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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) H2
管理番号 1162291 
判定請求番号 判定2006-60059
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2007-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2006-11-14 
確定日 2007-07-24 
意匠に係る物品 ゲーム機用コントローラ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1242153号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「ゲーム機用コントローラ」の意匠は、登録第1242153号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 1.請求の趣旨
本件は、イ号意匠写真ならびにその説明書に示す意匠(以下、イ号意匠という)が登録第1242153号意匠(以下、本件登録意匠という)及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める事案である。
2.請求の理由
本件判定請求人は、本件登録意匠の意匠権者であり、イ号意匠は、本件被請求人が最近販売した「ゲーム機用コントローラ」(以下、イ号物件という)の意匠であるが、イ号物件と本件登録意匠の実施品とが市場において需要者に混同される事態が発生し、請求人側に不測の損害が発生している。
よって、請求人としては、イ号意匠が本件登録意匠の範囲に属するか否かが重要な争点となると考え、本件判定請求に及んだ次第である。
3.請求人の主張
請求人は、本件登録意匠とイ号意匠について概ね次のとおり主張し、甲第1?3号証を提出している。
3.1 本件登録意匠の構成
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「ゲーム機用コントローラ」とするもので、その構成は下記のとおりである。
[1]基本的構成態様
(1)コントローラ本体は、やや横長な箱状体であって平面視、上面中央部が小さな弧状を呈し、その中央部の両側が突出してなり、且つ底面視手前側は中央の凹状部を介して左右両側は円弧状(乳房型)に突出してなり、
(2)コントローラ本体の左右には平面視、本体よりその外周が一部突出するとともに段部を介して突設された略円形状の大なる操作部と該操作部の内側斜めに形成された略円形状の小なる操作部とによって操作部がコントローラ本体の平面に大きな占有率で一体形成されることにより操作部が本体上に大きな範囲で現出してなり、
(3)しかも該操作部の大なる操作部を根元部として前方に平面視やや外開き状の丸みのある肉太なアーム部が左右対称に突出形成されてなり、
(4)該アーム部の外側面にはノンスリップ用の突状面が左右対称で且つ平面視縦長で、正面視両側全面に膨出形成されてなり、
(5)前記アーム部とコントローラ本体とは、側面視本体後方が略V字状部を呈し、その手前側にアーム部が底面方向へ湾曲状に大きく下向き傾斜し、且つ前記突状面が大きく横向き姿勢で形成されてなる。
[2]具体的構成態様
(6)前記大なる操作部の右側には段部上に小円形状の操作ボタンが4個千鳥状に突出配置され、左側には十字状の操作ボタンが段部上に突出配置されてなり、しかも前記小なる操作部からはきのこ形の操作ボタンが夫々突出してなり、(7)コントローラ本体の背面側で前記本体の上面側に突出形成された突部には背面視略四角形状の操作用補助ボタンが上下2個左右対称的に突設してなり、
(8)コントローラ本体の平面視左右両側の操作部間の上方に幅広な空間部には四角形状や三角形状の複数の小なる操作用補助ボタンが設けられてなり、
(9)平面視、右側操作部の4個の操作ボタンの手前外周には3個の円形リング模様が、左側操作部の十字状の操作ボタンの手前外周には前記リング模様と対称的に円形リング模様が3個配されてなるとともに十字状の操作ボタンの各片間には略L字状の模様が形成されてなる、
(10)前記アーム部は平面視、縦長に1本の細い線状模様と該線状模様の内側の上方に2本の細長長方形状の模様と下方に円形及び楕円形状の模様とを配してなり、
(11)さらにアーム部の外側面略全面には側面視、略楕円形状のノンスリップ用の突状面が形成され、且つ該突状面は多数の小突起群からなる外周突状体とその内側に形成された小突起群からなる内周突状体とによって形成されてなり、且つ両突状体間には楕円形のリブが形成されてなる。
