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審決分類 審判    L4
審判    L4
管理番号 1116256 
審判番号 無効2004-88012
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-05-19 
確定日 2005-04-18 
意匠に係る物品 屋根葺材の重層葺用金具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1167740号「屋根葺材の重層葺用金具」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び請求の理由
請求人は、登録第1167740号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)を提出した。
1.本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に違反している事由
(1)本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠登録第760063号の意匠(甲第3号証)、同じく、意匠登録第760056号の意匠(甲第4号証)、同じく、1989年4月7日に発行された大韓民国意匠公報第754巻の第182頁に記載の「(屋根)スレート支持用構造台」の意匠(甲第5号証)、同じく、意匠登録第1093718号の意匠(甲第6号証)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して意匠登録を受けたものである。
すなわち、本件登録意匠は、その掲載された意匠公報に参考文献として示されている甲第3号証ないし甲第5号証を、本件意匠登録出願の審査において、拒絶の理由の対象とすべきであったとの審理の不尽と公知意匠資料の判断の誤りがあったものと解釈している。
更に、甲第6号証についても拒絶の理由として引用すべきものであったと上記と同じ解釈をしている。
(2)本件登録意匠が、甲第3号証ないし甲第6号証と類似するものである事由
(ア)本件登録意匠の形態は、基本的形態を三連山形に屈折した板状の本体部とし、山形の頂部と谷部とが連続形成されており、山形の頂部はその断面において、中央部にボルトを植設した水平頂部の両端部から斜め下方傾斜面をそれぞれ形成した後、既設旧屋根葺材へ向けて両端を垂直に曲げ、既設旧屋根葺材への接触部から両側に接合傾斜面をそれぞれ形成し、既設旧屋根葺材の谷部に達するより上方の位置からそれぞれ水平方向に緩やかな山なり曲線の谷部を形成して、次の山形の頂部に連続するものである。
(イ)甲第3号証ないし甲第6号証と本件登録意匠の共通点は、(a)基本的形態を三連山形に屈折した板状の本体部とし、山形の頂部と谷部とが連続形成されており(甲第3号証ないし甲第6号証)、(b)山形の頂部は、実施時にその断面中央部にボルトを植設する水平頂部の両端部から既設旧屋根葺材へ向けて両端を垂直に曲げ(甲第3号証及び甲第6号証)、(c)既設旧屋根葺材への接合部から両側に既設旧屋根葺材の傾斜面に接合する接合傾斜面をそれぞれ形成し(甲第3号証ないし甲第6号証)、(d)既設旧屋根葺材の傾斜面に接合する距離を既設旧屋根葺材の上方からおよそ3分の2の長さとし(甲第3号証及び甲第5号証)、(e)谷部に達する位置より上方の位置から、次の山形の頂部に連続する(甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証)。
(3)手続補正書の主張
請求人は、甲第9号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)を提出し、主として以下のとおり審判請求の理由について補正をした。
(ア)本件登録意匠の要部は、「三連山形本体部の中央部にボルトを植設した山形頂部の両端部から斜め下方傾斜面をそれぞれ形成した後、垂直に折曲していること」及び「三連山形本体部の谷部を、緩やかな山なり曲線にしていること」であるが、それらの要部は、甲第9号証ないし甲第10号証に示す公知技術そのものであり、登録意匠としての格別の創作活動の結果として美的特徴が発揮されているとは言えないので、甲第3号証ないし甲第6号証に示す意匠のそれぞれと同一の創作性の範囲に属する意匠というべきであり、甲第3号証ないし甲第6号証に示す意匠に類似する意匠である。
(イ)上記(ア)において説明した、本件登録意匠の特徴とする「斜め下方傾斜面を形成する」ことは、公知技術資料である甲第9号証の2、3に示されているプレス技術として至極当たり前のものであり、実際の製品製作上若干の曲げ勾配も当然に形成されるものであり、その曲げ勾配ないし斜め勾配面に、甲第10号証の2に示す「リブ加工」を補強工程として施しているに過ぎないものである。
この曲げ勾配を大きめに設定するかどうかは、当業界における技術的常識事項であり、さらに補強用の打ち込みを施すことも、広く技術社会においては、極めてありふれた技術手段であって、格別の意匠デザインを施したと解釈することはできない。
