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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L3 |
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管理番号 | 1101319 |
審判番号 | 無効2003-35421 |
総通号数 | 57 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2004-09-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-10-07 |
確定日 | 2004-06-30 |
意匠に係る物品 | 支柱固定具 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1090256号「支柱固定具」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 請求人の申立及び理由 請求人は、「意匠登録第1090256号(以下、「本件登録意匠」という)を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」と申立て、その理由として要旨以下に示すとおり主張した。 まず要点として、本登録意匠は、甲第1号証(以下、「甲号意匠」という)に記載のものと類似するものであって、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 本件登録意匠と甲号意匠とは、共に「支柱用固定具」である物品として同一である。 そして、両者は、その基本的形態において共通する。すなわち、全体の形態として、「倒立コ字状のブロック挟持部に、角筒状の支柱固定部を主体とし」た形態であり共通する。 このブロック挟持部においても、「矩形板を左右に直角に垂下する垂下片を設け、」「ブロック挟持部の一方の垂下片の下端近傍左右に2個のボルト孔が設けられ、六角ナット(甲号意匠は、六角ボルト)が突設され、」「ブロック挟持部の表面には、コ字状に沿って左右端及び中央の三箇所(甲号意匠は、左右端の二箇所)に断面円弧状扁平リブが突設され、」た形態であり、両者はその共通する形態である。 なお、両者はブロック挟持部の基本的形態において六角ナットか六角ボルトか、また、断面円弧状扁平リブが三箇所であるか二箇所であるかの相違がみられるが、その相違は極めて細部の相違で、その外観における基本形態に何ら変化を与えるものではない。 また、支柱固定部においても、本件登録意匠が「支柱固定部は、断面正方形で、側面視の縦横比が約3/2の縦長角筒状である」のに対し、甲号意匠は、「支柱固定部は断面正方形で、側面視の縦横比が約1対1の角筒状である。」形態であり、両者はその縦横の比率の相違が見られるものの、依然として共通する形態であることは明らかである。 しかし、両者は、本件登録意匠において、「ブロック挟持部の表面の中央部に大径矩形孔が設けられ」、「支柱固定部の正背対向面には、上端から下端近傍位置に達する上側を隅丸状となした略U字状の縦割り状切り欠き部が形成され」、「縦割状切欠部を挟む左右辺の略中央部にはそれぞれ小円孔が形成され」、「支柱取付け部の縦割状切欠部のない両対向面には上方寄り中央位置に小円孔が形成され」た形態が、甲号意匠と異にするが、これらの相違する形態は、前記「ブロック挟持部」、「支柱固定部」の全体の基本形態に変化を及ぼすことのない単なる付加的形態で、部分的な差異に止まるものであり、その差異は両意匠の類似性を妨げるものではない。 したがって、本件登録意匠は、甲号意匠と類似するものであり、無効とすべきである。 証拠方法 甲第1号証 「カーマホームセンター 豊川店・春日井店」の広告紙 の写し 第2 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下に示すとおり主張した。 両意匠は、倒立「コ」の字状のブロック挟持部に、角筒状の支柱固定部を立設した点は共通するものの、矩形状の左右に直角に垂下片を設け、全体として端面を扁平倒立「コ」の字状とするブロック挟持片の態様は、両意匠と近似する物品の公知例として乙第二号証に示すとおり、本件登録意匠の出願前に既に公知の態様であり、また角筒状の支柱固定部をブロック挟持部に立設することも、この種物品の機能上必然的に採用しなければならない形態のひとつであるから、これらの共通点は両意匠の類否を左右しない。 一方、本件登録意匠は、ブロック挟持部及び支柱取付部の態様において引用意匠と顕著な差異が存在し、この差異は、両意匠の類否判断上の要部におけるものであって看者の注意を引くところである。 そこで両意匠を意匠全体として考察すれば、本件登録意匠が引用意匠とは別異の創作に係る非類似の意匠であることは自明である。 したがって、引用意匠の存在を理由に本件登録意匠の登録の無効を主張する請求人の主張には理由がない。 証拠方法 乙第一号証 甲第1号証の一部拡大コピー 乙第二号証 意匠登録第699871号公報 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成11年10月20日の意匠登録出願に係り、平成12年9月1日設定の登録がなされたものであって、願書及び願書に添付された図面によれば、意匠に係る物品を「支柱固定具」とし、その形態は、添付された図面に表されたとおりのものである(別紙第1参照)。 