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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D2
管理番号 1149898 
判定請求番号 判定2006-60023
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2007-02-23 
種別 判定 
判定請求日 2006-04-28 
確定日 2007-01-10 
意匠に係る物品 机 
事件の表示 上記当事者間の登録第1179801号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「机」の意匠は、登録第1179801号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第一 請求の趣旨及びその理由
請求人は、「イ号意匠に係る図面及び説明書に示す意匠(以下、イ号意匠という。)は、登録第1179801号意匠(以下「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由として判定請求書の請求の理由に記載の通りの主張をし、証拠方法として甲第1号証の1、及び甲第1号証の2,並びに甲第2号証ないし甲第6号証の書証を提出した。
なお、被請求人は、被請求人が製造販売している「机」(商品名「トリアス」)の意匠)に一致するように訂正した図面によってイ号意匠を認定すべき旨答弁したが、請求人は、甲第2号証の図面及び説明によりイ号意匠を認定すべき旨弁駁している。したがって、当審では、請求人主張のとおり、イ号意匠は、甲第2号証の図面及び説明により認定する。
その主張の要点は、以下の通りである。
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年8月26日に意匠登録出願(意願2002-022645号)し、平成15年5月23日に意匠登録を受けた登録第1179801号意匠であって、その願書及び添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「机」とし、その形態の要旨を以下の通りとするものである。(別紙第1参照)
(1)基本的構成態様
平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向きコ字状の端脚部を配置するとともに、これら両端脚部間の中央に、中央脚部を、各端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線がほぼ120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれら各端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これらの脚部と横連結杆上に破線で示した天板を取付けうるようにし、さらに端脚部と中央脚部の後端上部に、天板の後端縁から離間させて、パネルや配線ダクト等を取付けるための横方向の係止用溝部を前後両面に設けた帯板状のビームを架設してある。
(2)具体的構成態様
a) 右側面図において、端脚部の前端と、ビームの後端とのほぼ中央に、端脚部の後端が位置している。
b) 右側面図において、端脚部における上下方向の脚柱の前後方向の幅は、端脚の前後方向の幅のほぼ3分の1である。
c) 端脚部の脚柱の前端は、平面視ほぼV字状をなし、その後端は緩やかな円弧状をなしている。
d) 端脚部の脚柱の下端に取付けられた脚台は、側面視において、上下方向の中央に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分の上面は、ゆるやかに前下向き傾斜している。
e) 端脚部の脚台の下面前後端部には、上下の高さが同一のアジャスターが取付けられている。
f) 端脚部の脚柱の上端に取付けられた支持部における脚柱よりも前方に延設された部分の下面は、ゆるやかに前上向き傾斜している。
g) 端脚部の支持部の上面の中間部材上に天板を支持しているが、この中間部材における前後位置には、2個の切欠が形成されている。
h) 端脚部は、側面視において、脚柱と脚台、支持部との各連結線が平行に視認される。
i) 右側面図において、中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅のほぼ2分の1である。
j) 中央脚部の下面には、アジャスターが1個取付けられている。
k) 前記ビームの左右端には、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌されている。
l) 前記ビームの前面の係止用溝部には、下部を樋状とした断面ほぼL字状の配線ダクトが取付けられている。
m) 前記配線ダクトは、全体が1つの横方向に長い樋状のものである。
2 イ号意匠
イ号意匠は、イ号意匠に係る図面及び説明書(甲第2号証)の記載によれば、意匠に係る物品を「机」とし、その形態の要旨を以下の通りとするものである。(別紙第2参照)
(1)基本的構成態様
平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向きコ字状の端脚部を配置するとともに、これら両端脚部間の中央に、中央脚部を、各端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線がほぼ120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれら各端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これらの脚部と横連結杆上に破線で示した天板を取付けうるようにし、さらに端脚部と中央脚部の後端上部に、天板の後端縁から離間させて、パネルや配線ダクト等を取付けるための横方向の係止用溝部を前後両面に設けた帯板状のビームを架設してある。
(2)具体的構成態様
a) 右側面図において、端脚部の前端と、ビームの後端とのほぼ中央に、端脚部の後端が位置している。
