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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立不成立) L5 |
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管理番号 | 1160536 |
判定請求番号 | 判定2007-600006 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2007-01-31 |
確定日 | 2007-06-20 |
意匠に係る物品 | カーテン吊り具用本体 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1212270号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「カーテン吊り具用本体」の意匠は、登録第1212270号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1.請求の趣旨及び理由 請求人は、イ号図面並びにその説明書に示す意匠(以下、イ号意匠という。)は、意匠登録第1212270号意匠(以下「本件登録意匠」という。)又はこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を判定請求書の記載のとおり主張し、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。その要旨は以下のとおりである。 〔1〕両意匠の共通点 両意匠は、意匠に係る物品が「カーテン吊り具用本体」である点で一致している。 両意匠は、下記(ア)?(エ)の基本的な構成態様を有する点において一致している。 (ア)全体が、別体であるフック体をラチェット式に下方へ移動可能に係合させるための主杆と、カーテンへ挿入して取り付けるための上下2つの挿入杆とからなる。 (イ)主杆の正面視左側の後部壁は、縦方向に細長く伸びる。 (ウ)下部挿入杆は、後部壁の下端部から後方へ延出し、さらに上向きに屈曲して後部壁に沿い上方へ伸びる。 (エ)上部挿入杆は、後部壁の上部から後方へ延出し、さらに上向きに屈曲して後部壁に沿い上方へ伸びる。 両意匠は、具体的な構成態様において、(1)下部挿入杆が、後部壁と同幅で、この幅の1/3弱の厚さを有する板状である点、(2)下部挿入杆が、上方に向かって後部壁とほぼ平行に、後部壁の1/2弱の高さ位置まで伸び、上端が左側面視において円弧状に終結している点、(3)上部挿入杆が、後部壁と同幅で、この幅の1/3弱の厚さを有する板状である点、(4)上部挿入杆が、上方に向かって後部壁とほぼ平行に、後部壁の上端近くの高さ位置まで伸び、上端が左側面視において円弧状に終結している点において一致している。 〔2〕両意匠の差異点 (ア)主杆の後部壁が、本件登録意匠は、2つの挿入杵の延出部を除き、全体にほぼ平滑であるのに対し、イ号意匠は、2つの挿入杆の間に後方へ突出した正面視台形状の突起と、上部挿入杆の上端部近くに形成された正面視三角形状の凹部とを有する。 (イ)下部挿入杆が、本件登録意匠は、後部壁の下端から延出しているのに対し、イ号意匠は、後部壁の下端から上方へ間隔を置いた位置から延出している。 (ウ)下部挿入杆が、本件登録意匠は、下端部において湾曲部を介して後方延出部に接続しているのに対し、イ号意匠は、下端部において後方延出部の下方へわずかに突出した下方突出部を有し、後方延出部に対して直角に接続している。 (エ)下部挿入杆の後方延出部が、本件登録意匠は、正面側が平滑であるのに対し、イ号意匠は、ほぼ矩形の凹部を有する。 (オ)下部挿入杆の上端近くの後部壁側には、本件登録意匠においては、正面視において円弧状の小突起が形成されているのに対し、イ号意匠においては、小突起が形成されていない。 (カ)上部挿入杆が、本件登録意匠は、下端部において湾曲部を介して後方延出部に接続しているのに対し、イ号意匠は、下端部において後方延出部の下方へわずかに突出した下方突出部を有し、後方延出部に対して直角に接続している。 (キ)上部挿入杆の後方延出部が、本件登録意匠は、正面側が平滑であるのに対し、イ号意匠は、ほぼ矩形の凹部を有する。 (ク)上部挿入杆の上端近くの後部壁側には、本件登録意匠においては、正面視において円弧状の小突起が形成されているのに対し、イ号意匠においては、正面視において三角形状の小突起が形成され、この小突起の先端部が後部壁の凹部にわずかに進入している。 〔3〕本件登録意匠の要部 本件登録意匠の要部は、(1)下部挿入杆が、後部壁と同幅で、この幅の1/3弱の厚さを有する板状である点、(2)下部挿入杆が、上方に向かって後部壁の1/2弱の高さ位置まで後部壁とほぼ平行に伸びている点、(3)下部挿入杆の上端が左側面視において円弧状に終結している点、(4)上部挿入杆が、後部壁と同幅で、この幅の1/3弱の厚さを有する板状である点、(5)上部挿入杆が、後部壁の上端近くの高さ位置まで後部壁とほぼ平行に伸びている点、(6)上部挿入杆の上端が左側面視において円弧状に終結している点にある。 〔4〕共通点の検討 本件登録意匠とイ号意匠は、基本的な構成態様において共通し、かつ本件登録意匠の要部である上記、(1)?(6)の具体的構成態様において共通しており、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。 〔5〕差異点の検討 a)両意匠の差異点(ア)における、主杆の後部壁の正面視台形状の突起と、正面視三角形状の凹部の有無については、いずれも微小で、目立たない部分であり、またこの種のカーテン吊り具において、カーテンに対する係合性を高めるために、主杆の後部壁に突起を形成し、あるいは凹部を形成することは、常套的な手法であって、特に取引者の注目を引く部分ではないから、特段顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。 