[3]本件登録意匠の創作ポイント
(1)公知意匠参酌
本件登録意匠に係る「ゲーム機用コントローラ」としては、甲第3号証に示すように、その基本形態は概略、コントローラ本体と該コントローラ本体の左右に対称的に設けた操作部と該操作部から左右に略ハの字状に突出した左右対称形状のアーム部とからなるものであることが知られている。しかも、これらのコントローラは前記基本形態をベースとして各社は各種形状にデザイン設計してなるものである。
(2)本件登録意匠の創作ポイント
(イ)本件請求人は前記公知形態のコントローラを前提として操作性に優れ、且つグリップが滑らない安定性を考慮しながら全体としてコンパクト且つ安定型で丸みのある重厚なデザインとして開発したものである。
(ロ)上記デザイン開発のコンセプトとして、コントローラ本体に対する操作部の大きさ、範囲及び形状を独自に創作することによりコントローラ本体をコンパクト化するとともに操作性の観点から操作部を本体に対して大きく現出した他、操作部を本体から段部を介して突設せしめたのである。
(ハ)さらに、アーム部を丸みのある肉太な形状にすることにより、コントローラ全体に重厚感を現出してなるものである。特に、側面視アーム部を大きく下向き湾曲状に傾斜させて突条面を全面裸出させてグリップ時の把持力を強化させたものである。
3.2 イ号意匠の構成
イ号意匠は、本件被請求人が製造販売する物品「ゲーム機用コントローラ」に関するものである。
[1]基本的構成態様
(ア)コントローラ本体は、やや横長な箱状体であって平面視、上面中央部が小さな弧状を呈し、その中央部の両側が突出してなり、且つ底面視手前側は中央の凹状部を介して左右両側は円弧状(乳房型)に突出してなり、
(イ)コントローラ本体の左右には平面視、本体よりその外周が一部突出するとともに段部を介して突設された略円形状の大なる操作部と該操作部の内側斜めに形成された略円形状の小なる操作部とによって操作部がコントローラ本体の平面に大きな占有率で一体形成されることにより操作部が本体上に大きな範囲で現出してなり、
(ウ)しかも該操作部の大なる操作部を根元部として前方に平面視やや外開き状の丸みのある肉太なアーム部が左右対称に突出形成されてなり、
(エ)該アーム部の外側面にはノンスリップ用の突状面が左右対称で且つ平面視縦長で、正面視両側全面に膨出形成されてなり、
(オ)前記アーム部とコントローラ本体とは、側面視本体後方が略V字状部を呈しその手前側にアーム部が底面方向へ湾曲状に大きく下向き傾斜し、且つ前記突条面が大きく横向き姿勢で形成されてなる。
[2]具体的構成態様
(カ)前記大なる操作部の右側には段部上に小円形状の操作ボタンが4個千鳥状に突出配置され、左側には十字状の操作ボタンが段部上に突出配置されてなり、しかも前記小なる操作部からはキノコ形の操作ボタンが夫々突出してなり、
(キ)コントローラ本体の背面側で前記本体の上面両側に突出形成された突部には背面視略四角形状の操作用補助ボタンが上下2個左右対称的に突設してなり、
(ク)コントローラ本体の平面視左右両側の操作部間の上方に幅広な空間部には小円形状の複数の小なる操作用補助ボタンが設けられてなり、
(ケ)さらにアーム部の外側面略全面には側面視略楕円形状のノンスリップ用の突状面が形成され、且つ該突状面は側面視6条の縦リブによって形成されてなる。
3.3 本件登録意匠とイ号意匠の対比
[1]共通点
本件登録意匠とイ号意匠とは、前記のように意匠に係る物品が共通する他、その基本的構成態様である「(1)乃至(5)と(ア)乃至(オ)」において共通するものである。
さらに、具体的構成態様においても、「(6)と(カ)、(7)と(キ)」が夫々共通している。
[2」相違点
これに対し、両意匠は下記具体的構成態様において相違する。
(a)「(8)と(ク)」
本件登録意匠は、左右の操作部間の上方に幅広な空間部に略四角形状の操作用補助ボタンを上下に2個ずつ計4個と三角形状の操作用補助ボタン1個を配置してなるのに対し、イ号意匠においては該空間部に小円形状の操作用補助ボタンを上下2個ずつ計4個配してなる点相違する。
(b)「(9)」
本件登録意匠には、平面視左右の操作部の外円には対称的に円形リング模様が夫々3個配されてなるが、イ号意匠にはこのような模様が存在しない点相違する。
(c)「(10)」
本件登録意匠のアーム部には平面視、縦長に線状模様と細長長方形状模様と円形及び楕円形状の模様を配してなるが、イ号意匠にはこのような模様は存在しない。
(d)「(11)と(ケ)」
アーム部の外側面に形成されたノンスリップ用の突状面は、本件登録意匠においては多数の小突起群からなる外周突状体とその内側に楕円形のリブを介して小突起群からなる内周突状体によって形成されてなるのに対し、イ号意匠においては側面視6条の縦リブによって形成されてなる点相違する。