b) 右側面図において、端脚部における上下方向の脚柱の前後方向の幅は、端脚の前後方向の幅のほぼ3分の1である。
c) 端脚部の脚柱の前端は、平面視ほぼV字状をなし、その後端は緩やかな円弧状をなしている。
d) 端脚部の脚柱の下端に取付けられた脚台は、側面視において、上下方向の中央に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分の上面は、ゆるやかに前下向き傾斜している。
e) 端脚部の脚台の下面前後端部には、上下の高さが異なるアジャスターが取付けられている。
f) 端脚部の脚柱の上端に取付けられた支持部における脚柱よりも前方に延設された部分の下面は、ゆるやかに前上向き傾斜している。
g) 端脚部の支持部の上面の中間部材上に天板を支持しているが、この中間部材における前後位置には、2個の切欠が形成されている。
h) 端脚部は、側面視において、脚柱と脚台、支持部との各連結線が平行に視認される。
i) 右側面図において、中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅とほぼ等しい。
j) 中央脚部の下面には、アジャスターが2個取付けられている。
k) 前記ビームの左右端には、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌されている。
l) 前記ビームの前面の係止用溝部には、下部を樋状とした断面ほぼL字状の配線ダクトが取付けられている。
m) 前記配線ダクトは、多数のユニットを横方向に連結して、全体として樋状に構成されている。
3 両意匠の比較
(1)共通点
両意匠は、意匠に係る物品が「机」で一致している。
両意匠は、基本的構成態様が全く同一であり、具体的構成態様においても多くの共通点を有する。すなわち、具体的構成態様のうち、a),b),c),d) ,f),g) , h),k),l)の点で、両意匠は共通する。
(2)差異点
1) 具体的構成態様 e)について、本件登録意匠においては、端脚部の脚台における下面の前後端部に設けられているアジャスターの高さは同一であるが、イ号意匠においては、端脚部の脚台における下面の前後端部に設けられているアジャスターは、脚台の下面前端部が切欠かれており、後側のアジャスターの背丈が前側のアジャスターの背丈よりも大きい。
2) 具体的構成態様 i)について、本件登録意匠においては、右側面図における中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅のほぼ2分の1であるが、イ号意匠においては、右側面図における中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅とほぼ等しい。
3) 具体的構成態様 j)について、本件登録意匠においては、中央脚部の下面には、アジャスターが1個取付けられているが、イ号意匠においては、中央脚部の下面には、アジャスターが2個取付けられている。
4) 具体的構成態様 m)について、本件登録意匠においては、前記配線ダクトは、全体が1つの横方向に長い樋状のものであるが、イ号意匠においては、配線ダクトは、多数のユニットを横方向に連結して、全体として樋状に構成されている。
4 本件登録意匠の要部
先行周辺意匠を参照して、本件登録意匠の要部を考察すれば、本件登録意匠は、平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向きコ字状の端脚部を配置するとともに、これら両端脚部間の中央に、中央脚部を、各端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線がほぼ120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれら各端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これらの脚部と横連結杆上に破線で示した天板を取付けうるようにし、さらに端脚部と中央脚部の後端上部に、天板の後端縁から離間させて、パネルや配線ダクト等を取付けるための横方向の係止用溝部を前後両面に設けた帯板状のビームを架設した形態が、本件登録意匠の全体としての基調をなしていることが明らかである。
5.両意匠の類否の考察
(1)両意匠は、意匠に係る物品が「机」で一致している。
(2)両意匠は、基本的構成態様が全く同一で、しかも、この基本的構成態様は、本件登録意匠の要部及び全体基調を包含している。すなわち、イ号意匠は、本件登録意匠の要部及び全体基調をそのまま有しており、両意匠を類似とする大きな要因となるものである。
(3)具体的構成態様においても、本件登録意匠の要部に係るビームに関して、k) 左右端の保護金具と l) 断面ほぼL字状の配線ダクトとが、また、本件登録意匠の全体基調に係る端脚部に関して、a) 端脚部の後端位置、b)脚柱の前後方向の幅、c)脚柱の前後端縁形状、d)脚台の態様、f)支持部下面の態様、h) 平行連結線が、それぞれ共通であり、これもまた両意匠を類似とする要因となるものである。
(4)さらにまた、具体的構成態様において、天板を支持するための中間部材に関して、g) 前後位置に形成された2個の切欠は、通常みられない特徴あるものであり、これもまた両意匠を類似とする要因となるものである。
(5)一方、差異点に関しては、以下の通りである。
1) 具体的構成態様 e)の差異については、意匠全体に占める比重が極めて小さく、先行周辺意匠である公知資料1(意匠登録第653700号公報)に見られるとおり、脚台の下面後部端部を切欠いてアジャスターを取付けることは、ごくありふれた態様であって、両意匠の類否には殆んど影響を及ぼさないものである。
2) 具体的構成態様 i)の差異については、中央脚部は最も見え難い天板の後部下方に位置し、特に中央脚部の前後方向の幅を観察する機会は甚少であって、その差異は、一般には殆ど認識し得ない程度の差異であり、両意匠の類否を左右する要因とはなり得ないものである。
3)具体的構成態様 j)の差異については、アジャスターは、一般に脚部の幅等により適宜個数が取付けられるものであり、その個数の差異は、需要者・取引者の関心からは、ほど遠いものであって、これまた殆ど認識し得ない程度の微差に過ぎない。
