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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) K3
管理番号 1165670 
判定請求番号 判定2007-600005
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2007-11-30 
種別 判定 
判定請求日 2007-01-29 
確定日 2007-09-25 
意匠に係る物品 バケット先端装着具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1069304号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真及びその説明書に示す「バケット先端装着具」の意匠は、登録第1069304号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
1.請求人は、「イ号写真(1)乃至(4)で表すイ号意匠ならびにその説明書に示す意匠は、登録第1069304号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし第4号証(枝番を含む)を提出した。
2.請求の理由
イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
本件登録意匠とイ号意匠の前記共通点及び差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し判断すると次の通りである。
(1)共通点
本件登録意匠とイ号意匠において共通する前記基本的構成態様の(A)については、それは両意匠の形態全体の骨格を成すものであり、そして、この骨格と、同じく共通する前記各部の具体的構成態様の(B)、(C)の各要素とがそれぞれ相まって、形態全体の意匠上の主要部を形成し、かつ、本件意匠に係る物品の意匠としての一定の明確なまとまりを形成しているから、このまとまりは、両意匠全体の基調を決定づけているものである。したがって、意匠全体として、これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて多大である。
特に、前記隠蔽板部を設けた点については、それが本件登録意匠の出願前には他にみられないものであって、本件登録意匠の最大の特徴点といえるところであるから、この隠蔽板部の存在自体、ならびに、それに係る前記基本的及び具体的構成態様上の共通点が類否に及ぼす影響力は、決定的といえるものである。このことから、イ号意匠の製品を用いてこの種の複数のバケット先端装着具が組み合わされセットされた使用時における形態、状態と、本件登録意匠の複数のバケット先端装着具を組み合わせてセットした形態、状態とは、ほぼ同一と看ることができる。
(2)差異点
前記差異点については、それは微弱な差異に止まるものであって、それが類否判断に及ぼす影響はわずかというべきものである。
すなわち、前記隠蔽板部の構成態様に係る設置部位の左右対称の差(隠蔽板部が正面の左右のいずれの側の歯板部に設けられているかの差)については、意匠全体としてみる場合においては、あくまでそれは左右対称の差で部分的な差異に止まり、全体の類否を左右するほどのものということはできず、また、それは、上記の(1)の共通点で述べた通りの決定的な影響力を持つといえる隠蔽板部の存在自体に係る大きな共通性の中に包摂されてしまう微弱な差異である。
また、本件登録意匠とイ号意匠においては、細かく観察すると細部での差もあるが、細部における差については、局部的な差異に過ぎず、それらはイ号意匠のみの格別な特徴点と評価できるほどのものでもないと考えられることから、これらも微弱な差異というべきものである。
したがって、以上のいずれも微弱な差異点を総合しても、本件登録意匠とイ号意匠の類否判断を左右するには至らないものと判断される。
(3)類否の判断
本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が同一で、形態において、前記共通する基本的構成態様と各部の具体的構成態様とが相まって形成するまとまりが両意匠全体の共通する基調を決定づけているとともに、前記隠蔽板の存在等の共通性が決定的であるのに対して、前記差異点はいずれも微弱なものであって類否を左右するに至らず、前記共通点が差異点を凌駕して類否判断を支配するというべきものである。
故に、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものであり、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。
第2.被請求人の答弁
1.被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として要旨以下のように主張した。
2.答弁の理由
(1)本件登録意匠とイ号意匠とは次の点で共通する(左右の概念はイ号意匠に従い、また判定請求書でいう左辺の歯板部、右辺の歯板部、底辺の歯板部を、それぞれ左側の歯板部、右側の歯板部、底側の歯板部と称した。)。
