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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) F2
管理番号 1157240 
判定請求番号 判定2006-60050
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2007-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2006-09-07 
確定日 2007-05-01 
意匠に係る物品 ルースリーフ綴じ具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1033214号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「ルースリーフ綴じ具」の意匠は、登録第1033214号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1. 請求の趣旨及び理由
判定請求人(以下、請求人という。)は、「イ号意匠ならびにその説明書に示す意匠は、登録第1033214号意匠(以下、本件登録意匠という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める。」と申し立て、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証(本件登録意匠公報写し)及び甲第2号証(イ号図面写し)を提出した。
なお、本件判定請求は、被請求人が存在しないものであり、その理由として、請求人は、請求人自身が現在販売している、本件登録意匠とは対応するノート規格のサイズが異なる製品をイ号として、判定請求するものであると述べている。

その理由は、概ね次のとおりである。
1.本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「ルースリーフ綴じ具」とし、その形態の要旨を、次のとおりとする。
すなわち、
i) 基本的な構成態様は、細長いほぼ矩形の二重板構成の基部と、基部上に長手方向一定間隔で26本設けられたほぼ半円形のリング部と、基部の裏面に左右方向にスライド移動可能に設けられたリンク板とからなり、リンク板の右端部は通常(リング閉時)は基部の右端に接しており、このリンク板右端部には上方に凸となる突起が存在する。この突起を指で右方に引くことにより、リンク板右端部が基部右端から離れ、基部の二重板が、長手方向に対し直交する方向(以下「短手方向」という。)に互いに平行にスライドして基部の幅が拡大し、この基部幅の拡大に伴い、各リング部が短手方向に二分割され、各対応するリング半体同士間に、孔付きノートをリング部に差し込み取り外しするための間隙が生じる。
ii)具体的な構成態様は、閉状態の基部の上面(平面)において、短手方向上方に基部長手方向全長に延びる境界線が現れ、この境界線において、基部の二重板のうちの上方板の短手方向上端部と、上方板の高さまで部分的に高めた下方板の短手方向上端部とが閉状態時に互いに接する。短手方向上方側の半リングの基端は、上記下方板の短手方向上端部に接続する。この基部上面の上方板と下方板の境界線は、リンク板を右方に引いて閉状態から開状態へ至ると離間する。リンク板を右方に完全に引き出した状態で、リンク板突出部分は、基部下方板に対応して短手方向上方にあり、また、基部の短手方向の幅は、基部から突出しているリンク板の短手方向幅の2倍よりも若干小さい。
基部上面の長手方向両端部は、基部の厚さが縁端に向かって次第に薄くなるようにわずかに傾斜が付けられている。この基部両縁端付近における傾斜の開始位置は、基部上面に細線として現れる。
