求めると申し立て、その理由として要旨以下のとおり主張し、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
甲第1号証:本件登録意匠の意匠公報写し
甲第2号証:イ号意匠の包装箱及び下げ札を写した写真
甲第3号証:本件登録意匠とイ号意匠との対比図
甲第4号証:登録第479036の類似3号意匠公報写し
甲第5号証:登録第913155号意匠公報写し
甲第6号証:登録第964965号意匠公報写し
甲第7号証:登録第985463号意匠公報写し
甲第8号証:株式会社バレーヒル社作成のカタログ『96’Valley Hill Co.,LTD./TACKLE COLLEC TION』の写し
甲第9号証:リョービ株式会社作成の『1996/fishing/Ta ckle/catalog』の写し
甲第10号証:「釣用リールに関する類似意匠マップ」
甲第11号証:第1054150号意匠の類似意匠登録第1号意匠公報写 し
甲第12号証:本件類似登録意匠とイ号意匠との対比図
甲第13号証:登録第1078380号意匠公報写し
甲第14号証:本件判定請求人販売の「釣用リール」(商品名:BIOM ASTR)を写した写真
甲第15号証:登録第1116230号意匠公報写し
(1)経緯
本件判定請求人(株式会社シマノ)は、本件判定請求に係る登録第1054150号意匠(本件登録意匠:甲第1号証)の意匠権者であり、別紙イ号写真掲載の「釣用リール」の意匠(イ号意匠:商品名ラーヴァ/6000)が中国から我が国に販売目的で輸入されている事実を、イ号物件の包装箱の裏面及び下げ札(甲第2号証)により確認し、イ号物件の輸入行為が本件登録意匠の意匠権を侵害することを客観的に立証すべく、特許庁による本判定を請求した。
(2)本件登録意匠とイ号意匠との対比
両意匠は、何れも釣竿に取り付けて使用し、一般にスピニングリールと呼ばれる釣用リールに関するものであるから、意匠に係る物品を共通にする。
イ.両意匠の共通点
両意匠は、ギアケースの上方に脚部を一体的に形成し、同時にギアケースの前方にスプール部及び回転軸と同軸回転可能なローター部を組み込み、さらにギアケースの一方側面に操作用のハンドルを取り付けると共に、ローター部の前方にベイル部を形成してなる基本的構成態様において共通する(共通点1)。
また、具体的構成態様についても以下の共通点を認めることができる。
ギアケースが正面視ローター部側を垂直線状に切り欠いた歪な略おむすび状に表れ、その右側面が上方の脚部右側面とほぼ同勾配の急斜面状に形成し、さらに正背面両側の下方部をわずかに外膨らみ状にすると共に底面後方側を尻上がり状に持ち上げ、且つ後方下方部にカバー部を取り付け、正背面中央ややローター部寄りに突出部を形成し、これをハンドル取り付け部としてなる点(共通点2)、
脚部が上方部を正面視略T字状とし、その下方部を斜め後方に屈曲して次第に裾拡がり状としてギアケースの上方部と一体的に形成してなる点(共通点3)、
ローター部がギアケースの左側面を覆う肉厚板状の基部と、この基部の左右両側から正面視前方へ立設してなる略三角形状の一対の支柱部とからなり、これら支柱部のうち、一の支柱部に基部を底辺とした略三角形状の貫通孔とその前方側に横向きV字状の窪み部を連続して形成してなる点(共通点4)、
スプール部が大径の円筒状部と小径の円筒状部とを一体的に正面視前方側に横倒しした略凸状に形成され、且つ前端部に鍋蓋状に形成した調節摘みを取り付けると共に、大径の円筒状部の周側面に複数個の孔を穿設してなる点(共通点5)、
スプール部における一対の支柱部のうち、その一の支柱部の外側前端に略長円形板状体を半ひねり状に形成したアーム部と、他方の支柱部の内側前端に略円形状に形成したアーム部とを取り付け、両アーム部の間を略半円弧状のベイルリングで連結してなる点(共通点6)、
ハンドルがギアケース寄り及びこれと反対側の摘み部寄りを互いに反対方向にクランク状に曲げてなる点(共通点7)、において共通点がある。
ロ.両意匠の相違点
上記共通点に対し、両意匠は、具体的構成態様において以下の差異点がある。
ギアケースについて、本件登録意匠がその底面と面一状にカバー部を取り付けてなるのに対し、イ号意匠は底面の左右両側を面取りし、しかもカバー部が底面に対して段差状に突出して取り付けてなる点(差異点1)、
