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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) K2
管理番号 1122983 
判定請求番号 判定2005-60032
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-10-28 
種別 判定 
判定請求日 2005-05-16 
確定日 2005-09-14 
意匠に係る物品 釣竿ケース 
事件の表示 上記当事者間の登録第1190823号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真並びにその説明書に示す意匠は、登録第1190823号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、イ号写真並びにその説明書に示す意匠は、登録第1190823号意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める、と申し立て、その理由として、判定請求書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。その主張を概括すれば以下のとおりである。
両意匠は、何れも「釣竿ケース」に関するものである点で意匠に係る物品を共通にするものである。
両意匠は、ケース本体が一枚の板状発泡体を略U字状に撓ませて正面壁、背面壁、平面壁とし、これら3壁を繋ぐ縫合部をなくすと共に、該背面壁の長手方向に帯状部を連結して正面壁と帯状部間に開口部を形成し、該開口部を覆うスライドファスナーを設け、さらに正面及び背面壁は上方の直線状部とその下方に開口部側に膨出した膨出部とからなるものとし、該正面壁膨出部にポケットを一体的に形成してなる基本的構成態様を共通とするものである(共通点1)。
具体的構成態様については、以下の共通点を認めることができる。
(A)ケース本体全長に対し正背面壁の膨出部が直線状部よりも若干長く形成され、また膨出部の幅が直線状部の幅に対しほぼ同一の約2.3倍の大きさで形成され、しかも最膨出部のケース本体全長に対する位置も一致している点(共通点2)、
(B)ポケットは、正面壁膨出部の円弧状縁に沿って、さらにその円弧状縁の上下端部からそれぞれ平面壁に向けてケース本体縦方向に対し直交するような開口部を正面壁の外装材を切り開いて形成し、該開口部を覆うスライドファスナーが正面視、人の耳の輪郭の如くの外観態様を呈してなる点(共通点3)、
(C)本体ケース正面壁の膨出部の平面壁側で長手方向に扁平な略楕円形状の凹部を形成し、且つその大きさが膨出部全体の約3分の1程度占める点(共通点4)、
(D)本体ケースの平面壁において、肩掛けベルト、その中央にハンドル、上方端近傍にトップハンドルを取り付けてなり、該肩掛けベルトは平面視右側から左側に向けてその先端が丸みをおびた縦長スプーン状の肩掛け部とその先端からのびる帯状部とからなるものである点(共通点5)、
(E)本体ケースの底面が略直方体の底キャップで覆われ、該底キャップの四隅に小突起部を形成してなる点(共通点6)、
において共通点がある。
A.両意匠の共通点の評価
先ず、基本的構成態様に関する共通点1は釣竿ケースとしての形態全体の骨格をなすものであり、同時に一枚の板状発泡体を略U字状に撓ませて正面壁、背面壁、平面壁とした一体成形してなる構成態様が従来品に全くない斬新なものである以上、取扱者の注意を喚起することは明らかであり、それ故、これが意匠の類否判断において重大な影響を及ぼすものであることは勿論である。
また、具体的構成態様における共通点2は、ケース本体全体の輪郭がほぼ一致することを決定付けるものであり、そうであるならこれも意匠の類否判断を左右する重要な要素になることは明らかである。
さらに、共通点3は、ケース本体の縫合部のない一体成形とした構成をケース本体とポケットとの関係でも貫くものであり、しかも本件登録意匠の要部における共通点であるから、これが意匠の類否判断において影響を与えるものであることは疑う余地はないのである。
共通点4は、その凹部が通常、引用意匠のように商品ブランドを刻印したワッペン等を貼付してなる部分であることから、その形状の一致と相まって看者の注意を惹く部分における共通点と言え、これも又意匠の類否判断に影響を与えるものである。
共通点5は、肩掛けベルト、中央のハンドル、トップハンドルを形成した位置及びその形状に関するものであり、本物品の持ち運びの際、取扱者が上記ベルト等を利用するのが常であるから、この部分にも取扱者は当然に注意を向けることに鑑みれば、これも意匠の類否判断に影響を与えるものであることは明らかである。
