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審決分類 |
審判 E2 |
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管理番号 | 1121282 |
審判番号 | 無効2004-88027 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2005-09-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-09-14 |
確定日 | 2005-08-04 |
意匠に係る物品 | 金魚すくい用枠 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1205066号「金魚すくい用枠」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1205066号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及び理由の要点 請求人は、第1205066号の意匠登録(以下、本件登録意匠という)を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として審判請求書の記載のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第28号証の書証を提出した。その要点は以下のとおりである。 1.無効理由の要点 本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号又は同法第3条第2項の規定により、意匠登録を受けることができないものであるから、同法第48条第1項第1号の規定に該当し、その意匠登録を無効とすべきである。 2.本件登録意匠を無効とすべき理由 (1)本件登録意匠の要旨 本件登録意匠は、意匠登録第1205066号公報に記載のとおり、意匠に係る物品を「金魚すくい用枠」とする「部分意匠」であり、その本件登録意匠の要旨は金魚すくい用枠における「円形枠本体」のうち、「把手」から延長した仮想直径線と交叉する部分に、その枠内へ張り出す円弧状の「タブ」と、正面側に向かってのみ盛り上がる2本の「紙溶着用突条」とを形成した点にある。 (2)先行意匠 請求人は、先行意匠が存在する事実及び証拠の説明として、審判請求人の製品の本件登録意匠の出願前の販売事実とその証拠、審判被請求人の製品の本件登録意匠の出願前の販売事実とその証拠、並びに本件登録意匠の出願前に頒布された公開特許公報及び公開実用新案公報を提出した。 イ.審判請求人の製品販売事実とその証拠 請求人は、請求人の製品である「商品名:ラッキースクープ」(使い捨て金魚枠)あるいは「商品名:スーパーボールすくい」(スーパーボールすくい枠)が、本件登録意匠の出願前に販売されていた事実を示す証拠として、甲第1号証ないし甲第14号証、すなわちそれぞれ「証明書」、別紙「物品受領書(写し)」、別紙「商品カタログ」及び別紙「写真」を提出し、さらに「商品名:スーパーボールすくい」(スーパーボールすくい枠)が、本件登録意匠の出願前に玩具安全検査を受けていた事実を示す証拠として、甲第15号証の「試験成績報告書(写し)」を提出した。加えて、「甲第1〜14号証に添付の商品カタログや商品包装・梱包状態の写真から明白なように、すべて全く同一」であり、「請求人から販売されていた裸の製品を、以下に『先行意匠A』と総称」し、その「先行意匠A」を抽出・撮影した甲第16号証の写真を提出した。 そして、甲第16号証に基いて、「先行意匠A」の構成態様を、「『円形枠本体』が『把手』から延長した仮想直径線と交叉する部分には、その枠内へ張り出す円弧状の『タブ』と、背面(片面)側に向かってのみ盛り上がる1本の『紙溶着用突条』とが形成されている。」と主張した。 ロ.審判被請求人の製品販売事実とその証拠 請求人は、玩具総合メーカー、アイドルの、甲第17号証の「平成12年度用『商品カタログ』」及び甲第18号証の「平成14年度用『商品カタログ』」を提出し、掲載されている「No.15(ハ)グッピー枠、JAN4905842380029」と、「No.19(ロ)すくい枠50本入り、JAN4905842361035」と、「No.22(イ)スーパーボールちゃん、JAN4905842000026」と、「No.22(ハ)金魚すくい グッピーちゃん、JAN4905842320056」との合計4商品が、甲第17号証によって、遅くとも平成12年末までには販売されていた事実を示し、又「No.15(ハ)グッピー枠、JAN4905842380029」と、「No.19(ロ)すくい枠50本入り、JAN4905842361035」と、「No.22(ロ)金魚すくい