3.4 本件登録意匠とイ号意匠の類否
[1]共通点の評価
(1)本件登録意匠とイ号意匠とは、その基本的な構成態様「(1)乃至(5)と(ア)乃至(オ)」、すなわち、コントローラ本体をやや横長な箱状体に形成し、該本体の左右に段部を介して大なる操作部と小なる操作部とからなる操作部を斜め内向きに形成するとともに該操作部は本体の左右に平面視大きな占有率をもって一体形成され、しかも該操作部を根元部として前方にやや外開き状の肉太なアーム部を左右対称に突設してなり、さらに該アーム部の外側面には平面視縦長で、正面視両側全面にノンスリップ用の突状面を膨出形成してなり、且つアーム部は側面視本体後方の略V字状部を介して底面方向へ湾曲状に大きく下向き傾斜してなる態様は、両意匠の形態についての骨格的要素となるものであって、しかもこの種物品分野において前記のような本体形状並びにアーム部の形状及びアーム部と本体との連結形状は、他に見られず両意匠の形態上の特徴を表すものと認められるから、両意匠の類否判断を左右するほどの大きな要素ということができる。
(2)さらに、具体的な態様である操作部の操作ボタンの形状「(6)と(カ)」やコントローラ本体の背面側の操作ボタンの形状や数「(7)と(キ)」においても共通するため、より一層両意匠は類似するものと考える。
[2]相違点の評価
(1)これに対し、相違点(a)については、操作用補助ボタンの形状相違であって、しかもその形状が四角か円形かの相違に過ぎず、且つこれらのボタンは小形なるため、両意匠を全体観察すると格別特徴ある相違ではない。
また、相違点「(b)と(c)」については、本件登録意匠にあらわれた模様であって形態ではないため、模様の有無は微弱なものと言わざるを得ないものである。
(2)次に、アーム部の外側面に形成された突状面の具体的な形状相違(d)は、本件登録意匠のようにアーム部の外側面にグリップ時の手の平のスベリ防止としての機能形態として形成された突状面は、従来公知(特許庁意匠課公知資料番号第HB16007871号)であることを考慮すると、該突状面の存在自体は格別看者の注意を喚起するものではないため、前記具体的な形状相違は全体観察すると格別な差異ではない。特に両意匠はいずれも突状体によって形成されてなる点において共通している他、アーム部に対する突状面の大きさ、配置、範囲においていずれも共通するものである。
(3)さすれば、より一層アーム部の外側面としての形状としては看者に共通の審美感を与えるとともにその意匠的効果を共通にするものである。
[3]小結
(1)そうすると、両意匠において共通する基本的構成態様「(1)乃至(5)と(ア)乃至(オ)」並びに「(6)と(カ)」、「(7)と(キ)」との具体的な態様における共通点は、両意匠の類否判断を左右する重要な要素であるのに対し、前記相違点(a)乃至(d)はいずれも全体観察すると微弱であって、格別看者に別異の意匠としての印象を与えるほどのものではない。
さらに、両意匠は本体部における操作部の占有率の大きさやアームの形状や長さ及び太さ、さらには本体とアーム部との配置やプロポーション等から全体として看者に重厚でコンパクトな「ズングリムックリ型」をデザイン基調としたコントローラとしての共通の印象を与えるものである。
(2)さすれば、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものであるため、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。
4.被請求人の主張
当審は、被請求人に対して本件判定請求書の副本を送付(平成18年12月19日送達)し、30日の期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、該期間経過後も被請求人からの応答はない。
5.当審の判断
そこで、イ号意匠が本件登録意匠に類似するか否かについて以下検討する。
5.1 本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「ゲーム機用コントローラ」として、平成16年9月1日に出願され、平成17年4月22日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、願書及び願書添付の図面によれば、本件登録意匠は、該物品の形状及び模様の結合に関する創作物であって、その構成態様は同図面に記載されたとおりのものである。(別紙1参照)
5.2 イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出した「イ号意匠説明書」(別紙2参照)及び「イ号意匠写真」(別紙3参照)によれば、意匠に係る物品が「ゲーム機用コントローラ」であり、その構成態様は、「イ号意匠写真」に現されたとおりのものである。