してみれば、上記両意匠の共通点1乃至5は、何れも意匠の類否判断に影響を与える重要な要素になると評価することができるのである。
B.両意匠の差異点の評価
これに対し、両意匠の差異点は、何れも甲第13号証ないし甲第16号証等に開示されている通り、極めてありふれたものであると結論づけることができる。
この種釣り竿ケースの物品分野において、取扱者は本来的に物品の装飾性よりも、その機能に着目して商品を購入するのが一般的であり、そうであるなら両意匠の差異点はケース自体の機能と無関係な凸状部又は段差構成にすぎないため、取扱者がこれらの部分に特に注意を向けることはあり得ないのである。また、差異点は、何れも全体形状から見て部分的なものに止まり、又この部分が看者の注意を特に喚起するはずもないため、これら差異点が意匠の類否判断を左右する要素になり得ないことは明らかである。
これらのように、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても共通点1乃至5が両意匠に著しい共通感を生じさせるものであり、意匠の類否判断に与える影響が極めて大であるのに対し、差異点は何れも類否判断に与える影響が微弱なものである以上、かかる共通点が差異点を凌駕するものであることは明らかであり、それ故、互いに類似するものであると考えるのが相当である。
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、イ号写真並びにその説明書に示す意匠は、登録第1190823号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める、と答弁し、大要以下のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
本件登録意匠は、平面壁がアーチ状に丸みを持ち、正面壁、背面壁へ連続的につながった一体感のある形状を要部とする。なお、このような構成は、本件登録意匠が出願される4年前に意匠登録第1094700号(甲第15号証)の参考斜視図に表れて公知であるから、この点だけをもって意匠の要部とすることはできない。
本件登録意匠の膨出部を注意深く観察すると、膨出部の正面を上下に区分する波状の線は単なる境界線ではなく、平面壁の丸みにつながる曲面と、ファスナーのある帯状部につながる張り出た膨らみとの段差であることが分かる。膨らみの段差を形成している波状の境界線はポケットファスナーに沿って平面壁まで回り込み、平面壁を越えて背面壁の対称的な波状線につながっている。本件登録意匠において、膨出部の波状境界線が、正面壁から平面壁を回り込み、背面壁の波状線につながって延びていることは、本件登録意匠の、もう一つの重要な要部である。釣竿ケースは、手に提げて持ち、又は肩に掛けて運ぶ際に、ケースの平面壁と正面壁又は背面壁は、同時に目に入り、膨らみ模様が、2つの面に股がって連続していることは、強い印象を看者に与えるからである。
イ号意匠は、膨出部の3本の曲線は、平面壁の段差の下で途切れて平面壁を越えることはなく、オーソドックスな美的処理である。
本件登録意匠は、平面壁をU字状に曲げて丸みを持たせ、正面壁、背面壁とは境界のない連続した曲面形状とし、膨出部の波状境界線が平面壁まで回り込んで、サイドポケットの膨らみが正面壁、平面壁、背面壁につながっている点において、看者の注意を惹く要部があるのに対し、イ号意匠は、本件登録意匠の上記意匠構成を具えておらず、美観は静的、安定感であって、本件登録意匠と比べて著しい異なった印象を看者に与えるから、本件登録意匠には類似しないものである。
イ号意匠は、本件登録意匠の要部たるアーチ状の平面壁、膨出部を二分する大きな波状境界線とは悉く相違する。看者に与える美観が、本件登録意匠は、軽快感、運動感があるのに対し、イ号意匠は頑丈さ、安定さ、静的な美観ががあり、看者に与える意匠が著しく相違するから、両意匠は互いに非類似である。よって、イ号写真に示す意匠は本件登録意匠及びそれに類似する意匠の範囲に属さない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成15年1月30日に意匠登録出願をし、平成15年10月3日に意匠権の設定の登録がなされた、登録第1190823号の意匠であり、登録原簿及び願書の記載によれば、意匠に係る物品が「釣竿ケース」であり、形態については、願書に添付した図面代用写真に現されたとおりのものである(別紙1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付したイ号写真並びにその説明書に示されたものであって、意匠に係る物品については、その書類の記載によれば「釣竿ケース」であり、形態については、同写真に現されたとおりのものである(別紙2参照)。
