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審決分類 審判 判定   属さない(申立不成立) K2
管理番号 1111313 
判定請求番号 判定2004-60078
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-03-25 
種別 判定 
判定請求日 2004-09-17 
確定日 2005-02-16 
意匠に係る物品 釣用小物入れ 
事件の表示 上記当事者間の登録第0972325号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「釣用小物入れ」の意匠は、登録第0972325号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1. 請求の趣旨及び理由
請求人は、「イ号意匠は意匠登録第972325号(以下、本件登録意匠という)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、証拠として、甲第1号証ないし甲第19号証を提出している。
その理由は、概ね次のとおりである。
両意匠の物品について、本件登録意匠は「釣用小物入れ」であるのに対し、イ号意匠は「釣具を含めた各種小物の収納を想定した物品」であるから共通し、両意匠の形態について、以下に示す共通点及び差異点がある。
[共通点]
(A)一対のやや薄めでやや縦長矩形箱体の縦方向の一端を、それぞれ開口部に分離自在の中蓋を設けて対向するように蝶着し、その蝶番部の他端を係止して成る、上下面が平坦で角丸の折り畳み状容器とした全体の基本的構成態様。
(B)箱体は、開口部の周縁に切り欠きを設け、一方の箱体の内側を縦横に区画する仕切状とし、中蓋は、下部を差込片とした極薄板状で、箱体のそれぞれの区画に対応する面を回動自在とし、一方の中蓋の横方向の両端を、切り欠き部分に嵌合する略矩形状の開閉操作片とした各部の具体的構成態様。
(C)容器の一角にストラップ等の紐を通す孔を設けた点。
[差異点]
(a)他方の箱体の内側を、本件登録意匠は、一方の箱体と同様に縦横に区画する仕切状としているのに対し、イ号意匠は、そのような仕切状としていない点。
(b)蝶番部の短筒体部分での軸着について、本件登録意匠は、五箇所で軸着しているのに対し、イ号意匠は三箇所としている点。
(c)箱体の開口部周縁について、本件登録意匠は細幅の鍔状に僅かに突出しているのに対し、イ号意匠は鍔状に突出していない点。
(d)係止部について、本件登録意匠は枠状の係止片であるのに対し、イ号意匠は板状の係止片である点。
両意匠の共通点及び差異点について、出願前の公知意匠に基づき、創作性の観点から全体として検討すると、各共通点のうち、箱体、箱体の内側、中蓋に係る各部の具体的構成態様に関する共通点(B)は、本件登録意匠の出願前に、この種物品の属する分野において、殆ど見られない特徴ある態様であって、この点に関する共通性が類否判断に与える影響は極めて強く、この具体的構成こそが形態上の特徴を強く表象し、意匠の類否を左右する要部であることから、両意匠は要部において共通するのに対し、差異点はいずれも公知意匠等を勘案すると意匠の特徴をなすとはいえず、類否判断に及ぼす影響は微弱であるから、両意匠は類似する。

第2.被請求人の答弁
被請求人は、両意匠が非類似である旨主張し、証拠として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出している。
なお、乙第8号証は、被請求人によるイ号意匠の意匠登録出願(意願2004-17236、意匠に係る物品 携帯用小物入れ)の願書、および、該出願に対する登録査定の写しである。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7(1995)年8月18日に出願(意願平7-24185)され、平成8年(1996)10月15日に意匠権設定の登録がなされ、平成9(1997)年1月17日に意匠公報が発行された意匠登録第972325号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「釣用小物入れ」とした意匠であって、その形態を同図面記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.イ号意匠
イ号意匠は、被請求人によってイ号意匠目録(甲第2号証)として表された意匠であって、その形態をイ号意匠目録の図面記載のとおりとしたものである。(別紙第2参照)