4)具体的構成態様 m)の差異については、いずれも樋状の配線ダクトを備えており、単に配線ダクトを、全体が1つの横方向に長い樋状にするか、あるいは、多数のユニットを連結して構成するかの差異に過ぎず、しかも、これらの配線ダクトは、ビームの前方、かつ天板の下方に位置しており、外方から視認し難く意匠全体に占める比重は極めて小さく、両意匠の類否を左右する要因とはなり得ないものである。
(6)以上の共通点、差異点を前提として、両意匠を全体的に考察すると、両意匠は、要部及び全体基調を構成する基本的構成態様が共通であるとともに、具体的構成態様においても多くの共通点を有し、一方、差異点が両意匠の類否に及ぼす影響はいずれも微弱であって、共通点を凌駕しているものとは到底言えず、これらを総合して判断すれば、明らかに両意匠は、類似する意匠であると結論される。
第二 被請求人の答弁
被請求人は、「イ号意匠に係る図面及び説明書に示す意匠は、登録第1179801号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」と申し立て、その理由として答弁書の理由に記載の通りの主張をし、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。
なお、イ号意匠は、甲第2号証の図面及び説明により認定し、甲第2号証の図面及び説明から認定できないイ号意匠に係る被請求人の主張については、被請求人の答弁としては採用しない。
その主張の要点は、以下の通りである。
1 本件登録意匠
被請求人の認定は、請求人の認定と以下の箇所において異なる他は一致している。
(1)基本的構成態様
平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向きコ字状の端脚部を配置するとともに、これら両端脚部間の中央に、中央脚部を、各端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線がほぼ120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれら各端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これらの脚部と横連結杆上に破線で示した天板を取付けうるようにし、さらに端脚部と中央脚部の後端上部に、天板の後端縁から離間させて、帯板状のビームを架設してある。
(2)具体的構成態様
c) 端脚部の脚柱の前端は、平面視流線形状をなし、その後端は緩やかな円弧状をなしている。
i) 中央脚部の前端は、平面視ほぼ台形状をなし、正面視において、上下方向の2本の走線が視認され、その後端は緩やかな円弧状をなし、右側面図において、中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅のほぼ2分の1である。
k) 前記ビームの前後両面には、パネルや配線ダクト等を取付けるための横方向の係止用溝部を前後両面に各2本ずつ設け、ビームの左右端には、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌され、ビーム及び保護金具の上端は天板の表面と一致し、下端は前記連結線より下方に延出している。
n) 脚台における上面と、支持部における下面は、ほぼ平坦である。
2 イ号意匠
イ号意匠について、被請求人の認定は、請求人の認定と以下の箇所において異なる他は一致している。
(1)基本的構成態様
平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向きコ字状の端脚部を配置するとともに、これら両端脚部間の中央に、中央脚部を、各端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線がほぼ120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれら各端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これらの脚部と横連結杆上に破線で示した天板を取付けうるようにし、さらに端脚部と中央脚部の後端上部に、天板の後端縁から離間させて、帯板状のビームを架設してある。
(2)具体的構成態様
c) 脚柱の前端は、平面視V字状をなし、正面視において、その稜線が視認され、側面視において、前端に沿って、前端と平行に上下方向の走線が視認され、その後端は緩やかな円弧状をなしている。
d) 脚柱の下端に取付けられた脚台は、側面視において、上下方向の中央より下に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分には、上下方向の中央より上に、ゆるやかに前下向き傾斜した前後方向の走線が視認され、その上面は、ゆるやかに前下向き傾斜している。
e) 脚台の下面前端部と、切欠かれた下面後端部には、それぞれ前側のアジャスターと、それよりも背丈を大きくした後側のアジャスターが取付けられている。
f) 脚柱の上端に取付けられた支持部における脚柱よりも前方に延設された部分には、側面視において、上下方向の中央より下に、ゆるやかに前上向き傾斜した前後方向の走線が視認され、その下面は、ゆるやかに前上向き傾斜している。
i) 中央脚部の前端は、平面視ほぼV字状をなし、正面視において、その稜線が視認され、側面視において、前端に沿って、前端と平行に上下方向の走線が視認され、その後端は緩やかな円弧状をなし、右側面図において、中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅とほぼ等しい。
k) 前記ビームの前後両面には、パネルや配線ダクト片等を取付けるための横方向の係止用溝部を前面に2本、後面に1本設け、ビームの左右端には、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌され、ビーム及び保護金具の上端は天板の表面と一致し、下端は前記連結線と一致している。
l) 前記ビームの前面の係止用溝部には、フック状とした断面ほぼL字状の複数個の配線ダクト片が取付けられている。
m) 配線ダクト片は、複数個を横方向に連結可能に構成されている。
