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審決分類 |
審判 M3 |
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管理番号 | 1149895 |
審判番号 | 無効2005-88003 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2007-02-23 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-02-18 |
確定日 | 2005-08-11 |
意匠に係る物品 | 運搬車用キャスタ- |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0946347号「運搬車用キャスタ-」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 請求人の申立及び理由 請求人は、「登録第946347号の意匠登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申立て、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番を含む。)を提出した。 1.意匠登録第946347号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。また、その意匠登録を「本件意匠登録」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において公然知られ、または頒布された刊行物に記載された甲第1号証の1記載の意匠(以下、「甲号意匠」という。)に類似する意匠であって、本件意匠登録は、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。 (1)本件登録意匠 A 基本的構成態様 ア 水平な略平板状の取付板と、この取付板の下側にベアリング部を介して水平回転自在に設けられた基部を有する本体と、この本体下端寄りに水平に設けた車軸ボルトによって支持された車輪とで構成されている。 イ 取付板は、略四角形状であって、四隅寄りに小円孔が設けられており、中央に本体取付用主軸の頭部が円形に現れ、その周囲にベアリング受溝が同心円状に設けられている。 ウ 本体は、取付板よりやや小さい基部を備え、下部の正面側及び背面側を切り欠いていて、下部に左右一体の脚部が形成されている。 エ 脚部には、正面寄りの下端部が内側に窪まされて平面状の軸受部が形成されており、その軸受部に車軸ボルトが本体の中心軸より正面側に偏心して設けられている。 B 具体的構成態様 ア 本体は、上部に360°にわたって完全なる円筒形の筒状部が形成されている。 イ ベアリング部の周囲には、幅細で艶のないフェルトパッキンが備えられている。 ウ 正面側切欠部は、下方に開口した略コの字形状をしており、この略コの字形状の切断縁の2隅は緩やかな円弧状をしている。 エ 背面側切欠部は、下広がりに開放する略等脚台形状をしている。 オ 本体は、側面図において、(イ)下部の正面側が垂直に、(ロ)背面側が外側に膨らむ略円弧状に切り欠かれている。 カ 脚部の軸受部は、正面側下隅と背面側上隅が円弧状をした略正方形状の平面であり、縦幅は本体部の1/3程度、横幅は脚部の1/2程度である。 キ 車軸ボルトからニップルが側方(正面図における左方)に突出している。 ク 車輪は、幅広の略倒円柱形をしている。 ケ 車輪の前方端は、取付板の内側で本体の外側に位置する。 コ 本体部の径は、取付板の約3/4である。 サ 全高と取付板の幅は同程度である。 (2)甲号意匠 A 基本的構成態様 ア 水平な略平板状の取付板と、この取付板の下側にベアリング部を介して水平回転自在に設けられた基部を有する本体と、この本体下端寄りに水平に設けた車軸ボルトによって支持された車輪とで構成されている。 イ 取付板は、略四角形状であって、四隅寄りに小円孔が設けられており、中央に本体取付用主軸の頭部が円形に現れ、その周囲にベアリング受溝が同心円状に設けられている。 ウ 本体は、取付板よりやや小さい基部を備え、下部の正面側及び背面側を切り欠いていて、下部に左右一体の脚部が形成されている。 エ 脚部には、正面寄りの下端部が内側に窪まされて平面状の軸受部が形成されており、その軸受部に車軸ボルトが本体の中心軸より正面側に偏心して設けられている。 B 具体的構成態様 ア 本体は、上部に360°にわたって完全なる円筒形の筒状部が形成されている。 イ ベアリング部の周囲には、特段意匠が施されていない。 ウ 正面側切欠部は、下方に開口した略コの字形状をしており、この略コの字形状の切断縁の2隅は緩やかな円弧状をしている。 エ 背面側切欠部は、下広がりに開放する略等脚台形状をしている。 