グッピーちゃん、JAN4905842320056」と、「No.24(ロ)スーパーボールちゃん、JAN4905842000026」との合計4商品に加えて、「No.1ジャンボグッピーちゃん JAN4905842301277」と称する商品、これらの合計5商品が、甲第18号証によって、平成14年末までには販売されていた事実を示し、さらにその各々掲載された商品を示す写真として甲第19号証ないし甲第23号証を提出し、又甲第17号証〜23号証に表示されている玩具総合メーカー アイドルの代表者は、審判被請求人であるとして甲第28号証の侵害警告書(写し)を提出して、「甲第17号証の平成12年度用商品カタログに掲載されている上記合計4商品と、甲第18号証の平成14年度用商品カタログに掲載されている上記合計5商品は、甲第19〜23号証の写真に示すそれらとJANコードの番号が一致することに徴して、審判被請求人が主宰するアイドルから遅くとも平成14年末までには販売されていたことが明白である。」と主張した。加えて、「甲第17、18号証の商品カタログや甲第19〜23号証の写真から明白なように、すべて全く同一」であり、「審判被請求人から販売されていた裸の製品を、以下に『先行意匠B』と総称」し、その「先行意匠B」を抽出・撮影した甲第24号証の写真を提出した。 そして、甲第24号証に基いて、「先行意匠B」の構成態様を、「『円形枠本体』が『把手』から延長した仮想直径線と交叉する部分には、その枠内へ張り出す円弧状の『タブ』が形成されている。」と主張した。 ハ.本件登録意匠の出願前頒布の公開特許公報及び公開実用新案公報 請求人は、本件登録意匠の出願前に頒布された甲第25号証の特開2003-19345号公報を提出し、「図1や図2(a)、図3(a)〜(d)、図4(a)(b)に記載されているフレーム凸条(4)が、『円形枠本体』(すくい具本体1)のフラットな『紙貼付け面』(12)から0.25〜0.3mm程度の一定高さだけ盛り上がる旨(同号証の明細書段落【0020】)として、本件登録意匠の『紙溶着用突条』に該当」し、甲第26号証の実開昭59-61089号の「明細書の第2頁第13〜14行目に『熱接着を容易にするため熱接着面(4)(4’)を粗面にしても良い。』とある『粗面』が、本件登録意匠の『紙溶着用突条』に相当」し、甲第27号証の実開昭59-35376号の「容器(10)のフランジ(12)に、開口縁部に沿って上方へ突出する断面山型の突起(13)を形成し、この突起(13)によって蓋材(14)をヒートシール(熱溶着)するようにした合成樹脂製容器に係るが、茲に突起(13)は、本件登録意匠の『紙溶着用突条』に相当する。」と主張した。 なお、甲第28号証は、被請求人から請求人の取引先に送付された平成16年4月12日付の侵害警告書(写し)である。 (3)本件登録意匠と先行意匠との対比 イ.本件登録意匠と先行意匠Aとの類否 「『紙溶着用突条』が本件登録意匠のように2本か、『先行意匠A』のように1本かという相違点については、類否判断に与える影響・ウエイトが極めて微弱である。蓋し、『紙溶着用突条』の盛り上がり高さは製品現物としての実施上、約0.5mm未満であり(審判被請求人の自ら特許出願された甲第25号証の明細書段落【0020】を参照)、しかもこのような『紙溶着用突条』はすくい紙の溶着時に加熱溶融されて、もはや消失してしまう結果、金魚をすくうために使用できる完成品の状態では、上記『紙溶着用突条』のそれ自身を肉眼により目視することができず、その完成品として本件登録意匠と『先行意匠A』とは同一になるからである。」 他方、「『タブ』はその完成品の状態でも、『円形枠本体』の正面側と背面側から肉眼によって目視することができ、その構成態様が本件登録意匠と『先行意匠A』との互いに同一であるため、結局意匠に係る物品の取引者や需用者が完成品を購入する際、その本件登録意匠と『先行意匠A』とを識別することは不可能である。」 「従って、本件登録意匠は『先行意匠A』に類似するものである。」 ロ.本件登録意匠と先行意匠Bとの類否 「『円形枠本体』の正面側と背面側から肉眼により目視できる『タブ』の構成態様については、やはり本件登録意匠と『先行意匠B』との互いに同一である。」 また、「『先行意匠B』の場合すくい紙が既に溶着された完成品として、その『紙溶着用突条』が加熱溶融されてしまっているが、甲第24号証に示す溶融痕跡(すくい紙の溶着部分)から、そのすくい紙の溶融前では2本の『紙溶着用突条』が予じめ盛り上がっていたものと看取され、本件登録意匠と同一の構成態様である。」 さらに、「『先行意匠B』における『紙溶着用突条』の盛り上がり本数が、厳密には不明である」としても、本数に関する本件登録意匠との相違点は、「本件登録意匠が未だすくい紙の無い半成品の状態であるに比し、『先行意匠B』が既にすくい紙の溶着された完成品であることにのみ由来する相違点に過ぎない」。