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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) L3
管理番号 1091646 
判定請求番号 判定2003-60060
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2004-03-26 
種別 判定 
判定請求日 2003-08-07 
確定日 2004-02-20 
意匠に係る物品 支柱固定具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1090256号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「支柱固定具」の意匠は、登録第1090256号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求人の申立て及び理由

1.請求人は、「イ号意匠は、登録第1090256号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申立、その理由として要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第一号証ないし甲第三号証を提出した。

2.意匠登録第1090256号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びイ号意匠との対比
(1)本件登録意匠とイ号意匠とは、ブロック挟持部の構成上、イ号意匠は平坦板状であるのに対して、本件登録意匠には3本の断面円弧状扁平リブが凸設されている点に差異がある。しかしこの差異は、両意匠がブロック挟持部を一枚板で形成している点で共通する以上、類似の範囲内における部分的差異である。
(2)本件登録意匠とイ号意匠とは、支柱固定部の切欠部の構成上、切り欠きがブロック挟持部面まで達しているか中途で終わっているかの点に差異がある。しかしこの差異は、共に明瞭に大きな切り欠きが対向する二面にのみ形成されているとの全体的な構成態様の共通性に照らせば、部分的差異に止まる。
(3)木ねじの穴やボルトの穴の配置及びボルト固定用六角ナットに六角ボルトが取り付けられているか否か等の構成における差異は、ありふれた設計上の些細な変更にすぎず両意匠の美感を左右しない。
(4)そこで、両意匠を意匠全体として対比すると、倒コ字状のブロック挟持部に角筒状支柱固定部を立設したもので、ブロック挟持部は矩形板の左右に直角に垂下する垂下片を設け、全体として端面を扁平倒立コ字状に形成したものであって、ブロック挟持部の一方の垂下片の下端近傍左右位置には、2個のボルト穴が設けられてボルト固定用六角ナットが溶接されており、ブロック挟持部の支柱固定部内側位置には矩形か円形かに関わらず大径穴が開けられており、支柱固定部は、断面が正方形で、側面視の縦横比が約3対2の縦長角筒状であり支柱固定部の対向する正背両面には、下端に達するか否かに関わらず長大な切欠部が形成されており、切欠部上端左右片は隅丸状であり、切欠部左右片にはそれぞれ木ねじ用の穴が開けられており、支柱固定部の対向する左右両面にはボルト用の穴が設けられているとの構成において、ことごとく一致している。

甲第一号証 本件登録意匠
甲第二号証 イ号意匠
甲第三号証 被請求人提示公知資料

第2 被請求人の主張

被請求人は、「イ号意匠は登録第1090256号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないとの判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のとおり主張をした。
(1)本件登録意匠にあっては、その公知の意匠(甲第三号証)と対比すると、両者は、その基本的形態において、ことごとく共通するものである以上その意匠の範囲は意匠公報の表された全体の形態に基づき判断するべきである。
そうして本件登録意匠と、イ号意匠を対比する。
(2)本件登録意匠は、「ブロック挟持部の表面には、コ字状に沿って左右端及び中央の三箇所に断面円弧状扁平リブが突設され」ている形態であるが、イ号意匠にはこの形態を採用していない。
(3)本件登録意匠は、「ブロック挟持部の表面の中央に大径矩形穴が設けられ」ている形態であるが、イ号意匠は、「大径円形穴」でありその形態が相違する。
(4)本件登録意匠は、「縦割状切欠部を挟む左右片の略中央部にはそれぞれ小円孔が形成され」ている形態であるが、イ号意匠は、「左右片の上方と下方にそれぞれ小円孔を形成した」もので、その形態が相違する。
(5)本件登録意匠は、「支柱取り付け部の縦割状切欠部のない両対向面には上方寄り中央位置に小円孔が形成され」た形態であるが、イ号意匠は、この形態を採用していない。
(6)このようにイ号意匠は、本件登録意匠の形態とことごとく相違する。
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠と多岐にわたり相違する形態であって、本件登録意匠と類似しない意匠であり、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないものである。