突起の基端部となるリンク板右端部の厚さ及び幅は、リング閉時の基部の(最も厚さが薄い)縁端と同程度であり、また、突起の形状は上方の二つの角が丸み付けされたほぼ矩形板状であり、突起の基部(もしくは突起基端部)からの突出高さは、リング部の突出高さの約半分程度であり、突起の短手方向幅は閉時の基部(もしくは突起基端部)よりも若干短くされている。更に、板状の突起の基部を向く側面は浅い凹球面状とされ、突起の反対側(外側)側面もわずかに凸球面状とされる。
基部裏面側にあるリンク板は、上述した突起及び突起基端部を右端部に備えて開状態で基部から右方に突出する右基端部分を有する。右基端部分は、基部の下板の幅とほぼ同じ幅を有する。リンク板は更に、右基端部分の短手方向上方(上下は基部底面を正面とする)から左方へと基部左端部付近まで延びる長枝部と、右基端部分の短手方向下方から左方へと長枝部に比べて短く突出する短枝部とを含む。長枝部の下辺には横長台形状に下方に凸となる台形凸部が左半と右半にそれぞれ一つずつある。
4.イ号意匠の説明
イ号意匠は、意匠に係る物品を「ルースリーフ綴じ具」とし、その形態を、次のとおりとする。
すなわち、
i)基本的な構成態様は、細長いほぼ矩形の二重板構成の基部と、基部上に長手方向一定間隔で6本設けられたほぼ半円形のリング部と、基部の裏面に左右方向にスライド移動可能に設けられたリンク板とからなり、リンク板の右端部は通常は基部の右端に接しており、このリンク板右端部には上方に凸となる突起が存在する。この突起を指で右方に引くことにより、リンク板右端部が基部右端から離れ、基部の二重板が短手方向に互いに平行にスライドして基部の幅が拡大し、この基部幅の拡大に伴い、各リング部が短手方向に二分割され、各対応するリング半体同士間に間隙が生じる。
ii) 具体的な構成態様は、閉状態の基部の上面において、短手方向上方に基部長手方向全長に延びる境界線が現れ、この境界線において、基部の二重板のうちの上方板の短手方向上端部と、上方板の高さまで部分的に高めた下方板の短手方向上端部とが閉状態時に互いに接する。短手方向上方側の半リングの基端は、上記下方板の短手方向上端部に接続する。この基部上面の上方板と下方板の境界線は、リンク板を右方に引いて閉状態から開放状態へ至ると離間する。リンク板を右方に完全に引き出した状態で、リンク板突出部分は、基部下方板に対応して短手方向上方にあり、また、基部の短手方向の幅は、基部から突出しているリンク板の短手方向幅の2倍よりも若干小さい。
基部上面の長手方向両端部は、基部の厚さが縁端に向かって次第に薄くなるようにわずかに傾斜が付けられている。この基部両縁端付近における傾斜の開始位置は、基部上面に細線として現れる。
突起の基端部となるリンク板右端部の厚さ及び幅は、リング閉時の基部の縁端と同程度であり、また、突起の形状は上方の二つの角が丸み付けされたほぼ矩形板状であり、突起の基部からの突出高さは、リング部の突出高さの約半分程度であり、突起の短手方向幅は閉時の基部よりも若干短くされている。更に、板状の突起の基部を向く側面は浅い凹球面状とされ、突起の反対側側面もわずかに凸球面状とされる。
基部裏面側にあるリンク板は、上述した突起及び突起基端部を右端部に備えて開状態で基部から右方に突出する右基端部分を有する。右基端部分は、基部の下板の幅とほぼ同じ幅を有する。リンク板は更に、右基端部分の短手方向上方(上下は基部底面を正面とする)から左方へと基部左端部付近まで延びる長枝部と、右基端部分の短手方向下方から左方へと長枝部に比べて短く突出する短枝部とを含む。長枝部の下辺には台形状に下方に凸となる台形凸部が左方に一つある。
5.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
i) 両意匠の共通点
a) 両意匠は、意匠に係る物品が「ルースリーフ綴じ具」で一致している。