5.3 本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号を対比すると、両者は、意匠に係る物品については「ゲーム機用コントローラ」である点で一致し、意匠の主たる構成態様については、次に示す共通点及び相違点が認められる。
なお、以下の認定、判断において、便宜上、背面方向を「後方」、正面方向を「前方」、平面方向を「上方」、底面方向を下方」、側面方向を「側方」と表現する。
[共通点]
(1)全体の基本的構成態様
筐体については、中央にやや横長で扁平な操作部を配置し、その左右に前方に向かって末広がりに突出する一対のグリップ部(請求人のいうアーム部)を配置して、筐体全体を顕著に丸みを帯びた略左右対称形に形成し、
操作部については、左右両側に大小各1個ずつの円形域を一組として、且つ大径の円形域を背面側の隅部に、小径の円形域を正面側の左右にそれぞれ位置づけて、両者を縁部が多少交わるようにリンクさせ、周囲に段差を設けて隣接域と区画した側方操作域を形成するとともに、該操作域を平面視V字状に配置することによって、中央に略逆三角形状の中央操作域を形成し、さらに、側方操作域における大小両円形域の各円弧状縁部から下方に向けて、左右両側面の中央部及び、正面のグリップ部寄り左右両隅部に、上下に貫通する円柱面状突出部を形成するとともに、両側面の下縁部を後方に向かって下降する片流れの弧状に形成することによって、操作部背面側の両隅部に側面視鉤爪状の突出部を形成し、背面の左右両側に、平面視略台形状に突出して同幅で上下に貫通する背面操作域を形成し、該操作域の間を平面視緩やかな円弧状に湾曲させて背面中央にケーブル引き出し部を配置し、
グリップ部については、上下幅が広く左右幅が狭い歪んだ扁平楕円球状(もしくは、膨らみを帯びたハンバーグ状)に形成して、前方にむかって多少しな垂れるように配置し、さらに外側に滑り止めパッドを装着している点。
(2)操作ボタンの形状及び配置
側方操作域における左の大径円形域の中心に十字キーを1個配置し、右の大径円形域の中央に4個の円形ボタンを菱形に配置し、左右の小径円形域の中心に大径のキノコ形ボタンを各1個ずつ配置し、中央操作域の中央に5個の操作ボタンを2個、2個、1個の順で正面方向に漸次収束するように3列に配置し、左右の背面操作域の上方に小径の矩形ボタンを、下方に下辺が円弧状に膨らんだ大径の矩形ボタンをそれぞれ配置している点。
(3)滑り止めパッドの形状及び配置
滑り止めパッドについて、側面視における輪郭形状を、下半部よりも上半部の方が多少緩やかなカーブを描く略「柿の種」状に形成し、グリップ部側面の大部分を覆うように装着している点。
(4)ネジ止め孔の配置
ネジ止め孔を操作部底面の周縁部に5箇所、左右グリップ部の底面先端付近に各1箇所、合計7箇所、略均等に分散させて左右対称的に設けている点。
[相違点]
(1)滑り止めパッドの模様
本件登録意匠は、滑り止めパッドの中央に長軸を傾斜させた楕円形線模様を形成し、該楕円形線模様の内側と滑り止めパッドの周縁部の2箇所に多数の微少突起を点線状に連ねて構成されるリング状模様を形成しているのに対し、イ号意匠は、パッド全域の上下方向に一定幅の凸条を等間隔に配置することにより、交互に凹凸を繰り返す縦縞模様を形成している点。
(2)側方操作域の形態
本件登録意匠は、共通点(1)に示した段差に加えて、側方操作域を構成する大小一組の円形域の共通接線に相当する部分にも段差を設けて隣接域と区画し、さらに両者が交わる部分の輪郭線の一部を除去して両者を融合させているのに対し、イ号意匠は、該共通接線に相当する部分に段差を設けておらず、各円形域が交わる部分について、小径円形域の輪郭形状を顕在化し、それに沿って僅かな段差を形成している点。
(3)操作ボタンの形状
本件登録意匠は、操作部の中央操作域における操作ボタンについて、後方のボタン列に大径の台形ボタンを、中間のボタン列に小径の台形ボタンを、前方に三角形ボタンをそれぞれ採用し、背面操作域の下方に位置する矩形ボタンの表面全体を平滑面としているのに対し、イ号意匠は、中央操作域における操作ボタンについて、後方及び中間のボタン列に同径の円形ボタンを、前方に楕円形ボタンをそれぞれ採用し、背面操作域の下方に位置する矩形ボタンの上辺部を庇状に多少突出させている点。
(4)表面模様
本件登録意匠は、操作部及びグリップ部の平面側に複数の小さな二重円模様及び長短数種類の筋模様を左右対称的に形成し、十字キーの周りに円弧状模様と短い筋模様をそれぞれ4個ずつ形成し、側方操作域の裏側に該当する操作部底面側に大小2種類の円形模様を形成しているのに対し、イ号意匠は、これらの模様を伏していない点。
5.4 判断
これらの共通点及び相違点について以下検討する。