第3 当審の判断

1. 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年10月20日の意匠登録出願に係り、平成12年9月1日設定の登録がなされたものであって、願書及び願書に添付された図面によれば、意匠に係る物品を「支柱固定具」とし、その形態は、添付された図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)
すなわち、その形態は、全体が、横長矩形状板体の左右部分を垂直に折曲して、正面視倒コ字状に形成したブロック挟持部と、該ブロック挟持部の上面中央部に外周に余地部を残して、略縦長正方形筒状に形成した支柱支持部を立設した基本的構成態様のもので、
各部の具体的態様において、
(A)ブロック挟持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの長さ比率を略3対2対3とし、上面を支柱支持部接合面、左右の垂直面をブロック挟持片としたものであり、支柱支持部接合面から左右のブロック挟持片下端部にかけて、当該面の前端部寄りと後端部寄りの表面に、わずかに円弧状に膨出したリブを連続して形成すると共に、その中央部分に、支柱支持部接合面の左右端部寄りから左右のブロック挟持片下端部にかけて同様のリブを形成したものである点、
(B)右側のブロック挟持片につき、前後端部近傍(リブの内側)やや下方寄りに六角ナットを設けた点、
(C)支柱支持部接合面につき、余地部の幅を同面の幅の略5分の1とし、中央部に、支柱支持部の筒の大きさより一回り小さな正方形状の孔を穿っている点、
(D)支柱支持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの比率を略2対3対2としたもので、一部材からなり、その正面及び背面側に、上端開放部の幅が支柱支持部の幅の3分の1弱、深さが支柱支持部の高さの3分の2強の下すぼまり状とした略V字状の切り欠き部を形成したもので、該切り欠き部の上端開放部の角部を円弧状に、尖端部を小円弧状にそれぞれ形成したものである点、
(E)支柱支持部の正背面側につき、切り欠き部の左右余地部それぞれの左右中央のやや上方寄りに、左右対称状に小円孔を穿っている点、
(F)支柱支持部の左右側面側につき、左右両側面の相対する部位で、奥行きの中央部やや上方寄りの部位に少し大きめの円孔を穿ったものである点、
が認められる。

2. イ号意匠
イ号意匠は、請求の理由及び甲第二号証の記載によれば、意匠に係る物品を「ブロック用固定金具」とし、その形態は、写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)
すなわち、その形態は、全体が、横長矩形状板体の左右部分を垂直に折曲して、正面視倒コ字状に形成したブロック挟持部と、該ブロック挟持部の上面中央部に外周に余地部を残して、略縦長正方形筒状に形成した支柱支持部を立設した基本的構成態様のもので、
各部の具体的態様において、
(A’)ブロック挟持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの長さ比率を略3対2対3とし、上面を支柱支持部接合面、左右の垂直面をブロック挟持片としたものである点、
(B’)左右側のブロック挟持片につき、右側のブロック挟持片は、前後端部近傍やや下方寄りに六角ナットを設け、該部にボルトをねじ込んでおり、左側のブロック挟持片は、該六角ナットに対応する部位に、内側に向かってわずかに突出した突起部を形成している点、
(C’)支柱支持部接合面につき、余地部の幅を同面の幅の略5分の1とし、中央部に、支柱支持部の筒の大きさより一回り小さな円形状の孔を穿っている点、
(D’)支柱支持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの比率を略2対3対2とした、二部材からなるもので、平面視略「コ」字状の部材を、それぞれの開放部側を向かい合わせ状に隙間を開けて左右に配したもので、該隙間の幅を、支柱支持部全体の幅の3分の1弱とし、ブロック挟持部上面に至る全高にわたって平行状に形成し、上端開放部の角部を円弧状に形成している点、
(E’)支柱支持部の正背面側につき、右側の部材の正面(正面右側)上方及び背面(背面左側)下方に小円孔を穿ち、左側の部材の正面(正面左側)下方及び背面(背面右側)上方に小円孔を穿ったものである点、
(F’)支柱支持部の左右側面につき、右側の部材の側面(右側面)は、前寄り下方と後寄り上方の部位に小円孔を穿ち、左側の部材の側面(左側面)は、前寄り上方と後寄り下方の部位に小円孔を穿ったものである点、
が認められる。