オ 本体は、側面図において、(イ)下部の正面側は、やや背面方向に傾斜する斜辺に形成され、(ロ)背面は外側に膨らむ略円弧状に切り欠かれている。 カ 脚部の軸受部は、前方側下隅が円弧状をした略三角形状の平面であり、縦幅は長く、横幅は脚部の1/2程度である。 キ 車軸ボルトにニップルはない。 ク 車輪は、幅広の略倒円柱形をしている。 ケ 車輪の前方端は、取付板の外側に位置する。 コ 本体部の径は、取付板の約3/4である。 サ 全高と取付板の幅は同程度である。 (3)本件意匠と甲号意匠の対比 A 共通点 両意匠は、基本的構成態様において完全に共通し、具体的構成要素においても以下の点で共通する。 ・本体が、上部に360°にわたって完全なる円筒形の筒状部が形成されている点[具体的構成要素ア] ・正面側切欠部は、下方に開口した略コの字形状をしており、この略コの字形状の切断縁の2隅は緩やかな円弧状をしている点[同ウ] ・背面側切欠部は、下広がりに開放する略等脚台形状をしている点[同エ] ・本体は、側面図において、背面は外側に膨らむ略円弧状に切り欠かれている点[同オ(ロ)] ・車輪は、幅広の略倒円柱形をしている点[同ク] ・本体部の径は、取付板の約3/4である点[同コ] ・全高と取付板の幅は同程度である点[同サ] B 差異点 及び C 差異点についての検討 このような多数の共通点に対し、本件登録意匠と甲号意匠は、具体的構成態様において、以下の点で差異を有するにすぎない。 ・ベアリング部周囲の意匠(本件登録意匠と甲号意匠の各具体的構成態様イ) 本件登録意匠の当該部分が、幅細で艶がなく、本体部分の色彩と同調で全く目立たないものであり、さらに、本件意匠登録出願日以前から被請求人の製品において使用されていた公知の形態であるから、看者が注目するものではない。 ・側面視における正面側切欠部の形状(同オ(イ)) 本件登録意匠の正面側切欠部の形状が垂直に形成されている点については、公知意匠も多数存在しており、本件登録意匠独自の特徴でないことから考えても、看者が特段注目するものではない。 ・軸受部の形状(同カ) 甲号意匠の軸受部も脚部の一部分を平坦部とするものであり、本体部上部に360°にわたる完全な円筒形を形成しているという共通点に対して、微弱且つ部分的な差異であり、形態全体の基調に与える影響はほどんどない。 ・ニップルの有無(同キ) ニップルの有無については、新規性や創作性に欠ける公知の形態であるから、看者が注目する部分ではない。 ・車輪と取付板との位置関係(同ケ) 本件登録意匠においては、車輪の前方端が取付板より僅かに内側にある程度であり、甲号意匠においても、車輪の前方端が取付板から大きく突出するものではなく、ほぼ同位置にある。したがって、看者には、車輪の前方端と取付板の位置がほぼ同位置にあるという共通した印象を与えるため、該差異が形態全体の基調に与える影響はほどんどない。さらに、車輪の前方端は、取付板の内側で本体の外側に位置するという形態は公知の形態であり、本件登録意匠独自の特徴でないことから考えても、看者が注目するものではない。 2.本件登録意匠は、多数の公知意匠(例えば、下記(1)の公知意匠。)が共通して備える周知形態から容易に創作できるものであるから、本件意匠登録は、意匠法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。 (1)公知意匠 甲第1号証の1、甲第8号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証、甲第13号証の20に表された意匠。 (2)創作の容易性について 以下の点は、多数の公知意匠(例えば、上記(1)の公知意匠。)が共通して備える周知形態である。 (イ)全体が、水平な略平板状の取付板と、その取付板の下部に、ベアリング部を介して回動自在に設けた略円筒形状の本体と、本体下端寄りに水平に設けた車軸ボルトによって支持した車輪とからなる、基本的な構成態様のものである点。 (ロ)取付板は、四隅を小円弧状に隅切りした略隅丸正方形状であって、四隅寄りに取付ボルト用の小円孔を設けており、中央に本体取付用主軸の頭部が円形に現れ、その周囲にベアリング受け溝を円環状に設けたものである点。 (ハ)本体は、取付板の一辺よりやや短い横幅であって、下側の正面及び背面側を切り欠いて、上部の円筒部と、下部の左右一対の脚部とからなるものである点。 (ニ)車輪は、幅(厚さ)が直径よりも短い、略倒円柱形である点。 したがって、本件登録意匠は、その形態の大部分を上記周知形態で構成されているものであるから、公知意匠に共通する周知形態から容易に創作できることは明白である。 第2 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下に示すとおり主張した。 1.本件登録意匠の要部たる形態は、高さが低く、幅が広く、一塊のずんぐりした形態、本体が太く短い円筒形で、その中に車輪の大半が隠れている全体的印象から、コンパクト感、安定感、耐荷重性、堅牢性を看者に直感させる。 