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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) G2
管理番号 1119554 
判定請求番号 判定2004-60081
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-08-26 
種別 判定 
判定請求日 2004-10-20 
確定日 2005-06-28 
意匠に係る物品 オートバイ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1063684号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真に示す「オートバイ」の意匠は、登録第1063684号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1. 請求人の申し立て及び理由
請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1. 本件登録意匠の説明
本件登録意匠(登録第1063684号意匠)に係る「オートバイ」の形態において、その要部は、次の構成態様から成るものである。
(1)正面において、左右にハンドルを突設したハンドルカバーの前面部に、左右両側方に吊り上がる形状のヘッドライトを設ける。
(2)ハンドルカバーの上面部左右両側に、外側方に起立するフェンダーミラーを設ける。
(3)ハンドルカバーの下方部に少許間隔をおいて、前面中央部が下向きに弯形して鋭角に尖るように成り、その左右両側部には鋭い目つきの細長の吸気口を有するフロントカバーを設ける。
(4)フロントカバーに連継してその左右両側部に、全体が弧状に弯形するレッグシールドを設ける。
2. イ号意匠の説明
イ号意匠に係る「オートバイ」の形態において、その要部は、次の構成態様から成るものである。
(1)正面において、左右にハンドルを突設したハンドルカバーの前面部に、左右両側方にやや吊り上がる形状のヘッドライトを設ける。
(2)ハンドルカバーの上面部左右両側に、外側方に起立するフェンダーミラーを設けるとともにその裏側部には点滅灯を設ける。
(3)ハンドルカバーの下方部に少許間隔をおいて、前面中央部が下向きに弯形して鋭角に尖るように成り、その左右両側部には鋭い目つきの細長い吸気口を有するフロントカバーを設ける。
(4)フロントカバーに連継してその左右両側部に、全体が弧状に弯形するレッグシールドを設ける。
3. 本件登録意匠の出願前公知意匠の説明
本件登録意匠の出願目前に、事実上公然知られた又は刊行物において知られ得る状態にある意匠を調査したところ、意匠登録第903164号に係る意匠が比較的関係ある意匠として見い出された。
この公知意匠の形態において、その要部は、次のような構成態様から成るものである。
(1)正面において、左右にハンドルを突設したハンドルカバーの前面部に、左右両側方向に半円弧形状に成るヘッドライトを設ける。
(2)ハンドルカバーの上面部ー側に、外側方に起立するフェンダーミラーを設ける。
(3)ハンドルカバーの下方部に間隔をおいて、膨出状の前面中央部及び左右両側部が下向きに傾斜面をもって窄まるように成り、前記膨出部に吸気口を有するフロントカバーを設ける。
(4)フロントカバーに連継してその左右両側部に、全体が略板状に成るレッグシールドを設ける。
4. 本件登録意匠の要部
一般に、登録意匠に係る意匠の形態が有する構成態様を分析すると、「物品の基本的形態+周知的形態+公知的形態+創作的形態」から成り立っている。
そして、具体的事案において、本件登録意匠の要部(特徴)を把握するとは、同意匠が有する創作的形態を見い出すことに外ならない。そして、本件意匠における創作上の要部を把握するためには、主として公知意匠との対比によってなされるところ、前記した公知意匠の形態が有する構成態様と対比すると、次の点に本件登録意匠の創作上の要部を把握し認定することができる。
即ち、両意匠は各構成態様(1),(2),(3),(4)に顕著な相違性を有することが認められるから、これら相違する構成態様において本件登録意匠の創作上の要部が存するといえる。
そして、これら(1),(2),(3),(4)の構成態様は、「オートバイ」という物品の顔というべき前面部に表現されている形態であるから、ここに本件登録意匠の創作的形態、即ち本件登録意匠の要部が存するといえるのであり、これ以外の部分における構成態様は、当該物品の機能に由来する基本的ないし周知的形態に属する没価値的なものである。
5. 本件登録意匠とイ号意匠との対比説明
ア. イ号意匠の形態が、本件登録意匠の創作上の前記要部を具備するかどうかについて対比して判断すると、次のとおりとなる。
まず、イ号意匠に係る形態の前面部に見られる(1),(2),(3),(4)の構成態様は、前記公知意匠の形態の前面部に見られるそれらの構成態様とは相違し創作上類似するものではないから、イ号意匠の実施者は公知意匠を実施していることを抗弁とすることはできない。
これに対し、イ号意匠の形態の前面部に見られる(1),(2),(3),(4)の構成態様と本件登録意匠の同一部分の構成態様とを対比すると、両意匠は次のとおり、共通の構成態様から成るものである。
A.(1)正面において、左右にハンドルを突設したハンドルカバーの前面部に見られるヘッドライトの形状は、左右両側方への吊り上がり度合は同一でないとしても、明らかに同一の創作性を感じさせるものと見ることができる。
(2)ハンドルカバーの上面部左右両側に外側方に起立するフェンダーミラーは、その裏側部に本件意匠では何も見られないが、イ号意匠では点滅灯が設けられている違いはあるから、この点の構成態様は別異であるといえるようである。
(3)ハンドルカバーの下方部に少許間隔をおいて、前面中央部が下向きに鋭角に尖り、かつその左右両側部に鋭い目つきの細長の吸気口を有するフロントカバーから成る構成態様は、本件意匠もイ号意匠も同じである。