3. 両意匠の対比考察
(1) 本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が共に、ブロック上に柵用支柱を立設するための固定金具である点で共通し、形態については、以下に示す共通点、及び差異点が認められる。
まず共通点として、全体が、横長矩形状板体の左右部分を垂直に折曲して、正面視倒コ字状に形成したブロック挟持部と、該ブロック挟持部の上面中央部に外周に余地部を残して、略縦長正方形筒状に形成した支柱支持部を立設した基本的構成態様のものである点が認められる。
各部の具体的態様において、
(a)ブロック挟持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの長さ比率を略3対2対3とし、上面を支柱支持部接合面、左右の垂直面をブロック挟持片としたものである点、
(b)右側のブロック挟持片につき、前後端部近傍やや下方寄りに六角ナットを設けた点、
(c)支柱支持部接合面につき、余地部の幅を同面の略5分の1とし、中央部に、支柱支持部の筒の大きさより一回り小さな孔を穿っている点、
(d)支柱支持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの比率を略2対3対2としたものである点、
(e)上端開放部の角部を円弧状に形成し、正背面に小円孔を穿っている点、
(f)左右両側面に円孔を穿った点、
が認められる。
次に差異点として、
(a’)ブロック挟持部につき、本件登録意匠は、ブロック挟持部の前端部寄り及び後端部寄りには、外側に向かって円弧状にわずかに膨出したリブを形成すると共に、その中央部分に、支柱支持部接合面の左右端部寄りから左右のブロック挟持片下端部に及ぶ同様のリブを形成しているのに対して、イ号意匠は、いずれのリブも有していない点、
(b’)イ号意匠は、右側ブロック挟持片の六角ナットにボルトがねじ込まれ、左側ブロック挟持片の該六角ナットに相対する部位に、内側に向かってわずかに突出した突起部を形成しているのに対して、本件登録意匠は、そのいずれも有していない点、
(c’)支柱支持部接合面の孔につき、本件登録意匠は、正方形状であるのに対して、イ号意匠は、円形状である点、
(d’)支柱支持部につき、本件登録意匠は、一部材からなるもので、正背面側に深さが支柱支持部の高さの3分の1で、下方尖端部を弧状とした略V字状の切り欠き部を形成しているのに対して、イ号意匠は、平面視略コ字状の二部材からなり、開放部側を向かい合わせ状に隙間を形成し、該隙間を、ブロック挟持部上面に至る全高にわたって平行状に形成したものである点
(e’)支柱支持部の正背面につき、本件登録意匠は、切り欠き部の左右余地部に左右対称状に小円孔を穿ったものであるのに対し、イ号意匠は、正面右側上方、正面左側下方、背面右側上方及び背面左側下方に、それぞれはすかい状に小円孔を穿ったものである点
(f’)支柱支持部の左右側面につき、本件登録意匠は、左右両側面の相対する部位で、奥行きの中央部やや上方寄りに少し大きめの円孔を穿ったものであるのに対して、イ号意匠は、右側面の前寄り下方、後寄り上方及び左側面の前寄り上方、後寄り下方に、それぞれはすかい状に小円孔を穿ったものである点、
が認められる。
(2) そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、上記共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
まず、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、両意匠の骨格をなす態様であるが、この種物品においては、本件登録意匠の出願前に他に見受けられる態様(例えば、甲第三号証の意匠(別紙第3参照)、意匠登録第751851号の類似第1号公報掲載の「防護柵取付金具」の意匠(別紙第4参照))であるから、格別高く評価することができないものであり、類否判断に与える影響は微弱なものと認められる。
次に各部の具体的態様において共通する点について、
(a)及び(b)の点は、従来より普通に見受けられるもので(甲第三号証の意匠参照)、両意匠のみに共通する特徴といえるものではなく、類否判断に与える影響は微弱にすぎない。
(c)の点は、支柱支持部内に雨水等が溜まらないように孔を穿つことが普通に行われているところであり(例えば、前出の意匠登録第751851号の類似第1号公報掲載の意匠)、使用態様においては、支柱を差し込むことにより見えなくなる部分であることを勘案すると、類否判断に与える影響は微弱にすぎない。
(d)の点は、使用する支柱の太さ、長さ等により必然的に決まる、いわば規格に相当する部分であり、格別の創作は認められず、類否判断に影響を与えるものではない。
