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審決分類 審判    L3
管理番号 1124375 
審判番号 無効2005-88004
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-02-28 
確定日 2005-09-05 
意匠に係る物品 道路用防獣さく 
事件の表示 上記当事者間の登録第1166695号「道路用防獣さく」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1166695号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の主張
請求人は,「意匠登録第1166695号は無効とする,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,請求の理由を要旨以下のように主張し,証拠方法として以下の証拠を提出した。
甲第1号証:特開2000-274118号公開特許公報,甲第2号証:登録第910504号意匠公報,甲第3号証その1:登録第1018887号意匠公報,甲第3号証その2:登録第1018889号意匠公報,甲第3号証その3:登録第779907号の類似3意匠公報
1.無効とすべき理由の要点
本件登録意匠は,「道路用防獣さく」の意匠に係り,平成12年12月8日に出願され平成15年1月10日に設定の登録をされたものであるが,その出願日前に公知となった形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたものであるから,その登録を無効とすべきである。
2.無効とすべき理由
(1)本件登録意匠
本件登録意匠の構成は,(ア)全体が平行四辺形をなし,ほぼ垂直に配列された縦線材と斜めに配列された横線材を組み合わせて線格子フエンスとしている。(イ)横線材は密に配設された2本1組の構成になっており,この2本1組の横線材がほぼ等間隔に4組配設されている。(ウ)上端部において,縦線材の先端が横線材よりも少し突出している。(エ)下端部は縦線材が突出し,該突出部に2本の横線材が配設されている。(オ)左右端において,横線材は縦線材よりも突出していない。
(2)無効とすべき理由
a.構成(ア)〜(オ)について
構成(ア),(イ)は,従来から周知の構成にすぎない。例えば,甲第1号証の図6に示すフエンスは,縦線材と横線材からなる平行四辺形状の格子フエンスであって,2本1組の横線材が等間隔に4組配設されており,本件登録意匠の構成(ア),(イ)と全く同じである。構成(ウ)については,甲第1号証の図6に示すフエンスの構成と同じである。構成(エ)についても,甲第1号証の図6のフエンスと同じ構成である。但し,甲第1号証のフエンスは下部突出部に横線材が設けられていない点で本件登録意匠と相違する。構成(オ)については,甲第2号証のフエンスと同じ構成である。
b.相違点について
上記構成(エ)において,本件登録意匠では下端部に横線材が2本配設されているが,甲第1号証の図6のフエンスでは横線材が配設されていない点で両者は異なる。しかし,線格子フエンスにおいて,横線材を適宜増減することはありふれた手法にすぎない。例えば,甲第3号証のその1ないし3で明らかなように,フェンス下端部において横線材を他の部分よりも増加させて密に配置している。
c.長方形状フエンスと平行四辺形状フエンス
甲第2号証と甲第3号証のフエンスは長方形だが,フエンスの分野において,平地用の長方形状フエンスを傾斜地用の平行四辺形状フエンスとすることは設計変更に過ぎず, 平地用フエンスの構成を傾斜地用フエンスに転用することもありふれた手法に過ぎない。
d.結論
以上説明したように,本件登録意匠は,甲第1号証に示す公知のフエンスに,甲第2号証に示すようにフエンス左右端の横線材を突出させないようにし,甲第3号証に示すようにフエンス下端部において,横線材の増加というありふれた構成をありふれた手法で行ったものにすぎない。
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから,意匠法第48条の規定により無効にされるべきものである。
第2 被請求人の主張
被請求人は,「本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように主張し,証拠方法として以下の証拠を提出した。
乙第1号証:本件登録意匠と先行意匠との対比表,乙第2号証:登録第3041701号実用新案公報,乙第3号証:施工断面対比図,乙第4号証の1:登録第1127797号意匠公報,乙第4号証の2:登録第1127700号意匠公報,乙第4号証の3:登録第1127796号意匠公報,乙第4号証の4:登録第1117977号意匠公報,乙第4号証の5:登録第1127701号意匠公報,乙第5号証:意匠権対比一覧表,乙第6号証の1:登録第1186560号意匠公報,乙第6号証の2:登録第1127795号意匠公報,乙第6号証の3:登録第1127698号意匠公報,乙第6号証の4:登録第1127794号意匠公報,乙第6号証の5:登録第1117973号意匠公報,乙第6号証の6:登録第1127699号意匠公報,乙第7号証:意匠権相対関係一覧表
