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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) L2 |
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管理番号 | 1130949 |
判定請求番号 | 判定2005-60065 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2006-03-31 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2005-09-01 |
確定日 | 2006-02-23 |
意匠に係る物品 | 道路側溝用コンクリ-トブロツク |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0808666号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面に示す「道路用側溝ブロック」の意匠は、登録第0808666号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
第1.請求人の申立て及び理由 1.請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし第12号証を提出した。 2.本件登録意匠の手続の経緯 本件登録第意匠登録第808666号(甲第1号証)は昭和63年10月20日に出願され、平成2年11月30日に意匠登録されました。 3.本件登録意匠の説明 (1)本件登録意匠らの基本構成は、対向する2つの側壁の上部が耐力梁で連続しており、耐力梁の中央部に蓋版を嵌合するための開口部が設けられております。耐力梁または耐力梁の上面部は一方の側壁からもう一方の側壁に向かって片勾配が一様に設けられており、その勾配の向きは歩道側に向かって下る勾配となっております。そして下り勾配の先には歩車道境界ブロックを載置するための段部が設けられております。これらの構成が本件登録意匠の基本となっており、類似意匠らすべてに共通する構成となっております。詰り、本件登録意匠の意匠上の要部となる構成といえます。 (2)本件登録意匠およびこれに類似する意匠として登録されているものは次のものです。 意匠登録第808666号、類似第1号(甲第2号証)、類似第2号(甲第3号証)、類似第3号(甲第4号証)、類似第4号(甲第5号証)、類似第5号(甲第6号証)、類似第6号(甲第7号証)、類似第7号(甲第8号証)、類似第8号(甲第9号証) 何れの意匠も(1)において申し上げた共通の態様を有しております。 (3)次に本意匠である甲第1号証に対して、その類似1〜8をそれぞれに比較して、類似1〜8と本意匠との構成上の差異点を順に列挙します。 類似第1号:本意匠と比較すると類似第1号は両側壁の下方において外側方向に向かった延出部が設けられている点が異なっている。 類似第2号:その両側壁の下方部外側に膨出部を有し、下方部内側に段部が設けられている点が異なっている。 類似第3号:水路内断面上方が円弧状の構成となっており、頂面に甲第1号証には認められない稜線がある。 類似第4号:蓋版嵌合部に切り欠き段部が設けられている。 類似第5号:側壁下方部の構成は類似第2号と同様の構成で、水路内断面上方部は円弧状でその円弧の両端と側壁とは稜線を有して連続している。 類似第6号:側壁下方部は類似第2号と同様の延出部を有しており、蓋版嵌合部には4つの切り欠き段部が設けられている。 類似第7号:側溝の長手方向の長さが甲第1号証に比べて短く、側壁下方部は類似第2号と同様の膨出部と段部による構成があり、内断面上方部に水平な構成が認められる。また、平面視、頂面の蓋版を嵌合するための開口部の形状が甲第1号証のものに比べて略正方形状でその幅方向の両側に切り欠き段部が設けられている。 類似第8号:甲第1号証と基本構成がほぼ同形で、蓋版嵌合部の一側に切り欠き段部が設けられている。 以上のような次第で、本件登録意匠らの基本構成および類似の範囲を鑑みるに、イ号意匠と本件登録意匠らの構成にイ号意匠独自の観者の注意を惹くような構成を認めることができません。 4.イ号意匠の説明 イ号意匠の写真は、イ号意匠の写真集に示したとおりのものですが、何れも地中埋設後に撮影されたもので、上面態様の構成以外不明瞭ですので、全体構成を示した図面を添付しました。 このイ号図面によるとイ号意匠の基本構成は、対向する2つの側壁の上部が耐力梁で連続しており、平面視、耐力梁の中央部に蓋版を嵌合するための開口部が設けられております。