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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D2
管理番号 1151759 
判定請求番号 判定2006-60052
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2007-03-30 
種別 判定 
判定請求日 2006-09-21 
確定日 2007-02-13 
意匠に係る物品 組立て家具用レール 
事件の表示 上記当事者間の登録第1210222号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す意匠は、登録第1210222号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求主旨及び理由
請求人は、イ号意匠は、登録第1210222号の意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を判定請求書の記載のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。その要旨は以下のとおりである。
I)両意匠の共通点
(a)本件登録意匠に係る物品は「組立て家具用レール」であり、イ号意匠に係る物品は「カーテンレール」であり、名称が異なるが、両意匠に係る物品の用途及び機能が同じであり、同一の物品というべきである。
(b)基本的な構成態様において、外側レールと内側レールからなるレール本体と、外側レール及び内側レールの端部に装着されたキャップ部と、レール本体のスリットを摺動可能に取り付けられたランナーとからなる。外側レール及び内側レールは、管状形状を有し、内側レールが伸縮可能に外側レールに挿入されている。各キャップ部は、外側レール及び内側レールよりも幅が広く、レール長手方向外側に向かうにつれ幅が徐々に広くなり、平面図において、角部にレール長手方向に突起を備え、端部はレール長手方向内側に凹んだ湾曲面を備えて、略Y字形状を形成している。ランナーはフックが掛けられる孔を備え、正面図において、いわば逆釣鐘形状を有している。
(c)具体的な構成態様は、内側レールの側面に溝が刻まれ、キャップ部の湾曲面中央に小穴を備えている。
II)両意匠の差異点
(a)本件登録意匠では、伸縮状態でのレール全体の長さは、正面図における外側レールの幅の約16倍であるが、イ号意匠では外側レールの幅の約34倍である。
(b)本件登録意匠では、底面に下方に突き出た孔付き突起を備えているが、イ号意匠では、孔付き突起を備えていない。
(c)両意匠において、ランナーの個数が異なっている。
III)本件登録意匠の要部
先行周辺意匠をもとに、本件登録意匠の創作の要点について述べれば、この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、レール端部の構成態様にあることは明らかで、本件登録意匠については、他に全く見られない、湾曲面を備えた略Y字形状を形成したキャップ部が、本件登録意匠全体の基調を表出している。
IV)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
そこで、本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、
(a)両意匠の共通点は、基本的な構成態様に係るものであり、特に、本件登録意匠の要部であるキャップ部の、湾曲面を備えた略Y字形状の態様が共通しており、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。
(b)両意匠の差異点の(a)については、伸縮可能なレールでは、レール幅に対する全体の長さは顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。差異点(b)については、レールに取り付けられた複数のランナーが看取されるため、孔付き突起の有無は特段顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。差異点(c)についても、複数のランナーを備えたレールにおいては、ランナーの個数は特段顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。
(c)以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏まっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は、その結論を左右するまでには至らないものである。
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、と答弁し、答弁書の記載のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。その要旨は以下のとおりである。
(a)判定請求人は、公知資料である甲第3号証から甲第5号証に基づいて、本件意匠の要部は、レール端部の構成態様にあると主張している。しかしながら、本件登録意匠は部分意匠ではなく、類否判断は本件登録意匠とイ号意匠の全体を比較して両意匠の要旨を認定し、共通点及び差異点の評価を行った上で行われるべきである。
(b)本件登録意匠とイ号意匠とは、1.レール本体の形態、2.キャップ部の形態、3.ランナーの形態に関して大きな相異がある。一方、判定請求人が要部であると主張するキャップ部の湾曲面は、装着対象である円柱体の外面形態に応じて決定された形態であり、創作に係る形態でないことは明らかである。また、本件物品の装着状態では、上記湾曲面を看取することはできず、意匠全体に与える影響も小さいと考えられる。