(4)前記フロントカバーに連継して左右両側部に全体が弧状に弯形するレッグシールドから成る構成態様は、本件意匠もイ号意匠も同じである。
B. 両意匠のうち、本件登録意匠のシートの後側部にグリップを設けた構成態様は、イ号意匠には存しない代わりに、イ号意匠の全体の後側部には、管状に曲折して成るキャリアを左右両側部にかけて取付けた構成態様が存する。
イ. フェンダーミラーの形態は、その裏側部に本件登録意匠では何もないのに対し、イ号意匠では点滅灯がある違いは見られるが、この点滅灯の有無はフェンダーミラーの形状自体には影響せず、その中に埋没する態様であるといえるから、意匠全体の類否を左右する形態といえるものではない。
また、イ号意匠に見られるキャリアの存在は、本件登録意匠には見られないが、このキャリアは脱着し得る部材であり、キャリア自体は一般にありふれた形状のものであるから、オートバイ本体の意匠に係る形態が類似するものである限り、その本体を利用する事実があることに変わりはない。
ウ. 物品「オートバイ」において、イ号意匠の形態は本件登録意匠の形態に全体として類似するものであるというべきである。
6. イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由
両意匠はその形態上の創作性を共通にしているものであることから、看者をして共通の印象ないし美感を与えるものであり、取引者需要者にとっては全体として類似する意匠と判断せざるを得ないものである。
意匠は創作を原因とするから、この原因の発生源である創作体(類似する意匠の範囲)を共通にすれば、そこに由来して表現された現象としての具体的な形態において印象ないし美感を共通にすることになるのは自然である。
第2. 被請求人の答弁及び理由
被請求人は、請求人の申し立て及び理由に対して、何も答弁していない。
第3. 当審の判断
1. 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成10(1998)年10月1日に意匠登録出願され、その後平成11(1999)年12月3日に、意匠権の設定の登録がなされた、意匠に係る物品を「オートバイ」とする、意匠登録第1063684号の願書の記載及び願書に添附の写真に現されたとおりの意匠である(本件判定書に添付の別紙第1参照)。
2. イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書の記載によれば、意匠に係る物品を「オートバイ」とする、判定請求書に添付されたイ号写真に現されたとおりの意匠である(本件判定書に添付の別紙第2参照)。
3. 本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠を意匠全体として対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態について(両意匠とも、物品の進行方向を前方として、すなわち物品固有の方向性に倣い、認定する。)は、主として、以下に示す共通点及び差異点が認められる。
(1)基本的構成態様の共通点
全体を、比較的大径の前後輪から成るオートバイとしたものであって、その車体前部の上方に、水平状のハンドルを設けてその中央部をヘッドライトとメーターを備えたハンドルカバーで覆ってハンドル部とし、ハンドル部の下方に、アッパーカウルと、その両側部下方の外側へ張り出し状を呈する長い樋状に形成したアンダーカウル(レッグシールド)を、上下一体様に設けてフロントカウル部とし、フロントカウル部の前方にフロントフェンダーを設け、そのフロントフェンダーの両側部略中央下方に、フロントフォークを前方斜め下方へ突出状に設けて前輪を軸支し、車体中央部の上方に、上縁部を側方視釣り針状に形成したセンターカバーをリアカウルの前部下方に食い込み様に設け、その下方のエンジン部の間に、フロントカウル部下方とリアカウル下方を繋ぐ様に細長い板状のサイドカバーを設け、エンジン部の左側部から後輪中央部へ向けてチェーンケースを設け、エンジン部の右側部から後輪後端部へ向けてマフラーを設け、車体後半部の上方に、前後に長いシートを設けて、そのシートの前部の下方から後方斜め上方へ、テールライトとターンシグナルライトを備えたリアカウルを尻上がり状に形成し、リアカウルの後部下方にリアフェンダーを設け、リアカウルの前半両側部下方に、オイルダンパーを後方斜め下方へ突出状に設けて、スイングアームとチェーンケースの後部を懸架している点。
(2)具体的態様の共通点
(A)ハンドル部は、ハンドルカバーを略半楕円球体の上面後半部を後ろ下がりの緩斜面状に形成したものとし、そのハンドルカバーの正面に、略吊眼様のヘッドライトを設け、ハンドルカバーの上面後半部中央に略扇状のメーターを設けている点。
(B)フロントカウル部は、側方視略「く」の字状を呈するものとして、そのアッパーカウルを先窄まりの略爪革状に形成してその前端寄り左右に細長吸気口を設け、アンダーカウルを前方視上縁がアッパーカウルの下縁に繋がる様な緩やかな弧状に形成し、そのアンダーカウルの上部をアッパーカウルの下端の際で側方視屈曲して、アンダーカウルの下部をその屈曲部から下方へ徐々に幅狭としている点。
(C)フロントフェンダーは、側方視略嘴状に形成してその両側部の略中央部を外側へ弧状に膨出している点。
(D)シートは、先窄まりの略角丸扁平直方体状に形成してその前後端部を稍細幅とし、その側面の前後の中間部に前下がり状の区切線を表し、上面の前半部と後半部を僅かな凹曲面としている点。
(E)リアカウルは、略船体様を呈するものとし、そのリアカウル部の後部に、後方視略台形状のテールライトを設けて、その左右に側面に回り込む先細状のターンシグナルライトを設けている点。
(F)フロントフォークを略円筒状とし、フロントブレーキを略円環板状とし、マフラーを略円筒状とし、チェーンケースを側方視略長円板状とし、オイルダンパーを略円筒状とし、リアフェンダーを略楔板状としている点。