この傾斜面を形成したことによって、本件意匠に係る物品の全体の意匠デザインに格別の審美観が生ずるわけでもない。
すなわち、甲第3号証ないし甲第6号証における山形頂部の角部分において、その角部分を「面取り」して、「傾斜面」のある「意匠形態」に加工することは、広く技術社会において、その使用目的、使用方法、使用状態のあらゆる角度から考察しても、用途や機能の共通性が厳然と存在し、類似の形態と判断される。
(ウ)上記(ア)において説明した、本件登録意匠の特徴とする「谷部を、緩やかな山なり曲線にしている」ことは、甲第9号証の4ないし6及び甲第11号証の2、3において、それぞれの技術的内容が極めてありふれたプレス技術における常識的な加工技術をそのまま寄せ集めた意匠にすぎないものである。
この「谷部を、緩やかな山なり曲線にしている」ことは、当業界における技術的常識事項であり、広く技術社会においては、極めてありふれた手段であって、格別の意匠デザインを施したと解釈することはできないものである。
この谷部の形成位置は、甲第3号証と全く同じであり、三連山形本体部の谷部を既設旧屋根葺材の谷部から遊離した上空に形成することは、すでに公知の形態であるばかりか、その谷部の形態において、緩やかな山なり曲線を施したことによって、公知意匠資料に対して格別の審美観が生ずるわけもない。
すなわち、甲第3号証における三連山形本体部の直線谷部において、その直線部分を「緩やかな山なり曲線」に置換加工することは、広く技術社会において、その使用目的、使用方法、使用状態のあらゆる角度から考察しても、用途や機能の共通性が厳然と存在し、類似の形態と判断される。
(4)本件登録意匠が公知意匠資料甲第3号証ないし甲第6号証に示す意匠に基づいて容易に意匠の創作をしたものである事由
本件登録意匠は、公知意匠資料甲第3号証ないし甲第6号証に示す意匠の構成要素に対して、「三連山形本体部の山形頂部の両端に傾斜面を形成したこと」及び「三連山形本体部の谷部を緩やかな山なり曲線にしている」としても、それらの構成要素は、技術社会において極めてありふれた形状に基づくものであって、そのありふれた形状そのままがあっても、その部分が特別に美観を起こさせる部分とは考えられないばかりでなく、顕著なデザインとして認識されたり、看者に全く新しい別異の意匠であるとの支配的な要素となっていないと判断致され、当業者が容易に創作することができると認められるものであり、意匠法第3条第2項においても、意匠登録の要件を具備していないものであり、本件登録意匠は、無効理由を明確に保有しているものである。
(5)むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号及び意匠法第3条第2項が求める意匠登録の要件に対して、甲第9号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)の公知技術資料を、甲第3号証ないし甲第6号証に示す公知意匠資料に単に寄せ集めたり、置換したりした意匠にすぎないものであって、意匠法第48条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
第2.被請求人の答弁及び答弁の理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下のとおり主張した。
1.意匠法第3条第1項第3号について
本件登録意匠は、請求人が提出した甲第3号証ないし甲第6号証のいずれの意匠とも明らかに非類似であり、意匠法第3条第1項第3号には該当しない。
意匠の登録要件である新規性は類似範囲まで及ぶが、この類否判断は意匠の特徴(要部)を考慮した上であくまで全体観察をもって創作同一性の範囲にあるか否か出所混同を生じるおそれがあるか否かを判断しつつ外観から生じる全体美感が共通しているか否かをもって判断されるべきものである。
してみると、本件登録意匠と甲第3号証ないし甲第6号証は全体観察すれば全く異なる美感を呈し、互いに創作同一性の範囲には到底なく、いずれと対比しても特許庁の登録査定通り互いに非類似意匠であると確信する。
本件登録意匠は、頂部を幅広としつつもその両側肩部を大きく下がり傾斜させてなで肩とし、しかもこの傾斜両肩部に続く垂下部は短く、そして、当接傾斜辺へと続いているもので、このデザインイメージはいずれの公知意匠にもない。
しかも、底部が上部に弓形に湾曲しているデザインと相まって、全体としては水平部や長い垂下部はほとんどなく、甲第5号証や甲第6号証とは異なり単調なイメージは一切ない。
むしろ、複雑に凹凸しながら異形の山・谷が傾斜辺を交えて連続する今までにない斬新なデザインを呈しており、更には、表面の凹と凸のリブと相まって全体として1つの新しい統一感のあるイメージを形成している。この斬新な全体イメージは、極めて特徴的であり、この全体感を無視した請求人の主張は誤りである。
この本件登録意匠の全体から受ける美感は、いずれの公知意匠とも共通せず、創作同一性の範囲には到底なく、互いに非類似意匠であると確信する。
2.意匠法第3条第2項について
本件登録意匠は、公知形態から決して容易に創作できるものではない。