本件登録意匠でも、「すくい紙が溶着された完成品となれば、『先行意匠B』と必ず同じ構成態様になり、やはり取引者や需要者が意匠として識別することができない。」 「従って、本件登録意匠は「先行意匠B」に類似するものと言わざるを得ない。」 ハ.本件登録意匠と公開特許公報、公開実用新案公報との対比 「甲第25号証には、『金魚すくい具とその製造方法』に係る発明として、『円形枠本体』(すくい具本体1)の『紙貼付け面』(12)から盛り上がる『紙溶着用突条』(フレーム凸条4)の各種断面形状と本数が記載されている。」「更に言えば、このような甲第25号証のみならず、甲第26、27号証や実公平8-285号公報、特開平7-165263号公報、実公昭63-23342号公報、実公昭62-13495号公報、実開昭55-104673号公報等々に見られる如く、紙や合成樹脂フィルムを熱可塑性合成樹脂製の器体へ溶着(ヒートシール)する技術として、その加熱溶融する断面山型突条の1本又は複数本を、予じめ器体側から同芯のサークル状態に盛り上げておくことは、本件登録意匠の出願前から周知である。」 「そのため、本件登録意匠のように『紙溶着用突条』を2本として、その『円形枠本体』の片面から盛り上げることは、所謂当業者が甲第25〜27号証やその他の上記公報に基けば、容易に意匠に創作をすることができるものであり、意匠法第3条第2条の規定に該当する。」 第2.被請求人の答弁及び理由の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書の記載のとおり反論した。その要点は以下のとおりである。 1.先行意匠Aについて 被請求人は、「甲第1号証〜甲第14号証、甲第16号証の成立は不知。」とし、その理由として、「甲第1号証〜甲第14号証の販売先の証明書によれば、これらの証明書に添付されたカタログや上記商品ア〜ウの写真は、本件意匠の登録日(平成16年5月17日)の以降である、平成16年8月2日や、平成16年7月21日に請求人から提示されたものである旨記載されている。したがって、これらのカタログや商品写真が本件意匠の出願前に存在し、頒布されたものかどうかは不明である。また、商品名やそのコード番号は同じ同一の商品であっても、その商品の構造等はしばしば改良されることは経験則の教えるところであるから、仮に、これらの証明書に記載通りの商品名の商品が請求人から各証明者に販売されたものであるとしても、その意匠が販売当時から現在まで一切変更されることのない同一のものかどうかは不明である。したがって、甲第1号証〜甲第14号証は、その販売当時の先行意匠Aの意匠を証するものではない。」とし、 「甲第15号証の試験成績報告書は、上記商品ウを試験対象とするものであるから、上記商品ウはこの報告書の発行日(2004年4月15日)の以前に存在していたことを称するものであるが、上記商品ウの意匠までをも証するものではな」く、 「甲第16号証は、上記商品ア〜ウの意匠(形態)を証するものである旨請求人は主張しているが、その作成者や作成年月日、添付の図面代用写真の撮影者、撮影年月日、被写体である商品の詳細等が一切不明であるものであるから、その証拠価値はない。」 「このように甲第1号証〜甲第16号証によっては、先行意匠Aが請求人主張通りの意匠であり、また、先行意匠Aが本件登録意匠の出願日以前に公知のものであったかどうかは不明」で、「本件意匠とその類否を論ずることはできない。」と主張した。 2.先行意匠Bについて 被請求人は、「甲第17号証及び第18号証のカタログは、それぞれ平成12年及び平成14年に被告の発行したものであることは認め」、「甲第19号証〜第24号証は、その被写体が現在のものであることは認めるが、平成12年又は平成14年の販売当時のものであることは否認し、撮影者、撮影年月日は不知。」とし、その理由として、「被請求人は、これらの商品について、商品名やそのコード番号は同じであっても、その商品の構造等を改良している。甲第24号証の図面代用写真に示される先行意匠Bは、被請求人が現在販売しているものであるが、請求人主張の販売当時のものでなく、その販売当時の先行意匠Bの意匠を証するものではない。したがって、甲第24号証(甲第19号証〜甲第23号証も)は、その販売当時の先行意匠Bの意匠を証するものではない。」 「このように甲第19号証〜甲第24号証によっては、先行意匠Bは特定されていな」く、「本件意匠とその類否を論ずることはできない。」と主張した。 3、先行公報等について 特開2003-19345号公報(甲第25号証)について、「『フレーム凸条4』が開示されているとしても、その断面形状や本数(本件意匠の紙溶着用突条は2条)等の具体的形態については何の記載もな」く、また、「本件意匠の構成中の『タブ』についても何の記載もない。」 