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審決分類 審判 査定不服  意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 H4
管理番号 1104565 
審判番号 不服2003-5163
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-27 
確定日 2004-09-14 
意匠に係る物品 シール自動販売機用カメラ 
事件の表示 意願2001- 948「シール自動販売機用カメラ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、平成13年(2001年)1月19日の意匠法第4条第2項の適用を受けようとする出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「シール自動販売機用カメラ」とし、その形態は、願書に添付した図面に記載されたとおりであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で表し、意匠登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界を一点鎖線で表したものである(別紙第一参照)。

第2 引用意匠
原審において、本願意匠が意匠法第3条の2に規定する意匠に該当するとして、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本願の出願前、平成12年(2000年)12月4日の意匠登録出願であって、日本国特許庁が平成14年(2002年)2月18日に発行した意匠公報に記載の意匠登録第1134170号の意匠(別紙第二参照)のカメラユニット内のレンズ部と液晶表示部を含む部分の意匠であって、願書の記載によれば、意匠登録第1134170号の意匠に係る物品は「シール自動販売機」であり、カメラユニット内のレンズ部と液晶表示部を含む部分の形態は、願書の記載及び願書に添付した図面のとおりのものである。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「シール自動販売機用カメラ」であり、意匠登録第1134170号の意匠に係る物品は「シール自動販売機」である。カメラユニット内のレンズ部と液晶表示部を含む部分の意匠である引用意匠は、意匠登録第1134170号の意匠の一部である。
本願意匠と引用意匠を対比すると、本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、シール自動販売機の前方に設置されるフレームの天井部分(シール自動販売機よりも高い位置。)に固定して取り付けられて使用され、かつ使用者を真上から撮影することを可能にするという用途及び機能を有するものである。これに対して、引用意匠は、自動販売機の前面に取り付けられたカメラユニットの前面に表されたものであり、そのカメラユニットは固定ではなく上下移動又は角度調節して使用され、かつカメラユニットが上端に移動した状態及び下方に傾けた状態においても使用者を真上から撮影することは出来ないので、引用意匠の用途及び機能は、本願意匠と同じ用途及び機能を有するものではない。また、引用意匠が表されたカメラユニットは90度回転させて縦位置アングルに変更して使用し撮影することが可能になっているが、本願意匠はこのような用途及び機能を有してはいない。したがって、両意匠の用途及び機能は、共通するものではない。
さらに、両意匠の形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。すなわち、両意匠は、矩形状の平坦面の内側に、円形のレンズ部と、矩形状の液晶表示部(ファインダー)が並べて設けられている基本的な構成態様において共通している点はあるが、一方、具体的な構成態様において、以下の点に差異がある。
(1)レンズ部の円形態様について、本願意匠は、二重の同心円状としているのに対し、引用意匠は、二重の同心円状としていない点、
(2)レンズ部と液晶表示部の配置について、本願意匠の液晶表示部は、レンズ部との間隔を広くして、液晶表示部の長辺がレンズ部側に向くように並べて配置されているのに対し、引用意匠の液晶表示部は、レンズ部との間隔を狭くして、液晶表示部の短辺がレンズ部側に向くように並べて配置されている点、
(3)液晶表示部のレンズ部径に対する大きさについて、本願意匠は、レンズ部径より大きくしているのに対して、引用意匠は、レンズ部径と略同大である点、
(4)液晶表示部の態様について、本願意匠の液晶表示部の周囲は二重線で表れ、その内側全体がレンズ部側に傾斜しているが、引用意匠の液晶表示部は二重線で表れておらず、その内側全体が傾斜していない点、が認められる。

第4 両意匠の類否の判断
本願意匠と引用意匠の形態における共通点及び差異点を検討すると、まず、両意匠に共通するとした基本的な構成態様については、本願意匠の出願前、この種意匠の属する分野において、他にも見受けられる態様であって看者の注意を引くものではないから、格別の共通感を呈するものとは言えず、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
一方、前記各差異点について検討すると、
(1)のレンズ部の円形態様については、本願意匠に見られる二重線はこの種意匠の属する分野において他にも見受けられる態様であって比較的目立たないので、レンズ部の円形態様の差異が類否判断に与える影響は少ないと言える。
(2)のレンズ部と液晶表示部の配置については、引用意匠のレンズ部と液晶表示部が近接して表されているのに対して、本願意匠の場合は、レンズ部と液晶表示部の間に大きな空白面が表されており、この差異は、看者に異なった視覚的印象を与えるものであるから、類否判断に影響を及ぼすものと言える。
(3)の液晶表示部のレンズ部径に対する大きさ、及び(4)の液晶表示部の態様のうちその傾斜の有無の差異については、本願意匠と引用意匠の用途及び機能の差異に関係するものである。具体的には、本願意匠は、使用者を真上から撮影することを可能にするものであり、本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分が取り付けられているフレーム天井部分の高さをシール自動販売機よりも高い位置とし、引用意匠に比べて使用者から離れた位置に設けられていることから、使用者が液晶表示部の画像を確認し易いように液晶表示部を大きく形成し、そして、真下にいる使用者にとって液晶表示部を見やすい角度にするために液晶表示部に傾斜をつけている。したがって、本願意匠に見られる液晶表示部の大きさ及び傾斜の特徴は、用途及び機能の異なる引用意匠には見られないものであり、本願意匠の特徴を成すものとして看者に別異の視覚的印象を与えるものであることから、その差異は類否判断に大きな影響を及ぼすものと言える。
そうすると、上記(2)ないし(4)の差異点は、何れも、両意匠に共通するとした態様を翻す程の印象を看者に与えるものであり、それらの差異点が相俟って両意匠の形態全体の印象を異にする程の差異感を呈するものであるから、類否判断に影響を及ぼすと言わざるを得ない。
したがって、両意匠は、用途及び機能において相違し、その形態においても、差異感は共通感を凌駕して類否判断を左右するものであるから、本願意匠は、引用意匠に類似する意匠とは言えない。

第5 むすび
本願意匠は、意匠法第3条の2に規定する意匠に該当せず、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。


審決日 2004-08-31 
出願番号 意願2001-948(D2001-948) 
審決分類 D 1 8・ 16- WY (H4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 小林 裕和
鍋田 和宣
登録日 2004-10-08 
登録番号 意匠登録第1223207号(D1223207) 
代理人 青山 葆 
代理人 山田 卓二 

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