本物品を製作するにおいて、形状を成形するプレス工程やリブを形成する手法自体、容易か非容易かではなく、全体としての意匠創作の程度をもって判断すべきものである。相違部分は全て当業者なら製作し得ることは当然であるが、そのように加工して全体デザインを構築することこそが意匠の創作である。
しかも、本件登録意匠は、公知意匠の一部をそのまま単に広げたとか、潰したとかいうものではなく、全ての部分においてデザイン設計がなされ、全体として上述のような斬新なデザインが形成されている。
この本件登録意匠の統一感があり、公知意匠とは非類似であってこれ程斬新なデザインは、いずれの甲号証を踏まえたとしても容易に創作できるものではないことは明らかであり、本件登録査定になんら瑕疵はない。
3.むすび
以上、本件登録意匠は、甲第3号証ないし甲第6号証のいずれの公知意匠とも非類似であって、これらから容易に創作できたといえるほど単純なデザインであったり、寄せ集めや転用でもないことから、意匠法第3条第1項第3号にも第3条第2項にも該当する意匠ではない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び願書の記載及び願書に添付した写真によれば、平成14年8月21日の意匠登録出願に係り、平成15年1月24日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「屋根葺材の重層葺用金具」とし、その形態を願書の記載及び添付の写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、その形態は、
(1)基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲したものであって、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、山形同士をつなぐ谷部の長さは、頂部よりやや長いものとし、両端の山形の外側の下端部には、谷部を約2分の1の長さに切った態様の薄板片を形成したものである。
(2)各部の具体的な態様は、
(ア)頂部と斜面部の高さの割合につき、ほぼ同じ高さとしている。
(イ)頂部の態様につき、両隅部に傾斜面を形成し、その中央部分に、傾斜に沿って、約2分の1幅の浅い凹状のリブを傾斜面全体に設けている。
(ウ)頂部の上面及び傾斜面を除く金具全体の態様につき、その中央部分に、約2分の1幅の低い凸状のリブを全体に設けている。
(エ)谷部の態様につき、全体が上方にやや湾曲している。
(オ)斜面部の態様につき、頂部寄りの中央部分に取付ボルト挿通用の円孔をそれぞれ1個ずつ、全体で合計6個形成している。
(カ)頂部の上面の態様につき、中央部分に、それぞれボルトを1本ずつ、全体で合計3本、垂直に取り付けている。
2.甲第3号証の意匠
甲第3号証の意匠は、本件登録意匠の出願前の平成1年4月14日付で特許庁が発行した意匠公報所載の意匠登録第760063号の意匠(以下、「甲第3号意匠」という。)であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「折板屋根材取付金具」とし、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。
すなわち、その形態は、
(1)基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲したものであって、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、山形同士をつなぐ谷部の長さは、頂部の長さの約2倍とし、両端の山形の外側の下端部には、谷部を約2分の1の長さに切った態様の薄板片を形成を形成したものである。
(2)各部の具体的な態様は、
(ア)頂部と斜面部の高さの割合につき、斜面部の高さを頂部の高さの約1.5倍としている。
(イ)頂部の下端部内側の態様につき、矩形状の薄板の左右端部を上方に垂直に折曲した旧屋根板取付板を、その折曲部分が頂部の下端部内側に密着するように取り付け、頂部全体として、正面視略長方形枠状を呈している。
(ウ)頂部の上面の態様につき、中央部分に、平面視略細縦長円孔を1個、全体で合計3個形成している。
(エ)斜面部の態様につき、頂部寄りの中央部分に取付ボルト挿通用の小円孔を縦に近接して2個ずつ、全体で合計12個形成している。
3.甲第4号証の意匠
甲第4号証の意匠は、本件登録意匠の出願前の平成1年4月13日付で特許庁が発行した意匠公報所載の意匠登録第760056号の意匠(以下、「甲第4号意匠」という。)であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「折板屋根材取付金具」とし、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第3参照)。
すなわち、その形態は、