A.鞘状の被嵌部を中心において、同被嵌部の周囲からその左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け、前記被嵌部はその上辺部を山形にし、上部を開口した態様に形成したものとし、その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する連結具挿入用の縦長透孔を設け、かつ側面から看た状態で被嵌部は下方部分をすぼまり状のくさび形状に形成されており、左側の歯板部の横幅を右側の歯板部のそれよりやや広いものとし、左右の両歯板部の前後面に、本物品を横一列に各バケット爪に装着する際、隣同士の歯板部の一部を前後に互い違いに重ねて嵌めあわせるための、入り組んだ分割段差面を形成し、側面から看た状態で、下端縁部をやや先すぼまり状に形成している。
B.左側の歯板部はその上辺が前記被嵌部の上端より上方に張り出し、右側の歯板部はその上辺が左側の歯板部の上辺より上方に張り出すと共に、右側の歯板部の右辺は底側の歯板部の右辺よりも右方に張り出している。
C.被嵌部は、その縦長透孔の下縁周りが小台地状にやや盛り上げて形成されたものである。
(2)本件登録意匠とイ号意匠とは次の点で相違する。
a.本件登録意匠においては、右側の歯板部が略五角形状であり、その上辺が左側の歯板部の上辺に対し大きく上方に突出している。
これに対しイ号意匠においては、右側の歯板部が略長方形状であり、左側の歯板部の上辺に対する右側の歯板部の上方突出量は、小である。
b.イ号意匠においては、被嵌部と三方の底板部との間に明確な境界線があり、底側の底板部との境界線は半円形となり、左右の境界線は、正面視したとき、下方に向け漸次横幅が狭くなる略2本の直線となっている。これに対し本件登録意匠においては、正面視したとき、被嵌部と底側および右側の底板部との間に明確な境界線がなく、特に被嵌部と右側の底板部との両表面は一体的に連続しており、また被嵌部の横幅は上下に亘ってほぼ同一である(本件意匠登録公報の斜視図、正面図参照。)。
(3)上記共通点Aは、請求人も知ってのように、本件登録意匠の出願前に既に知られていた形態であり、また機能上からも要求される形態であって、格別な意匠創作上の工夫を要する点ではない。
従って、本件登録意匠の特徴部分の1つとしては、上記共通点Bが挙げられるが、請求人のいうように右側の歯板部の上外方の張り出し部分を「隠蔽板部」と称し、この「隠蔽板部」を設けた点については、本件出願前には他に見られないものである(確かに技術的効果が大であったことは認める。)ことを主要な理由として、意匠の類否を論ずることは妥当ではない。
上記共通点Bに示すように、右側の歯板部の上辺が左側の歯板部の上辺より上方に張り出している点で両意匠は共通しているが、その突出量の差は著しく相違しており、質的に異なるものである。すなわち相違点aに示すように、本件登録意匠では右側の歯板部が上方に大きく突出して、「隠蔽板部」の存在を大きくアピールしているのに対し、イ号意匠では右側の歯板部の上方への突出状態と、左側の歯板部の上方への突出状態とに大差がなく、一見すると両上端はほぼ同一突出位置にあるように見える位である。そして両意匠の右側の歯板部の形状が相違点aに示すように、一方は略五角形状、他方は略長方形状であることが、看者に著しく異なる外観の印象を与えている。
本件登録意匠の特徴部分の他の1つとして、上記共通点Cが挙げられるが、被嵌部の具体的形状につき両意匠を比較すると、この共通点Cよりも相違点bに示す相違の方が大である。従って被嵌部の看者に与える印象も、両意匠間で著しく異なっている。
上記に検討したように、相違点a、bの看者に与える印象は、共通点A、B、Cのそれを凌駕しており、両意匠は別異の美観を看者に抱かせるものであって、非類似の関係にある。
(4)従って、イ号意匠は本件登録意匠の類似範囲に属さないものである。よって答弁の趣旨どおりの判定を求める次第である。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類によれば、平成10年10月31日の出願に係り、平成12年2月4日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「バケット先端装着具」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、(A)やや横長長方形の板状体の上辺中央やや左寄りに約1/2弱幅の凹部を形成し、該部位を前後対称状に膨出させて上面視横長長方形状に開口する中空部を形成し、側面視下方に向けて先すぼまり状の嵌合部とし、その嵌合部の左側前面を縦方向に等幅で、一段薄肉状に落として連結部(以下、「左側連結板部」という。)とし、また、嵌合部の右側背面の側端部側を縦方向に左側連結板部とほぼ同幅の等幅で、一段薄肉状に落として連結部(以下、「右側連結板部」という。)としたものであり、さらに、嵌合部の前面側左辺側から左方及び上方へ張り出す概略縦長方形板状体(以下、「左上部板体」という。)