n) 脚台における上面と、支持部における下面は、前記平面視V字状の脚柱の前端から連続して前方に向かうにしたがって、上下方向の位置が、それぞれ漸次低く、または高くなるように正面視V字状または逆V字状をなし、正面視において、その稜線が視認される。
3 両意匠の比較
(1)共通点
両意匠は、意匠に係る物品が「机」で一致する。
両意匠は、基本的構成態様が同一であり、具体的構成態様のうち、a)、b)、g)、h)の点で共通する。
(2)相違点
1) 具体的構成態様 c)について、本件登録意匠においては、脚柱の前端は、平面視流線型状をなしているのに対して、イ号意匠においては、脚柱の前端は、平面視V字状をなし、正面視において、その稜線が視認され、側面視において、前端に沿って、前端と平行に上下方向の走線が視認される点。
2) 具体的構成態様 d)について、本件登録意匠においては、脚柱の下端に取付けられた脚台は、側面視において、上下方向の中央に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分の上面は、ゆるやかに前下向き傾斜しているのに対して、イ号意匠においては、脚台は、側面視において、上下方向の中央より下に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分には、上下方向の中央より上に、ゆるやかに前下向き傾斜した前後方向の走線が視認され、その上面は、ゆるやかに前下向き傾斜している点。
3) 具体的構成態様 e)について、本件登録意匠においては、脚台の下面前後端部には、上下の高さが同一のアジャスターが取付けられているのに対し、イ号意匠においては、脚台の下面前端部と、切欠かれた下面後端部には、それぞれ前側のアジャスターと、それよりも背丈を大きくした後側のアジャスターが取付けられている点。
4) 具体的構成態様 f)について、本件登録意匠においては、脚柱の上端に取付けられた支持部における脚柱よりも前方に延設された部分の下面は、ゆるやかに前上向き傾斜しているのに対して、イ号意匠においては、脚柱の上端に取付けられた支持部における脚柱よりも前方に延設された部分には、側面視において、上下方向の中央より下に、ゆるやかに前上向き傾斜した前後方向の走線が視認され、その下面は、ゆるやかに前上向き傾斜している点。
5) 具体的構成態様 i)について、本件登録意匠においては、中央脚部の前端は、平面視ほぼ台形状をなし、正面視において、上下方向の2本の走線が視認され、その後端は緩やかな円弧状をなし、右側面図において、中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅のほぼ2分の1であるのに対して、イ号意匠においては、中央脚部の前端は、平面視ほぼV字状をなし、正面視において、その稜線が視認され、側面視において、前端に沿って、前端と平行に上下方向の走線が視認され、その後端は緩やかな円弧状をなし、右側面図において、中央脚部の前後方向の幅は、端脚部における脚柱の前後方向の幅とほぼ等しい点。
6)具体的構成態様 j)について、本件登録意匠においては、中央脚部の下面には、アジャスターが1個取付けられているのに対し、イ号意匠においては、中央脚部の下面には、アジャスターが2個取付けられている点。
7) 具体的構成態様 k)について、本件登録意匠においては、ビームの前後両面には、パネルや配線ダクト等を取付けるための横方向の係止用溝部を前後両面に各2本ずつ設け、ビームの左右端には、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌され、ビーム及び保護金具の上端は天板の表面と一致し、下端は前記連結線より下方に延出しているのに対して、イ号意匠においては、ビームの前後両面には、パネルや配線ダクト片等を取付けるための横方向の係止用溝部を前面に2本、後面に1本設け、ビームの左右端には、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌され、ビーム及び保護金具の上端は天板の表面と一致し、下端は前記連結線と一致している点。
8) 具体的構成態様 l)について、本件登録意匠においては、ビームの前面の係止用溝部には、下部を樋状とした断面ほぼL字状の配線ダクトが取付けられているのに対して、イ号意匠においては、ビームの前面の係止用溝部には、フック状とした断面ほぼL字状の複数個の配線ダクト片が取付けられている点。
9) 具体的構成態様 m)について、本件登録意匠においては、配線ダクトは、全体が1つの横方向に長い樋状のものであるのに対して、イ号意匠においては、配線ダクト片は、複数個を横方向に連結可能に構成されている点。
10) 具体的構成態様 n)について、本件登録意匠においては、脚台における上面と、支持部における下面は、ほぼ平坦であるのに対し、イ号意匠においては、脚台における上面と、支持部における下面は、前記平面視V字状の脚柱の前端から連続して前方に向かうにしたがって、上下方向の位置が、それぞれ漸次低く、または高くなるように正面視V字状または逆V字状をなし、正面視において、その稜線が視認される点。
4 本件登録意匠の要部
両意匠に共通する基本的構成態様は、この種の机が、その機能に基づいて共通して有する構成態様に過ぎず、本件登録意匠の要部(形態的特徴)は、上記両意匠に共通する基本的構成態様中には見出すことができない。
5 両意匠の類否の考察
両意匠の具体的構成態様は、いくつかの点で共通するものの(これらの共通点も、また、この種の机が、その機能に基づいて共通して有する構成態様に過ぎない。)、他の多くの点で相違している。
特に、本件登録意匠の全体基調に関わり、その要部(形態的特徴)を構成すると認められる脚部及び中央脚部に関して、c)、d)、e)、f)、I)、j)、n)が相違し、また、ビームに関しても、k)が相違し、さらに、配線ダクトと配線ダクト片とに関しても、l)、m)が相違し、これらの相違点が、両意匠を見る者に顕著な差異として認識されるものと認められる。
