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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B3
管理番号 1198812 
審判番号 不服2008-26841
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-20 
確定日 2009-06-10 
意匠に係る物品 うちわ 
事件の表示 意願2008- 7373「うちわ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は、平成20年3月25日の意匠登録出願であって、その意匠は、願書及び願書添付の図面代用写真によれば、意匠に係る物品を「うちわ」とし、その形態は願書及び同写真に現わされたとおりである(別紙第1参照)。

2.原審における拒絶理由の要旨
この意匠登録出願に係るうちわの分野において、表面部に種々の模様や別材質のものを貼り付けることは本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法であり(特許庁発行の登録実用新案公報記載、 実用新案登録第3107295号、考案の名称を「虫除け用扇ぎ具」と表記の図7に記載の丸うちわの意匠、資料1)この意匠登録出願の意匠は、本願出願前に公然知られたものと認められる円形うちわの意匠(資料1)の表面部に、本願出願前に公然知られたものと認められるシート状緩衝材である所謂プチプチと称されるエアパッキンシートを全面に貼り付けてうちわの意匠として単に表したに過ぎないので、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められ、意匠法第3条第2項の規定に該当する。

3.審判請求理由の要旨
本願意匠の具体的構成態様について検討すると、本願意匠に係るうちわの表面全体には、凸条が散点状且つ均等に配されているが、本願の出願前にうちわ本体の表面に凸状を散点状且つ均等に設けるということは行われておらず、この点に新規な創作的価値が認められる。しかも、本願意匠に係るうちわ本体表面の凸状は、透明であるが、本願の出願前に透明の凸状から透かしてうちわ本体の地色を視認するようにしたものも存在しておらず、この点においても本願意匠の斬新な創作的価値が認められる。
これに対し、公知意匠として示された資料1に係るうちわ本体表面の模様は印刷された単なる平面模様にすぎないので本願意匠とは創作的価値が異なっている。すなわち、うちわ本体表面に透明な凸状を配するということ自体が公知となっていないので、本願意匠のようにうちわ本体表面に複数の凸状を散点状且つ均等に配することは、当業者が容易に創作し得るものとは到底考えることができない。なお、拒絶査定において「この意匠の属する分野において表面部に別材質のものを貼り付ける例としシート状のものが貼着されているものを資料1として示した」と指摘するが、例示した資料1はシールを貼着し得るようにしているに過ぎず、凸状のものとは明らかに異なる。
また、拒絶査定で新たに特許出願公開2005-13289号の「団扇」を掲げているが、当該「団扇」は、その表面に略円筒形状をしたレンズを複数連続させたレンチキュラーシートを設け、視像方向によって異なる画像を見ることができるようにしたものに過ぎず、実用新案登録第3070398号の「うちわセット」も、すべて貼着された状態では平面になっているので、いずれも本願意匠とは創作的価値が異なる。
以上のとおり、うちわ本体表面に複数の凸状を散点状且つ均等に配すること自体が本願の出願前になされていない以上、たとえ当業者といえども、うちわ本体表面にエアパッキンシートを貼着するという発想には至らないと解され、故に本願意匠は、公知意匠に基づいて容易に創作できたとはいえない。

4.当審の判断
本願意匠は、容易に意匠の創作ができたものか否かについて、請求人の主張も参酌し、以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「うちわ」とし、その形態を、(A)全体を円形の薄板状とし、周縁寄りに指差し込み用の小円孔を設け、(B)片側地紙表面全体に短円筒状の空包を規則的に多数設けた透明な気泡緩衝材シートを貼着したものである。
(2)創作容易性の判断
そこで検討するに、うちわの全体を円形の薄板状とし、周縁寄りに指差し込み用の小円孔を設けた形態は、実用新案登録第3107295号、図7に示すうちわの意匠(別紙第2、「意匠1」参照)のとおり、本願の出願前に公然知られている。
次に、うちわの表面に、平面状のものに限らず、地紙などとは別の材質のものを貼付することは、例えば、絞り生地を貼付した公開実用新案公報昭62-155613号掲載の団扇などにみられるように、本願出願前より公然知られている。
また、所謂プチプチ(登録商標)に代表される短円筒状の空包を規則的に多数設けた透明な気泡緩衝材シートの形状は広く知られたものであり、各種分野で緩衝材以外の用途で用いることも、プチプチ文化研究所編、2006年8月発行の「プチプチofficial book」第61頁所載のグローブ、同第75頁所載の名刺ケースその他同書籍記載の事例にみられるように公然知られたものである。
しかしながら、うちわの地紙表面に気泡緩衝材シートを貼付したものは本願出願前には見られず、本願意匠の構成態様のうち、(B)片側地紙表面全体に短円筒状の空包を規則的に多数設けた透明な気泡緩衝材シートを貼着した態様は公然知られたものとはいえない。
そうすると、全体を円形の薄板状とし、周縁寄りに指差し込み用の小円孔を設けたうちわの態様が公然知られたものであり、うちわの表面に、地紙などとは別の材質のものを貼付することも公然知られたものであり、また、短円筒状の空包を規則的に多数設けた透明な気泡緩衝材シートの形状が広く知られたものであっても、この種うちわにおいて、気泡緩衝材シートを表面全体に貼付けることは、公然知られているとは言えないから、片側地紙表面全体に気泡緩衝材シートを貼着した本願意匠の構成態様について、創作することが容易であるとはいえない。
したがって、この意匠登録出願の意匠は、この種物品分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとは認められない。

5.結び
以上のとおり、本願意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり、また、他に拒絶の理由がなく、意匠登録をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2009-05-20 
出願番号 意願2008-7373(D2008-7373) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 鍋田 和宣
並木 文子
登録日 2009-06-26 
登録番号 意匠登録第1365535号(D1365535) 
代理人 伊藤 浩二 

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