実開昭59-61089号全文明細書及び図面(甲第26号証)について、「明細書に記載の『粗面』がざらざらした面程度の意味合いであって、凸状を有する面でないことは明らかである。」 実開昭59-35376号全文明細書及び図面(甲第27号証)について、「明細書に記載のものは、合成樹脂製容器であって、本件登録意匠のような金魚すくい具ではな」く、しかも、「合成樹脂製容器は、蓋体14を剥離しやすくするために突起13を設けたものであるのに対して、本件意匠の『紙溶着用突条』は、金魚すくい紙を強固に接着して、金魚すくい紙が水中で破れ易くするためのものであるから、その技術的意義も相違する。」したがって、「突起13は、本件登録意匠の『紙溶着用突条』に相当するものではない。」 このように、甲第25号証には、「『フレーム凸条4』がアイデアとして開示されているとしても、本件意匠のように、その断面形状が半円形であることや、条数が2本である等の具体的形態については何の記載もな」く、「甲第26号証及び甲第27号証には、本件意匠の『紙溶着用突条』に相当する構成については何の記載もない。」「さらに、甲第25号証〜甲第27号証には、本件意匠の構成中の『タブ』については何の記載もない。」「したがって、本件意匠は、当業者といえども甲第25号証〜甲第27号証に基づいて容易に意匠の創作をすることができず、意匠法第3条第2項に該当するものではない。」 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成15年10月1日の出願に係り、平成16年3月26日に設定の登録がなされた意匠登録第1205066号であって、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「金魚すくい用枠」とし、物品の部分について意匠登録を受け、その形態を、同図面中に実線及び一点鎖線で表したとおりとしたものである(別紙第1参照)。 すなわち、本件登録意匠は、略細幅薄板状の把手とその端部に厚みを同じくして、一体的に形成した細幅円環状枠からなる金魚すくい枠のうち、把手に対向する枠の頂部部分であって、枠の縦断面形状の幅員と厚みの比を4:3の横長矩形状とし、その横幅を円環状枠の外径の約1/5とし、幅員を横幅の約1/5とし、内周面の中央に、厚みを枠と同じくした円弧状のタブを枠幅員の半分ほど突出して設け、さらに枠の正面のやや外寄りに断面略半円状の2本の紙溶着用突条を同心円状に設けた構成態様としたものである。 2.先行意匠A 請求人による先行意匠Aは、甲第1〜14号証によって、本件登録意匠の出願前に公知であった意匠を総称したものであるが、この甲第1〜14号証に対して被請求人は、甲第1号証〜甲第14号証の成立は不知とし、その理由として、前述のとおり(第2「1.先行意匠Aについて」の項)主張しているが、甲第1〜14号証の各書証の証明書において、14社の証明者が現物、その商品カタログ、商品梱包状態の段ボール箱あるいは商品の包装状態、並びに物品受領書を確認した上で、証明したものであり、すなわち物品受領書に記録されている商品を購入し、その記録当時に購入した商品が現在のそれと同じ商品として、商品カタログに掲載された形状のものであることを証明していることから、たとえ商品カタログ等の提示された時期が、本件登録意匠の登録日以降であろうとも、ここで証明された事実は、商品カタログ等に示された意匠が物品受領書当時購入された意匠と同一であるという証明であって、多数の証明者によって証明された商品(「商品名:ラッキースクープ」及び「商品名:スーパーボールすくい」)の意匠も各々同一の意匠であって、またJANコード番号が同じ同一の商品があっても、その商品の構造等がしばしば改良されることはあるとしても、常に改良が成されるものとは限らず、日付の異なる三種の商品カタログを見ても、改良されることなく同一の意匠として扱われている商品であることから、購入当時に同一の意匠の存在を示す証明書を、ことさら疑うべき特段の事情も認められず、その記載のとおりと認めることが妥当である。 このことから、「商品名:ラッキースクープ」という金魚すくい用枠について、甲第1〜12号証による金魚すくい用枠の意匠は、各々同一の意匠であって、物品受領書の日付は、多数あるが、平成13年4月13日(甲第6号証)から平成15年9月30日(甲第8号証)間まで記載され、また商品カタログも、疑うべき特段の事情も認められず、その記載のとおりであり、その日付には、平成13年1月5日付け(甲第6号証、甲第9号証、甲第10号証)、平成14年4月20日付け(甲第1〜3号証,甲第5号証、甲第6号証、甲第11号証)、平成15年1月5日付け(甲第1〜12号証)の三種が提出されていることから、少なくとも、平成13年1月5日付け商品カタログが発行された平成13年1月5日時点において、すでに本件登録意匠の出願前に「商品名:ラッキースクープ」という金魚すくい