すなわち、本件登録意匠とイ号意匠とは、机の機能に基づいて共通して有する基本的構成態様以外の具体的構成態様において大きく相違し、この相違点より両意匠の全体を観察したとき、特に、本件登録意匠の全体基調に関わり、その要部(形態的特徴)を構成すると認められる脚部及び中央脚部の意匠の相違、究極的にいえば、本件登録意匠において、c)脚柱の前端は、平面視流線型をなし(稜線や走線は視認されない。)、n)脚台における上面と、支持部における下面は、ほぼ平坦である(稜線や走線は視認されない。)のに対して、イ号意匠において、c)脚柱の前端は、平面視V字状をなし(稜線や走線が視認される。)、n)脚台における上面と、支持部における下面は、前記平面視V字状の脚柱の前端縁から連続して前方に向かうにしたがって、上下方向の位置が、それぞれ漸次低く、または高くなるように正面視V字状または逆V字状をなす(稜線や走線が視認される。)ことによって、イ号意匠は本件登録意匠と比較して、シャープでスリムな印象を与えるものとなり、両意匠は判然たる美観の差異を有するものと認められ、この差異点が両意匠の類否に及ぼす影響は極めて大きく、これらを総合して判断すれば、両意匠は、明らかに類似しない意匠であると結論されるものである。
第三 請求人の弁駁
請求人は、弁駁書を提出して、要旨以下のように主張する。
本件登録意匠の基本的構成態様についての図面に表示された具体的意匠形態は、被請求人が提示するいずれの各乙号証にも具体的に示されておらず、公知であることの挙証が何らなされていないとともに、公知部分は要部になり得ないと即断する被請求人の主張は、失当である。
被請求人は、「パネルや配線ダクト等を取付けるための横方向の係止用溝部を前後両面に設けた帯板状のビーム」 が公知であるとの立証は何らしていない。
脚台における前後方向の走線については、両意匠における走線のいずれもが「上下方向の中央」より下に視認され、ただその程度が多少異なるに過ぎない。しかし、かかる相異は、両意匠の類否判断には、殆ど無関係ともいうべき微差である。
被請求人は、「脚柱の前端縁は、平面視V字状をなし、正面視において、その稜線が視認され」と主張しているが、平面視が概略V字状をなす前端縁は、曲面をなし、決して稜線が視認されるような形状のものではないことが明らかである。そもそも平面視が概略前向きV字状をなす脚柱の前端縁は、一般に丸みをもって成形されており、正確には、正面視において稜線が視認されるものではない。しかし、丸みの曲率半径が小さい場合は、稜線を明示する場合もあるが、実際の製品を意匠的視点から観察する場合は、曲率半径の相違は、それが顕著に相違する場合以外は、特に異なるデザインを有する意匠であるとの印象は生じないのが一般的である。
第四 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年8月26日に意匠登録出願(意願2002-022645号)し、平成15年5月23日に意匠登録を受けた登録第1179801号意匠であって、その願書及び添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「机」とし、意匠登録を受けた部分を実線で表したもので、その意匠登録を受けた部分の形態の要旨を以下の通りとするものである。(別紙第1参照)
(1)基本的構成態様
平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向き略コ字状の脚部を配置するとともに、これらの両端脚部間の中央に、脚台のない縦長板状の中央脚部を、両端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線が120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれらの両端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これら脚部と横連結杆の上に天板を取付けうるようにし、さらに両端脚部と中央脚部の後端縁上部に、天板の後端縁から離間させて、帯板状のビームを架設してある。
(2)具体的構成態様
(2-1)両端脚部
a) 両端脚部の脚柱の上下に略同形状の細長い脚台と天板支持部を設け、脚全体として側面が連続平滑面をなす側面視略コ字状を形成し、その脚柱を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅は脚台の前後方向の幅の約3分の1とする。
b) 両端脚部の脚柱の前端縁は、断面略V字状で、脚柱横幅の約5分の1の幅を占め、両側面がやや凸湾曲面状で頂部が丸い断面略半楕円形状の尖ったV字状をなし、また、脚柱の後端縁は円弧状をなし、脚柱前後端縁は全体として曲面的に構成されている。
c) 両端脚部の脚柱の下端に取付けられた脚台は、側面視において、上下方向の中央に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分の上面が、ゆるやかに前下向き傾斜している。
d) 両端脚部の脚台の下面前後端部には、高さが同一のアジャスターが取付けられている。
e) 両端脚部の脚柱の上端に取付けられた天板支持部は、脚柱よりも前方に延設された部分の下面が、脚台の上面よりもやや急角度に前上向き傾斜しており、脚台と天板支持部はやや形状が相違する。
f) 天板支持部の上面で天板を支持する中間部材における前後位置には、2個の切欠が形成されている。
g) 両端脚部の脚台における上面と、天板支持部における下面は、ほぼ平坦であり、略コ字状脚の内側コ状縁部分の構成態様は、脚柱前端縁の断面略半楕円形状の尖ったV字状と上下平坦面との異質な形状の組合せ構成となっている。
h) 両端脚部の側面視において、脚柱と脚台、天板支持部との各連結線が平行に視認され、脚台の上下幅と天板支持部の上下幅は、約7:10で、天板支持部の幅が広い。
(2-2)中央脚部
i) 中央脚部は、脚全体を側面視略縦長細幅長方形状の板状とし、その前後方向の幅を、両端脚部における脚柱の前後方向の幅の約3分の1とし、下端前方を斜状に切欠き、横断面略縦長台形状で、両端脚部と異なる。
j) 中央脚部の下面には、アジャスターが1個取付けられている。
(2-3)ビーム
k) ビームの背面側には、パネルや配線ダクト等を取付けるため、上下2本の横方向に連続する係止用細溝凹部を設けている。
l) ビームの左右端に、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌されている。
m) ビームの前面の係止用溝部には、全体が1つの横方向に長い樋状とした断面略L字状の配線ダクトが取付けられている。
2 イ号意匠
イ号意匠は、イ号意匠に係る図面及び説明書(甲第2号証)の記載によれば、意匠に係る物品を「机」とし、本件登録意匠の意匠登録を受けた部分に相当する部分の形態の要旨を以下の通りとするものである。(別紙第2参照)
なお、被請求人は、被請求人が製造販売している「机」(商品名「トリアス」)の意匠)に一致するように訂正した図面によってイ号意匠を認定すべき旨答弁したが、請求人は、甲第2号証の図面及び説明によりイ号意匠を認定すべき旨弁駁している。したがって、当審では、請求人主張のとおり、イ号意匠は、甲第2号証の図面及び説明により認定する。
(1)基本的構成態様
平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向き略コ字状の脚部を配置するとともに、これらの両端脚部間の中央に、脚台のない縦長板状の中央脚部を、両端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線が120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれらの両端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これら脚部と横連結杆の上に天板を取付けうるようにし、さらに両端脚部と中央脚部の後端縁上部に、天板の後端縁から離間させて、帯板状のビームを架設してある。
(2)具体的構成態様
(2-1)両端脚部
a) 両端脚部の脚柱の上下に略同形状の細長い脚台と天板支持部を設け、脚全体として側面が連続平滑面をなす側面視略コ字状を形成し、その脚柱を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅は脚台の前後方向の幅の約3分の1とする。
b) 両端脚部の脚柱の前端縁は、断面略V字状で、脚柱幅の約10分の1の幅を占め両側面が平面状で頂部が丸い断面略直角三角形状のV字状をなし、また、脚柱の後端縁はごく緩やかな円弧状をなし、脚柱前後端縁は全体として平面的に構成されている。
c) 両端脚部の脚柱の下端に取付けられた脚台は、側面視において、上下方向の中央に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分の上面が、ゆるやかに前下向き傾斜している。
d) 両端脚部の脚台の下面前後端部には、アジャスターが取付けられ、その後端のアジャスターは、高さが前端のアジャスターの約2倍で、脚台後端を切り欠いて取付けられている。
e) 両端脚部の脚柱の上端に取付けられた天板支持部は、脚柱よりも前方に延設された部分の下面が、脚台の上面とほぼ同角度に、前上向き傾斜しており、脚台と天板支持部は上下対称形状になっている。
f) 天板支持部の上面で天板を支持する中間部材における前後位置には、2個の切欠が形成されている。
g) 両端脚部の脚台における上面と、天板支持部における下面は、中央が盛り上がる断面略V字状と略逆V字状であり、略コ字状脚の内側コ状縁部分の構成態様は、脚柱前端縁の断面略直角三角形状のV字状と上下略V字状によって同形状を連続させた構成となっている。
h) 両端脚部の側面視において、脚柱と脚台、天板支持部との各連結線が平行に視認され、脚台の上下幅と天板支持部の上下幅は、略同幅である。
(2-2)中央脚部
i) 中央脚部は、脚全体を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅を、両端脚部における脚柱の前後方向の幅とほぼ等しくし、下端まで同幅とし、横断面形状は、両端脚部の脚柱と同形状で、両端脚部の脚柱とは長さが異なるだけである。
j) 中央脚部の下面には、アジャスターが2個取付けられている。
(2-3)ビーム
k) ビームの背面側に、パネルや配線ダクト等を取付けるため、上下左右幅いっぱいに係止用凹部を設けている。
l) ビームの左右端には、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌されている。
m) ビームの前面の係止用溝部には、フック状とした断面略L字状の複数個の配線ダクト片が取付けられている。
3 両意匠の対比
<共通点>
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その意匠登録を受けた部分の形態とそれに相当する部分の形態については下記の点で共通する。
(1)基本的構成態様
平面視において、前方に向けてハ字状に左右に離間して、側面視前向き略コ字状の端脚部を配置するとともに、これらの両端脚部間の中央に、脚台のない縦長板状の中央脚を、各端脚部と中央脚部を結ぶ2つの直線が120度の角をなすように後方に突出させて配置し、かつこれらの各端脚部と中央脚部との上端間に、横連結杆を架設して、それぞれ連結し、これら脚部と横連結杆の上に破線で示した天板を取付けうるようにし、さらに端脚部と中央脚部の後端縁上部に、天板の後端縁から離間させて、帯板状のビームを架設してある。
(2)具体的構成態様
(2-1)両端脚部
a) 両端脚部の脚柱の上下に略同形状の細長い脚台と天板支持部を設け、脚全体として側面が連続平滑面をなす側面視略コ字状を形成し、その脚柱を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅は脚台の前後方向の幅の約3分の1とする。
b) 両端脚部の脚柱の前端縁は、断面略V字状で、また、脚柱の後端縁は円弧状をなしている。
c) 脚台は、側面視において、上下方向の中央に、床面と平行な前後方向の走線が視認され、脚台のうち、脚柱よりも前方に延設された部分の上面が、ゆるやかに前下向き傾斜している。
d) 脚台の下面前後端部には、アジャスターが取付けられている。
e) 天板支持部は、脚柱よりも前方に延設された部分の下面が、前上向き傾斜している。
f) 天板支持部の上面で天板を支持する中間部材における前後位置には、2個の切欠が形成されている。
h) 両端脚部の側面視において、脚柱と脚台、天板支持部との各連結線が平行に視認される。