(1)基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を2連山形に屈曲したものであって、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状の別体からなり、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、左右の山形をつなぐ谷部の長さは、頂部の長さの約3倍とし、その中央部分に、高さは頂部の約3分の2で、長さはやや長い正面視逆台形状の凹部を形成し、左右の山形の外側の下端部には、谷部を約2分の1の長さに切った態様の薄板片を形成したものである。
(2)各部の具体的な態様は、
(ア)頂部と斜面部の高さの割合につき、斜面部の高さを頂部の高さの約1.5倍としている。
(イ)頂部の態様につき、左右下端部を斜面部の角度に合わせてやや末広がり状に折り曲げ、その内側の面を斜面部の上端部に固着している。
(ウ)斜面部の上端寄りに、取付ボルト挿通用の小さな円孔を横に2個ずつ、全体で合計8個形成し、また、上面の中央部分に、取付ボルト挿通用の円孔を1個、全体で合計2個形成している。
(エ)斜面部の上端部につき、左右上端部から、旧屋根材固定部を形成する長方形状の水平面と一体に繋がり、該水平面の中央部分に取付ボルト挿通用の大きな円孔を1個、全体で合計2個形成している。
4.甲第5号証の意匠
甲第5号証の意匠は、本件登録意匠の出願前の1989年5月16日に特許庁が受け入れた大韓民国意匠公報(1989年4月7日発行。)第754巻 第182頁に記載の「(屋根)スレート支持用構造台」の意匠(以下、「甲第5号意匠」という。)であって、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第4参照)。
すなわち、その形態は、
(1)基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲したものであって、個々の山形は、上面を平坦状の頂部とし、その左右端部からそれぞれ斜面部を形成し、全体として正面視略台形状をなし、山形同士をつなぐ谷部の長さは、頂部の長さの約2倍とし、両端の山形の外側の下端部には、谷部の長さよりやや短い水平状の薄板片を形成したものである。
(2)各部の具体的な態様は、
(ア)斜面部の態様につき、中央部分に、傾斜に沿って、約4分の1幅の凹状のリブをほぼ傾斜面全体に設けている。
(イ)谷部及び薄板片の態様につき、中央部分に取付ボルト挿通用の円孔を1個ずつ、全体で合計4個形成している。
(ウ)頂部の上面の態様につき、中央部分に、それぞれボルトを1本ずつ、全体で合計3本、垂直に取り付けている。
5.甲第6号証の意匠
甲第6号証の意匠は、本件登録意匠の出願前の平成12年12月11日付で特許庁が発行した意匠公報所載の意匠登録第1093718号の意匠(以下、「甲第6号意匠」という。)であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「屋根葺材の重層葺用金具」とし、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第5参照)。
すなわち、その形態は、
(1)基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲したものであって、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、山形同士をつなぐ谷部の長さは、頂部の長さとほぼ同じ長さとし、両端の山形の外側の下端部には、谷部とほぼ同じ長さの薄板片を形成したものである。
(2)各部の具体的な態様は、
(ア)頂部と斜面部の高さの割合につき、斜面部の高さを頂部の高さの約2倍としている。
(イ)斜面部の態様につき、当該斜面部中央から若干下方寄りの中央部分に取付ボルト挿通用の円孔を1個ずつ、全体で合計6個形成している。
(ウ)谷部及び薄板片の態様につき、中央部分に取付ボルト挿通用の円孔を1個ずつ、全体で合計4個形成している。
(エ)頂部の上面の態様につき、中央部分に、それぞれボルトを1本ずつ、全体で合計3本、垂直に取り付けている。
6.本件登録意匠の新規性の検討
(1)本件登録意匠と甲第3号意匠との類否判断について
(ア)意匠に係る物品については、本件登録意匠と甲第3号意匠は、共に、折板状屋根葺用の固定金具であるから共通している。
(イ)形態について
両意匠の形態については、主として以下の共通点及び差異点が認められる。
まず、基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲したものであって、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、山形同士をつなぐ谷部の長さを頂部より長いものとし、両端の山形の外側の下端部には、谷部を約2分の1の長さに切った態様の薄板片を形成したものである点が共通し、
各部の具体的な態様において、山形の斜面部に取付ボルト挿通用の円孔を形成している点が共通している。
一方、両意匠には、以下の差異点が認められる。