3.両意匠の対比検討
両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両意匠は共に「釣竿ケース」であるから共通する。また、形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
〔共通点〕
(1)本体部の概略について、薄板状体を前・後の中央から下方に向け倒U字状に屈曲させた態様で正面壁、背面壁をほぼ対称形に形成し、両壁周縁間に生ずる等幅状空隙部を帯状に閉塞する構成とした、細長い中空ケース体である点。
(2)本体部正面視外周形状の概略について、上辺は直線状であって、その右側全長の約2/5は下辺を水平直線状とした細幅部とし、その左側残余は下辺を凸弧状とした広幅部とし、広幅部の最大上下幅は細幅部の2倍強としたものである点。
(3)本体部正面視外周形状における各部について、左端部の形状は、上下幅を細幅部より僅かに広くした方形状としており、その下辺端部付近は緩やかな凹弧状とし、その右側の凸弧状辺と滑らかに繋がっており、右端部の形状は、直線状下辺から滑らかな凸弧状に立ち上がった態様としており、広幅部と細幅部との境界付近は緩やかな凹弧により滑らかに繋がっている点。
(4)正面及び背面両壁の周縁間の形状について、背面壁周縁部には、前記方形状部を除き細幅帯状体が正面壁側に向け直角状に結合され、該帯状体前側縁部と正面壁下辺縁部の間に形成される開口部には、これを閉塞・結合するスライドファスナーが設けられており、前記方形状端部にはやや浅い直方体状の補強キャップが被せられている点。
(5)正面壁部について、補強キャップ側に僅かの余地を残した縦位置と、細幅部と広幅部の境界付近の縦位置それぞれに、前壁を上端近傍から切り開き、両下端付近から向きを内側に向け延長し繋げる態様で前壁下辺に近接した大きな切り込み部を設け、その内側全体を僅かに膨出させ、本体部と一体の概略半楕円状のポケット部を形成し、その切り開かれた開口部には、これを閉塞・結合するスライドファスナーを設けた点。
(6)本体部の頂部には、全長の約1/2の間隔を空けやや左寄り位置に弛みを持たせた帯状肩掛けベルトが固定され、その中央付近に手提げ用ハンドルの両端が取付られ、細幅部先端近傍には正面・背面両壁を貫通するリング状帯状体(トップハンドル)が設けられている点。
(7)肩掛けベルトについては、正面視右側に取り付け部間のほぼ1/2の長さを有する細長薄板状部、残余を細幅帯状部とし、同帯状部は本体部頂面取り付け部から更に補強キャップ接合部まで延びているものであり、細長薄板状部については、中央付近を最大幅部とし、その最大幅部から本体部取り付け側端部に向け両縁を緩やかな凹弧状に漸次幅を狭めており、他端部側に向けては両縁を緩やかな凸弧状に漸次窄ませ細長半楕円状とした点。
〔差異点〕
(ア)本件登録意匠は、ポケット部正面壁において、上側を僅かに低くして大略上下を二分する段差を設けたものであって、その段差部の正面視形状は、下に凸としたやや右寄りの大きな弧状線を描き、左端付近は弧状の向きを反転させ頂部近傍で水平状とし、右端付近は曲率を高め縁部に近接して上端まで立ち上げた態様とし、全体の大略を緩やかな倒S字状曲線としたものであり、その正面壁段差部の上側から背面壁側にかけて(後述する細幅凸部部分を除き)単一凸曲面により滑らかに繋がっており、頂部の左側4割ほどの長さ部分には補強キャップ接合部から続く僅かに盛り上がったやや細幅の凸部が設けられているのに対して、イ号意匠は、正面壁、背面壁それぞれと極く僅かの段差により区画された後端から前端に達する等幅の平面状上面部が存在する点。
(イ)ポケット正面壁部について、本件登録意匠は、段差部上側右寄り位置に段差部の大きな弧状線に近接し、かつ、沿う態様で、右側が僅かに下がった大きな横長楕円を表しているのに対して、イ号意匠は、英文字を表したブランド表示様の水平状横長楕円を左右中央付近上辺に近接させ、なお、下側に広い余地を残して表し、これを僅かに離れて囲う態様のものと、更にポケット部正面壁残余を2分するもの、何れも下側を極く僅か低くする二重の弧状段差部を設け、3分割様とした点。
そこで、上記の共通点と差異点について、類否判断に及ぼす影響を順次検討するに、(1)ないし(5)の共通点に係る構成態様は、意匠の類否判断上の要部を構成すると認められる本体部全体の基本的構成態様を構成する多くの要素を含むものであり、また、正面視における共通感を生じさせるものであるから、類否判断に一定程度大きな影響を及ぼすものであるが、後述するように両意匠それぞれの基本的構成態様、ないし、本件登録意匠の特徴を構成すると認められる構成態様全てが包含されているわけではないから、差異点を検討せずに、これらの共通点のみにより類否を決定することはできない。