(2-2)中央脚部
j) 中央脚部の下面には、アジャスターが取付けられている。
(2-3)ビーム
k) ビームの背面側には、パネルや配線ダクト等を取付けるため、係止用凹部を設けている。
l) ビームの左右端に、端部を覆う所定幅の保護金具が被嵌されている。
m) ビームの前面の係止用溝部には、断面略L字状の配線ダクトが取付けられている。
<差異点>
両意匠は、その意匠登録を受けた部分の形態とそれに相当する部分の形態については下記の点に差異がある。
(2-1)両端脚部
b) 脚柱は、本件登録意匠の前端縁の断面略V字状が、脚柱横幅の約5分の1の幅を占め両側面がやや凸湾曲面状で頂部が丸い断面略半楕円形状の尖ったV字状をなし、後端縁は円弧状をなし、脚柱前後端縁は全体として曲面的に構成されているのに対し、イ号意匠の前端縁の断面略V字状は、脚柱幅の約10分の1の幅を占め両側面が平面状で頂部が丸い断面略直角三角形状のV字状をなし、後端縁はごく緩やかな円弧状をなし、脚柱前後端縁は全体として平面的に構成されている。
d) 脚台のアジャスターは、本件登録意匠では、前後とも高さが同一であるのに対し、イ号意匠では、後端のアジャスターは、高さが前端のアジャスターの約2倍で、脚台後端を切り欠いて取付けられている。
e) 本件登録意匠の天板支持部下面は、脚台の上面よりもやや急角度に前上向き傾斜しており、脚台と支持部はやや形状が相違するのに対し、イ号意匠の天板支持部下面は、脚台の上面とほぼ同角度に前上向き傾斜しており、脚台と天板支持部は上下対称形状になっている。
g) 本件登録意匠の脚台における上面と、天板支持部における下面は、ほぼ平坦であり、略コ字状脚の内側コ状縁部分の構成態様は、脚柱前端縁の断面略半楕円形状の尖ったV字状と上下平坦面との異質な形状の組合せ構成となっているのに対し、イ号意匠の脚台における上面と、天板支持部における下面は、中央が盛り上がる断面略V字状と略逆V字状であり、略コ字状脚の内側コ状縁部分の構成態様は、脚柱前端縁の断面略直角三角形状のV字状と上下略V字状によって同形状を連続させた構成となっている。
h) 本件登録意匠の脚台の上下幅と天板支持部の上下幅は、約7:10で、天板支持部の幅が広いのに対し、イ号意匠の脚台の上下幅と天板支持部の上下幅は、略同幅である。
(2-2)中央脚部
i) 本件登録意匠の中央脚部は、脚全体を側面視略縦長細幅長方形状の板状とし、その前後方向の幅を、両端脚部における脚柱の前後方向の幅の約3分の1とし、下端前方を斜状に切欠き、横断面略縦長台形状で、両端脚部と異なるのに対して、イ号意匠の中央脚部は、脚全体を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅を、両端脚部における脚柱の前後方向の幅とほぼ等しくし、下端まで同幅とし、横断面形状は、両端脚部の脚柱と同形状で、両端脚部の脚柱とは長さが異なるだけである。
j) 本件登録意匠の中央脚部の下面には、アジャスターが1個取付けられているのに対して、イ号意匠の中央脚部の下面には、アジャスターが2個取付けられている。
(2-3)ビーム
k) 背面側係止用凹部について、本件登録意匠は、上下2本の横方向に連続する係止用細溝凹部を設けているのに対し、イ号意匠は、上下左右幅いっぱいに係止用凹部を設けている。
m) 本件登録意匠の配線ダクトは、全体が1つの横方向に長い樋状としたのに対し、イ号意匠の配線ダクトは、フック状とした複数個の配線ダクト片が取付けられている。
4 本件登録意匠の要部
この種机の性質,用途,使用態様を参酌すると、需要者は、上方より斜視した態様を中心に意匠全体を観察するものと認められる。したがって、本件登録意匠においては、(1)全体の構成態様、(2)脚部の全体的な構成、特に脚柱と台座部との構成態様、(3)ビーム背面部の構成態様、及び、(4)中央脚部の構成態様が注視される部位と認められる。
次に、本件登録意匠の出願前公知の意匠等を参酌すると、(1)略コ字状の両端脚部と帯板状のビームとで構成される構成態様は、すでに広く知られた態様であり(例えば、実開平5-93259号の【図1】(公知意匠1)、特開平6-111号の【図1】【図8】(公知意匠2)、登録第1144630号意匠(公知意匠3)、及び、登録第1059429号意匠(公知意匠4)。)、また、前方に向けてハ字状に左右に離間して、両端脚部を配置するとともに、中央脚を配置した構成態様は、例を挙げるまでもなく広く知られた構成態様であり、したがって、本件登録意匠の基本的構成態様、すなわち、「ハ字状に略コ字状の両端脚部を配置するとともに、その中央に中央脚部を配置し、脚部の後端縁上部に、帯板状のビームを架設した構成態様」は、その出願前に広く知られたものである。(2)両端脚部の脚柱の上下に略同形状の細長い脚台と天板支持部を設け、脚全体として側面が連続平滑面をなす側面視略コ字状を形成し、その脚柱を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅は脚台の前後方向の幅の約3分の1とする両端脚部の構成態様は、すでに広く知られた態様である(例えば、実開平4-232号の【第5図】(公知意匠5)、特許庁意匠課が1996年9月2日に受け入れたカタログ「dragon’96-97総合カタログ」第94頁記載の机の脚(意匠課公知資料番号HC08027748)(公知意匠6)、登録第1110921号意匠(公知意匠7)。)。(なお、側面視において、脚柱と脚台、天板支持部との各連結線が平行に視認される態様は、連続平滑面の上に線的な模様として視認される程度のもので意匠的効果は微弱であり、脚は構造的に脚柱、脚台、及び、天板支持部の3部材で構成されたものであるが、脚側面の態様としては連続平滑面に形成して各連結線を目立たないようにし、脚全体として側面視略コ字状の態様と視認されるよう形成したものと認められる。)(3)帯板状ビームは、登録第653700号の類似1号意匠(公知意匠8)、及び、登録第1144644号意匠(公知意匠9)にも見られる態様であり、背面側細線状の態様は、登録第1059429号意匠(公知意匠4)にも見られるとともに、ほとんど同一形状の帯板状ビームであって、天板の後端縁から離間させて架設したものがすでに公然知られている(登録第1144663号意匠(公知意匠10))。そして、その他の各具体的構成態様も、脚柱の前端縁について脚柱横幅の約5分の1の幅を占め両側面がやや凸湾曲面状で頂部が丸い断面略半楕円形状の尖ったV字状をなす構成態様を除き、ほとんどが広く知られた態様と認められる。