を嵌合部と一体的に設け、左側連結板部との間に隙間を形成したものであり、(B)嵌合部について、その上辺を正・背面視山形に形成し、前後の傾斜面を平坦面とし、その先端部は、中央よりやや下で垂直面と繋がり、また、上端寄りにそれぞれ略縦長矩形状の透孔を設け、該透孔の下縁周りを側面視山形状にやや突出させ、(C)嵌合部の右側連結板部の横幅を左側連結板部の横幅の約2倍とし、(D)左上部板体について、嵌合部の左辺に沿って凹弧状のわずかな段差を形成して、傾斜面とし、その上部を垂直面として、上端を右側連結板部の上端よりやや大きく突出させ、上辺の幅を右側連結板部の幅とほぼ同じとし、左辺を嵌合部左上端の位置から下方へ漸次幅狭とし、下端側に背面側の左側連結板部の幅とほぼ同幅の矩形部を形成して、下端の位置をほぼ嵌合部先端とし、さらに、子細にみると、(E)右側連結板部の前面右下部及び左側連結板部の背面下部について、内側2辺を傾斜面とする縦長長方形状の肉厚部を形成し、(F)下端縁部をやや先すぼまり状に形成したものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出したイ号写真及びイ号意匠の説明書によれば、意匠に係る物品を「バケット先端装着具」とし、その形態については、次のとおりとしたものである(別紙第2参照)。
すなわち、(A)やや横長長方形の板状体の上辺中央やや右寄りに約1/2弱幅の凹部を形成し、該部位を前後対称状に膨出させて上面視横長長方形状に開口する中空部を形成し、側面視下方に向けて先すぼまり状の嵌合部とし、その嵌合部の右側前面を縦方向に等幅で、一段薄肉状に落として連結部(以下、「右側連結板部」という。)とし、また、嵌合部の左側背面を側端部側を縦方向に右側連結板部とほぼ同幅の等幅で、一段薄肉状に落として連結部(以下、「左側連結板部」という。)としたものであり、さらに、嵌合部の前面側右辺側から右方及び上方へ張り出す概略縦長方形板状体(以下、「右上部板体」という。)を嵌合部と一体的に設け、右側連結板部との間に隙間を形成したものであり、(B)嵌合部について、その上辺を正・背面視山形に形成し、前後の傾斜面を横方向の緩やかな弧面とし、その先端部は、中央よりやや下で正・背面視凸弧状の段差を形成して垂直面と繋がり、嵌合部全体として正・背面視U字形を呈するものであり、また、上端寄りにそれぞれ略縦長矩形状の透孔を設け、該透孔の下縁周りを側面視山形状にやや突出させ、(C)嵌合部の左側連結板部の横幅を右側連結板部の横幅の約2倍とし、(D)右上部板体について、嵌合部右辺のやや内側からわずかに前方へ突出して設け、上端を左側連結板部の上端よりわずかに突出させ、上辺の幅を左側連結板部の幅とほぼ同じとし、下端を嵌合部の凸弧状先端よりやや上の位置とし、左上部側を階段状に2段切り欠き、板体縦中央よりやや下方を右側連結板部側へ向かう傾斜面とし、さらに、子細にみると、(E)左側連結板部の前面左下部及び右側連結板部の背面下部について、内側2辺を傾斜面とする縦長長方形状の肉厚部を形成し、(F)下端縁部をやや先すぼまり状に形成したものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠との比較
(1)意匠に係る物品については、両意匠ともにショベルカー等のバケットの爪に同形同大の単位板を複数個横一列に連結して、装着してなる土均し具として用いられる一個の単位板であるから、共通している。
(2)形態については、主として以下の点に共通点及び差異点が認められる。
なお、両意匠を比較するにあたって、本件登録意匠とイ号意匠は、左右の連結部の態様が左右逆に構成されているが、この種物品において、両態様共に一般的な態様であるから、単に左右逆の構成については、イ号意匠を本件登録意匠と同じ位置に左右対称で置き換えて比較する。
すなわち、両意匠の共通点として、
(A)やや横長長方形の板状体の上辺中央やや左寄りに約1/2弱幅の凹部を形成し、該部位を前後対称状に膨出させて上面視横長長方形状に開口する中空部を形成し、側面視下方に向けて先すぼまり状の嵌合部とし、その嵌合部の左側前面を縦方向に等幅で、一段薄肉状に落として左側連結板部とし、また、嵌合部の右側背面の側端部側を縦方向に左側連結板部とほぼ同幅の等幅で、一段薄肉状に落として右側連結板部としたものであり、さらに、嵌合部の前面側左辺側から左方及び上方へ張り出す概略縦長方形の左上部板体を嵌合部と一体的に設け、左側連結板部との間に隙間を形成した点、
(B)嵌合部について、その上辺を正・背面視山形に形成し、その先端部は中央よりやや下で垂直面に繋がり、また、上端寄りにそれぞれ略縦長矩形状の透孔を設け、該透孔の下縁周りを側面視山形状にやや突出させた点、
(C)嵌合部の右側連結板部の横幅について、左側連結板部の横幅の約2倍とした点、
(D)左上部板体について、上辺の幅を右側連結板部の幅とほぼ同じとし、上部側を垂直面とし、下部側を傾斜面とした点、
(E)右側連結板部の前面右下部及び左側連結板部の背面下部について、内側2辺を傾斜面とする縦長長方形状の肉厚部を形成した点、
(F)下端縁部をやや先すぼまり状に形成した点が認められる。
一方、差異点として、
(ア)嵌合部の形状について、本件登録意匠は、前後の傾斜面を平坦面とし、その先端部は垂直面と段差を形成せず、繋がっているのに対して、イ号意匠は、前後の傾斜面を横方向の緩やかな弧面とし、その先端部は正・背面視凸弧状の段差を形成して垂直面と繋がり、嵌合部全体として正・背面視U字形を呈するものとした点、
