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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) K1 |
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管理番号 | 1165672 |
判定請求番号 | 判定2007-600021 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2007-02-28 |
確定日 | 2007-10-06 |
意匠に係る物品 | モンキレンチ |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1134130号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面に示す意匠は、登録第1134130号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
第1 請求人の申し立ておよび請求の理由 【請求の趣旨】 請求人は、イ号図面に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、意匠登録第1134130号「モンキレンチ」(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1?9号証を提出した。 【請求の理由】 1.判定請求の必要性 請求人は、本件登録意匠の意匠権者であり、且つ、イ号意匠に係るモンキレンチ(以下、「イ号製品」という。)を製造・販売している。したがって、イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かが重要である。 2.本件登録意匠 本件登録意匠に係る物品は「モンキレンチ」であり、その形態は、本件公報のとおりであって、基本的構成態様として、(a)握柄の左端にC字状の頭部を設け、(b)C字状の頭部を固定アゴ及びナットを挟持するための可動アゴで構成し、(c)C字状の頭部の右方寄りに回動ねじを設け、具体的構成態様として、(d)握柄の右端寄りから頭部の方形窓孔までの間に周囲を残して肉薄部を形成し、(e)肉薄部の右端寄りに長窓孔を設け、(f)握柄の肉薄部の外の右端寄りに丸窓孔を2つ設け、(g)C字状の頭部の右方寄りに形成した方形窓孔に回動ネジを設け、(h)可動アゴの基部に三角形状の肉薄部を形成し、(i)頭部が回動ネジの左側部を境界に握柄側に下り傾斜し、そして、(j)可動アゴの基端に回動ネジと歯合し固定アゴから突出するラック歯を設けている。このラック歯は、可動アゴを固定アゴに最大に近づけた場合、可動アゴが固定アゴに当接せず、固定アゴの上側部から僅かに突出し、また、可動アゴを固定アゴから最大に遠ざけた場合、固定アゴの下側部から僅かに突出するように構成したものである。 3.イ号意匠 イ号意匠に係る物品は「モンキレンチ」であり、その形態は、イ号図面のとおりであって、握柄の肉薄部の外の右端寄りに丸窓孔を1つ設けている点のほかは、本件登録意匠の前記構成態様(a)?(e)および(g)?(j)と共通している。 4.本件登録意匠とイ号意匠の対比 本件登録意匠とイ号意匠は、ともに意匠に係る物品が同一であり、形態については、握柄の端部に設けた丸窓孔の数が異なる点(1つか2つか)でのみ相違し、その余は共通する。すなわち、本件登録意匠とイ号意匠は、「最大開口状態においてラック歯が大きく突出せず、最小開口状態において両アゴが完全に閉じない」という本件登録意匠の要部において共通することは勿論、その余の点でも共通し、相違は些細な丸窓孔の数のみである。 したがって、両意匠は、全体として、要部も含め殆どが共通し、美感が共通するから類似する。 第2 当審の判断 1.判定請求の必要性について 請求人は、甲第1?第2号証に示すとおり、本件登録意匠の意匠権者であり、一方、甲第8?第9号証に示すとおり、イ号意匠に係るイ号製品を製造・販売している。 したがって、請求人による本件判定請求については理由があると認められる。 2.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成13年1月24日に意匠登録出願され、同年12月21日に、意匠権が設定された意匠登録第1134130号の意匠であって、出願書類の記載によれば、意匠に係る物品を「モンキレンチ」とし、その形態は、願書および願書に添付した図面に記載したとおりのものである。(この審決書に添付した図面第1参照。) 3.イ号意匠 イ号意匠は、本件判定請求書に添付されたイ号図面に記載された意匠であって、意匠に係る物品を「モンキレンチ」 とし、その形態は、イ号図面に記載したとおりのものである。(この審決書に添付した図面第2参照。) 4.本件登録意匠とイ号意匠の対比 4-1.意匠に係る物品について 本件登録意匠とイ号意匠は、いずれもモンキレンチに係るものであるから、両意匠は、意匠に係る物品が共通する。 4-2.形態について なお、本件登録意匠およびイ号意匠の図面上の向きにもとづいてそれぞれの形態を認定する。 先ず、共通点として、(イ)全体は、縦長の扁平な握り柄の上部を左右に拡張し、右側に突出した部分を固定アゴとし、固定アゴの左側に開閉自在に移動する可動アゴを設けて最大開口状態を略「C」字形状とする頭部を形成した態様が認められ、その具体的な態様について、(ロ)頭部は、固定アゴと可動アゴとの間が斜め左上方に開口し、両アゴの向かい合う内側部分を互いに平行の略直線状とし、両アゴの外側部分をいずれも弧状にそれぞれ形成し、頭部下方の可動アゴ寄りに方形窓孔を形成して可動アゴを開閉操作する回動ネジを設け、両アゴの上端から方形窓孔に向かって次第に肉厚に形成している点、(ハ)固定アゴの内側の角部分を斜状に形成している点、(ニ)可動アゴの内側の基端に三角形状の肉薄部を形成している点、(ホ)可動アゴを操作した態様において、完全に両アゴが閉じないよう最小口開き領域を犠牲にすることにより、最大開口状態において可動アゴのラック歯後端を突起状に出っ張らせない構成態様としている点、(ヘ)握り柄は、頭部寄りから下方へ次第にわずかに広幅とし、下端を角丸状に形成している点、(ト)頭部の方形窓孔の下側から柄尻寄りまでをその周囲よりも肉薄に形成している(以下、「肉薄部」という。)