カバー部の正面視形状につき、本件登録意匠がギアケース本体との境界線がへの字状に表れるのに対しイ号意匠は横向き略V字状に表れ、また本件登録意匠にはイ号意匠のようにカバー部の輪郭に沿って形成された帯状部がなく、さらに本件登録意匠は正面視ハンドル取り付け部として楕円形状の突起部を形成してなるが、イ号意匠の突起部は短円柱状である点(差異点2)、
脚部の区割り線の形状につき、本件登録意匠は2本の区割り線が表れ、そのうちの1本がギアケース上端付近で水平方向に対し約50度のカーブを描いてロータ一部側に至るのに対し、イ号意匠は2本の区割り線が帯状部として表れ、次いで1本の区割り線となり、かかる区割り線がギアケースの中央やや下方付近で水平方向に対し約60度のカーブを描いてローター部に至る点(差異点3)、
ローター部における一対の支柱部のうち、貫通孔を形成した支柱部について、本件登録意匠はその三角形状の頂点付近に面取り部を形成してなるが、イ号意匠は支柱部全体の略三角形状の輪郭に沿って面取り部を形成してなる点(差異点4)、
スプール部の大径の円筒状部において、本件登録意匠はローター部寄りに1段構成で小径の孔部を等間隔に穿設してなるのに対し、イ号意匠は径の異なる孔を2段構成とし、また小径の円筒状部につき本件登録意匠はその周側面が無模様であるが、イ号意匠には細溝の筋模様が表れてなり、さらに鍋蓋状の調節摘みを中心にした左右対称の半円形状部の枠内が、本件登録意匠は無模様であるが、イ号意匠は細溝が筋模様に表れてなる点(差異点5)、
ハンドルの摘み部の形状につき、本件登録意匠は横に長い肉厚のある板状体からなり、平面視横長の略台形状で表れてなるが、イ号意匠はその中心部分が上下方向に膨出した円盤状体からなり、しかも中心部分の円形状部外周に正面視略円形状の貫通孔を形成してなる点(差異点6)、等の差異点がある。
(3)イ号意匠と本件登録意匠との類否
イ.本件登録意匠の要部
この種スピニングリールの分野において、ギアケースが歪な略おむすび状に表れ、このギアケースの上方にその上方部が正面視略T字状の脚部を一体的に形成し、さらに該ギアケースの前方側にローター部及びスブール部を組み込んでなるものは既に公知であることは明らかである。
これに対し、上記の公知意匠を含む従来品の中には、本件登録意匠のようにローター部に形成した支柱部に貫通孔を形成したものは全くなく、しかも本件登録意匠における貫通孔の大きさが支柱部の全面積に対し約半分程度の割合を占めるものであり、そうするとこのような大きな貫通孔を支柱部に形成すること自体、従来品にはない大胆な着想に基づく斬新なもので、極めて創作性の高いものと評価することができるのである。
同時に上記ロ一ター部の支柱部は、正面視全体構成のほぼ中心部分に位置し、看者にとっては最も目に付く目立つ部分でもあるため、上記の支柱部の構成態様自体の斬新性と相俟って、この部分に看者の注意が特に向けられると考えるのが相当であり、してみればかかる部分こそが意匠の要部になることは明らかである。
ロ.類否
そこで両意匠の類否について検討すると、先ず、基本的構成態様に関する共通点1は、釣用リールとしての形態全体の骨格をなすものであるため、かかる構成態様が公知であるとしても、全体観察を基本とする意匠の類否判断において重大な影響を及ぼすものである。
しかも両意匠の具体的構成態様における共通点2,3はギアケースが歪なおにぎり状であること、脚部の上方部が略T字状であること、ギアケースを中心にその右側面の勾配が上方の脚部右側面の勾配と一致していることは、各部の構成態様を特徴付ける生命線であり、同時にギアケースと脚部の一体性を強調するものであるため、これら共通点が意匠の類否を左右するものである。
また、共通点4は、本件登録意匠の要部における部分であるから、これが意匠の類否判断において重要な要素になることは論じるまでもなく、さらに共通点5、6及び7は、それぞれスプール部、2つのアーム部、ベイルリング及びハンドル等の各部の形状の骨格となるものである以上、これら共通点も意匠の類否判断に影響を与えるものである。
一方、両意匠の差異点1乃至5は、本物品を構成する各部分の限られた部分的な差異であり、これら差異点がギアケース、支柱部及びスプール部の各部から看取できる印象、歪なおにぎり状(ギアケース)、略三角形状(支柱部)、横倒しした凸状(スプール部)を変える程重大な要因になるとは考えられず、そうするとこれら差異点は全体形状からみて微細なもので、意匠の類否判断に影響を与えるものではない。
