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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) F2 |
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管理番号 | 1174170 |
判定請求番号 | 判定2007-600055 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2007-08-14 |
確定日 | 2008-03-03 |
意匠に係る物品 | ルースリーフ綴じ具 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1033214号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「ルースリーフ綴じ具」の意匠は、登録第1033214号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
第1. 請求の趣旨及び理由 判定請求人(以下、請求人という。)は、「イ号意匠ならびにその説明に示す意匠は、登録第1033214号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 なお、本件判定請求は、被請求人が存在しないものであり、その理由として、請求人は、イ号意匠のルースリーフ綴じ具(イ号物件)の製造及び販売を計画しており、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属すると信じるが、念のため判定を求めるとしている。 その理由は、概ね次のとおりである。 1.本件登録意匠の説明 本件登録意匠は、意匠に係る物品を「ルースリーフ綴じ具」とし、その形態の要旨を、次のとおりとする。 すなわち、 i) 基本的な構成態様は、上面長手方向に凹部を有する固定板と、固定板の該凹部上に重ねられた可動板とによる二重板構成の略細長矩形状基部と、該基部上面に長手方向(以後、リング列設方向を「長手方向」、これと直交する方向を「幅方向」という。)一定間隔で多数列設された略半円形リング部と、固定板の下側に長手方向にスライド移動可能に設けられたリンク板とからなり、リング開状態では、基部上面に固定板と可動板を分割する長手方向全長に延びる境界線が表れ、この境界線において、平面視で上方に位置する固定板と、同下方に位置する可動板とが基部上面で互いに面一状に接し、その基部上面の幅方向両縁部を基点に略半円形状リングが形成され、リンク板の右端部は基部右端に接し、リンク板をスライド移動させるための摘みとしての略板状突起が、リンク板右端部中央に上方へ突出状に表され、リング開状態では、リンク板はスライド移動して右方に引き出され、固定板と共に基部上面を構成していた可動板が、接していた固定板から離間し、幅方向に平行スライドして拡幅し、可動板が収まっていた固定板上に凹部が現れると共に、略半円形リングが幅方向に二分割され、各対応するリング半体同士間に隙間が生じ、固定板と可動板のそれぞれにリング半体が表される、としたものである。 ii)具体的な構成態様は、 リンク板について、右端部中央の略板状突起は、リング閉状態の基部と同幅及び厚さの上面視略縦長矩形状の摘み基端部上に形成し、該略板状突起の突出高さをリングの突出高さの約半分程度とし、その幅を基部幅よりも僅かに幅狭とし、さらに、該板状突起の基部側表面は僅かに凹面状に、反対の外側表面を僅かに凸球面状とし、リンク板の本体形状について、底面視で、幅方向の上方側に長手方向への長い延在部を設け、該延在部下辺に台形状突出部を二つ形成し、 リングについて、リングの略半円形は、真円の半体の両端(根元部)を平行にわずかに延長させた形状とし、その数を全体で26体とし、リング開状態のリング半体は、固定板側の半リング体端部に微小突起が現れ(他方の半リング端にはリング閉時に微小突起を受け入れる微小凹部がある)、 リング閉状態について、基部幅に占める固定板と可動板の構成比率を約1:3とし、同長手方向における長さは同じで、共に帯状の横長長方形状とし、基部上面の左右両端部をリングを設けない余地部とし、該部を両端部へ向かう下がり傾斜面状とし、左端部平面視形状をごく緩やかな弧状とし、基部上面の長手方向に3個の平面視二重丸状円孔を等間隔に設け、 リング開状態について、可動板は下方に拡幅され、可動板が拡幅した後の固定板上に、長手方向全長に伸びる凹部が現れ、該凹部上に3個の小円孔と各々同形状の縦長区画部3個と短い横長区画部4個が現れ、3個の小円孔は、その一つが基部の長手方向路中央に、他の二つが基部の長手方向左右両端付近にそれぞれ配置され、3個の縦長区画部は平面視で長手方向間隔が幅方向上方から下方へと次第にわずかに縮小する形状であり、また、3個の縦長区画部のうちの中央の一つ(中央縦長区画部)は、基部中央の上記小円孔の付近左方に配置され、他の二つの縦長区画部は、中央縦長区画部から略等間隔で基部長手方向左右で、左右の小円孔位置よりも中央側に配置され、左方の小円孔と左方の縦長区画部間の間隔は、右方の小円孔と右方の縦長区画部間の間隔よりも小さく、右方に引き出されたリンク板本体の突出長さはリング間のピッチ幅の約2、3個分で、基都側に長円を割ったような開口部が現れる、としたものである。 4.イ号意匠の説明 イ号意匠は、意匠に係る物品を「ルースリーフ綴じ具」とする。 