(G)エンジン部の後上方に、略菱形状の蓋体様部を設けている点。
(H)ハンドルカバーの上面部左右に、略角丸台形状のバックミラーを設けている点。
(I)車体の塗り分けを略同様としている点。
(3)具体的態様の差異点
(ア)車輪について、本件登録意匠は、所謂ワイヤースポークホイールとしているのに対して、イ号意匠は、中空の3本スポークから成る所謂ディスクホイールとしている点。
(イ)マフラーについて、本件登録意匠は、根元寄りの部分を大径としてその余の部分を徐々に縮径状としているのに対して、イ号意匠は、根元から先端へ徐々に拡径状として根元寄りに段差を設けている点。
(ウ)リヤグリップについて、本件登録意匠は、リアカウルの後半上部に、上方視略U字状の後端部を斜め上方に屈曲したパイプを折曲して成るリヤグリップを設けているのに対して、イ号意匠は、リアカウルの後半上部に、チェーンケースの略根元からリアカウルの後方へ支持部を介して、上方視略U字状で側方視略クランク状に延伸する、キャリアとステップを兼ねたパイプを折曲して成るリヤグリップを設けている点。
(エ)バックミラーについて、イ号意匠は、その裏側に柿の種状の点滅部を設けているのに対して、本件登録意匠は、その点滅部を設けていない点。
(オ)車体色の有無について、本件登録意匠は、モノクロームで現されているのに対して、イ号意匠は、略青色のカラーで現されている点。
4. 両意匠の類否判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して両意匠を全体観察し、その類否を以下に検討する。
(1)共通点について
両意匠に共通するとした基本的構成態様については、形態全体の基調を表象するものであり、並びに、両意匠に共通するとした(A)ないし(F)の具体的態様については、形態各部の醸し出す印象を同じにするものであって、これらの共通する態様が、その余の(G)ないし(I)の態様と相俟って、両意匠の形態全体の特徴を表出して著しい共通感を奏するものであるから、類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
(2)差異点について
(ア)車輪については、この種物品の属する分野において、車輪をワイヤースポークホイールとすることもディスクホイールとすることも、使用の目的に応じて適宜選択されるものであり、両意匠のその態様も、極普通に知られた格別特徴のない態様であって、それ程看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通するとした態様の共通感を凌駕するものとはいえないから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(イ)マフラーについては、その大径の部位及び段差の有無に差異があるとしても、両意匠とも円筒形を基にしている点で変わりはないものであり、異質の造形感を生じるとはいい難いものであって、格別看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通するとした態様を翻して、別異の態様を表す程の印象を与えるとはいえないから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(ウ)リヤグリップについては、概略チェーンケースの略根元から支持部までの略L字状部分の有無に差異があるとしても、パイプを折曲して成るものとした共通感がその有無を圧倒しており、それ程看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、部分的で軽微な差異にすぎず、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(エ)バックミラーについては、柿の種状の点滅部の有無に差異があるとしても、その点滅部はどちらかといえば付加的なものであり、二義的な要素にすぎないものであって、また、(オ)車体色の有無については、この種物品の属する分野において、車体色を各種のものにすることは、極普通になされるところであり、イ号意匠の車体色に格別の創作性を見いだせないものであって、両意匠とも車体の塗り分けを略同様としていることも勘案すると、それ程看者の注意を引くとはいえず、それら(エ)及び(オ)の差異は、形態全体から観れば、共通点に包含される軽微な差異にすぎず、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
そうすると、前記の(ア)ないし(オ)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、両意匠の形態全体の印象を異にする程の格別な特徴を表出するとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないといわざるを得ず、前記の共通点の奏する形態全体の特徴を凌駕して、類否判断を左右するとはいい難い。
(3)類否について
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、前記の共通点は、両意匠に著しい共通感を生じて類否判断を左右するといわざるを得ないから、意匠全体として観察すると、類似するものというほかない。
5. むすび
イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2005-06-16 
出願番号 意願平10-28270 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川越 弘綿貫 浩一 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 小林 裕和
鍋田 和宣
登録日 1999-12-03 
登録番号 意匠登録第1063684号(D1063684) 
代理人 牛木 理一 

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