点、(チ)肉薄部の柄尻寄りに縦長略長円形孔を設けている点、(リ)肉薄部の下側から握り柄の下端までの柄尻部に円形孔を設けている点が認められる。そして、本件登録意匠およびイ号意匠に係るモンキレンチの使用態様を考察すると、(ヌ)本件登録意匠に係るモンキレンチは、完全に口が閉じないレンチであり、最小口開き領域を犠牲にすることにより、最大開口状態において、「あご」のラック歯後端を突起状に出っ張らせること無く、コンパクトな頭部外形を達成したものであるとし、一方、イ号意匠に係るモンキレンチは、甲第8号証(請求人発行のカタログ「エコワイド」の裏面頁「TOP薄型軽量ワイドレンチエコワイド」)に、製品番号「HY-30」と表示して掲載され、用途・特長の説明として、「アゴのでっぱりの無いコンパクトな頭部」および「エコワイドはコンパクトさを追及しており、口が最後まで閉じません。」と記載されているものであり、また、甲第9号証(2001年8月28日発行の「3条新聞」第1頁)に、「トップ工業のエコワイドは薄くて軽く、(中略)アゴの出っ張り部分もない(以下省略)」と記載し、「DIY協会賞を受賞したトップ工業のエコワイド」と表示した写真版に、請求人の実施する前記「HY-30」と同型のモンキレンチが掲載されていることから、本件登録意匠とイ号意匠は、頭部のアゴの開閉にともなう態様においても共通していると認められる。 一方、差異点として、(1)柄尻部の円形孔について、本件登録意匠は、長さ方向縦2か所に設けているのに対し、イ号意匠は、1か所設けている点および、(2)柄尻部の縦の長さについて、本件登録意匠はイ号意匠よりもやや長い点が認められる。 5.本件登録意匠とイ号意匠の類否判断 以上の共通点および差異点を総合し、意匠全体として両意匠が類似するか否かについて考察すると、本件登録意匠とイ号意匠の形態については、前記認定のとおり、差異点(1)および(2)にかかる部分の形態のほかはすべて共通している。 したがって、両意匠は、前記共通点(イ)のとおり、形態全体の骨格的態様および、共通点(ロ)?(リ)のとおり、形態各部の具体的な態様が共通し、そして、両意匠に係るモンキレンチの使用態様を考察すると、共通点(ヌ)のとおり、頭部の可動アゴを操作した場合の態様およびその形態上の特徴が共通しているから、これら共通点に係る態様が相乗した意匠的な効果は、両意匠の類否判断を左右するものである。 これに対し、前記差異点を検討すると、差異点(1)については、この種物品分野において、軽量化若しくは利便性向上等のために、握り柄の複数箇所に孔を設けることは普通に行われ、本件登録意匠のように、柄尻部の長さ方向に円形孔を複数設けたものは、例えば、日本国特許庁発行の公開特許公報に記載された特開平10-217139号の図1?2および図4?6に示すモンキレンチの意匠(この審決書に添付した図面第3参照。)が見受けられるから、本件登録意匠のみに格別新規の態様とはいえない。一方、イ号意匠のように、モンキレンチの柄尻部に円形孔を1か所のみ設けたものは、例を挙げるまでもなく多数見受けられすでにありふれ態様である。そうすると、柄尻寄りの限られた部分についてのありふれた態様の差異にすぎず、その差異が両意匠の形態全体に及ぼす影響は軽微なものにとどまるから、両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。そして、差異点(2)については、本件登録意匠の柄尻部がイ号意匠のものよりもよりもやや長いのは、長さ方向に円形孔を1か所から2か所設けたことに伴い必然的に生じる態様にすぎず、また、限られた部分の態様についての差異でもあるから、両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 したがって、本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても、差異点よりも共通点にかかる態様が相乗した意匠的な効果のほうが両意匠の類似性についての判断に与える影響が大きいと言えるから、両意匠は、全体として類似するものと言うほかない。 6.むすび 以上のとおりであるから、イ号意匠は、意匠登録第1134130号の意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属する。 よって結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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判定日 | 2007-09-21 |
出願番号 | 意願2001-4675(D2001-4675) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(K1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 江塚 尚弘 |
特許庁審判長 |
梅澤 修 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 鍋田 和宣 |
登録日 | 2001-12-21 |
登録番号 | 意匠登録第1134130号(D1134130) |
代理人 | 吉井 雅栄 |
代理人 | 吉井 剛 |