5.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 i) 両意匠の共通点 a)両意匠は、意匠に係る物品が「ルースリーブ綴じ具」で一致している。 b)両意匠は、基本的な構成態様が共通している。 c) 両意匠は、具体的な構成態様において、次項 ii) 以外の点は、共通している。 ii)両意匠の差異点 a)イ号意匠には略細長矩形状基部の右端部、すなわち固定板右端部及び可動板右端部に円弧状切欠きが形成されているのに対し、このような切欠きは本件登録意匠には存在しない。 b) リンク板右端部にある摘みとしての略板状突起の高さが、本件登録意匠では、リングの突出高さの約半分程度であるのに対し、イ号意匠では、リングの突出高さの半分より若干低い程度で、本件登録意匠の摘みより若干低くなる。 c)リング開状態において、固定板上の長手方向に伸びる凹部に現れる縦長区画部が本件登録意匠では3個であるのに対し、イ号意匠では5個である。 d)本件登録意匠において、右側面拡大図(及び右側面図)に見られるように、上記突起の右側面(右側面から見た正面)に、突起外郭線の内側に突起外郭線とほぼ平行で突起とその基端部に連続する、矩形で上辺の両端の角が丸くされた線が見えるのに対し、このような線はイ号意匠にはない。 6.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 i) 本件登録意匠の要部 この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、リング部を閉じた状態の底面を除く全体形状、特に、新規な形態に係る摘み部を有するリンク板を、基部に組み合わせて表したところにあると言える。 ii)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察 そこで、本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、 a)両意匠は、上述したように基本的な構成態様においてほぼ共通しており、特にリンク板右端部の摘みの形状の共通性は、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。 b)上記差異点 a) は、イ号意匠がその基部右端部にありふれた形態である円弧状切欠きを施したにすぎず、類比判断に及ぼす影響は微弱である。 c) 上記差異点 b) は、摘みの高さが、摘みの形状に比べ、目立たない差異であるため、類比判断を左右するものではない。 d) 上記差異点 c) について、イ号意匠における基部長手方向平面視最も左右の2個の縦長区画部を除く3個の縦長区画部は、本件登録意匠と位置及び形状が共通しており、残りの 2個の縦長区画部は上記共通の3個の縦長区画部に比べ長手方向間隔が狭く、縦長区画部の差異よりも共通性が圧倒的に目立つ。しかしながら、そもそも、リング開状態は、取引者、需要者の注意をそれほど惹かず、類比判断に及ぼす影響は小さい。 e) 上記差異点 d) について、かかる突起内側の線は細線であり、実際上類比判断に与える影響は少ない。 以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏まっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は、その結論を左右するまでには至らないものであり、したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 第2.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成9年5月2日に出願され(意願平9-53095号)、平成10年12月11日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1033214号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「ルースリーフ綴じ具」とした意匠であって、その形態を願書及び同図面記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。 2.イ号意匠 イ号意匠は、「イ号図面」(甲第2号証)に示された「ルースリーフ綴じ具」の意匠であって、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙第2参照)。 3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討 両意匠を比較すると、意匠に係る物品が共に「ルースリーフ綴じ具」であるから共通し、その形態については、以下の共通点及び差異点が認められる。 まず、共通点として、両意匠は、上面長手方向(以下、リング列設方向を「長手方向」、これと直交する方向を「幅方向」という。)