(A)頂部と斜面部の高さの割合につき、本件登録意匠は、ほぼ同じ高さとしているのに対し、甲第3号意匠は、斜面部の高さを頂部の高さの約1.5倍としている点、(B)頂部の両隅部の態様につき、本件登録意匠は、当該両隅部に浅い凹状のリブを有する傾斜面を形成しているのに対し、甲第3号意匠は、そのような傾斜面やリブは形成していない点、(C)頂部の上面の態様につき、本件登録意匠は、中央部分に、ボルトを1本、垂直に取り付けているのに対し、甲第3号意匠は、中央部分に、それぞれ平面視略細縦長円孔を1個ずつ形成し、ボルトは取り付けられていない点、(D)頂部の下端部内側の態様につき、甲第3号意匠は、薄板状の旧屋根板取付板を、頂部の下端部内側に形成しているのに対し、本件登録意匠は、何も形成していない点、(E)頂部の上面及び傾斜面を除く、金具全体の態様につき、本件登録意匠は、低い凸状のリブを全体に設けているのに対し、甲第3号意匠は、そのようなリブは設けていない点、(F)谷部の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや湾曲しているのに対し、甲第3号意匠は、水平状で、湾曲していない点、(G)薄板片の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや傾斜しているのに対し、甲第3号意匠は、水平状で、傾斜していない点、(H)山形の斜面部に形成される取付ボルト挿通用の円孔につき、本件登録意匠は、頂部寄りの中央部分に、左右の斜面部に1個ずつ、全体で合計6個形成しているのに対し、甲第3号意匠は、頂部寄りの中央部分に、小円孔を縦に近接して2個ずつ、全体で合計12個形成している点に差異が認められる。
(ウ)そこで、本件登録意匠と甲第3号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
両意匠の基本的構成態様において、全体は、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲し、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、山形同士をつなぐ谷部の長さを頂部より長いものとし、両端の山形の外側の下端部には、谷部の約2分の1の長さの薄板片を形成した共通する態様は、この種物品の分野において、普通に見られる態様であるから、何ら特徴とはなり得ず、その類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
一方、前記(イ)に両意匠の差異点として挙げた(A)ないし(H)に示すとおりの差異点が認められるところ、とりわけ、(B)に挙げる頂部の両隅部の傾斜面の有無及び(F)に挙げる谷部の湾曲の有無の2つの態様の差異が顕著であるから、上記の他の差異と相まって、異なる印象を与えるものであり、これらの差異点の類否判断に与える影響は大きいものと認められる。
次に具体的な態様において、共通するとして、前記(イ)に挙げた態様、すなわち、山形の斜面部に取付ボルト挿通用の円孔を形成している点であるが、当該円孔はごく小さいものであり、意匠全体としてみた場合、格別目立つものではなく、また、当該物品の分野において、山形の斜面部に取付ボルト挿通用の円孔を形成することは、普通に見られるものであるから、この共通点が両意匠の特徴とはなり得ず、意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。
以上を総合すれば、意匠全体として観察した場合、両意匠の差異点は、類否判断に大きな影響を与えるものであり、前記共通点を大きく凌駕し、看者に別異の印象を与えているものといえるから、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。
したがって、本件登録意匠は、甲第3号意匠に類似する意匠ということはできないから、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものとはいえない。
(2)本件登録意匠と甲第4号意匠との類否判断について
(ア)意匠に係る物品については、本件登録意匠と甲第4号意匠は、共に、折板状屋根葺用の固定金具であるから共通している。
(イ)形態について
両意匠の形態については、主として以下の共通点及び差異点が認められる。
まず、基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を連続山形に屈曲したものであって、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、山形同士をつなぐ谷部の長さを頂部より長いものとし、両端の山形の外側の下端部には、谷部を約2分の1の長さに切った態様の薄板片を形成したものである点が共通し、
各部の具体的な態様において、山形の斜面部に取付ボルト挿通用の円孔を形成している点が共通している。
一方、両意匠には、以下の差異点が認められる。