先ず、共通点(1)に示す全体の基本的構成態様については、請求人が本件登録意匠の基本的構成態様として認定した前記3.1[1](1)?(5)及び、イ号意匠の基本的構成態様として認定した前記3.2[1](ア)?(オ)に相当する構成態様が含まれるものと認められるが、これらの構成態様が、前記3.1[3](1)において請求人が主張するとおり、甲第3号証に示すゲーム機用コントローラーのデザイン設計をする際に各社がベースとする基本形態即ち、当業者においては周知の形態であったとしても、各操作域の具体的な構成態様、グリップ部から操作部に至る側面視形状、グリップ部に操作部の丸みと呼応する顕著な丸みと膨らみをもたせた筐体のまとめ方等に、本件登録意匠を特徴付ける構成態様が認められ、且つ、周知の構成態様も含めて、共通点(1)に示す構成態様の総体が両意匠全体の骨格を構成し、支配的基調を形成していることが認められる。また、本件登録意匠の出願時点においては、この支配的基調が本件登録意匠固有のものであったことを否定する証拠は見あたらない。
つぎに、共通点(2)に示す操作ボタンの形状及び配置については、それがこの種物品においてありふれたものであり、共通点(3)に示す滑り止めパッドの形状及び配置については、相違点(1)に係る滑り止めパッドの模様における顕著な差異に希釈されることから、いずれも本件登録意匠を特徴付ける構成態様とは成し得ないものである。
また、共通点(4)に示すネジ止め孔の配置については、技術常識的且つありふれた配置構成であって、意匠の構成要素として特筆すべきものはない。
一方、相違点(1)の滑り止めパッドの模様の差異については、それが模様のみに着目した場合には顕著な差異であるといえるが、該模様を付した滑り止めパッドの形状及び配置態様が共通点(3)に示すように共通することで、その差異が希釈され、しかもイ号意匠に付された模様が滑り止め用の模様としては月並みな縦縞模様であって、ことさら需要者の注意を喚起するものでもないことから、全体的に見た場合には、その差異は、共通点(1)に示す基本的構成態様の総体が形成する支配的基調に抗する程の視覚効果をもたらすものではない。
つぎに、相違点(2)に係るイ号意匠の側方操作域の形態については、大径円形域を浸食するように小径円形域の輪郭形状を顕在化させた表現手法がこの種物品においてありふれたものであり、相違点(3)に係るイ号意匠の各操作ボタンの形状については、全て月並みな形状であり、背面操作域下方の矩形操作ボタン上辺部における庇状突出部も微細なものであって、いずれもイ号意匠を特徴付ける構成態様とは成し得ないものであることから、これらの差異は、共通点(1)に示す基本的構成態様の総体が形成する支配的基調に抗する程の視覚効果をもたらすものではない。
また、相違点(4)の表面模様の差異については、本件登録意匠の模様を付した部位に対応する部位を無模様とすることも、この種物品においては一般的な表現手法であることから、当該各部位を無模様としたイ号意匠の構成態様に特筆すべきものはない。
さらに、これらの相違点に係るイ号意匠の構成態様が相俟って表出する視覚効果を勘案しても、イ号意匠を全体的に特徴付ける構成態様を見出すことはできない。
以上を総括すると、両意匠は、意匠に係る物品が「ゲーム機用コントローラー」である点で一致し、意匠の主たる構成態様については、共通点(1)に示す基本的構成態様の総体が形成する支配的基調が、出願時点においては、本件登録意匠固有のものであり、しかもこの共通性が両意匠の相違点を圧倒するものということができるのに対し、イ号意匠には、この共通性に抗してイ号意匠を全体的に特徴付ける構成態様を見出すことができないことから、美感に訴求する視覚効果についても、両意匠は共通するものということができる。
6.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものといわざるをえないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2007-07-06 
出願番号 意願2004-26494(D2004-26494) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江塚 尚弘 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 木本 直美
岩井 芳紀
登録日 2005-04-22 
登録番号 意匠登録第1242153号(D1242153) 
代理人 野村 慎一 
代理人 薬丸 誠一 
代理人 藤本 昇 
代理人 中谷 寛昭 
代理人 岩田 徳哉 

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