3.対比
両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、共に釣用の小物を入れる用途があるので両者共通し、形態については次に示す共通点と差異点が認められる。
[共通点]
(A)一対の縦長矩形状薄型容器の短辺部側壁の一方に蝶番を配してこれを開閉自在に連結し、他方に係止具を配して、閉じた状態が略扁平箱体状となるケースとしたものであって、各薄型容器には仕切壁によって複数個の収納区画を形成するとともに、該収納区画全体を覆う中蓋を設け、該中蓋を各収納区画に対応する開閉自在な個別蓋に分割した、全体の基本構成。
(B)閉じた状態のケースの形状について、縦横比を略10:7とし、すべての角部を丸く形成し、長辺側の側壁縁部に、個別蓋の開閉操作片を受ける嵌合凹部を形成した点。
(C)一方の中蓋について、容器取り付け用の横長矩形状の差込片を下面側に形成し、差込片と個別蓋との境界を極薄に形成して個別蓋を開閉自在とし、各個別蓋の下面を枠状に縁取り、各個別蓋の端部中央に、容器の側壁縁部の嵌合凹部に弾性係着する略小矩形状の開閉操作片を、下方側に折り曲げて形成した点。
(D)一方の容器について、長手方向の中心に中蓋を係止する差込溝を兼ねた仕切壁を設け、さらに両側の横方向に仕切壁を設けて、縦横に収納区画を形成した点。
(E)ケースの蝶番側の一角に、ストラップ等の紐を通す孔を形成した点。
[差異点]
(a)閉じた状態のケースの形状について、厚みを、本件登録意匠はケースの長辺の約1/3強の厚みとしたのに対し、イ号意匠は同約1/3弱の厚みのものとし、ケース平面視での角部を、本件登録意匠は係止具側と蝶番側とで丸みの程度を変えたのに対し、イ号意匠はすべて同じ丸みに形成し、ケースの合わせ目を、本件登録意匠は各容器縁部に鍔状の細幅突出部を形成して突出状帯部で全周を周回させ、嵌合凹部はこの突出状帯部を切り欠いて形成したのに対し、イ号意匠は各容器縁部に突出部を形成せずに平坦状とし、嵌合凹部は平坦部を凹陥状に切り欠いて形成し、係止部を、本件登録意匠はケース合わせ目の突出状帯部をさらに前方に漸次突出させてその上に枠状の係止具を形成したのに対し、イ号意匠は曲板状の係止片をケース表面から突出しないように埋め込むように形成し、蝶番部を、本件登録意匠はケース短辺の約9割弱の長さに、中心に別体の軸を挿通して形成したのに対し、イ号意匠は短辺の約6割強の長さに、容器にそれぞれ一体的に設けた軸部と軸受け部を嵌合させて形成した点。
(b)一方の容器に形成した縦横の収納区画について、本件登録意匠は5区画に形成したのに対し、イ号意匠は6区画に形成した点。
(c)他方の容器について、本件登録意匠は、一方の容器と同様の区画に形成し、各区画を個別に覆う個別蓋を形成したのに対し、イ号意匠は容器の長手方向に沿って可動仕切壁を1枚配置して2つの区画を形成し、個別蓋は該区画全体を覆う一枚蓋とし、さらに、容器に形成した開閉操作片用嵌合凹部を、本件登録意匠は両側の側壁に形成したのに対し、イ号意匠は片方の側壁にのみこれを形成した点。

