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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7
管理番号 1197090 
審判番号 不服2008-25631
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-06 
確定日 2009-04-21 
意匠に係る物品 腰掛け 
事件の表示 意願2007- 26733「腰掛け」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 本願は、2007年(平成19年)3月29日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)にした出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う平成19年(2007年)10月1日の意匠登録出願であって、その意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「腰掛け」とし、その形態は、願書に添付した図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。
一方、原審の拒絶理由において、本願意匠が類似するとした引用意匠は、本願意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、独立行政法人工業所有権総合情報館が平成16年(2004年)1月23日に受け入れた、株式会社主婦の友社が平成16年2月20日に発行した雑誌「プラスワン」の123頁に掲載された、「ローラーチェア No.19-007-13」と表示して写真版に現した「腰掛け」の意匠であって、その形態は、同頁の写真版に現されたとおりのものである(別紙第2参照)。
そこで、両意匠の類否を検討すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致する。次に、形態についてみると、主な共通点として、(A)全体は、略長方形板状の座部の下面の左右短辺側に、対向する2枚の略台形板状の脚部をやや開脚状にして取り付け、その脚部間のそれぞれ下方に板状の貫板を差し渡して、前後左右対称に形成したものであり、さらに、各部の具体的な態様として、(B)座部の四隅寄りの小孔に、車輪を座部の上面より僅かに突出させて取り付け、(C)脚部の側面視中央のやや上の位置に円孔を形成した点が認められる。
一方、主な相違点として、(ア)座部と脚部の取付け態様について、本願意匠は、脚部が座部の左右短辺側の端部に、奥行幅を座部の奥行幅と一致させて取り付けられ、座部の四隅の角部を角張らせ、座部の前後左右の端面と脚部の前後端面を、平坦面状として、座部の前後左右の端面が脚部と面一状の傾斜面としたのに対して、引用意匠は、脚部が座部の左右短辺側の端部よりやや内側に、奥行幅を座部奥行幅よりやや幅狭として取り付けられ、座部の四隅の角部を隅丸とし、座部の前後左右の端面と脚部の前後端面を、丸面状として、座部が脚部より外方向へ飛び出した点、(イ)座部について、引用意匠は、平面視中央に横長長円孔を形成したのに対して、本願意匠は、孔を形成しない点、(ウ)脚部について、(ウ-1)脚部の下端を、本願意匠は、中央に略倒コ字状の凹部を形成し、脚部下端の前後の角部と凹部の各角部を小隅丸としたのに対して、引用意匠は、下端を緩やかに上方に円弧状に凹ませて、その前後の角部をやや大きな隅丸とし、(ウ-2)円孔の大きさを、本願意匠は、引用意匠よりやや大きくした点、(エ)貫板部について、(エ-1)本願意匠は、一枚としたのに対して、引用意匠は、前後の二枚とし、(エ-2)貫板の各前後の端面を、本願意匠は、平坦面状としたのに対して、引用意匠は、丸面状とした点が認められる。
ところで、この種の腰掛けは、腰を下ろしたり、車輪を利用して滑らせたりして、使用者が直接触れることができるものであって、その具体的な態様に看者の注意が注がれるものである。
そうとすれば、共通点(A)の全体の態様において、座部の下面の左右短辺側に、脚部をやや開脚状にして取り付け、その脚部間のそれぞれ下方に貫板を差し渡すことが、この種腰掛けの分野において、例示するまでもなく、極普通に見られる態様であって、かつ、略長方形板状の座部、略台形板状の脚部、又は板状の貫板も、いずれもありふれた態様であるから、この共通点(A)の態様は、観者の格別注意を惹くものではなく、むしろ一方の相違点である、全体の態様を構成する各部の具体的な態様において、とりわけ、本願意匠は、相違点(ア)の脚部が座部の左右短辺側の端部に、奥行幅を座部の奥行幅と一致させて取り付けられ、座部の四隅の角部を角張らせ、座部の前後左右の端面と脚部の前後端面を、平坦面状として、座部の前後左右の端面が脚部と面一状の傾斜面とした態様は、座部と脚部とが一体的に繋がり、外形全体が角張った略四角錐台状とする視覚的なまとまりを持つものであり、かつ、従来見られない特徴的な態様であるのに対して、引用意匠は、本願意匠の特徴的な態様を有せず、座部が脚部より外方向へ飛び出して、座部と脚部との一体性はなく、座部が脚部を覆い被せる様としたものであり、両意匠の視覚的なまとまりは明らかに異なるものというべきであり、したがって、この相違は、意匠全体として両意匠に異なる印象を与え、両意匠の類似判断を決定付けるものであり、意匠全体として両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きい。
また、共通点(B)の車輪の取付け態様については、上記のとおり、もとより車輪が取り付けられる座板と脚板との取付け態様の視覚的なまとまりが異なる上に、車輪が取り付けられる箇所が、意匠全体からみれば、座部の四隅寄りの部分的な箇所であり、かつ、車輪自体が、転がすための機能的な構造をそのまま表しただけであることを考慮すれば、この共通性のみを捉えて、両意匠に共通する美感を起こさせるものとすることはできず、この共通点の態様の両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また、共通点(C)の脚部に円孔を形成した態様は、脚部の中央やや上の部分的な箇所に形成されたありふれた円孔であって、観者の格別の注意を惹くものではなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして、共通点及び相違点を総合すれば、相違点(ア)座部と脚部の取付け態様について、両意匠の視覚的なまとまりが異なり、意匠全体として両意匠に異なる印象を与え、加えて、他の相違点の態様によって、両意匠の相違感をより強めるものであり、一方の共通点(A)ないし(C)の態様は、いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり、これらの共通点の相まって奏する視覚的効果を勘案したとしても、相違感を覆して両意匠に共通した美感を起こさせる程のものではない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致するが、形態において相違点が共通点を凌駕し、意匠全体として両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。
以上のとおりであり、両意匠は類似しないものであるから、原審の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2009-04-08 
出願番号 意願2007-26733(D2007-26733) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子久木 真子木村 智加 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
鍋田 和宣
登録日 2009-05-29 
登録番号 意匠登録第1363814号(D1363814) 
代理人 山崎 宏 
代理人 大塚 雅晴 
代理人 田中 光雄 
代理人 前田 厚司 

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