b)両意匠の差異点(イ)における、下部挿入杆が、後部壁の下端から延出しているか、下端から上方へ間隔を置いた位置から延出しているか、については、この種のカーテン吊り具において、適宜選択される徴差であり、特段顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。 c)両意匠の差異点(ウ)、(カ)における、下部挿入杆および上部挿入杆の下端部の湾曲部の有無および下方突出部の有無については、この種のカーテン吊り具において、適宜選択される微差であり、特段顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。 d)両意匠の差異点(エ)、(キ)における、後方延出部の矩形の凹部の有無については、この種のカーテン吊り具において、挿入杆に、その形状に応じて各種形状の凹部を形成することは常套手段であり、その有無は、特に取引者の注目を引く部分ではないから、特段顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。 e)両意匠の差異点(オ)、(ク)における、下部挿入杆および上部挿入杆の上端近くの小突起の有無については、いずれも微小で、目立たないものであり、またこの種のカーテン吊り具において、カーテンに対する係合性を高めるために、挿入杆の上端近くに小突起を形成することは、常套的な手法であって、その有無の選択は適宜なされるものであって、特に取引者の注目を引く部分ではないから、特段顕著な相違といえず、類否の判断に与える影響は微弱である。 〔6〕両意匠の全体的考察 以上の検討を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に与える影響がいずれも微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏まっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は、なお微弱なものである。 〔7〕むすび したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。 第2.被請求人の答弁 被請求人に対して、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても被請求人からは、何ら応答がなかったものである。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、登録原簿によれば平成15年10月14日に意匠登録出願をし、平成16年6月11日に意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第1212270号の意匠であり、その願書の記載によれば、意匠に係る物品を「カーテン吊り具用本体」とした部分意匠であり、その形態は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおり実線で表したものである(別紙1参照)。 2.イ号意匠 イ号意匠は、判定請求書に添付された「イ号意匠ならびにその説明書」によれば、意匠に係る物品がカーテン吊り具用の本体であり、形態については、「イ号意匠の図面」の本件登録意匠に対応する部分にあらわされたとおりのものである(別紙2参照)。 3.両意匠の対比検討 両意匠を対比すると、意匠に係る物品について共通すると認められ、本件登録意匠の実線で表された部分の形態と、判定の対象となるこれに対応するイ号意匠の形態については、以下の共通点、及び、差異点が認められる。なお、本件登録意匠の左側面図側を、「前」として、以下認定する。 すなわち、両意匠は、共通点として、 (1)全体を縦長棒状とした主杆の前側、縦細長長方形板状部分と、その前面に上・下2つ設けられた、何れも全体を主杆側と同幅とした縦長の挿入杆部分とから構成されるものであって、主杆側部分(以下、「主杆基部」という。)については、その前面は概ね平面状、四周は前面に対して直角状としたものであり、上・下両挿入杆については、何れも、主杆基部の前面に対して僅かの隙間を介しほぼ平行とした、概ね縦長板状とした主要部分と、その下端付近の連結部分からなるものであって、該連結部の形状は、上・下ほぼ共通するものとした点、 (2)上部挿入杆について、縦幅を主杆の長さの1/4強とし、その上端を主杆基部上端の僅か下位置としたものであり、下部挿入杆については、上端を主杆基部の上下中央よりやや下位置とした点、 (3)正面視において、上・下両挿入杆の上端部は、何れも緩やかな凸弧状とし、同下端部については、何れも直線状とした点、 がある。 これに対して、両意匠は、 (ア)挿入杆連結部について、本件登録意匠は、主要部分の下端から後方に向け小弧状に曲げた態様、具体的には、前面側下端付近を凸弧面状とし、そのまま主杆基部前面側に結合し、その上の隙間部側は小凹弧面状とし、該連結部の厚み(上下幅)は、主要部分よりやや厚く(約2倍、正面視幅の約1/2)したものであるのに対して、イ号意匠は、主要部分の裏面下端側に僅かの余地を残し、その下側に側面視コ字状凹部を形成して設けられた、上下幅をかなり広く(正面視幅とほぼ同じ)したものである点、 (イ)下部挿入杆について、本件登録意匠は、縦幅を上部挿入杆の約1.6倍とし、その下端が主杆基部下端と一致しているのに対して、イ号意匠は、縦幅を上部のものより僅かに短いものとし、下端位置を主杆基部の下端よりかなり上位置(挿入杆の縦幅の1/4幅)とした点、 (ウ)主杆基部前面について、本件登録意匠は、横中央から左右に向け僅かに厚みを減ずる斜状としているのに対して、イ号意匠は、本件登録意匠における斜状部に相当するものがなく、上部挿入杆主要部下端のやや下位置に、本件登録意匠には存在しないやや大きな側面視概略台形状の突起を設けた点、 (エ)上・下両挿入杆上端について、本件登録意匠は、何れも側面視小凸弧状に表れる丸面状としているのに対して、イ号意匠は、何れも前面上端から裏面側を斜状に落とした態様とし、上部挿入杆については、該斜状部が更に主要部の厚みを越え延長し、側面視三角状に表れる凸部を形成している点、 に差異が認められる。 