(イ)左上部板体の嵌合部との接続態様について、本件登録意匠は、嵌合部の左辺に沿って凹弧状のわずかな段差を形成して、傾斜面とし、その上部を垂直面として、上端を右側連結板の上端よりやや大きく突出させ、下端の位置をほぼ嵌合部先端としているのに対して、イ号意匠は、嵌合部右辺のやや内側からわずかに前方へ突出して設け、上端を右側連結板部の上端よりわずかに突出させ、下端を嵌合部の凸弧状先端よりやや上の位置とし、板体縦中央よりやや下方を左側連結板部側へ向かう傾斜面としている点、
(ウ)左上部板体の正面視形状について、本件登録意匠は、左辺を嵌合部左上端の位置から下方へ漸次幅狭とし、下端側に背面側の左側連結板部の幅とほぼ同幅の矩形部を形成しているのに対して、イ号意匠は、右上部側を階段状に2段切り欠いている点が認められる。
4.両意匠の類否判断
そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
(1)まず、共通点(A)の態様は、形態全体に係るところであり、骨格的な態様であるが、この種物品において、両意匠の共通する左上部板体の具体的な形状及び嵌合部との接続態様とは異なるが、嵌合部から左方へ張り出す縦長長方形状の板体を有し、その余をほぼ同様の態様とするものが、本件登録意匠の出願前に特許庁が発行(発行日:平成12年1月24日)した意匠公報に掲載された意匠登録第1058368号のバケット先端装着具の意匠(以下、「公知意匠」という。別紙第3参照)に見受けられることから、左上部板体の、上方へ張り出す態様に一定の特徴があるといえるが、その余の態様は、格別高く評価することができないものである。
また、左上部板体が上方へ張り出している態様に一定の特徴があるとしても、その態様を具体的に見ると、差異点(イ)で認定したとおり、本件登録意匠は、やや大きく突出させているのに対して、イ号意匠は、わずかに突出させている点で異なり、特にイ号意匠は、その突出の程度がわずかなものであるから、本件登録意匠と比べて突出の視覚的効果が弱いものとなり、左上部板体の上方へ張り出す態様もそれのみでは高く評価することができない。
次に、具体的な態様における共通点(B)ないし(F)についても、
以下の点を除き、上記公知意匠に見受けられる。
(B)嵌合部の上端寄りの透孔の下縁周りを側面視山形状にやや突出させた点。
(C)右側連結板部の横幅を左側連結板の横幅の約2倍とした点。
(D)左上部板体の上部側を垂直面とし、下部側を傾斜面とした点。
(E)左側連結板部の背面下部に内側を傾斜面とする縦長長方形状の肉厚部を形成した点。
そして、上記(B)ないし(E)の共通点は、上記公知意匠と比較して、いずれも形態全体からみれば、部分的なものか、あるいは、格別目立つほどのものではないから、これらの態様も格別高く評価することができないものである。
そうすると、共通点(A)ないし(F)の態様は、いずれも類否判断に及ぼす影響は小さいものといわざるを得ない。
(2)一方、両意匠の差異点について、まず、左右の連結部の態様が左右逆に構成されている点の差異については、両意匠を比較するにあたって前述したように、この種物品において、両態様ともに一般的な態様であるから、この差異は、意匠上格別評価することができず、類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
次に、差異点(ア)ないし(ウ)は、嵌合部の正面視形状及び左上部板体の形状及び嵌合部との接続態様における差異であり、嵌合部及び左上部板体は、主として前面側で、全体に占める割合も大きいことから、看者の注意を引く部分であり、そして、それらの態様がいずれも大きく異なり、さらに、それらの態様が相まって両意匠に別異の印象を与えるものであるから、類否判断に及ぼす影響は大きいものといわざるを得ない。
(3)以上を総合すると、両意匠の共通するとした基本的構成態様(A)ないし(F)は、いずれも類否判断に及ぼす影響は小さいものであり、それらのまとまりは、一定の共通感を生じさせるものとしても、嵌合部の形状及びその左上部板体の形状及び嵌合部との接続態様における差異点の類否判断に及ぼす影響は大きいものであり、とりわけこれらの差異点が相まって形成する態様は、看者に別異の印象を与えるものといわざるを得ない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態において、形態全体としてみた場合、前記の類否判断に及ぼす影響が大きい差異点(ア)ないし差異点(ウ)が、前記の共通する態様のまとまりを凌駕するものであり、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものということができない。
5.むすび
以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2007-09-11 
出願番号 意願平10-31716 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (K3)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2000-02-04 
登録番号 意匠登録第1069304号(D1069304) 
代理人 石原 勝 
代理人 下山 冨士男 

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