甲号意匠の形態は、高さが高く、幅が狭く、腰高の形態、本体の切欠部によって形成される開放部が大きく、車輪の大半が露出してその存在感が大きい全体的印象から、散乱感、不安定感、貧弱性、耐荷重性の不足を看者に直感させる。 以上のように、本件登録意匠と甲号意匠とは、基本的形態が大きく異なり、互いに非類似の意匠であることは明白である。 2.本件登録意匠の要部である上記構成態様は、甲号意匠及び甲第6号証ないし甲第12号証の8つの意匠には見受けられない構成態様であり、この態様は、本件登録意匠のみに特徴を形成し、本件登録意匠の他の具体的な態様と相まって、形態全体の基調に大きな影響を与えている。したがって、本件登録意匠が甲号意匠に基づいて容易に創作されたものということはできない。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、昭和61(1986)年8月29日に意匠登録出願され、その後平成7年(1995)年11月24日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第946347号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「運搬車用キャスター」とし、形態は、願書に添付された図面代用写真に現されたとおりのものである(本件審決書に添付の別紙第一参照)。 2.甲号意匠 甲号意匠は、甲第1号証の1において、本件登録意匠の出願前、昭和56(1981)年に発行されたFaultless Division,Bliss & Laughlin Industriesのカタログ「FAULTLESS CATALOG 81」第42頁の中央左に所載の、LOW PROFILE CASTERSと記載された「キャスター」の意匠であって、形態は、同カタログの写真版により現されたとおりのものである(本件審決書に添付の別紙第二参照)。 3.本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否かについて 本件登録意匠と甲号意匠を対比すると、両意匠ともキャスターに係るものであって、意匠に係る物品が共通し、その形態(本件登録意匠の各図の方向に倣って甲号意匠を認定する。)については、主として以下に示す共通点及び差異点が認められる。 [共通点] (1)全体が、水平な略平板状の取付板と、その取付板の下部に、ベアリング部を介して回動自在に設けた本体と、本体下端寄りに水平に設けた車軸ボルトによって支持した車輪とからなる、基本的な構成態様のものである点、 各部の具体的な態様において、 (2)取付板は、略矩形状であって、中央に本体取付用主軸の頭部が略円形に現れ、その周囲にベアリング受け溝を略円環状に設けたものである点、 (3)本体は、取付板の一辺より短い横幅であって、正面側を上端寄りに余地を残して切り欠いて、本体の側面が、略円筒形状に形成された部分と、平坦面状に形成された軸受部からなる点、 (4)車輪は、略倒円柱形である点、 (5)軸受部に設けられた車軸ボルトを本体の中心軸よりやや正面側に偏心して設けている点、 (6)本体上部と取付板との間のベアリング部周囲に、本体とほぼ同幅で薄い略円柱形状部材を設けている点、 [差異点] (イ)車輪の大きさ及び見え方について、本件登録意匠は、車輪の直径が本体の高さよりも短く、車輪の大部分が本体に覆い隠されているのに対して、甲号意匠は、車輪の直径が本体の高さよりも長く、車輪の約3/4が本体から露出している点、 (ロ)本体の背面側形状について、本件登録意匠は、上端寄りに余地を残して切り欠いて、下広がりに開放する略等脚台形状であるのに対して、甲号意匠は、背面方向の形状が不明である点、 (ハ)軸受部の形状について、本件登録意匠は、正面側端部をほぼ垂直状とし、円筒形状に形成された部分との上方及び側方の境界線をほぼ直線状として、軸受部を略矩形状としているのに対して、甲号意匠は、正面側端部を下方を前方に突出させて傾斜状とし、円筒形状に形成された部分との境界線を上方が前方に傾いた傾斜線状として、軸受部を略三角形状とした点、 (ニ)本体の正面側切欠部の形状について、本件登録意匠は、下方に開放した略コ字形状であるのに対して、甲号意匠の正面側切欠部の形状は、正面方向の形状が定かではなく、本件登録意匠と同様の略コ字形状であるかが不明である点、 (ホ)取付板の態様について、本件登録意匠は、四隅を小円弧状に隅切りした略隅丸正方形状であって、四隅寄りに取付ボルト用の小円孔を設けているのに対して、甲号意匠は、平面方向の形状が定かではなく、四隅の形状や、小円孔の存在について、本件登録意匠と同様であるかが不明である点、 (へ)車輪の幅について、本件登録意匠は、車輪の直径よりも短いのに対して、甲号意匠は、正面方向の形状が定かではなく、長短が不明である点、が認められる。 