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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M3
管理番号 1108038 
審判番号 不服2003-25327
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-05 
確定日 2004-11-13 
意匠に係る物品 鍵材 
事件の表示 意願2002- 12313「鍵材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、平成14年(2002年)4月3日の部分意匠に係る意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「鍵材」とし、その形態は、願書に添付した図面に記載されたとおりであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で表したものである(別紙第一参照)。

第2 引用意匠
本願意匠が類似するとして原審が拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本願の出願の日前に日本国内又は外国において頒布された特許庁意匠課所蔵(受入、2001年3月19日)の、内国雑誌「新建築」第3号第76巻第23頁所載の「鍵材」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA13002491)の握り部分の意匠であって、その形態を写真版で現されたとおりとしたものである(別紙第二参照)。

第3 両意匠の対比
本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠は、何れも施錠等に用いる鍵材であって、意匠に係る物品が共通し、また、本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、鍵材の略上半部の握りの部分であり、引用意匠と用途、機能、位置、大きさ及び範囲がほぼ共通しているが、両意匠の形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。
すなわち、両意匠は、全体が正面から見て上辺を直線状として左右辺の下方を弧状とした略U字状の薄い板状のものであり、その内側に全体より一回り小さい略U字状面を形成し、その略U字状面の中央上方寄りに隅丸の矩形状孔を設けた基本的な構成態様において共通している。そして、その矩形状孔の下方に「MIWA」の文字(商標登録第4149938号と同じ文字)を表出させた点も共通している。
しかし一方で、具体的な構成態様において、主に、以下の点に差異がある。
(1)背面の態様について、本願意匠の背面には、上端寄りから下方中央にかけて略矩形状面が形成され、その略矩形状面の中央上方寄りに隅丸の矩形状孔を設けるとともにその下方に二つ縦に連なった菱形模様(商標登録第1684555号と略同じ図形)を表出させているが、引用意匠の背面の態様は一切不明である点、
(2)正面下方の態様について、本願意匠は、左右幅を全体幅の略半分とする矩形状の突出部が設けられているのに対し、引用意匠にはそのような突出部がない点、
(3)略U字状面の外形線の態様について、本願意匠は、その外形線の上辺を上端寄りとして、矩形状孔の上方に位置する部分の上辺を切り欠いて、下辺に上向き円弧辺を形成しているのに対して、引用意匠では、上辺を上端部と一致させて下辺に上向き円弧辺を形成していない点、
(4)略U字状面の模様について、本願意匠は上辺と左右の辺に幅狭の溝模様を設け、その内方に縦縞模様を配しているのに対して、引用意匠では、そのような溝模様はなく、面全体に網目模様が配されている点、

第4 両意匠の類否の判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討すると、まず、両意匠に共通するとした基本的な構成態様については、本願意匠の出願前、この種物品の属する分野において、他にも見受けられる態様であって格別看者の注意を引くものとは言い難く、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、さらに、それらの共通点を纏めても、特段際立った特徴を奏するとは言い難いものであるので、類否判断に及ぼす影響はなお微弱の域を超えるものではない。なお、共通する「MIWA」の文字は、情報伝達目的の文字の使用であるから模様と認められず意匠を構成しないので、この点の共通点は両意匠の類否判断に影響を与えるものではない。
一方、前記各差異点について検討すると、
(1)の背面の態様の差異点については、引用意匠のその部分の態様が全く不明であり、両意匠のその部分の態様を比較することができないということが、類否判断に影響を及ぼすことは必至であると言える。
(2)の正面下方の態様の差異点については、この種物品の目立つ部位である握り部と鍵穴挿入部との結合付近の構成態様に関する差異であり、全体幅の約半分の左右幅という比較的大きな矩形状部の有無に関する差異でもあるので、看者に異なった視覚的印象を与えるものであるから、この差異は類否判断に影響を及ぼすものと言える。
(3)略U字状面の外形線の態様、及び(4)の略U字状面の模様の差異点については、何れもこの種物品分野において重要な握り部中央の態様に関するものであり、特に、下辺に形成される円弧辺の有無の差異は看者に別異の視覚的印象を与えるものであり、また、縦縞模様と網目模様の差異は、実際に手に触れる部分の差異であって看者の注目に値する部分の差異であるから、これらの差異は類否判断を左右するものであると言える。
そうすると、前記(1)ないし(4)の差異点は、何れも、両意匠に共通するとした態様を翻す程の印象を看者に与えるものであり、それらの差異点が相俟って、両意匠の醸し出す形態全体の印象を異にする程の差異感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすと言わざるを得ない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途、機能、位置、大きさ及び範囲が引用意匠とほぼ共通しているが、形態において、差異点が両意匠の共通点を凌駕して類否判断を左右するという外ないから、本願意匠は、引用意匠に類似する意匠とは言えない。

第5 むすび
本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。


審決日 2004-10-21 
出願番号 意願2002-12313(D2002-12313) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 治子 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 小林 裕和
鍋田 和宣
登録日 2004-12-17 
登録番号 意匠登録第1229295号(D1229295) 
代理人 宮口 聡 

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