耐力梁または耐力梁の上面部は一方の側壁からもう一方の側壁に向かって片勾配が一様に設けられており、その勾配の向きは歩道側に向かって下る勾配となっております。そして下り勾配の先には歩車道境界ブロックを載置するための段部が設けられております。これらの構成は本件登録意匠らの基本構成とまるで同一です。また、側壁下方部の外側に膨出部があり、内側に段部を有している点は、本件登録意匠の類似第2号と同様の構成であります。 5.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 (1)イ号意匠と本件登録意匠らは、同一分野における同一の物品であります。 (2)その利用目的、作用、ならびにその効果の何れにおいてもイ号意匠は本件登録意匠らのものと均等のものであります。 (3)基本構成において異なるものを見つけることができません。 (4)具体的構成においてイ号意匠は甲第1号証のものと側壁下方部の構成に異なる部分が認められるものの、その構成は甲第1号証の類似第2号に認められる構成と同等のものであります。 以上のような次第であり、イ号意匠は本件登録意匠と類似としか言いようが無く、請求の趣旨通りの判定を求めます。 第2.被請求人の答弁 1.被請求人は、「イ号意匠並びにその説明書に示す意匠は、登録第808666号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」と答弁した。 2.本件登録意匠の構成 (1)基本的構成 A.平面図において、長方形の外形の中央部に長方形の開口を有する。 B.正面図において、コ字状の形態を示す。 (2)具体的構成 A-1.平面図において、側方に段差による平行な線を有する。 B-1.正面図左に段差、及び上面に僅かな傾斜を有する。 3.イ号意匠の構成 (1)基本的構成 a.平面図において、長方形の外形の中央部に長方形の開口を有する。 b.正面図において、コ字状の形態を示し、下端部内側の浅い切り欠きと外側の張り出し部を備える。 (2)具体的構成 a-1.平面図において、側方に段差による平行な線を有する。 b-1.正面図左に段差、及び上面に僅かな傾斜を有し、上面から下端まで2本ずつ形成された平行な直線を有する。 4.両意匠の対比 本件登録意匠の要部は、基本的構成A,Bに記載した形状である。 本件登録意匠に係る物品は、道路側溝用コンクリートブロックであり、その参考図に示されるように、平面図に表れる部分以外は、地中に埋設される。また形状としても、平面図に表れる部位が特徴的であり、見る者の注意を引き付けるところである。 しかし、平面図中央部に開口を備えた意匠は、本件登録意匠に係る物品においてはよくある形状であり、この部分のみでは要部が同一であるとは言えない。従って、正面図に表れる形状も意匠の要部の一部を構成する。 この正面図について両意匠を対比すると、基本的構成B、bの相違及び、具体的構成B-1、b-1の相違の通り、イ号意匠の脚部の端部形状が異なる。そして、この部分の相違は、見る者にとって大きな違いとして印象に残るものである。従って、本件登録意匠に係る物品の創作者や取引者において、もこの部分の特徴は、大きな相違点として認識される。 また、本件登録意匠の類似意匠として登録された意匠においても、本件登録意匠の類似2は、平面図において長手方向に開口部と交わる直線が表れ、正面図に表れる脚部端部の形状の切り欠きのバランスも異なり、両意匠は、見る者に全く異なる印象を与え、イ号意匠とは形状も全く異なる。 以上より、本件登録意匠の要部に表れる形状と、イ号意匠とを比較すると、本件登録意匠はシンプルな形状で均整の取れた印象であるの対して、イ号意匠は、安定感のある形状の意匠として認識される。 従って、両意匠の全体観察による総合判断によれば、見る者に与える印象が大きく異なり、この両意匠の美観は全く異なるものであると言える。 5.よって、イ号意匠は本件登録意匠とは非類似の意匠であり、請求人の主張は失当であり、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠公報、意匠登録原簿、出願書類によれば、昭和63年10月20日の出願に係り、平成2年11月30日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「道路側溝用コンクリートブロック」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。 すなわち、その基本的構成態様は、全体を、両側壁の上端に天板を一体に形成して略倒コ字状とした、いわゆる門形側溝ブロックであって、その天板の中央部に天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋版嵌合用開口部を設けているものであって、各部の具体的な態様は、(A)蓋版嵌合用開口部の長さを、全長の約2分の1の長さとし、(B)両側壁外面の上方部を、下方の垂直面より傾斜面を介して外方に膨出させ、下方より肉厚に形成して側壁膨出部とし、左側壁膨出部の方が右側壁膨出部より厚めに膨出し、(C)天板上面を、右側壁側から左側壁側に向かって緩やかに下る傾斜面とし、その左端縁部に沿って直角状に切り欠いた段部を形成している。 