両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として考察すると、前記共通するとした、(1)の基本的な構成態様、及び具体的な態様の共通点(2)ないし(6)は、本件登録意匠の出願前にこの種物品の属する分野において、他にも見受けられる態様であって(例えば、甲第10号証、甲第13号証の20。)、格別看者の注意を惹くものとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、さらに、それらの共通点を纏めても、特段際立った特徴を奏するとはいい難いものであるので、類否判断に及ぼす影響はなお微弱の域を超えるものではない。 一方、差異点について検討すると、 (イ)の車輪の大きさ及び見え方については、本体と車輪の関係という視覚的に目立つ部位の構成態様に関するものであり、車輪の直径が本体の高さよりも短く、車輪の大部分が本体に覆い隠されている本件登録意匠と、車輪の直径が本体の高さよりも長く、車輪の約3/4が本体から露出している甲号意匠とでは、形態上の基調を別異のものとしていることから、車輪の大きさ及び見え方の差異は類否判断に影響を及ぼすものといえる。 (ロ)本体の背面側形状については、甲号意匠の背面方向の形状が不明であり、上端寄りに余地を残して切り欠いて、下広がりに開放する略等脚台形状である本件登録意匠の背面側形状との対比は出来ないのであって、この種物品の属する分野においては背面側の形状特徴も重要であることから、この背面側形状の差異は、類否判断に影響を及ぼすものといえる。 なお、請求人は、甲号意匠に関する図面(甲第1号証の1)、同模型写真(甲第1号証の3)及び同模型(検甲第1号証)を提出して、背面側形状を含む甲号意匠についての形状の説明を行っているが、これらの証拠方法は、甲号意匠と同一の意匠とは認められず、これらの証拠方法に基づいて指摘した甲号意匠についての具体的構成態様の「エ 背面側切欠部は、下広がりに開放する略等脚台形状をしている。」及び「オ 本体は、側面図において、(ロ)背面は外側に膨らむ略円弧状に切り欠かれている。」との記載は、採用することができない。 (ハ)軸受部の形状については、軸受部を略矩形状とした本件登録意匠と、略三角形状とした甲号意匠の差異は、本体と車輪との連結部として、比較的目立つ部位の構成態様に関するものであり、略矩形状と略三角形状の差異は、形状の特徴として明らかに看者に異なった視覚的印象を与えるものであるから、軸受部の形状の差異は類否判断に影響を及ぼすものといえる。 (ニ)ないし(へ)の差異についても、甲号意匠の形状が定かではないことに起因するものであり、上述のとおり、請求人が甲第1号証の1、甲第1号証の3及び検甲第1号証の証拠方法に基づいて指摘した甲号意匠の構成態様を採用することができないので、これらの差異は類否判断に影響を及ぼすものといえる。 そうすると、前記(イ)ないし(へ)の差異点は、何れも、両意匠に共通するとした態様を翻す程の印象を看者に与えるものであり、両意匠の醸し出す形態全体の印象を異にする程の差異感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。 なお、請求人は、意匠権侵害訴訟(平成16年(ワ)第14728号)及び意匠登録無効審判事件(無効2004-88032号)における被請求人の主張を引用し、本件登録意匠と甲号意匠が類似する旨を述べているが、両事件は、本件登録意匠と甲号意匠の類否について直接検討したものではないので、両事件における被請求人の主張を引用した請求人の意見を採用することはできない。 以上のとおりであって、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、形態において、差異点が両意匠の共通点を凌駕して類否判断を左右するという外ないから、本件登録意匠は、甲号意匠に類似する意匠とはいえない。 したがって、本件登録意匠は、その出願前に日本国内又は外国において公然知られ、または頒布された刊行物に記載された意匠に類似しないので、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当しない。 4.本件登録意匠が意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するか否かについて 本件登録意匠の創作性について、意匠全体として検討する。 すなわち、本件登録意匠の形態は、全体が、水平な略平板状の取付板と、その取付板の下部に、ベアリング部を介して回動自在に設けた本体と、本体下端寄りに水平に設けた車軸ボルトによって支持した車輪とからなる、基本的な構成態様のものであり、具体的構成態様については、車輪の大部分が本体に覆い隠されている構成態様、及び、正面側端部をほぼ垂直状とし、円筒形状に形成された部分との上方及び側方の境界線をほぼ直線状として、軸受部を略矩形状としている構成態様のものである。 