また、差異点6もハンドルの構成要素の一部である摘み部に関するもので、釣用リール全体からみればこのような部分的差異が意匠の類否判断に影響を及ぼすとは考えられない。
このことは過去の登録例から裏付けることが可能であり、ギアケース、スプール部及びローター部の構成態様が共通すれば、摘み部の構成態様が異なるものであっても全体として類似するのである。
以上により両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においてその基本的構成態様並びにその具体的構成態様の主要な部分において共通し、しかもかかる共通点は意匠の要部におけるものであり、且つ共通点に係る態様により看者に共通の審美感を与えるのものである。
一方、両意匠の差異点は何れも意匠全体からみれば微細な部分的なものに止まるため、差異点が共通点を凌駕することはあり得ず、それ故、意匠全体として、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものと考える。このことは、甲第11号証が本件登録意匠に類似する意匠として登録されていることからも容易に裏付けすることが可能である。
2.被請求人の答弁
被請求人は不明であるため、その答弁はない。
3.当審の判断
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、登録原簿及び意匠公報の記載によれば、平成10年1月7日の出願に係り、平成11年8月6日に登録第1054150号として設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「釣用リール」とし、その形態を別紙第一に示すとおりとしたものである。
(2)イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出したイ号写真及びイ号説明書によれば、意匠に係る物品を「釣用リール」とし、その形態を別紙第二に示すとおりとしたものである。
(3)本件登録意匠とイ号意匠の対比
両意匠は、意匠に係る物品について一致し、形態について、以下の共通点及び差異点が認められる。
(共通点)
(イ)正面視略砲弾形のギアケースの頭部に略T字状の脚部を設け、片側面中央部にハンドル部を形成し、ギアケース前方に大径円筒状のスプールスカート、小径のスプール、調節摘みをそれぞれ同軸状に設けると共に、ギアケース前端からスプールに達する略三角形状の両翼ローターを設け、両翼ローター間を略弧状に連結するベイルを形成した全体の基本的構成。
(ロ)ギアケースの態様について、正面視略砲弾形の先端を下方に偏らせた態様のものとし、先端の下端部に略嘴様カバーを設け、その右側面及び底面をスプールスカート直径の半分程度の幅の略平坦状に形成し、右側面上方に小レバーを設けた点。
(ハ)脚部の態様について、ギアケース頭部から正面視左斜め上方に伸長させると同時にその断面形状を徐々に窄まらせた態様のものとし、ギアケース前端を過ぎた辺りで垂直状に屈曲させると共にその厚みを幅広に形成し、脚部前方側(脚部内側)を傾斜面に形成し、その延長面を略T字状部中央に結合させている点。
(ニ)ハンドル部の態様について、略円形台状部から垂直部、緩やかな湾曲部、垂直部を経て握り部に至るクランク状ハンドルとした点。
(ホ)スプールスカートの態様について、ギアケース縦幅よりやや大径のものとし、ギアケース側寄りに小孔を周回させている点。
(ヘ)スプール及び調節摘みの態様について、スプールは、軸方向の長さをスプールスカートのそれよりやや短いものとし、調節摘みは、円盤状フランジとダイヤル状摘みを形成した点。
(ト)両翼ローターの態様について、その輪郭が弧状線で形成された2枚の正面視略三角形板状でスプール部を覆うように設けられ、片側面に山形状の透孔及び略V字状凹部を形成すると共にローター前端に小アームを形成し、他方側面には背面視略山形状の部材を嵌着突出させると共にローター前端に半ひねり状のアームを形成し、両アーム間を針金状のベイルリングで連結した点。
(差異点)
一方、両意匠には、具体的態様において、