したがって、この種机の性質,用途,使用態様、及び、公知意匠にない新規な創作部分の存否を参酌すると、本件登録意匠の要部は、基本的構成態様に各部の具体的構成態様を合わせた全体の構成態様を主として、特徴的構成態様を加味した構成態様にあると認められる。すなわち、(1)ハ字状に略コ字状の両端脚部を配置するとともに、その中央に中央脚部を配置し、脚部の後端縁上部に、帯板状のビームを架設した全体の基本的構成態様に加え、(2)両端脚部の脚柱の上下に略同形状の細長い脚台と天板支持部を設け、脚全体として側面が連続平滑面をなす側面視略コ字状を形成し、その脚柱を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅は脚台の前後方向の幅の約3分の1とする両端脚部の具体的構成態様、(3)中央脚部の脚全体を側面視略縦長細幅長方形状の板状とし、その前後方向の幅を、両端脚部における脚柱の前後方向の幅の約3分の1とし、下端前方を斜状に切欠き、横断面略縦長台形状で、両端脚部と異なる中央脚部を設けた具体的構成態様、及び、(4)帯板状ビームの背面側に、上下2本の横方向に連続する係止用細溝凹部を設けた具体的構成態様を合わせた、意匠全体としての構成態様を主として、(5)他にみられない特徴的構成態様、すなわち、脚柱の前端縁について脚柱横幅の約5分の1の幅を占め両側面がやや凸湾曲面状で頂部が丸い断面略半楕円形状の尖ったV字状をなす構成態様、及び、脚柱前端縁の断面略半楕円形状の尖ったV字状と上下平坦面との異質な形状の組合せによる略コ字状脚の内側コ状縁部分の構成態様を加味した構成態様が、本件登録意匠の要部と認められる。
5 両意匠の類否判断
両意匠の共通点のうち、本件登録意匠の要部に係る構成態様は、(1)ハ字状に略コ字状の両端脚部を配置するとともに、その中央に中央脚部を配置し、脚部の後端縁上部に、帯板状のビームを架設した全体の基本的構成態様、(2)両端脚部の脚柱の上下に略同形状の細長い脚台と天板支持部を設け、脚全体として側面が連続平滑面をなす側面視略コ字状を形成し、その脚柱を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅は脚台の前後方向の幅の約3分の1とする両端脚部の具体的構成態様であるが、いずれもすでに広く知られた構成態様であり、かつ、本件登録意匠の要部のうち一部の構成態様でしかなく、これらの共通点のみでは両意匠に全体として共通する美感を起こさせるものとはいえない。また、他の共通する具体的構成態様のうち、ビームの背面側に係止用凹部を設け天板の後端縁から離間させて設けたビームの構成態様は、上記のようにすでに公然知られており、その他の構成態様も、すでに広く知られた態様であるか、ごく微細な箇所における態様又は見えにくい部位における態様であって、看者の注意を特に引くものではなく、これら他の共通する具体的構成態様を合わせて総合的に観察しても、両意匠に全体として共通する美感を起こさせるものではない。
これに対して、差異点のうち、(b)両端脚部の脚柱前端縁における形状の差異は、本件登録意匠の特徴的構成態様における差異であり、また、脚柱前後端縁が全体として曲面的か平面的かの構成態様の差異は、脚柱全体の印象を形成する部位での大きな差異であり、そして、この脚柱の差異とともに、(g)両端脚部の略コ字状脚の内側コ状縁部において、本件登録意匠が断面略半楕円形状の尖ったV字状と上下平坦面との異質な形状の組合せ構成となっているのに対し、イ号意匠が断面略V字状と上下略V字状によって同形状を連続させた構成となっている差異点を合わせた脚部の差異は、この種机の意匠において看者の注意を特に引きやすい主要部位における差異であり、両意匠に異なる美感を起こさせるものである。さらに、(i) 本件登録意匠の中央脚部は、脚全体を側面視略縦長細幅長方形状の板状とし、その前後方向の幅を、両端脚部における脚柱の前後方向の幅の約3分の1とし、下端前方を斜状に切欠き、横断面略縦長台形状で、両端脚部と異なるのに対して、イ号意匠の中央脚部は、脚全体を側面視略縦長長方形の板状とし、その前後方向の幅を、両端脚部における脚柱の前後方向の幅とほぼ等しくし、下端まで同幅とし、横断面形状は、両端脚部の脚柱と同形状で、両端脚部の脚柱とは長さが異なるだけである点、及び(k)ビーム背面側係止用凹部について、本件登録意匠は、上下2本の横方向に連続する係止用細溝凹部を設けているのに対し、イ号意匠は、上下左右幅いっぱいに係止用凹部を設けている点も本件登録意匠の要部に係る態様における差異であって、看者が注視する部位での差異である。すなわち、これらの差異点は、両端脚部の脚柱前後端縁部と略コ字状脚の内側コ状縁部とにおける差異点が特に看者の注意を引きやすい主要部位における差異であり、これら脚部の構成態様に、ビームの背面部、及び、中央脚部の差異点を加えた構成態様は、本件登録意匠の要部のかなりの部分を占めており、その他の具体的構成態様の差異点を合わせて総合的に観察した場合、両意匠に全体として異なる美感を起こさせるものである。
したがって、両意匠は、意匠全体として美感が相違し、類似しないものである。
6 結び
以上のように、イ号意匠は、本件登録意匠に類似せず、登録第1179801号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
別掲
判定日 2006-12-21 
出願番号 意願2002-22645(D2002-22645) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前畑 さおり内藤 弘樹 
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 杉山 太一
樋田 敏恵
登録日 2003-05-23 
登録番号 意匠登録第1179801号(D1179801) 
代理人 竹沢 荘一 
代理人 中馬 典嗣 
代理人 森 治 

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