b) 基本的な構成態様において、両意匠ともに、細長いほぼ矩形の二重板構成の基部と、基部上に長手方向一定間隔で複数設けられたほぼ半円形のリング部と、基部の裏面に左右方向にスライド移動可能に設けられたリンク板とからなり、リンク板の右端部は通常は基部の右端に接しており、このリンク板右端部には上方に凸となる突起が存在し、この突起を指で右方に引くことにより、リンク板右端部が基部右端から離れ、基部の二重板が短手方向に互いに平行にスライドして基部の幅が拡大し、この基部幅の拡大に伴い、各リング部が短手方向に二分割され、各対応するリング半体同士間に間隙が生じる。
c) 具体的な構成態様において、両意匠ともに、閉状態の基部の上面において、基部の上方板の短手方向上端部と、下方板の短手方向上端部とが互いに接する境界線が現れ、開状態でリンク板突出部分は基都下方板に対応して短手方向上方にあり、開状態の基部の短手方向幅は基部から突出しているリンク板の短手方向幅の2倍よりも若干小さい。また、基部上面の長手方向両端部には傾斜が付けられ、この傾斜の開始位置が基部上面に細線として現れる。突起の基端部となるリンク板右端部の厚さ及び幅は、リング閉時の基部の縁端と同程度であり、突起の形状は上方の二つの角が丸み付けされたほぼ矩形板状であり、突起の基部からの突出高さはリング部の突出高さの約半分程度であり、突起の短手方向幅は閉時の基部よりも若干短くされている。更に、板状の突起の基部を向く側面は浅い凹球面状とされ、突起の反対側側面もわずかに凸球面状とされる。更にまた、基部裏面側にあるリンク板は、突起及び突起基端部を右端部に備えて開状態で基部から右方に突出する右基端部分を有し、右基端部分は、基部の下板の幅とほぼ同じ幅を有し、リンク板はまた、右基端部分の短手方向上方から左方へと基部左端部付近まで延びる長枝部と、右基端部分の短手方向下方から左方へと長枝部に比べて短く突出する短枝部とを含み、長枝部にはその下辺から下方に凸となる台形状の凸部が存在する。
ii)両意匠の差異点
a) 閉状態での基部の縦横比が、本件登録意匠は約1対15であるのに対し、イ号意匠では約1対7である。
b)リング部の数が、本件登録意匠は26本であるのに対し、イ号意匠は6本である。
c) 基部から引き出されたリンク板において、本件登録意匠ではほぼ半長円形状の開口が現れるのに対し、イ号意匠では、そのような開口は現れない。
d )短手方向に開いた状態のリング部の対応する半体の一方の半リング端に現れる微小突起が(他方の半リング端にはリング閉時に微小突起を受け入れる微小凹部がある)、本件登録意匠は、すべて短手方向上方の半リング端にあるのに対し、イ号意匠は、リング部一つおきに上下の半リング端で交互となる。
e) リンク板の長枝部の下辺にある台形凸部が、本件登録意匠では二つあるの対し、イ号意匠では一つだけある。
f) 本件登録意匠において、右側面拡大図(及び右側面図)に見られるように、上記突起の右側面(右側面から見た正面)に、突起外郭線の内側に突起外郭線とほぼ平行で突起とその基端部に連続する、矩形で上辺の両端の角が丸くされた線が見えるのに対し、このような線はイ号意匠にはない。
6.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
i) 本件登録意匠の要部
この種物品における意匠上の創作の主たる対象の一つは、リング部を閉じた状態の底面を除く全体形状にあり、この状態で物品が販売展示され、その際、底面は看者の目に触れない。また、リング部を開放した状態及びこれを開放可能とする機構部分にも特徴があり、本件登録意匠については、突起を含むリンク板、特にその引き出された状態や、二重板構造の基部が上下に平行にずれて拡幅した状態及びこれに伴って平行移動のみして互いに離隔した状態のリング半体は、他に全く見られない形態である。
ii)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
そこで、本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、
a)両意匠は、上述したように基本的な構成態様においてほぼ共通しており、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである.