4.類否判断
これらの共通点及び差異点について検討すると、まず共通点について、共通点(A)に示す全体の基本構成については意匠全体の骨格を成すものであるが、このような外観形状のケースは本件登録意匠の出願前より普通に見られ、また、薄型容器の収納区画部を開閉自在に個別蓋で覆う態様は、本件登録意匠の出願前公開の公開実用新案公報である実開平6-60378号(別紙第3、図面1参照)に明らかなように既に公然知られており、本件登録意匠とイ号意匠にのみの態様でないから、この基本構成の共通性をもって類似とはいえず、他の具体的態様を勘案して類否を判断すべきものである。
ついで、閉じた状態のケースの形状についての共通点(B)は、縦横比や角部形状の共通性についてはありふれており類否判断を左右する要素ではなく、容器の側壁縁部への嵌合凹部の形成は、従来より行われている蓋止めの一態様として普通に見られるものであるから、嵌合凹部を形成したからといって類似とはいえず、この部位の具体的形状をもって類否を判断すべきである。
さらに、一方の中蓋についての共通点(C)の、個別蓋の開閉操作片の形状については、係着される側の嵌合凹部の形状やその形成位置等によって創出される係着部全体の視覚効果の中で判断すべきであるが、あえて操作片にのみ着目すれば、それ自体はありふれた小さな略矩形状のものであるから類否判断に及ぼす影響はさほどのものではなく、差込片については、係止態様としては普通に行われているものであるうえ、通常の使用時に隠れてしまうものであるから目立たず、中蓋のそのほかの共通点もありふれた態様であって、類否判断を左右するものではない。
また、一方の容器についての共通点(D)は、容器を縦横に区画することはごく普通に行われてきたことであるが、長手方向の中心線に形成された仕切壁部を個別蓋の開閉基部とした態様は、本願の出願前の1990年2月5日に特許庁意匠課が受け入れた(株)スミス発行のカタログ「SMITH’90」第51頁所載の釣用小物入れ(特許庁意匠課公知資料番号第HC12029136号)(別紙第4、図面2参照)に既に明らかなとおり、本件登録意匠とイ号意匠にのみ特徴的な態様ではないから、類否判断を左右するというほどのものではなく、その中心の仕切壁を中蓋の差込溝を兼ねたものとすることも、通常行われる技術的改変の範囲にすぎないものである。
そして、ストラップについての共通点(D)は、小さい部位に係るものであり、ありふれた態様でもあるから、類否判断を左右する要素とは成し得ない。
つぎに、差異点の検討に移ると、まず、閉じた状態のケースの形状についての差異点(a)の、厚みと角部、および、蝶番部についての差異点は、特にこの部位に着目して明らかになる程度の局所的差異でしかないが、ケースの合わせ目形状、すなわち、薄型容器の縁部形状と嵌合凹部の形状における差異点は、看者の注意を第一に惹くところの外観形状と最初の操作が行われる箇所にかかるものであるから、類否判断に大きな影響を及ぼす差異点である。
そして、この差異点をさらに具体的に比較してみると、本件登録意匠のケース全体を取り巻く突出状帯部は高い視覚効果をもたらす意匠全体のアクセントとなっているのに対し、イ号意匠の創作の意図は、合わせ目を平坦状に形成したことに加えて、係止具や個別蓋の開閉操作片をケース本体表面から突出しないように配慮し、意匠全体を凹凸のないすべすべした箱体状とするところにあるので、両意匠のケースの外観は異なる視覚効果を醸し出していると認められる。
この他の差異点については、一方の容器の収納区画の差異点(b)は、適宜改変される範囲の差異にすぎず、他方の容器の差異点(c)も、仕切を可動壁とすることはありふれた態様であり、中蓋の態様についても、各区画を個別に覆うものも、複数の区画を一枚蓋で覆うものも、既に公然知られている態様であるから(別紙第3、図面1参照)、これらの差異はいずれも類否判断を左右するものとはいえない。
以上を総合すると、両意匠の共通点はいずれも類否判断を左右するほどのものではなく、容器の側壁縁部に嵌合凹部を形成したという共通点(B)についても、具体的形状を対比すれば、差異点(a)で述べたように凹凸の具体的態様が相違するうえ、その異なる視覚効果はケースの合わせ目となってさらに顕著なものとなり、係止部における差異と相まって、本件登録意匠とイ号意匠の共通点を凌駕して、看者に別異の印象を与えていると認められるから、両意匠を類似するものとすることはできない。

5.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものと認められる。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
判定日 2005-02-03 
出願番号 意願平7-24185 
審決分類 D 1 2・ - ZB (K2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 治子 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 樋田 敏恵
岩井 芳紀
登録日 1996-10-15 
登録番号 意匠登録第972325号(D972325) 
代理人 福田 進 
代理人 藤田 典彦 
代理人 辻本 希世士 
代理人 窪田 雅也 
代理人 辻本 一義 
代理人 藤田 邦彦 

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