2.イ号意匠 イ号意匠は、請求人が提出した図面によれば、意匠に係る物品を「道路用側溝ブロック」とし、その形態については、次のとおりとしたものである(別紙第2参照)。 すなわち、その基本的構成態様は、全体を、両側壁の上端に天板を一体に形成して略倒コ字状とした、いわゆる門形側溝ブロックであって、その天板の中央部に天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋版嵌合用開口部を設けているものであって、各部の具体的な態様は、(A)蓋版嵌合用開口部の長さを、全長の約2分の1の長さとし、(B)両側壁外面の上方部を、下方の垂直面より傾斜面を介して外方に膨出させ、下方より肉厚に形成して側壁膨出部とし、左側壁膨出部の方が右側壁膨出部より厚めに膨出し、(C)天板上面を、右側壁側から左側壁側に向かって緩やかに下る傾斜面とし、その左端縁部に沿って直角状に切欠いた段部を形成し、(D)両側壁下方部の外面を、上方の垂直面より傾斜面を介して外方に膨出させ、その上方より肉厚に形成して側壁膨出部とし、その膨出部下端の内側縁部に沿って直角状に切り欠いた段部を形成し、(E)両側壁各端面部に上下方向にそれぞれ1本の細溝を形成している。 3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討 (1)意匠に係る物品については、両意匠は共に道路に埋設して水路を構成する一単位のブロックであるから共通している。 (2)形態については、両意匠は、全体を、両側壁の上端に天板を一体に形成して略倒コ字状とした、いわゆる門形側溝ブロックであって、その天板の中央部に天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋版嵌合用開口部を設けた基本的構成態様が共通するものである。 また、各部の具体的な態様において、(A)蓋版嵌合用開口部の長さを、全長の約2分の1の長さとし、(B)両側壁外面の上方部を、下方の垂直面より傾斜面を介して外方に膨出させ、下方より肉厚に形成して側壁膨出部とし、左側壁膨出部の方が右側壁膨出部より厚めに膨出し、(C)天板上面を、右側壁側から左側壁側に向かって緩やかに下る傾斜面とし、その左端縁部に沿って直角状に切り欠いた段部を形成した態様が共通するものである。 一方、各部の具体的な態様において、以下の点に差異が認められる。 (ア)両側壁の下方部において、イ号意匠は、その外面を上方の垂直面より傾斜面を介して外方に膨出させ、その上方より肉厚に形成して側壁膨出部とし、その膨出部下端の内側縁部に沿って直角状に切り欠いた段部を形成しているのに対して、本件登録意匠は、下方の側壁膨出部及び下端内側の段部を形成していない点、(イ)両側壁各端面部において、イ号意匠は、上下方向にそれぞれ1本の細溝を形成しているのに対して、本件登録意匠は、そのような細溝がない点。 (3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。 まず、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、この種物品分野においては、本件登録意匠の出願前に見受けられるものであるが(例えば、意匠登録第477263号及びその類似第1号ないし第4号の意匠)、意匠全体に係るところであり、骨格的要素となるものであるから、類否判断に影響を与えるものと認められる。 次に、両意匠の具体的な態様において共通するとした(A)ないし(C)の各態様が両意匠の類否判断に及ぼす影響についてみると、共通点(A)については、この種物品において、蓋体嵌入開口部を全長の約2分の1の長さとするものが、例を挙げるまでもなく本件登録意匠の出願前より広く知られているところであるから、類否判断を左右する要素としては小さいものである。共通点(B)については、この種物品において、両側壁外面の上方部を下方の垂直面より傾斜面を介して外方に膨出させて、下方より肉厚に形成して側壁膨出部とし、左右同じ厚みで膨出させた態様のものは、本件登録意匠の出願前に、例えば、意匠登録第477263号及びその類似第1号ないし第4号の意匠に見受けられるが、本件登録意匠のように左側壁膨出部の方を右側壁膨出部よりやや厚めに膨出させた態様のものは、本件登録意匠の出願前には見受けられれないことから、類否判断を左右する要素としては、考慮すべきものである。