(c)しかも、甲第5号証に記載された公知意匠を勘案すると、本件登録意匠の基本的構成態様は既に公知であり、本件登録意匠とイ号意匠の類否は、構成要素の細部の意匠の相異を検討し、これら相異点が意匠全体に与える影響を勘案して判断をすべきである。
(d)本件登録意匠とイ号意匠とは、各意匠を構成する構成要素の形態において大きな相異点があり、しかも、上記各相異点は、見えやすい部分に係るものであり、看者の注意を引く部分でもある。したがって、これら相異点が意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすことは明らかである。
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものではない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、登録原簿によれば平成15年2月12日に意匠登録出願をし、平成16年5月14日に意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第1210222号の意匠であり、願書の記載によれば、意匠に係る物品が「組立家具用レール」であって、形態については、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであり(別紙1参照)、その要旨は以下のとおりである。
(a)外側レールに内側レールが伸縮可能に挿入され、内蔵されたスプリングの復元力により両端を取付対象物の内側から圧着固定する形式のもので、両外側端部にキャップを装着し、下面長手方向に設けられたスリット部に4個のランナーをスライド可能に装着したものであり、
(b)外側レールの長さ(キャップに隠れた部分は除く)について、平面視における前後幅の約7倍、外側レールと内側レールの長さの比について、図面上略6:4で表しており、なお、外側レールの長さと、底面側に表れたスプリング等の態様、及び、使用状態を示す参考図2によれば、内側レールの縮む余地は少なく、伸びる余地はややあるとしても図面に表された態様に対して、その差はさほど大きいものではなく、
(c)外側レールと内側レールは、共に縦幅(上下幅)と平面視における前後幅(横幅)をほぼ同じとした僅かに太さの異なる角筒状としたもので、キャップ部については、共に概略短四角柱状としたものであって、その内側端部は、縦・横何れの幅もそれぞれのレールよりも極く僅かに広く、外側に向け極く僅かテーパ状に太くした正面視僅かに横長としたものであり、
(d)キャップ部周面形状について、上面側両隅部は丸面状、両側面下側を緩やかな弧状により下方に向け僅かに窄めた態様とし、
(e)キャップ外側端部について、両外側端面は、何れも横方向の凹弧により抉った態様の凹曲面とし、それぞれの両側面外側端部には縦方向の凸縁状部を設けたもので、その凸縁状部について、平面視概略三角形状としたもので、その外側面はキャップ外側端面部の凹曲面とほぼ直角を形成しており、
(f)両端のキャップそれぞれの下側について、正面視概略U字状とした円孔付き板状小突起を設け、
(g)ランナーについて、上端側に水平方向の円板状部を設け、その下側に、これと等幅であってキャップ下側の小突起と概ね同形とした板状部を設けた構成としたものであり、
(h)内側レールの両側面について、横方向の細筋を設けたものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、甲第1号証の写真により示されたものであって、意匠に係る物品については、甲第2号証の説明書の記載によれば「カーテンレール」であり、形態については、甲第1号証の写真に現されたとおりのものである(別紙2参照)。
3.両意匠の対比検討
両意匠を対比すると、意匠に係る物品について、本件登録意匠は「組立家具用レール」としたものであるが、カーテンを取り付けるためのランナーを装着していることから、実質的に組立家具用のカーテンレールに関するものと認められ、イ号意匠は、その説明書によれば、壁、柱間、パイプ等に用いられることが記載され、また、組立家具に用いられた写真が記載されていることから、建築・家具兼用のカーテンレールであり、共通する物品と認められる。また、形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
すなわち、共通点として、
(1)外側レールに内側レールが伸縮可能に挿入され、内蔵されたスプリングの復元力により両端を取付対象物の内側から圧着固定する形式のもので、両外側端部にキャップを装着し、下面長手方向に設けられたスリット部に複数のランナーをスライド可能に装着したものである点、
(2)外側レールと内側レールは、共に縦幅(上下幅)と平面視における前後幅(横幅)をほぼ同じとした僅かに太さの異なる角筒状としたもので、キャップ部については、共に概略短四角柱状としたものであって、その内側端部は、縦・横何れの幅もそれぞれのレールよりも極く僅かに広く、外側に向け極く僅かテーパ状に太くした正面視僅かに横長に視認されるものである点、
(3)キャップ部周面形状について、上面側両隅部は丸面状、両側面下側を緩やかな弧状により下方に向け僅かに窄めた態様とした点、
(4)キャップ外側端部について、両外側端面は、何れも横方向の凹弧により抉った態様の凹曲面とし、それぞれの両側面外側端部には縦方向の凸縁状部を設けたもので、その凸縁状部について、平面視概略三角形状としたもので、その外側面はキャップ外側端面部の凹曲面とほぼ直角を形成している点、
(5)ランナーについて、上端側に水平方向の円盤状部を設け、その下側に、これと等幅であって正面視概略U字状とした円孔を有する板状部を設けた構成としたものである点、
(6)内側レールの両側面について、横方向の細筋を設けた点、がある。
次に差異点として、
(ア)外側レールの長さ(キャップに隠れた部分は除く)について、本件登録意匠は、平面視における前後幅の約7倍としているのに対して、イ号意匠は、同前後幅の約30倍としている点、