用枠の意匠が公然知られていたものと認められ、また、「商品名:スーパーボールすくい」というスーパーボールすくい用枠についても、甲第10〜14号証によるスーパーボールすくい用枠の意匠は、各々同一の意匠であって、物品受領書の日付は、多数あるが、平成15年3月5日(甲第14号証)から平成15年9月16日(甲第14号証)間まで記載され、商品カタログも、疑うべき特段の事情が認められず、その記載のとおりであり、その日付が平成15年2月5日付け(甲第10号証ないし甲第14号証)であることから、少なくとも、平成15年2月5日付け商品カタログが発行された平成15年2月5日時点において、すでに本件登録意匠の出願前に「商品名:スーパーボールすくい」というスーパーボールすくい用枠の意匠も公然知られていたものと認められる。 したがって、被請求人の主張は採用できない。 ところで、請求人による先行意匠Aは、実質的に同一であっても、複数の意匠を総称して先行意匠Aとしているが、当審においては、同一の意匠が現されている各商品カタログの中で、日付が一番古いものである甲第6号証の平成13年1月5日付け商品カタログに現された「商品名:ラッキースクープ」の意匠を、金魚すくい用枠として本件登録意匠と物品も共通しているので、先行意匠Aと認定して検討する。(以下、先行意匠Aという。別紙第2参照) 3.本件登録意匠の創作容易性について 本件登録意匠は、把手付きの円環状枠の、把手に対向する頂部部分の部分意匠であって、枠の内周面の中央に、厚みを枠と同じくした円弧状のタブを枠幅員の半分ほど突出して設け、さらに枠の正面のやや外寄りに断面略半円状の2本の紙溶着用突条を同心円状に設けた構成態様であるが、円環状枠の頂部内側に円弧状のタブを設けることは、本件登録意匠の出願前に先行意匠Aにすでに公然知られているものである。さらに先行意匠A以前にも意匠登録第605898号(別紙第3参照)で明らかなとおり、枠の頂部に、枠の厚みのままの円弧状タブを設けた金魚すくい遊戯用すくい具が公然知られていた。よって、円環状枠の頂部に円弧状のタブを設けることに、特筆すべき創意は認められない。また、円環状枠の紙溶着面に周方向に連続して数本の突条を設ける態様は、本件登録意匠の出願前に公開された特開2003-19345号(甲第25号証、別紙第4参照)の図1及び図2によりすでに公然知られ、紙溶着面の突条を断面略半円状としたものも、同公報の図4(a)で明らかなとおり、公然知られていた。また同公報図3では突条を1本や3本としたものが表されており、これは突条を必要に応じて増減させることを示唆するものであるから、紙溶着面に施す突条を2本にすることは適宜施される常套的改変に過ぎないものである。そして、本件登録意匠の枠自体の断面形状もありふれた矩形に過ぎない。 したがって、本件登録意匠は、出願前すでに公然知られた円環状枠の正面側の面に、公然知られた断面略半円状の紙溶着用の突条を、周方向に連続して単に2本を設け、さらに公然知られた円弧状タブを単に枠の厚みを同じくして、枠頂部の内側に組み合わせた程度のものであり、当業者にとって極めて容易に着想できることから、格別の創意を要したとは言えないものである。結局、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当する。 4.むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項に違反して登録されたものであるから、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し、その他の無効理由について審理するまでもなく、その登録は無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 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別掲 |
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審理終結日 | 2005-06-06 |
結審通知日 | 2005-06-08 |
審決日 | 2005-06-23 |
出願番号 | 意願2003-28855(D2003-28855) |
審決分類 |
D
1
113・
121-
Z
(E2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 下村 圭子 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 樋田 敏恵 |
登録日 | 2004-03-26 |
登録番号 | 意匠登録第1205066号(D1205066) |
代理人 | 鎌田 文二 |
代理人 | 鳥居 和久 |
代理人 | 山下 賢二 |
代理人 | 東尾 正博 |