b) 上記差異点a)及びb)の基部の縦横比及びリング数の違いは、単に適用されるノートサイズの規格が異なることに起因するものであり、この点に実質的な差異はない。差異点c)については、基部に対するリンク板の突出態様が両意匠とも酷似しており、これに比べて突出したリンク板に開口が見えるか否かは特段顕著な相違とはいえず、類否の判断に与える影響は微弱である。差異点d)も特段顕著な相違とはいえず、類比の判断に与える影響は微弱である。差異点e)について、基部の底面は、バインダー側に固定され、看者の目に触れないため、類比判断に与える影響は少ない。差異点f)について、かかる突起内側の線は細線であり、実際上類比判断に与える影響は少ない。
c)以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏まっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は、その結論を左右するまでには至らないものである。
7.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するもので、請求の趣旨どおりの判定を求める。

第2.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9(1997)年5月2日に出願され(意願平9-53095号)、平成10(1998)年12月11日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1033214号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「ルースリーフ綴じ具」とした意匠であって、その形態を願書及び同図面記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。

2.本件登録意匠の形態
本件登録意匠は、(A-1)上面長手方向に凹部を有する固定板と、固定板の該凹部上に重ねられた可動板とによる二重板構成の略細長矩形状基部と、該基部上面に長手方向(以後、リング列設方向を「長手方向」、これと直交する方向を「幅方向」という。)一定間隔で多数列設された略半円形リング部と、固定板の下側に長手方向にスライド移動可能に設けられたリンク板とからなり、(A-2)リング閉状態では、基部上面に固定板と可動板を分割する長手方向全長に延びる境界線が表れ、この境界線において、平面視で上方に位置する固定板と、同下方に位置する可動板とが基部上面で互いに面一状に接し、その基部上面の長手方向両縁部を基点に略半円形状リングが形成され、リンク板の右端部は基部右端に接し、リンク板をスライド移動させるための摘みとしての略板状突起が、リンク板右端部中央に上方へ突出状に表され、(A-3)リング開状態では、リンク板はスライド移動して右方に引き出され、固定板と共に基部上面を構成していた可動板が、接していた固定板から離間し、幅方向に平行スライドして拡幅し、可動板が収まっていた固定板上に凹部が現れると共に、略半円形リングが幅方向に二分割され、各対応するリング半体同士間に間隙が生じ、固定板と可動板のそれぞれにリング半体が表されるとした基本的構成態様のものであって、
具体的態様を、
(B)リンク板について、(B-1)右端部中央の略板状突起は、リング閉状態の基部と同幅及び厚さの上面視略縦長矩形状の摘み基端部上に形成し、該略板状突起の突出高さをリングの突出高さの約半分程度とし、その幅を基部幅よりも僅かに幅狭とし、さらに、該板状突起の基部側表面は僅かに凹面状に、反対の外側表面を僅かに凸球面状とし、(B-2)リンク板の本体形状について、底面視で、幅方向の上方側に長手方向への長い延在部を設け、該延在部下辺に台形状突出部を複数形成し、
(C)リングについて、(C-1)リングの略半円形は、真円の半体の両端を平行にわずかに延長させた形状とし、根元側の太さを太くし、(C-2)その数を全体で26体とし、(C-3)リング開状態でのリング半体は、固定板側の半リング体端部に微小突起が現れ(他方の半リング端にはリング閉時に微小突起を受け入れる微小凹部がある)、
(D)リング閉状態について、(D-1)基部幅に占める固定板と可動板の構成比率を約1:3とし、同長手方向における長さは同じで、共に帯状の横長長方形状とし、(D-2)基部上面の左右両端部をリングを設けない余地部とし、該部を両端部へ向かう下がり傾斜面状とし、左端部平面視形状をごく緩やかな弧状とし、長手方向に伸びる両縁角部を丸く面取りし、(D-4)基部上面の長手方向に3個の平面視二重丸状円孔を等間隔に設け、
(E)リング開状態について、(E-1)可動板は下方に拡幅され、(E-2)可動板が拡幅した後の固定板上に、長手方向全長に伸びる凹部が現れ、該凹部上に3個の小円孔と各々同形状の縦長区画部3個と短い横長区画部4個が現れ、(E-3)右方に引き出されたリンク板本体の突出長さはリング間のピッチ幅の約2、3個分で、基部側に長円を割ったような開口部が現れる、としたものである。