(い)ギアケースの態様について、本件登録意匠は、略嘴様カバーとギアケース本体との境界線は中途で屈折し、カバーの正背面がなだらかな湾曲面に形成され、その下面はギアケース下面と面一であるのに対し、イ号意匠は、境界線は略直線状で、その正背面が中央の略水平線を境に下方に傾斜し、その下面はギアケース本体下面よりやや突出している点。
(ろ)ハンドルの態様について、本件登録意匠は、ハンドル基部は厚みのある楕円形板で、クランク中央杆は緩やかに湾曲し、握り部は肉厚の隅丸板状体であるのに対し、引用意匠は、ハンドル基部は円柱状で、中央杆はへの字状に屈曲し、握り部は、中央部が膨出した肉厚の円盤状で貫通孔が形成されている点。
(は)スプールスカートの態様について、本件登録意匠は、その横幅がやや広く、表面に小孔が1列形成されているのに対し、イ号意匠は、横幅がやや狭く、径の異なる小孔が2列形成されている点。
(に)調節摘みの態様について、本件登録意匠は、円盤状フランジが小径で装飾模様がないのに対し、イ号意匠は、大径で装飾模様がある点。
(ほ)ローター部の態様について、本件登録意匠は、片側ローター翼の山形状透孔が大きく、略V字状凹部が幅狭に形成され、ベイルリングが側面視縦長に形成されているのに対し、イ号意匠は、山形状透孔が小さく、略V字状凹部は大きく形成され、ベイルリングが横広に形成されている点。
(4)類否判断
そこで、上記差異点及び共通点が類否判断に与える影響について検討すると、基本的な態様についての共通点(イ)は、両意匠の形態全体を支配する骨格的な態様に係り、ギアケースの態様についての共通点(ロ)及び両翼ローターの態様についての共通点(ト)と相まって両意匠の基調が形成され、これに脚部、ハンドル部、スプール部及び調節摘みの態様についての共通点(ハ)ないし(ヘ)が加重されることにより、両意匠に強い類似感をもたらしているものと認められる。これに対し、差異点は類否判断上はいずれも微弱なものにとどまる。
すなわち、差異点(い)は、ギアケースの一部分のカバーの形状の差異であって、ギアケース全体についての共通点(ロ)に比較する場合は部分的な差異にとどまる。ハンドルの態様についての差異点(ろ)のうち、ハンドル基部及び中央杆の差異は、部分的で格別目立つ態様のものでないから類否判断上は微弱なものにとどまる。また、握り部の差異は、この部分だけを抽出して比較すれば目立つ差異ではあるが、ハンドル又は握り部は本体の付属品であって適宜変更することが可能な釣用リールのバリエーションの範囲内のものであるから、その差異は両意匠の上記共通点に優る程のものとは認められない。スプールスカートの態様についての差異点(は)のうち、横幅の差異は微細なものであり、また、小孔の態様の差異については、周回する小孔の態様が余り見られない特徴ある態様であることを考慮すると、その径の大小、1列か2列かの差異は部分的なものにとどまる。調節摘みの態様についての差異点(に)は、格別特筆すべき態様のものでなく部分的改変の域を出ないものであるから、その差異は微弱である。ローター部の態様についての差異点(ほ)は、両翼ローターの態様、就中、その表面に形成された山形状の透孔及び略V字状凹部に特徴があることから、その差異は部分的な改変の範囲内のものであり、ローター部の態様についての共通点(ト)に優る程のものではない。
結局,上記差異点は,いずれも類否判断上は微弱なものにとどまり,それらが相まって奏する効果を検討しても,上記共通点を凌駕して両意匠を別異のものとする程のものとは認められない。
(5)結び
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-10-07 
出願番号 意願平10-238 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (K2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江塚 尚弘 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 樋田 敏恵
岩井 芳紀
登録日 1999-08-06 
登録番号 意匠登録第1054150号(D1054150) 
代理人 中谷 寛昭 
代理人 藤本 昇 
代理人 鈴木 活人 
代理人 薬丸 誠一 
代理人 大中 実 
代理人 岩田 徳哉 
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