共通点(C)については、この種物品において、全体形状が本件登録意匠のような門形ではないが、上面が右側壁側から左側壁側に向かって緩やかに下る傾斜面とし、その左端縁部に沿って直角状に切り欠いた段部を形成した態様ものが、本件登録意匠の出願前に、例えば、意匠登録第713162号の類似第4号の意匠に見受けられるから、本件登録意匠の上面のみの態様は、本件登録意匠のみに見られる特徴といえないものであり、類否判断を左右する要素としては小さいものである。 そして、前記のとおり、共通点(C)は、類否判断を左右する要素としては小さいものの、この種側溝ブロックは、最終的には地中に埋められて使用されるものであり、その際地表に表れるのは上面部であるから、意匠上最も重要な部位は、上面部の態様であり、たとえ上面部の態様がありふれた態様であるとしても、全体の形状はいうまでもなく、上面部の態様を中心にして、左右側壁の態様を組み合わせて一つのまとまりを形成した点を評価せざるを得ないものである。 そうすると、本件登録意匠の出願前に、共通するとした基本的構成態様、すなわち、全体を上面に開口部を有する門形とした側溝ブロックにおいて、左右側壁を共通するとした態様(B)及び上面を共通するとした態様(C)の両方の態様を備えたものが見受けられないことから、これらのまとまりに特徴があるといわざるを得ず、これらのまとまりは、類否判断を左右する要素として考慮すべきものである。 (4)一方、差異点については、まず、差異点(ア)について、この差異は、両側壁の下方部の膨出部及び下端内側の段部の有無の差であるが、イ号意匠のような態様は、例えば、本件登録意匠の類似第2号の意匠、意匠登録第748486号の意匠に見受けられるように、イ号意匠独自の態様とはいえないものであるから、格別看者の注意を引くものとはいえず、形態全体として見た場合、この差異は微弱なものといわざるを得ない。 次に、差異点(イ)について、この差異は、両側壁各端面部の細溝の有無であるが、イ号意匠に見られる溝の太さは細いものであり、また、イ号意匠のように両側壁各端面部に細溝を形成することは、従前よりごく普通に見受けられる態様(例えば、意匠登録第477263号の類似第3号の意匠)であるから、イ号意匠独自の態様とはいえないことを考慮すると、形態全体として見た場合、全体に及ぼす視覚的効果は小さいものであり、格別看者の注意を引くものといえないから、この差異は微弱なものといわざるを得ない。 (5)以上を総合すれば、両意匠の基本的構成態様は、両意匠の類否判断に影響を与えるものと認められ、具体的な態様における共通点(A)及び(C)は、両意匠の類否判断を左右する要素としては小さいものに止まるものの、共通点(B)のうち、左側壁膨出部の方を右側壁膨出部よりやや厚めに膨出させた態様は、本件登録意匠の出願前には見受けられれないことから、類否判断を左右する要素としては、考慮すべきものであり、そして、これらのまとまりに特徴があるといわざるを得ないから、これらのまとまりは、類否判断を左右する要素として考慮すべきものである。そうすると、それらの共通点が相俟って両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものといわざるを得ないのに対し、両意匠の具体的な態様における差異点は、いずれも形態全体から見れば類否判断を左右する要素としては微弱なものであるから、両意匠を形態全体として見た場合、いまだ類否判断に与える影響は小さいものといわざるを得ない。 したがって、形態全体として見た場合、両意匠間における前記の共通点は、前記差異点を大きく凌駕して、看者に共通の美感を与えるものと認められる。 (6)以上のとおり、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても、イ号意匠は、共通する基本的構成態様及び具体的な態様と相俟って形成したまとまりにおいて共通しているものであるから、本件登録意匠に類似しているものというほかない。 4.むすび よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるから、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2006-02-13 |
出願番号 | 意願昭63-40859 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(L2)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 瓜本 忠夫 |
特許庁審判長 |
藤 正明 |
特許庁審判官 |
上島 靖範 西本 幸男 |
登録日 | 1990-11-30 |
登録番号 | 意匠登録第808666号(D808666) |
代理人 | 廣澤 勲 |