(A)本件登録意匠は、3連山形であるのに対し、甲第4号意匠は、2連山形である点、(B)山形の頂部と斜面部の態様につき、甲第4号意匠は、頂部と斜面部を別体とし、その中間に水平板状の旧屋根材固定部を形成しているのに対し、本件登録意匠は、頂部と斜面部が一体に形成されており、そのような旧屋根板材固定部は形成していない点、(C)薄板片の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや傾斜しているのに対し、甲第4号意匠は、クランク状とし、かつ傾斜していない点、各部の具体的な態様において、(D)頂部と斜面部の高さの割合につき、本件登録意匠は、ほぼ同じ高さとしているのに対し、甲第4号意匠は、斜面部の高さを頂部の高さの約1.5倍としている点、(E)頂部の上面の態様につき、本件登録意匠は、中央部分に、ボルトを1本、垂直に取り付けているのに対し、甲第4号意匠は、中央部分に、取付ボルト挿通用の円孔を1個形成し、ボルトは取り付けられていない点、(F)頂部の両隅部の態様につき、本件登録意匠は、当該両隅部に浅い凹状のリブを有する傾斜面を形成しているのに対し、甲第4号意匠は、そのような傾斜面やリブは形成していない点、(G)頂部の上面及び傾斜面を除く、金具全体の態様につき、本件登録意匠は、低い凸状のリブを全体に設けているのに対し、甲第4号意匠は、そのようなリブは設けていない点、(H)谷部の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや湾曲しているのに対し、甲第4号意匠は、中央部分に正面視逆台形状の凹部を形成し、かつ湾曲していない点、(I)山形の斜面部に形成される取付ボルト挿通用の円孔につき、本件登録意匠は、頂部寄りの中央部分に、左右の斜面部に1個ずつ、全体で合計6個形成しているのに対し、甲第4号意匠は、上端寄りに、小円孔を横に2個ずつ、全体で合計8個形成している点に差異が認められる。
(ウ)そこで、本件登録意匠と甲第4号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
両意匠は、前記(イ)に差異点として挙げた(A)ないし(I)に示す差異が認められるところ、とりわけ、(F)に挙げる本件登録意匠に形成される頂部の両隅部の傾斜面が甲2号意匠には形成されていないことと、(H)に挙げる本件登録意匠の谷部の湾曲が甲第4号意匠に見られないこと及び甲第4号意匠に形成される中央部分の凹部が本件登録意匠には形成されていないことの差異が顕著であるから、上記の他の差異と相まって、前記(イ)に挙げる共通点を凌駕し、看者に異なる印象を与えるものであるから、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。
以上を総合すれば、意匠全体として観察した場合、両意匠の差異点は、類否判断に大きな影響を与えるものであり、前記共通点を大きく凌駕し、看者に別異の印象を与えているものといえるから、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。
したがって、本件登録意匠は、甲第4号意匠に類似する意匠ということはできないから、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものとはいえない。
(3)本件登録意匠と甲第5号意匠との類否判断について
(ア)意匠に係る物品については、本件登録意匠と甲第5号意匠は、共に、折板状屋根葺用の固定金具であるから共通している。
(イ)形態について
両意匠の形態については、主として以下の共通点及び差異点が認められる。
まず、基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲したものであって、山形同士をつなぐ谷部の長さを頂部より長いものとし、両端の山形の外側の下端部には、谷部の長さより短い薄板片を形成したものである点が共通し、
各部の具体的な態様において、山形の斜面部の中央部分に、その傾斜に沿って、リブを設けている点及び頂部の上面中央に、ボルトを1本ずつ垂直に取り付けている点が共通している。
一方、両意匠には、以下の差異点が認められる。
(A)頂部の態様につき、本件登録意匠は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部から斜面部を形成しているのに対し、甲第5号意匠は、上面の左右端部から直接斜面部を形成している点、(B)薄板片の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや傾斜しているのに対し、甲第5号意匠は、水平状で、傾斜していない点、(C)リブの態様につき、本件登録意匠は、頂部の上面を除く全体に浅い凹状又は凸状のリブを設けているのに対し、甲第5号意匠は、斜面部のみに、やや深い凹状のリブを設けている点、(D)谷部の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや湾曲しているのに対し、甲第5号意匠は、水平状で湾曲していない点、(E)山形の斜面部の態様につき、本件登録意匠は、頂部寄りの中央部分に、取付ボルト挿通用の円孔を形成しているのに対し、甲第5号意匠は、そのような円孔は形成していない点、(F)谷部及び薄板片の態様につき、甲第5号意匠は、中央部分に取付ボルト挿通用の円孔を1個ずつ、全体で合計4個形成しているのに対し、本件登録意匠は、そのような円孔は形成していない点に差異が認められる。
