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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない F4 |
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管理番号 | 1090035 |
審判番号 | 無効2003-35274 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2004-02-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-07-02 |
確定日 | 2004-01-09 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1170493号「包装用容器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及びその理由 請求人は、「登録第1170493号意匠の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第13号証、及び検甲第1号証及び検甲第2号証を提出した。 登録第1170493号意匠(以下、「本件登録意匠」とする。)は、意匠登録第804975号の意匠(以下、「甲号意匠」とする。)に類似する。即ち、両意匠は、全体の基本構成を同じくし、これに蓋体の下部口元(開口端)形状と蓋体上部の天井面形状とが、共に正八角形の相似形で、下部口元に対し天井面が、中心軸22.5度の角度で左水平に捻られて、各側壁が変形菱形状に捻れた態様となっているものであり、これに上下の角部をつなぐ傾斜線も加わって全体の基調が形成され、両意匠に強い類似性をもたらしている。しかもこの態様は、引用意匠の出願前には例を見ない態様であるから、両意匠の類似性は明白である。従って本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するにもかかわらず登録されたものであり、同法第48条第1項第1号の規定によりその登録は無効とすべきである。 第2.被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、要旨以下のとおり主張をし、立証として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。 本件登録意匠と甲号意匠とは、基本的形態において共通点はあるものの両意匠に特有のものではなく、両意匠は、意匠全体に占める蓋体の高さの比率が全く違い、また蓋体の側壁、フランジ等の具体的形態に顕著な相違があり、両意匠から生じる美的印象は全く異なり、非類似であるから、無効とすべき理由がない。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成14年4月5日に出願があり、平成15年2月21日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、意匠に係る物品を「包装用容器」とし、その形態は、願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりのものである。(別紙第一参照) 2.甲号意匠 甲号意匠は、平成3年1月18日発行の意匠公報に記載された、意匠登録第804975号の意匠であり、意匠に係る物品が「包装用容器」で、その形態は当該公報に記載されたとおりのものである。(別紙第二参照) 3.本件登録意匠と甲号意匠の対比 本件登録意匠と甲号意匠を対比するに、両意匠は意匠に係る物品が共通し、その形態について、(1)有底逆八角錐台筒状の、やや深い皿状の容器本体の上部開口端に、伏皿状に蓋体を被せたもので、蓋体は有頂低八角錐台筒状の頂面を横水平に捻った態様のものとしている点、各部の具体的な態様について(2)容器本体は、上部開口端に倒コの字状の縁部を表したものである点、(3)蓋体について、捻りは、下部開口端に対し頂面を22.5度、右方向に軸回転させたもので、従って上面視において、頂面の各角部が下部開口端の角部の幅中央に位置し、上下の角部を繋ぐ稜部が蓋体周壁において右上がりの傾斜状に表れるものであり、下部開口端に、下向きに突出する倒L字状の嵌合縁を設けて、容器本体と嵌め合わせたものとしている点、(4)全体の高さが容器径の大略1/2で、蓋体と容器本体の高さ比(被蓋時)が大略1対2で、正面からみた場合、頂面の横幅が底面の横幅よりやや大きいものである点、が共通する。 一方両意匠は、(イ)蓋体周壁に表れる傾斜状の稜部について、本件登録意匠は、下端を凹湾状として頂面の角部に至る上尖斜三角状の抉り面を表しているのに対し、甲号意匠は該当する抉り面を表していないものである点、(ロ)本件登録意匠は、蓋体壁面下端に4箇所の突起を表しているのに対し、甲号意匠は該当する突起を表していない点、(ハ)本件登録意匠は、容器本体の下端を段状に縮径しているのに対し、甲号意匠は該部を縮径していない点、に主として差異が認められる。 そこで両意匠の共通点と差異点を全体として検討する。 まず両意匠の共通点について、包装用容器の形態として、容器本体を、上部開口端に倒コの字状の縁部を設けた有底逆八角錐台筒状のやや深い皿状のものとし、これに下部開口端に倒L字状の嵌合縁を設けた有頂低八角錐台筒状の蓋体を被せた態様のものは、甲号意匠の出願日(昭和63年9月26日)前にも既に認められ(例えば、中国パール化成株式会社発行の「’88General Catalog」(特許庁意匠課受入昭和63年9月16日)24頁に所載された「S-23」、或いは「S-25」とする容器、別紙第三参照)、またこの種の容器においては、前示共通点(4)の構成比率にも格別特徴が認められないことを考慮すると、引用意匠の主たる特徴は、その蓋体について、頂面を横水平に捻った態様として、蓋体周壁に稜部が傾斜状に表れる態様、及びこれに係る具体的な態様にあると認められる。 ところで各種包装用容器の分野においては、全体を略多角筒状、或いは略多角錐台筒状とする蓋体や容器本体について、全体を横水平に捻った態様として、その周壁に稜部が傾斜状に表れる態様は、甲号意匠の出願前から既に広くみられるところであり(例えば、意匠登録第138812号、同301766号、同640509号、同705147号、同731543号等)、包装用容器の分野においては広く用いられる造形手法で、またその捻りを、上端の角部を下端の角部間の幅中央の位置とすることもこれらに認められるものであり、両意匠について、蓋体の頂面を横水平に捻った態様として蓋体周壁に稜部が傾斜状に表れる点、また軸回転の角度を右方向に22.5度としている点、或いは頂面の各角部を下部開口端の角部の幅中央に位置させている点を、独自の特徴としてはさほど大きく評価できない。 そして前述のとおり、その余の両意匠の共通点に格別の特徴が認められないことを合わせ考慮すると、両意匠の共通点のみによって、直ちに両意匠の類否が決せられるまでものとすることができない。 一方差異点について、(ロ)の点は、本件登録意匠の突起もさほど大きいものでなく、また散点的に表されたものであり、そして(ハ)の点も僅かな段差であるから、共に全体形態への影響は弱く、何れも類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえない。 しかしながら、(イ)の点、即ち本件登録意匠の蓋体周壁の傾斜状の稜部が、下端を凹湾状として頂面の角部に至る上尖斜三角状の抉り面として表されている点は、俯瞰した場合に、看者の目によく触れるところに表された態様で、またこの種の比較的シンプルな形態の容器の中にあっては、装飾的な形態として看者の視覚を強く捉えるものと認められ、しかもこの種の蓋体の稜部の形態として普通にみられるものともいえず、この差異は、両意匠の、蓋体頂面を横水平に捻った態様として周壁に稜部が傾斜状に表れているという共通点を凌駕して、本件登録意匠の特徴をよく表すところに係わり、その余の態様と相関連して、本件登録意匠を甲号意匠と異なる別異のものに特徴付けており、その差異は、両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものとせざるを得ない。 そしてこの差異は、両意匠の共通点の関連した効果を考慮しても、共通点の類否判断に及ぼす影響を凌いで両意匠の類否を決定付けるものであり、意匠全体として、本件登録意匠は甲号意匠に類似するものとはいえない。 以上のとおりであって、本件登録意匠は甲号意匠に類似するものとはいえず、請求人の主張、及び提出した証拠によっては、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に該当するものとしてその登録を無効とすることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2003-11-11 |
結審通知日 | 2003-11-14 |
審決日 | 2003-11-28 |
出願番号 | 意願2002-9222(D2002-9222) |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Y
(F4)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
山崎 裕造 市村 節子 |
登録日 | 2003-02-21 |
登録番号 | 意匠登録第1170493号(D1170493) |
代理人 | 川崎 実夫 |
代理人 | 廣江 武典 |
代理人 | 稲岡 耕作 |
代理人 | 宇野 健一 |