3.イ号意匠
イ号意匠は、「イ号図面」(甲第2号証)に示された「ルースリーフ綴じ具」の意匠であって、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙第2参照)。

4.イ号意匠の形態と、本件登録意匠との差異点
イ号意匠は、基本的構成態様を本件登録意匠と同じとし、具体的態様について、
(a)リンク板について、(a-1)右側面図に表された略板状突起の、突起外郭線内側の線の有無と、頂部中央の円弧状小突起の有無、(a-2)底面視のリンク板本体形状において、下辺の台形凸部の数、
(b)リングについて、(b-1)リングの略半円形に平行部が無く、太さが一定で、(b-2)その数を全体で6体とし、その列設間隔を本件登録意匠よりやや広くし、(b-3)リング開状態でのリング半体端部の微小突起が固定板側と可動板側とで交互に現れ、
(c)リング閉状態について、(c-1)基部の縦横比が、本件登録意匠は約1対15であるのに対し、イ号意匠では約1対7で、(c-2)基部上面の円孔が2個であり、
(d)リング開状態について、(d-1)可動板拡幅後の凹部上に現れる小円孔や小縦長区画部の数や横長区画部の形状、(d-2)右方に引き出されたリンク板の突出長さと、基部側の開口部の有無において、本件登録意匠と相違するものである。

5.類否判断
本件登録意匠とイ号意匠の上記差異点を検討すると、その差異は適用されるノートサイズの規格が異なることに起因するものと認められ、基本的に基部長手方向の寸法が異なるものとなっている。そのことを勘案して、以下検討すると、
まず、(a)リンク板について、(a-1)略板状突起部の差異は、定かには視認できないほどの局所的差異で、(a-2)底面視のリンク板本体形状の差異は、共に台形凸部を設けている中での、規格を異にするが故の一般的改変に係る差異で、
(b)リングについて、(b-1)リングの略半円形状や太さの差異や、(b-3)リング半体端部の微小突起の位置の差異は、共にありふれている態様であるうえ、局所的差異であり、(b-2)その数や列設間隔の差異、そして、(c)リング閉状態について、(c-1)基部の縦横比の差異や、(c-2)基部上面の円孔数の差異は、規格を異にするが故に施される一般的改変に係る差異であり、注意を惹くことはなく、
(d)リング開状態について、(d-1)可動板拡幅後の凹部上に現れる細かい形状の差異や、(d-2)引き出されたリンク板の突出長さと開口部の有無の差異は、目立たない部位の局所的差異であり、いずれも類否判断を左右するものではない。
ところで、請求人は、本件登録意匠について「突起を含むリンク板、特にその引き出された状態や、二重板構造の基部が上下に平行にずれて拡幅した状態及びこれに伴って平行移動のみして互いに離隔した状態のリング半体は、他に全く見られない形態である」ことをもって、本件登録意匠の要部としている。しかし、リンク板の摘みである略板状突起や摘み基端部を含む摘み部全体の形態を除けば、例えば、公開実用新案公報実開昭53-101821、公開特許公報特開平7-101192等に明らかなように、既に従来より普通に見られる態様と言わざるを得ない。しかし、本件登録意匠は摘み部全体の形態がこれらの公知意匠と相違する。よって、本件登録意匠の要部は、新規な形態に係る摘み部を有するリンク板を、従来から見られる拡幅の態様を有する基部に組み合わせて表したところにあると言えるものである。そしてイ号意匠についてみれば、イ号意匠も本件登録意匠と共通する摘み部を有し、基部の態様も本件登録意匠と共通するものである。
したがって、上記のとおり、本件登録意匠とイ号意匠の差異点はいずれも細部に係るものであるか、あるいは特徴をそのままに、規格サイズ変更に伴って行われた改変に伴う差異に過ぎないから注意を惹かず、それら差異点を総合しても視覚効果は微弱で、類否判断に影響を及ぼすものではないのに対して、両意匠の共通点は要部に係り、ほとんどの態様にわたり圧倒的で、意匠全体の骨格を形成し、美感が共通するから、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものである。

6.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2007-04-12 
出願番号 意願平9-53095 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (F2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清野 貴雄川崎 芳孝 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 樋田 敏恵
正田 毅
登録日 1998-12-11 
登録番号 意匠登録第1033214号(D1033214) 
代理人 倉内 基弘 

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