(イ)本件登録意匠は、外側レールと内側レールの長さの比について、図面上略6:4で表しており、外側レールの長さと、底面側に表れたスプリング等の態様、及び、使用状態を示す参考図2によれば、内側レールの縮む余地は少なく、伸びる余地はややあるとしても図面に表された態様に対して、その差はさほど大きいものではないのに対して、イ号意匠については、その正面図及び底面図において、外側レールと内側レールの比を略10:1で表しているが、説明書の内容によれば、外側レールの長さは60cmから両端のキャップの長さを引いた長さ以下であり、内側レールの外側に現れる最長の長さは少なくとも30cm以上あり、少なくともキャップを含む全長の1/3以上外観として表れるはずのものである点、
(ウ)ランナーの数について、本件登録意匠は、4個としているのに対して、イ号意匠は8個としている点、
(エ)両端のキャップそれぞれの下側について、本件登録意匠は、ランナー下側板状部と概ね同形とした円孔付き小突起を設けているのに対して、イ号意匠は、これに相当するものがない点、がある。
そこで、意匠全体として、これらの共通点及び差異点の類否判断に及ぼす影響について比較検討する。
まず、共通点について、(1)及び(2)の点については、意匠全体の骨格に関するものであり、(3)、(4)のキャップ部の具体的構成態様に関するもの、(5)はランナーの基本的構成態様に関するもの、(6)の点は内側レールの具体的構成態様に関するものであり、これらの共通する構成態様を併せ持った点は、一定程度共通感を生じさせるものである。
ところが、本件登録意匠の出願前発行された意匠登録第1153887号公報(甲第5号証)には(4)の点を除き、本件登録意匠とほぼ同一と認められる外観形状を有する意匠が記載されていることから、(1)、(2)、(3)、(5)、及び、(6)の点については、類否判断に大きな影響を及ぼすものとすることができず、(4)の点については、本件登録意匠の特徴的部分と認められるが、意匠全体としてみた場合にはやや小さい部位に関するものであることから、差異点を検討せずこれら共通点のみで類否判断を決することはできない。
次に、差異点の類否判断に及ぼす影響について、検討する。
まず、(ア)の差異点について、両意匠は、(2)の共通点により、レールの太さに対するキャップの相対的大きさがほぼ一致するから、便宜上、外側レールの太さがイ号意匠とほぼ同じと仮定すると、本件登録意匠の外側レールの長さは、イ号意匠と比較して1/4以下の長さであることになり、その差異は極めて顕著である。(なお、本件登録意匠とイ号意匠との長さの差が少ないものと解すると、レールの太さ、キャップ、ランナーの大きさがそれに伴い大きくなるだけであって、以下の評価においても変化が生じるものではない。)
(イ)の差異点について、イ号意匠の最長にのばした状態のもの、本件登録意匠の最長にのばした状態のもの、それぞれを想定し比較すると、その差異は図面上表された相互関係よりも更に顕著となることは明白である。
そして、両意匠の場合には、一般の建築用カーテンレール(レール全体が同一の太さから構成され、通常90cm、ないし、それ以上と認められる。)とは異なり、伸縮可能な太さの異なるレールから構成されるさほど長くないものであることから、(ア)及び、(イ)の構成比率に関する差異を総合すると、直接的には言及しなかった、意匠全体に対するキャップ部の相対的大きさの顕著な差異も生じさせるものであるから、これらの類否判断に及ぼす影響は、やや大きいものとせざるを得ないものである。
(ウ)の点については、適宜変更されるランナーの単なる数の相違、(エ)の差異点については、意匠全体に対してだけでなくキャップ全体に対しても小さい孔付き突起の有無に関する相違であるから、何れも個々に採り上げた場合には類否判断に及ぼす影響は僅かとすべきものであるが、両差異点はカーテンフック取付部に関するもので、これらを総合し、本件登録意匠は、カーテンの両端を固定する孔付き突起と4個のランナーの組合せからなるもの、イ号意匠は8個のランナーのみからなるものとし、更に、(ア)、及び、(イ)の差異点、すなわち、外側レール及び全体の長さ(若しくは、外側レールの太さと、キャップ・ランナーの大きさ)の差異との相まった視覚効果を想定すると、両意匠間においては、類否判断に及ぼす影響を無視できるほどのものとすることができない。
そして、これら共通点の類否判断に及ぼす影響、差異点の類否判断に及ぼす影響を総合的に検討する。
そうすると、前記のとおり、意匠全体に及ぼす視覚的効果は微弱とは言い難い全体の構成比率に関する(ア)及び(イ)の差異点(これにより生ずるキャップ部の意匠全体に対する相対的大きさの差異も含む)と、これにより差異感が強められる(ウ)及び(エ)の差異点の相まった視覚効果に対して、やや小さい部位に関する(4)の点の視覚効果が優っているとは言い難いものである。
このように、イ号意匠は(1)ないし(6)の共通点が認められるとしても、(1)、(2)、(3)、(5)、及び、(6)の点については、類否判断に大きな影響を及ぼすものとすることができず、本件登録意匠の特徴部分と認められる(4)の構成態様をイ号意匠が具備しているとしても、(4)の構成態様の意匠全体に及ぼす視覚効果よりも、(ア)ないし(エ)の差異点の相まった意匠全体に及ぼす視覚効果の方が優っているから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しないとせざるを得ないものである。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2007-01-31 
出願番号 意願2003-3130(D2003-3130) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 山崎 裕造
越河 香苗
登録日 2004-05-14 
登録番号 意匠登録第1210222号(D1210222) 
代理人 的場 照久 
代理人 宮崎 伊章 
代理人 中川 信治 
代理人 盛田 昌宏 

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