(6)の共通点に係る構成態様については、請求人の提出した甲号証においても多く見受けられる本体部に対して極めて小さい付加的なものの配置と概略に関するものであり、また、(7)の共通点については、更にその部分の具体的構成態様にすぎず、これらは何れも共通感を生じさせる要因とはなるものの、意匠全体として類否判断に殆ど影響を及ぼすものではない。
一方、差異点について、(ア)の本件登録意匠において「ポケット部正面壁において、上側を僅かに低くして大略上下を二分する段差を設けたものであって、その段差部の正面視形状は、下に凸としたやや右寄りの大きな弧状線を描き、左端付近は弧状の向きを反転させ頂部近傍で水平状とし、右端付近は曲率を高め縁部に近接して上端まで立ち上げた態様とし、全体の大略を緩やかな倒S字状曲線としたものであり、その正面壁段差部の上側から背面壁側にかけて(細幅凸部部分を除き)単一凸曲面により滑らかに繋がっており」とした点は、本件登録意匠の特徴を構成する要素と認められ、イ号意匠において「正面壁、背面壁それぞれと極く僅かの段差により区画された後端から前端に達する等幅の平面状上面部が存在する」点は、イ号意匠の基本的な構成態様を構成する要素と認められることから、イ号意匠は、本件登録意匠の特徴を構成すると認められる構成要素を有しておらず、本件登録意匠が有しない基本的な構成態様を構成する要素を有することとなるから、これらの差異点は類否判断に大きな影響を及ぼすものである。また、これに加え、(ア)の差異点には本件登録意匠の上面部におけるイ号意匠との差異感を強める「頂部の左側4割ほどの長さ部分には補強キャップ接合部から続く僅かに盛り上がったやや細幅の凸部が設けられ」た点も含まれていることを総合すれば、(ア)の差異点に係る構成態様のみで(1)ないし(7)の共通点に係る構成態様が相まって生じさせる共通感を陵駕し、両意匠に別異の視覚的まとまりを生じさせるのに十分である。したがって、正面視における大きな部位を占める(イ)の差異点の類否判断に及ぼす影響について検討するまでもなく、(ア)の差異点に係る構成態様のみでもって、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものとすることができない。
なお、請求人は「基本的構成態様に関する共通点1は釣竿ケースとしての形態全体の骨格をなすものであり、同時に一枚の板状発泡体を略U字状に撓ませて正面壁、背面壁、平面壁とした一体成形してなる構成態様が従来品に全くない斬新なものである以上、取扱者の注意を喚起することは明らかであり、それ故、これが意匠の類否判断において重大な影響を及ぼすものである」(請求書13頁13行から19行)と主張する。しかしながら、前記(1)の共通点において認定した「薄板状体を前・後の中央から下方に向け倒U字状に屈曲させた態様で正面壁、背面壁をほぼ対称形に形成し、両壁周縁間に生ずる等幅状空隙部を帯状に閉塞する構成とした、細長い」中空ケース体は、例えば甲15号証の意匠にも見受けられること、「一枚の板状発泡体」すなわち、縫合部を有しないことにより生ずる共通感については、(ア)の差異点に係る構成態様が生じさせる差異感が陵駕しているものと認められるから、請求人の主張は採用することができない。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しないものであるから、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものと認める。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2005-09-02 
出願番号 意願2003-2127(D2003-2127) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (K2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 山崎 裕造
岩井 芳紀
登録日 2003-10-03 
登録番号 意匠登録第1190823号(D1190823) 
代理人 藤本 昇 
代理人 丸山 敏之 
代理人 中谷 寛昭 
代理人 薬丸 誠一 
代理人 北住 公一 
代理人 宮野 孝雄 
代理人 長塚 俊也 
代理人 岩田 徳哉 
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