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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H4
管理番号 1098208 
審判番号 不服2003-7651
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-02 
確定日 2004-06-11 
意匠に係る物品 デジタルカメラ 
事件の表示 意願2001- 34731「デジタルカメラ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、平成13年(2001年)11月28日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「デジタルカメラ」とし、その形態は、願書に添付した図面に記載されたとおりであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で表し、受けようとする部分とそれ以外の部分との境界を一点鎖線で表したものである(別紙第一参照)。

第2 引用意匠
原審において、本願意匠が類似するとして、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本願の出願前、日本国特許庁が平成13年(2001年)10月9日に発行した意匠公報に記載の意匠登録第1123208号の意匠のレンズを含むレンズ周辺部分であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「デジタルビデオディスクプレーヤー付ビデオカメラ」とし、その形態は、同公報に記載されたとおりのものであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で表し、受けようとする部分とそれ以外の部分との境界を一点鎖線で表したものである(別紙第二参照)。

第3 両意匠の対比
本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠は、何れも手に持って被写体を撮影するために使用されるものであって、意匠に係る物品が共通し、また、本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、筐体正面に設けた右上隅のレンズ部とその周辺の部分であり、その部分に対応する引用意匠の部分と、用途、機能及び大きさがほぼ共通しているが、物品全体の形態に関する相対的な位置及び範囲については、引用意匠が、背面部における稜線付近以外の部位、及び上面及び右側面に表れている矩形部位について、部分意匠として意匠登録を受けようとしていない点で相違している。さらに、両意匠の形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。

すなわち、両意匠は、全体が奥行きの短い横長で扁平な略直方体形状のカメラの筺体であって、本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と、それに対応する引用意匠の部分について、正面右上にレンズ部を設けた部分であって、レンズ部を円形の突状環とその内側の円形のレンズから構成し、正面右下にレンズ部の張り出しによって正面視円弧状に膨出部を設けた基本的な構成態様において共通している点はあるが、一方、具体的な構成態様において、主に、以下の点に差異がある。

(1)筐体の奥行き(厚み)の長さについて、本願意匠は、筐体の高さの略1/5であるのに対して、引用意匠は、筐体の高さの略1/3である点、

(2)レンズ部の位置及び筐体との関係について、本願意匠は、レンズ部が筐体正面の右上45度方向に張り出して配されており、上面部においても正面視円弧状の膨出部が形成されているが、引用意匠は、レンズ部が筐体正面の右上において右水平方向にのみ張り出し、その結果、上面部に膨出部が形成されていない点、

(3)背面左上の態様について、本願意匠は、筐体背面左上に表れる円弧状の稜線の外側に、レンズ部の張り出しによって形成される部位の稜線が半円周状に表れ、それら二つの稜線が二重に表出しているのに対して、引用意匠は、筐体背面左上の円弧状の稜線がそのままレンズ部の張り出しによって形成され、本願意匠に見られるような二重の稜線がない点、

(4)レンズ部の突状環の態様について、本願意匠は、正面視ドーナツ形状の突状環を配し、突状環の前面を平坦に形成し、突状環の幅が比較的幅広に形成されているが、引用意匠は、先窄まり状の突状環を配し、突状環の幅が極めて狭く構成されている点、

(5)平面から看取される突状環の態様について、本願意匠は、細長矩形状として筐体前面から僅かに突出しているのに対して、引用意匠は、扁平台形状として筐体前面から大きく突出している点、が認められる。

第4 両意匠の類否の判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討すると、まず、両意匠に共通するとした基本的な構成態様については、本願意匠の出願前、この種物品の属する分野において、他にも見受けられる態様であって格別看者の注意を引くものとは言い難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、さらに、それらの共通点を纏めても、特段際立った特徴を奏するとは言い難いものであるので、類否判断に及ぼす影響はなお微弱の域を超えるものではない。

一方、前記各差異点について検討すると、
(1)の筐体の奥行き(厚み)の長さについては、本願意匠が、薄型としているのに対して、引用意匠は、厚型としていることから、その筐体の厚さの相違は、筐体全体の基本的な形態上の基調を別異のものとし、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分についても、その厚さの差異は筐体と同様に顕著であるから、類否判断に影響を及ぼすものと言える。

(2)のレンズ部の位置及び筐体との関係については、この種物品の目立つ部位であるレンズ部の構成態様に関するものであり、レンズ部が筐体の右上45度方向に張り出して配された本願意匠のレンズ部の構成態様は、右水平方向にのみ張り出した引用意匠の構成態様とは大きく異なっており、特に、上面に形成される膨出部の有無の差異は、看者に異なった視覚的印象を与えるものであるから、類否判断に影響を及ぼすものと言える。

(3)背面左上の態様については、この種物品分野においては背面部の構成態様も類否判断上重要なものであり、本願意匠が、背面左上に表出される二重の稜線によって、レンズ部の張り出しの構成態様が強調されて看取されるという特徴を有するのに対し、引用意匠にはそのような特徴が見られないため、二重の稜線の有無の相違は、類否判断に影響を及ぼすものであると言える。

(4)ないし(5)の突状環の態様については、レンズの周囲という比較的目立つ部位に関する相違であり、平坦かつ幅広で筐体前面から僅かに突出した本願意匠の態様と、先窄まりかつ幅狭で筐体前面から大きく突出した引用意匠の態様とでは、正面視、平面視及び側面視において、看者に別異の視覚的印象を与えるものであることから、類否判断に影響を及ぼすものと言える。

そうすると、前記(1)ないし(5)の差異点は、何れも、両意匠に共通するとした態様を翻す程の印象を看者に与えるものであり、その余の差異点と相俟って、両意匠の醸し出す形態全体の印象を異にする程の差異感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすと言わざるを得ない。

したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途、機能及び大きさがほぼ共通しているが、物品全体の形態に関する相対的な位置及び範囲については相違し、また、形態において、差異点が両意匠の共通点を凌駕して類否判断を左右するという外ないから、本願意匠は、引用意匠に類似する意匠とは言えない。

第5 むすび
本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2004-05-27 
出願番号 意願2001-34731(D2001-34731) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 鍋田 和宣
小林 裕和
登録日 2004-07-02 
登録番号 意匠登録第1214381号(D1214381) 
代理人 羽切 正治 

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