に凹部を有する固定板と、固定板の該凹部上に重ねられた可動板とによる二重板構成の略細長矩形状基部と、該基部上面に長手方向一定間隔で多数列設された略半円形リング部と、固定板の下側に長手方向にスライド移動可能に設けられたリンク板とからなり、 リング閉状態では、基部上面に固定板と可動板を分割する長手方向全長に延びる境界線が表れ、この境界線において、平面視で上方に位置する固定板と、同下方に位置する可動板とが基部上面で互いに面一状に接し、基部上面の左右端部は両端部に向け下降傾斜し、該部を除いた基部上面に、幅方向両縁部を基点とした多数の略半円形状リングが等間隔に設けられ、基部右端部は、略板状突起からなる摘みを備えた、基部と等幅の摘み基端部と面一状に接し、 リング開状態では、リンク板はスライド移動して右方に引き出され、固定板と共に基部上面を構成していた可動板が、接していた固定板から離間し、幅方向に平行スライドして拡幅し、可動板が収まっていた固定板上に凹部が現れると共に、略半円形リングが幅方向に二分割され、各対応するリング半体同士間に隙間が生じ、固定板と可動板のそれぞれに、リング半体が表される、とした基本的構成態様が共通する。 そして、具体的構成態様においても、 (A)リンク板について、本体部は略板状突起からなる摘みを備えた摘み基端部よりも薄くて幅狭であり、摘みの略板状突起は、その幅はリンク板本体部と略同幅であって摘み基端部幅より僅かに幅狭であり、内側の表面は僅かに凹面状で、反対側の外側表面は僅かに凸球面状であり、突出高さはリング高さの約半分程度であり、本体部は、底面視において、上方左端部が長手方向への長い延在部であり、中央部に下方への横長扁平台形状突出部を二つ設けており、 (B)リングについて、リングの略半円形は、真円の半体の両端(根元部)を平行にわずかに延長させた形状であり、その数は全体で26体であり、リング開状態のリング半体は、固定板側の半リング体端部に微小突起が現れ(他方の半リング端にはリング閉時に微小突起を受け入れる微小凹部がある)、 (C)リング閉状態について、基部幅に占める固定板と可動板の構成比率は約1:3であり、右端部に接する摘み基端部の横幅(横の長さ)はリング間隔よりも狭く、基部左端部と摘み基端部の右端部は、平面視共に僅かに凸弧状であり、基部上面の左右両端部寄りと中央部に、可動板と固定板にあけられた孔の大きさの違いにより、二重丸状に表れる円孔を設け、 (D)リング開状態について、可動板が拡幅した後の固定板に現れる凹部は、長手方向全長にわたるもので、該凹部上に、3個の小円孔と、複数個の縦長区画部と、可動板との際に4個の横長区画部が現れ、右方に引き出されたリンク板本体の基部側に、長円を割ったような開口部が現れる、とした点が共通する。 一方、両意匠は、 (a)固定板と可動板の右端部形状について、本件登録意匠は直状としているのに対し、イ号意匠は、それぞれに同形状の円弧状切欠きが設けられており、固定板と可動板が重ねられたリング閉状態では、一つになった円弧状切り欠きが表れる点、 (b)摘みとなる略板状突起について、本件登録意匠は、外側表面の外周縁から一回り内側に略矩形状の線を表し(稜線を表すのか否かは不明)、頂部中央にごく小さな突出部を設け、突出高さをリング体の約半分としているのに対し、イ号意匠は、外側表面には線を表しておらず、頂部に突出部を設けず、突出高さをリング体の半分よりも低くしている点、 (c)可動板拡幅後の固定板に現れる凹部上の縦長区画部について、本件登録意匠は、各々同形状の縦長区画部が3個現れるのに対し、イ号意匠は、2種の縦長区画部が合計5個現れる点が、相違する。 そこで、両意匠の共通点と差異点を検討すると、共通点は、基本的構成態様を始め、具体的構成態様のほとんどを占め、意匠全体の骨格をなしていると共に、意匠全体の基調を形成し、共通する美感を起こさせているものである。 それに対して、差異点はいずれも細部にわたるもので、類否判断に影響を及ぼすものではない。 すなわち、固定板と可動板の右端部形状についての差異点(a)は、可動の前後にわたって常に看取できる部位に係るが、意匠全体から見れば小さな切り欠きの有無に過ぎず、視点をこの部位に定めて視認して始めて気が付く程度の差異であり、全体観察によって行われる類否判断を左右する程のものではない。また、このような切り欠きを固定板の端部に設けたものは、公開実用新案公報実開昭51-63418号に既に見られ、イ号意匠に特有な態様ともいえず、看者の注意を惹くものでもない。 略板状突起についての差異点(b)は、もともと小さい略板状突起の、さらに微細な部分に係り、局所的差異でしかなく、可動板拡幅後の固定板に現れる凹部上の縦長区画部の差異点(c)も、可動板拡幅時のみに現れる小さな縦長区画部の有無という、目立ちにくい部位に係るもので、類否判断を左右するものではない。 そうすると、差異点はいずれも類否判断を左右することはない細部にわたるもので、このような各差異点が相俟ったとしても、類否判断に影響を及ぼすことはないから、共通点が類否判断を支配しており、需要者の視覚を通じて起こさせる両意匠の美感も、共通しているといわざるを得ず、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものである。 6.むすび したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2008-02-20 |
出願番号 | 意願平9-53095 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(F2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清野 貴雄、川崎 芳孝 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
前畑 さおり 樋田 敏恵 |
登録日 | 1998-12-11 |
登録番号 | 意匠登録第1033214号(D1033214) |
代理人 | 倉内 基弘 |