請求人は、本件登録意匠を構成する周知形態を備えた公知意匠として、甲号意匠の他、甲第8号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証、甲第13号証の20に表された意匠(本件審決書に添付の別紙第三参照)を提示した。甲第8号証に表された意匠は、1984年11月に作成された東海キャスター株式会社のカタログ「Tokai Caster」第29頁の上段に所載の、FP-J型と記載された「キャスター」の意匠であって、形態は、同カタログの写真版により現されたとおりのものである。甲第10号証に表された意匠は、1983年に作成されたハンマーキャスター株式会社のカタログ「HAMMER CASTER」第31頁の上段に所載の、440Gと記載された「キャスター」の意匠であって、形態は、同カタログの写真版により現されたとおりのものである。甲第11号証に表された意匠は、1951年7月30日に特許庁が発行した実用新案公報に記載された「脚車」の意匠であって、形態は、同公報に表されたとおりのものである。甲第12号証に表された意匠は、1975年2月24日に特許庁が発行した意匠公報に記載された「キャスター」の意匠であって、形態は、同公報に表されたとおりのものである。そして、甲第13号証の20に表された意匠は、三輪商事株式会社が1982年?1983年に取り扱った商品を掲載したカタログ「NANSHIN CASTER」第13頁の上段左に所載の、THN 50 HRと記載された「キャスター」の意匠であって、形態は、同カタログの写真版により現されたとおりのものである。 本件登録意匠に対し、甲号意匠、甲第8号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証、及び甲第13号証の20に表された意匠を比較した場合において、それらの意匠のいずれにも、本件登録意匠に見られる、車輪の大部分が本体に覆い隠されている構成態様、及び、正面側端部をほぼ垂直状とし、円筒形状に形成された部分との上方及び側方の境界線をほぼ直線状として、軸受部を略矩形状としている構成態様が存在しないので、本件登録意匠が、上記意匠が有する周知の形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。 また、請求人が主張した、(イ)全体の基本的構成態様、(ロ)取付板の構成態様、(ハ)本体の構成態様、及び(ニ)車輪の構成態様は、確かにこの種物品分野における周知形態と認められ得る要素ではあるが、これらの要素を組み合わせても、上述した本件登録意匠の構成態様を創作できるとはいい難いので、本件登録意匠の形態の大部分が上記周知形態で構成されているとの請求人の主張については、これを採用することはできない。 したがって、本件登録意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠とは認められないので、意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しない。 5.むすび 以上のとおりであって、本件意匠登録は、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反してなされたものとはいえず、また、同法同条第2項の規定に違反してなされたものともいえないので、同法第48条第1項第1号には該当せず、無効とすることはできない。 したがって、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件意匠登録を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、意匠法第52条において準用する特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 ![]() |
審理終結日 | 2005-06-14 |
結審通知日 | 2005-06-07 |
審決日 | 2005-06-29 |
出願番号 | 意願昭61-33572 |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Y
(M3)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中川 シゲ子 |
特許庁審判長 |
伊勢 孝俊 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 小林 裕和 |
登録日 | 1995-11-24 |
登録番号 | 意匠登録第946347号(D946347) |
代理人 | 福田 あやこ |
代理人 | 宇田 浩康 |
代理人 | 面谷 和範 |
代理人 | 向江 正幸 |
代理人 | 大塚 忠 |
代理人 | 井口 喜久治 |
代理人 | 福島 三雄 |
代理人 | 小松 陽一郎 |
代理人 | 井崎 康孝 |
代理人 | 辻村 和彦 |
代理人 | 小山 方宜 |