そこで、意匠全体として、これらの共通点及び差異点の類否判断(類似するか否かの結論)に及ぼす影響について比較検討する。 まず、共通点(1)は、全体の概略に関するもの、同(2)は、上部挿入杆の縦幅(大きさ)とその上端位置、及び、下部挿入杆の上端位置に関するもの、同(3)は、正面視における挿入杆上・下両端の具体的構成態様に関するものであり、それぞれは一定程度共通感を生じさせ、類否判断に影響を及ぼすものではあるが、A.この中には本件登録意匠において大きく、かつ、類否判断上の重要な部位を占める2つの挿入杆の基本的構成態様を形成する要素が、後述するように全て含まれているものではなく、しかも、下部側挿入杆の連結位置、及び、縦幅(大きさ)も含まれていないこと、B.本件登録意匠出願前、特許庁が発行した特開2001-327394号公報には、上部挿入杆の連結位置(上下が逆転している)点を除き、概ね(1)ないし(3)の構成態様を表した意匠が記載されており、一方、上・下両挿入杆を有するこの種意匠の分野において、上部挿入杆の連結部をその下端付近に設けたものは、例えば甲第1号証に記載された意匠のように普通に見られるものであること、これらA.及びB.の理由から、差異点を検討せず、これらの共通点のみによって類否判断の結論を下すことはできないものと認められる。 これに対して、(ア)の差異点について、その部分はカーテン挿入時において着目される部位であって、しかも、挿入後における露出部分として顕著な差異を生じさせるものであり、上・下両挿入杆それぞれにおける基本的構成態様を形成する重要な部位における差異と認められる。 そして、上側挿入杆のみに限った場合には、設けられた位置、及び、大きさ(縦幅)が共通することから、見方によれば(ア)の差異点は意匠全体に対しては「具体的構成態様」における差異といえなくもないものではあるが、イ号意匠においてその近傍に設けられた(ウ)の「やや大きな側面視概略台形状の突起」との相まった視覚的効果はやや顕著なものと認められる。 下部挿入杆に関して、(ア)の差異点は、(イ)における主杆基部に対する連結位置と、顕著な大きさ(縦幅)の差異と複合し、意匠全体、すなわち、本件登録意匠の実線で表された部分と、これに対応するイ号意匠の部分の相互関係においては、「基本的構成態様」に関する差異を形成するまでに至っているものと認められる。なお、カーテン挿入後においては、その挿入部下方に表れる挿入杆の露出部分のみならず、主杆下端位置に顕著な差異を生じさせるものである。 このように、両意匠は、前記(1)ないし(3)の共通点に係る構成態様が相まって生じさせる効果を総合しても、類否判断に及ぼす影響をさほど大きいものとすることはできず、(ア)ないし(ウ)の差異点に係る構成態様は、それぞれの意匠において複合して生じさせる相まった視覚的効果が顕著であり、別異の視覚的まとまりを生じさせるのに十分なものであるから、他の差異点を検討するまでもなく、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しないとせざるを得ないものである。 なお、請求人は、A.本件登録意匠の要部は、「(1)下部挿入杆が、後部壁と同幅で、この幅の1/3弱の厚さを有する板状である点、(2)下部挿入杆が、上方に向かって後部壁の1/2弱の高さ位置まで後部壁とほぼ平行に伸びている点、(3)下部挿入杆の上端が左側面視において円弧状に終結している点、(4)上部挿入杆が、後部壁と同幅で、この幅の1/3弱の厚さを有する板状である点、(5)上部挿入杆が、後部壁の上端近くの高さ位置まで後部壁とほぼ平行に伸びている点、(6)上部挿入杆の上端が左側面視において円弧状に終結している点」にあり、また、B.「下部挿入杆が、後部壁の下端から延出しているか、下端から上方へ間隔を置いた位置から延出しているか、については、この種のカーテン吊り具において、適宜選択される徴差」であると主張する。しかしながら、A.の(1)ないし(6)の点について、前記のように特開2001-327394号公報に記載された意匠には、上部挿入杆の上下が逆転していることを除けば概ね表されており、B.の「延出」位置における差異点については、前記のとおり、下部挿入杆連結部付近の形状の差異と複合し、意匠全体の基本的構成態様に関する差異を形成するものと認められるから「徴差」とは言い難く、これら請求人の主張は、何れも採用することができない。 4.結び 以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2007-06-06 |
出願番号 | 意願2003-30227(D2003-30227) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZB
(L5)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須田 紳、吉田 英生 |
特許庁審判長 |
藤 正明 |
特許庁審判官 |
山崎 裕造 市村 節子 |
登録日 | 2004-06-11 |
登録番号 | 意匠登録第1212270号(D1212270) |
代理人 | 大塚 忠 |