(ウ)そこで、本件登録意匠と甲第5号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
両意匠は、前記(イ)に差異点として挙げた(A)ないし(F)に示す差異が認められるところ、とりわけ、(A)に挙げる頂部の態様の差異と、(D)に挙げる本件登録意匠の谷部の湾曲が甲第5号意匠に見られないことの差異が顕著であるから、上記の他の差異と相まって、前記(イ)に挙げる共通点を凌駕し、看者に異なる印象を与えるものであるから、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。
以上を総合すれば、意匠全体として観察した場合、両意匠の差異点は、類否判断に大きな影響を与えるものであり、前記共通点を大きく凌駕し、看者に別異の印象を与えているものといえるから、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。
したがって、本件登録意匠は、甲第5号意匠に類似する意匠ということはできないから、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものとはいえない。
(4)本件登録意匠と甲第6号意匠との類否判断について
(ア)意匠に係る物品については、本件登録意匠と甲第6号意匠は、共に、折板状屋根葺用の固定金具であるから共通している。
(イ)形態について
両意匠の形態については、主として以下の共通点及び差異点が認められる。
まず、基本的構成態様において、全体が、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲したものであって、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、両端の山形の外側の下端部には、薄板片を形成したものである点が共通し、
各部の具体的な態様において、山形の斜面部の中央部分に、その傾斜に沿って、リブを設けている点及び頂部の上面中央に、ボルトを1本ずつ垂直に取り付けている点が共通している。
一方、両意匠には、以下の差異点が認められる。
(A)頂部と斜面部の高さの割合につき、本件登録意匠は、ほぼ同じ高さとしているのに対し、甲第6号意匠は、斜面部の高さを頂部の高さの約2倍としている点、(B)頂部の両隅部の態様につき、本件登録意匠は、当該両隅部に浅い凹状のリブを有する傾斜面を形成しているのに対し、甲第6号意匠は、そのような傾斜面やリブは形成していない点、(C)頂部の上面及び傾斜面を除く、金具全体の態様につき、本件登録意匠は、浅い凸状のリブを全体に設けているのに対し、甲第6号意匠は、そのようなリブは設けていない点、(D)谷部の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや湾曲しているのに対し、甲第6号意匠は、水平状で、湾曲していない点、(E)薄板片の態様につき、本件登録意匠は、全体が上方にやや傾斜しているのに対し、甲第6号意匠は、水平状で、傾斜していない点、(F)谷部及び薄板片の態様につき、甲第6号意匠は、谷部及び薄板片の長さは、頂部の長さとほぼ同じとし、その中央部分に取付ボルト挿通用の円孔を1個ずつ、全体で合計4個形成しているのに対し、本件登録意匠は、谷部の長さは、頂部よりやや長いものとし、薄板片の長さは、谷部の約2分の1としたものであり、また、中央部分に、そのような円孔は形成していない点に差異が認められる。
(ウ)そこで、本件登録意匠と甲第6号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
両意匠の基本的構成態様において、全体は、一定細幅帯状の薄板を3連山形に屈曲し、個々の山形は、頂部を正面視略倒「コ」字状とし、その左右下端部からそれぞれ斜面部を形成し、両端の山形の外側の下端部には、薄板片を形成した共通する態様は、この種物品の分野において、普通に見られる態様であるから、何ら特徴とはなり得ず、その類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
一方、前記(イ)に両意匠の差異点として挙げた(A)ないし(F)に示すとおりの差異点が認められるところ、とりわけ、(B)に挙げる頂部の両隅部の傾斜面の有無及び(D)に挙げる谷部の湾曲の有無の2つの態様の差異が顕著であるから、上記の他の差異と相まって、異なる印象を与えるものであり、これらの差異点の類否判断に与える影響は大きいものと認められる。
次に具体的な態様において、共通するとして、前記(イ)に挙げた態様、すなわち、山形の斜面部に取付ボルト挿通用の円孔を形成している点及び頂部の上面中央に、ボルトを1本ずつ垂直に取り付けている点についてであるが、当該円孔はごく小さいものであり、意匠全体としてみた場合、格別目立つものではないことと、当該物品の分野において、山形の斜面部に取付ボルト挿通用の円孔を形成することは、ごく普通に見られるものであること、また、頂部の上面中央に、ボルトを垂直に取り付けることは、この種物品の分野において、新屋根葺材を取り付けるために、当該新屋根葺材固定用のボルトを頂部に垂直に取り付けることが、ごく普通に行われているものであることから、このボルトは、意匠の構成要素としては、副次的要素に属するものと認められ、両意匠の類否判断を決定づける要因とはなり得ないものであることから、これらの共通点は、いずれも両意匠の特徴とはなり得ず、類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。