1.創作性を具備する理由
(1)甲第1号証の図6の意匠に,甲第2号証の意匠のようにフエンス左右端の横線材を突出させないような変更を加え,更に,甲第3号証その1〜3の意匠のように,フエンス下端部において横線材群を組み合わせるという発想自体がそもそも困難である。
(2)仮に,上記のような変更を加えるとしても,甲第2号証の上段の横線材は3本一組であるため,これを2本一組とし,横線材の段数も3段から4段に変更する創作が必要となる。更には,上記のように組み合わせたとしても,本件登録意匠の形状にはならない。
すなわち,縦線材の下端部を,最下段の2本一組の横線材よりも下方に突出させて,同突出下端部に2本の横線材を上下方向に間隔を空けて配列するという発想は,甲第3号証その1〜3も含めて,従来の公知の線格子フエンスには全く存在しなかったものであるから,そこには当然創作性が認められる。したがって,本件登録意匠には創作性がある。
(3)横線材の増加は,全体図面から独立して抽出できるものではない。
(4)甲第1号証の図6や甲第2号証に横線材を組み合わせるとしても,どの位置に組み合わせるのか,横線材の上下間隔をどの程度にするか,縦線材の下自由端をどの程度突出させるか等は,創作性の範疇に属することである。
(5)各公知形状を組み合わせるとしても,各号証の形状から一構成の部材の形状を抽出して総合する作業が必要であり,いかなる形状に組み立てるかという意匠の創作力が必要である。この意味において,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の創作力を具備する。
2.甲各号証との対比
本件登録意匠と甲各号証とを対比すると,本件登録意匠では,2本一組の最下段の横線材の下方に2本の横線材を配している点において甲各号証と異なる。換言すれば,本件登録意匠は,甲第1号証のフエンスの縦線材の突出自由端を下方に延設して,その縦線材の突出自由端に2本の横線材を配した点に特徴があり,かかる特徴は甲各号証には存在しない。
甲第2号証,甲第3号証には,そもそも本件登録意匠のような縦線材の長手の突出自由端の発想がない。それらの格子状の横線材は,フエンス全体を形成するための横線材であり,本件登録意匠のように縦線材の突出自由端に配するための横線材ではない。
したがって,本件登録意匠は,甲第1号証,甲第2号証,甲第3号証を組み合わせても容易に創作できるものではない。
3.「道路用防獣さく」の技術的変遷
本件登録意匠出願日以前の線格子フエンスは,甲第2号証に示されているようにフエンス下端に縦線材が突出しておらず,地面上にフエンス下端が当接した状態で施工されていたが,ほとんど防獣の機能を果たさないため,甲第1号証や乙第2号証の縦線材の突出自由端を形成し,地中に突き刺し埋設するフエンスが登場した。しかし,これらは,縦線材の下端を長く延設することにより,施工時,搬送時,保管時等に強度が不安定となり,折曲したり破壊するおそれがあるため,突出自由端に2本の横線材を配することにより補強を兼ねると共に線格子フエンス下部の保形機能を果たし,施工を容易にし,更には小禽獣が通過するのを防止することに思い至り,本件登録意匠の形状を完成した。
したがって,本件登録意匠において,下方突出自由端に2本の横線材を配したことは,根拠と創作のプロセスがあったものであるから創作性が認められるべきである。
4.過去の登録例
上記の点は,本件登録意匠の創作者による本件登録意匠と同日出願の登録例からも裏付けられる。
過去の登録例は,平行四辺形状の線格子フエンスと矩形状の線格子フエンスとは基本的に非類似の意匠として登録されているから,平行四辺形状の線格子フエンスである甲第1号証と,矩形状の線格子フエンスである甲第2号証及び甲第3号証から本件登録意匠が容易に創作されたとする請求人の主張には無理がある。
また,本件登録意匠と同じ特徴を有する意匠が,創作性を有するとして登録されているから,本件登録意匠についても創作性が認められて然るべきである。
第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,2000年12月8日の意匠登録出願に係り,2003年1月10日に設定の登録がなされた登録第1166695号であって,願書及び願書添付の図面の記載によれば,意匠に係る物品を「道路用防獣さく」とし,その形態を別紙第1に示すとおりとしたものである。
その要旨は,(イ)縦線材と横線材を竪繁格子状に形成し,全体の縦辺に対する横幅を略3:4とした横長平行四辺形状フエンスであって,(ロ)多数の縦線材を幅狭かつ等間隔で垂直に配列し,横線材は,縦線材の間隔と同間隔で2本一組としたものを,幅広かつ等間隔で縦線材配列の上端より下端近くにかけて互いに平行に4段配列し,(ハ)最下段の2本一組の横線材の下方に2本の横線材を等間隔に配設し,(ニ)縦線材の上下端を横線材よりわずかに突出させるとともに,横線材の左右端を縦線材と揃えた態様のものである。