(e)及び(f)の点は、いずれも支柱を固定するためのねじやボルト用の孔であって、この種物品においては極普通に見受けられるものであり、(e’)及び(f’)の孔の具体的な配置の差異がこれを凌駕しており、類否判断に与える影響は微弱にすぎない。
そうすると、これらの共通点は、いずれも類否判断に与える影響が微弱であって、これら共通点を総合し、相まった効果を考慮しても、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。
次に、差異点の
(a’)の点は、リブの有無に係るものであるが、この種物品において、強度を高めるために、円弧状に膨出したリブを設けることが普通に見受けられると同時に、リブを有しないものも普通に見受けられるもので、いずれも両意匠それぞれのみの特徴といえるものではなく、類否判断に与える影響は微弱にすぎない。
(b’)の点は、ボルトの有無につき、いずれもその使用状態において、ボルトを固着手段として用いる点で共通する中での有無の差異であって、微細な差異にすぎず、また、イ号意匠の突起部を有する点についても、ボルト挿入部と相対する部位に突起部を設けて固着度を高めることは、この種物品においては普通に見受けられ、その形状もありふれたものであって、この点が、イ号意匠のみの特徴といえるほどのものではなく、いずれの差異も類否判断に与える影響は微弱なものである。
(c’)の点は、共通する(c)の孔の具体的な形状の差異であるが、その形状も極普通の正方形状又は円形状としたものであり、使用態様においては見えなくなる部分であることを勘案すると、類否判断に与える影響は微弱にすぎない。
(d’)の点は、支柱支持部について、本件登録意匠が、略V字状の切り欠き部を有する一部材からなるものに対して、イ号意匠が、コ字状の部材を間隔を開けて立設した二部材からなる差異であるが、前記したように、両意匠の共通するとした基本的構成態様が、本件登録意匠独自の態様といえないことを考慮すると、両意匠の要部は、上方に設けた看者の注意を強く惹くところの支柱支持部であるということができる。そうすると、その支柱支持部において本件登録意匠の切り欠きは、一部材によって形成された角筒体の一部を切り欠いた程度のものとの印象を与えるのに対して、イ号意匠の間隔は、二部材によるもので、その間隔が明瞭であり、全体として二部材によって挟み込む印象を与えるものであるから、この差異は、顕著なものといわざるを得ず、この点が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
(e’)及び(f’)の点は、本件登録意匠のそれぞれの相対する面の対向する部位に孔を配したもの、イ号意匠の各面の同じ部位にはすかい状に孔を配したもののいずれの配置も普通に見受けられるものではあるが、上記(d’)の差異点と相まって、別異の印象を与えるもので、両意匠の類否判断に若干の影響を及ぼすものである。
そして、これらを総合し、意匠全体として観察した場合、支柱支持部における、略V字状の切り欠き部を有する一部材からなるものか、コ字状の部材を間隔を開けて立設した二部材からなるものかの具体的態様が表出する両意匠の印象の差異は、その他の差異点と相まって、前記共通点を大きく凌駕して、両意匠が看者に別異の印象を与えるものであり、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。
以上のとおり、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態については、共通点があっても、類否判断を左右する差異点があるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しているものということができない。

4. むすび
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものであるから、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2004-02-10 
出願番号 意願平11-28994 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (L3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川越 弘 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 内藤 弘樹
西本 幸男
登録日 2000-09-01 
登録番号 意匠登録第1090256号(D1090256) 
代理人 犬飼 達彦 
代理人 山本 哲也 
代理人 石岡 隆 
代理人 岡田 英彦 
代理人 福迫 眞一 
代理人 福田 鉄男 

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