すなわち、その形態は、全体が、横長矩形状板体の左右部分を垂直に折曲して、正面視倒コ字状に形成したブロック挟持部と、該ブロック挟持部の上面中央部に外周に余地部を残して、角筒状に形成した支柱支持部を立設した基本的構成態様のものであり、各部の具体的態様において、 (A)ブロック挟持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの長さ比率を略3対2対3とし、上面を支柱支持部接合面、左右の垂直面をブロック挟持片としたものであり、支柱支持部接合面から左右のブロック挟持片下端部にかけて、当該面の前端部寄りと後端部寄りの表面に、わずかに円弧状に膨出したリブを連続して形成すると共に、その中央部分に、支柱支持部接合面の左右端部寄りから左右のブロック挟持片下端部にかけて同様のリブを形成したものである点、 (B)右側のブロック挟持片につき、前後端部近傍(リブの内側)やや下方寄りに押圧金具用の六角ナットを設けた点、 (C)支柱支持部接合面につき、余地部の幅を同面の幅の略5分の1とし、中央部に、支柱支持部の筒の大きさより一回り小さな正方形状の孔を穿っている点、 (D)支柱支持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの比率を略2対3対2としたもので、その正面及び背面側に、上端開放部の幅が支柱支持部の幅の3分の1弱、深さが支柱支持部の高さの3分の2強の下すぼまり状とした略V字状の切り欠き部を形成したもので、該切り欠き部の上端開放部の角部を円弧状に、尖端部を小円弧状にそれぞれ形成したものである点、 (E)支柱支持部の正背面側につき、切り欠き部の左右余地部それぞれの左右中央のやや上方寄りに、左右対称状に小円孔を穿っている点、 (F)支柱支持部の左右側面側につき、左右両側面の相対する部位で、奥行きの中央部やや上方寄りの部位に少し大きめの円孔を穿ったものである点、 が認められる。 2.甲号意匠 甲号意匠は、請求の理由及び甲第1号証の広告紙の右端中央部に掲載されたブロック用「LF60-11」の写真版によれば、意匠に係る物品を「ブロック用ラティスポール止め金具」とし、その形態は、写真版に現されたとおりのものである(以下、本件登録意匠に合わせて、甲号意匠の正面側を右側面に置き換えて比較する)(別紙第2参照)。 すなわち、その形態は、全体が、横長矩形状板体の左右部分を垂直に折曲して、正面視倒コ字状に形成したブロック挟持部と、該ブロック挟持部の上面中央部に外周に余地部を残して、角筒状に形成した支柱支持部を立設した基本的構成態様のものであり、各部の具体的態様において、 (A’)ブロック挟持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの長さ比率を略3対2対3とし、上面を支柱支持部接合面、左右の垂直面をブロック挟持片としたもので、該挟持片に沿うように外周に倒コ字状の棒状体を、支柱支持部の前後に1本ずつ、接する態様で配している点、 (B’)右側のブロック挟持片につき、前後端部近傍ほぼ中央部に押圧金具用のナットと該ナットにねじ込んだ六角頭ボルトを設けている点、 (C’)支柱支持部接合面につき、余地部の幅を同面の幅の略4分の1としている点、 (D’)支柱支持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの比率を略1対1対1としたものである点、 が認められる。 3. 本件登録意匠と甲号意匠の類否判断 (1)両意匠の共通点及び差異点 本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共に、ブロック上に柵用支柱を立設するための固定金具である点で共通し、形態については、以下に示す共通点、及び差異点が認められる。 まず共通点として、全体が、横長矩形状板体の左右部分を垂直に折曲して、正面視倒コ字状に形成したブロック挟持部と、該ブロック挟持部の上面中央部に外周に余地部を残して、角筒状に形成した支柱支持部を立設した基本的構成態様のものである点が認められる。 各部の具体的態様において、 (a)ブロック挟持部につき、全体の幅、高さ、奥行きの長さ比率を略3対2対3とし、上面を支柱支持部接合面、左右の垂直面をブロック挟持片としたものである点、 (b)右側のブロック挟持片につき、前後端部近傍に押圧金具用のナットを設けた点、 が認められる。 次に差異点として、 (a’)ブロック挟持部につき、本件登録意匠は、ブロック挟持部の前端部寄り及び後端部寄りには、外側に向かって円弧状にわずかに膨出したリブを形成すると共に、その中央部分に、支柱支持部接合面の左右端部寄りから左右のブロック挟持片下端部に及ぶ同様のリブを形成しているのに対して、甲号意匠は、コ字状の棒状体を2本配したものである点、 (b’)押圧金具用のナットにつき、甲号意匠は、六角頭ボルトがねじ込まれているのに対して、本件登録意匠は、ボルトを有していないものである点、 (c’)支柱支持部接合面につき、余地部の幅を同面の略5分の1とし、中央部に、支柱支持部の筒の大きさより一回り小さな孔を穿っているのに対して、甲号意匠は、余地部の幅を同面の幅の略4分の1とし、孔の有無は不明である点、 (d’)支柱支持部につき、本件登録意匠は、構成比について、正背面側に深さが支柱支持部の高さの3分の1で、下方尖端部を弧状とした略V字状の切り欠き部を形成しているのに対して、甲号意匠は、切り欠き部を有していない点 (e’)支柱支持部の正背面につき、本件登録意匠は、切り欠き部の左右余地部に左右対称状に小円孔を穿ったものであるのに対し、甲号意匠は、小円孔を有していない点 (f’)支柱支持部の左右側面につき、本件登録意匠は、左右両側面の相対する部位で、奥行きの中央部やや上方寄りに少し大きめの円孔を穿ったものであるのに対して、甲号意匠は、円孔を有していない点、 が認められる。 (2)両意匠の類否判断 そこで、本件登録意匠と甲号意匠を全体として観察し、上記共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。 まず、差異点について (a’)の点は、リブを形成するか、棒状体を配するかの差異であるが、この種物品において、強度を高めるために、これらを形成又は配することが、いずれも普通に見受けられるもので、両意匠それぞれのみの特徴といえるものではなく、類否判断に与える影響は微弱にすぎない。 (b’)の点は、六角頭ボルトの有無の差異であり、いずれもその使用状態において、ボルトを押圧手段として用いる点で共通するものであり、その中での部分的な微細な差異といえるもので、類否判断に与える影響は微弱なものである。 (c’)の点は、余地部の幅比率及び孔の有無の差異であるが、余地部の幅比率の差異は仔細に観察すればわかる程度の微細なものであって、類否判断に与える影響は微弱なものであり、甲号意匠に孔が無かったとしても、この部分が使用態様においては見えなくなる部分であることを勘案すると、類否判断に与える影響は微弱にすぎないものである。 (d’)の点は、支柱支持部について、略V字状の切り欠き部の有無の差異であるが、下記に示すとおり、両意匠の共通するとした基本的構成態様が、本件登録意匠独自の態様といえないものであることを考慮すると、両意匠の要部は、上方に設けた看者の注意を最も強く惹くところの支柱支持部の具体的態様ということができる。そうすると、その差異は、顕著なものといわざるを得ず、この点が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 (e’)及び(f’)の点は、小円孔及び円孔の有無のいずれも普通に見受けられるものではあるが、上記(d’)の差異点と相まって、両意匠の類否判断に若干の影響を及ぼすものである。 そして、これらを総合し、意匠全体として観察した場合、両意匠の要部である支柱支持部における、略V字状の切り欠き部を有するか否かの具体的態様が表出する両意匠の印象の差異は、その他の差異点と相まって、看者に別異の印象を与えるものであり、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。 これに対して、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、両意匠の骨格をなす態様であるが、この種物品においては、本件登録意匠の出願前に他に見受けられる態様(例えば、意匠登録第751851号の類似第1号公報掲載の「防護柵取付金具」の意匠参照)であるから、この共通点は、格別高く評価することができないものであり、類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。 各部の具体的態様において共通する点についても、 (a)及び(b)の点は、同様の態様のものが従来より普通に見受けられるもので(例えば、実用新案出願公開平4-65815号の縁石固定用支柱体の意匠参照)、両意匠のみに共通する特徴といえるものではなく、類否判断に与える影響は微弱にすぎない。 そうすると、これらの共通点は、いずれも類否判断に与える影響が微弱であって、これら共通点を総合し、相まった効果を考慮しても、上記差異点が共通点を凌駕しており、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。 以上のとおり、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態については、共通点があっても、類否判断を左右する差異点があるから、本件登録意匠は、甲号意匠に類似しているものということができない。 4. むすび 以上のとおりであって、請求人の主張する理由によって、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2004-04-28 |
結審通知日 | 2004-05-06 |
審決日 | 2004-05-19 |
出願番号 | 意願平11-28994 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Y
(L3)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川越 弘 |
特許庁審判長 |
藤 正明 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 西本 幸男 |
登録日 | 2000-09-01 |
登録番号 | 意匠登録第1090256号(D1090256) |
代理人 | 石岡 隆 |
代理人 | 谷口 和夫 |
代理人 | 山本 哲也 |
代理人 | 福田 鉄男 |
代理人 | 福迫 眞一 |
代理人 | 犬飼 達彦 |
代理人 | 岡田 英彦 |