2.甲号意匠
(1)甲1号証意匠
甲第1号証の意匠は,平成12年10月3日に公開された公開特許公報所載の特開2000-274118号の図6に記載されたフエンスの意匠であって,その形態は別紙第2に示すとおりとしたものである。
(2)甲2号証意匠
甲第2号証の意匠は,平成6年10月27日発行の意匠公報に記載された意匠登録第910504号の意匠であって,その形態は別紙第2に示すとおりとしたものである。
(3)甲3号証その1の意匠
甲第3号証その1の意匠は,平成10年8月19日発行の意匠公報に記載された意匠登録第1018887号の意匠であって,その形態を別紙第3に示すとおりとしたものである。
(4)甲3号証その2の意匠
甲第3号証その2の意匠は,平成10年8月19日発行の意匠公報に記載された意匠登録第1018889号の意匠であって,その形態は別紙第4に示すとおりとしたものである。
(5)甲3号証その3の意匠
甲第3号証その3の意匠は,平成5年11月18日発行の意匠公報に記載された意匠登録第779907号の類似3の意匠であって,その形態は別紙第5に示すとおりとしたものである。
3.本件登録意匠の創作性について
本件登録意匠の上記の各態様について検討すると,上記1.(イ)の態様のうち,縦線材と横線材を竪繁格子状に形成したフエンスの態様は,ごく一般的なものであり(例えば,甲第2号証及び甲第3号証その1参照),全体を平行四辺形状のフエンスとすることは傾斜地に設置する場合に普通になされていることであり(例えば,甲第1号証図1,2,5,6参照),また,その全体の縦辺対横幅の比率を種々変えることは常套的方法であるから(甲各号証参照),全体の縦辺対横幅の長さが略3:4である横長平行四辺形状のさくを創作することには創意を要しないものと認められる。上記1.(ロ)の多数の縦線材を幅狭かつ等間隔で垂直に配列し,横線材は,縦線材と同間隔で2本一組としたものを,幅広かつ等間隔で縦線材配列の上端より下端近くにかけて等間隔で水平に4段配列した態様は,この分野で既に知られている態様であり(例えば,甲第1号証図6参照),この態様に創作性を認めることはできない。なお,甲第1号証は,本件登録意匠の出願の約2ヶ月前の公知資料であるが,本件登録意匠と同一の物品分野に属する公開特許公報であるから,当業者においては既知の資料であると認められる。上記1.(ハ)の最下段の2本一組の横線材の下方に2本の横線材を等間隔に配設した態様については,線格子フエンスの下端部に横線材を適宜増設する等のことは,甲第3号証に示されるように周知の手法であるのみならず,フエンス下方からの小動物の侵入を防ぐという防獣さくの本来の目的から当然考え付くことでもあるから,この点に格別の創作性を認めることはできない。1.(ニ)の縦線材の上下端を横線材よりわずかに突出させ,横線材の左右端を縦線材と揃えた態様については,甲第1号証及び甲第3号証,また,甲第2号証などに示されるようにこの分野で常套的変更の範囲内のものであるから,この態様にも特に創意は認められない。
結局,上記(イ)〜(ニ)の態様はいずれも格別評価すべき創作性を有する態様とは認められず,また,それらはいずれも本件登録意匠と同一の分野に属する公知の態様であるから,これらを組み合わせて本件登録意匠の態様とすることも当業者であれば容易になし得ることであると認められる。
被請求人は,技術的変遷や過去の登録例から判断すれば,本件登録意匠は創作性が認められるべきと主張するが,仮に本件登録意匠が技術的改良によるものであるとしても,意匠として観察する場合においては同一分野における公知の態様の単なる組み合わせ以上の範囲を出ないものであることは上記で述べたとおりであり,また,過去の登録例との関係についても,直ちに本件登録意匠と同列に論じることができるものでもないから,いずれにしても請求人の主張は採用できない。
(5)むすび
以上のとおりであって,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから,意匠法第48条第1項第1号に該当し,その登録は無効とされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
審理終結日 2005-06-16 
結審通知日 2005-06-20 
審決日 2005-07-25 
出願番号 意願2000-35216(D2000-35216) 
審決分類 D 1 113・ 121- Z (L3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川越 弘 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 山崎 裕造
岩井 芳紀
登録日 2003-01-10 
登録番号 意匠登録第1166695号(D1166695) 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 高橋 清 
代理人 松尾 憲一郎 

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