以上を総合すれば、意匠全体として観察した場合、両意匠の差異点は、類否判断に大きな影響を与えるものであり、前記共通点を大きく凌駕し、看者に別異の印象を与えているものといえるから、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。
したがって、本件登録意匠は、甲第6号意匠に類似する意匠ということはできないから、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものとはいえない。
7.本件登録意匠の創作容易性の検討
請求人は、本件登録意匠が、甲第3号意匠ないし甲第6号意匠に基づいて、容易に創作することができた意匠である旨主張するので、この点について検討する。
前記1.(2)に挙げる本件登録意匠の態様のうち、とりわけ、(イ)の「頂部の両隅部に傾斜面を形成している」態様及び(エ)の「谷部の全体が上方に湾曲している」態様は、本件登録意匠の特徴をよく表しているものであり、かつ、甲第3号意匠ないし甲第6号意匠には全く見られないものであるから、これらの態様は、本件登録意匠の出願時において、日本国内又は外国において公然と知られた態様とはいえないものである。したがって、本件登録意匠は、甲第3号意匠ないし甲第6号意匠に基づいて、容易に創作することができた意匠とはいえないものである。
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものとすることはできない。
8.甲第9号証ないし甲第11号証について
ところで、請求人は、手続補正書を提出し、
「本件登録意匠の特徴とする『山形頂部の両端部から斜め下方傾斜面をそれぞれ形成する』ことは、公知技術資料である甲第9号証の2、3に示されているプレス技術として至極当たり前のものであり、実際の製品製作上若干の曲げ勾配も当然に形成されるものであり、その曲げ勾配ないし斜め勾配面に、甲第10号証の2に示す『リブ加工』を補強工程として施しているに過ぎないものであり、また、本件登録意匠の特徴とする『三連山形本体部の谷部を、緩やかな山なり曲線にしている』ことは、甲第9号証の4ないし6及び甲第11号証の2、3において、それぞれの技術的内容が極めてありふれたプレス技術における常識的な加工技術をそのまま寄せ集めた意匠にすぎないものである。」旨主張するので、この点について検討する。
請求人の挙げる上記、甲第9号証ないし甲第11号証は、いずれも、金属製板材の加工方法を示す技術解説書の抜粋であり、本件登録意匠について実際に製品化する場合は、当該技術あるいはこれに類する技術を用いて加工されるものであると推認できるものであるが、意匠は、そもそも物品の形態(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)の創作であって、意匠法第3条第2項の規定は、出願された意匠について、当業者が公然と知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたか否かを問題とするものであって、その形態に加工する技術が容易であるかは直接関係のないものである。
そうすると、本件登録意匠の当該部位の形態、すなわち、頂部の両隅部に傾斜面を形成している態様及び谷部の全体が上方に湾曲している態様が、本件登録意匠の出願前から公然知られたものであるとする証拠又は創作容易であるとする形態に関する証拠(例えば、本件登録意匠と同じ部位に同様の形態を有する公然知られた意匠が存在すること。)が提示されておらず、上記の証拠のみをもって、本件登録意匠の新規性の判断及び創作容易性の判断に影響を与えるものということはできないから、請求人の主張は採用することができない。
9.むすび
以上のとおりであって、請求人の主張する理由によって、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2005-02-23 
結審通知日 2005-02-25 
審決日 2005-03-08 
出願番号 意願2002-22268(D2002-22268) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (L4)
D 1 113・ 113- Y (L4)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 西本 幸男
内藤 弘樹
登録日 2003-01-24 
登録番号 意匠登録第1167740号(D1167740) 
代理人 吉井 剛 
代理人 吉井 雅栄 
代理人 松波 祥文 

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