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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1208157 
審判番号 不服2009-12192
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-03 
確定日 2009-11-16 
意匠に係る物品 スピーカー 
事件の表示 意願2008- 26128「スピーカー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成20年10月9日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「スピーカー」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。

2.引用意匠
原査定において,意匠法第3条第1項第3号に該当するとして引用された意匠は,その出願前に日本国内または外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,下記の意匠である(別紙第2参照)。

(1)電気通信回線の種類 インターネット
(2)掲載確認日(公知日) 2005年12月21日
(3)受入日 特許庁意匠課受入2006年1月6日
(4)掲載者 三菱電機エンジニアリング株式会社
(5)表題 プレスリリース/三菱電機エンジニアリング
(6)掲載ページのアドレス http://www.mee.co.jp/kaisyaan/press/prs051219. html
に掲載された「スピーカーボックス」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ17011300号)

3.請求人の主張
請求人は,審判を請求し,おおむね次のとおりの主張をした。
(1)本願意匠の要旨
本願意匠は,物品「スピーカー」に関するものであり,要旨は以下の通りです。
(ア)基本的構成態様
本願意匠は,縦長の直方体形状の筐体と,左右の両側面に側板とを備え,筺体正面に,ツイーターと,スコーカーと,ウーハーと,ダクトとが上から順に配され,該ツイーターと,該スコーカーとが,台形パネルに囲まれて構成されます。
(イ)具体的構成態様
本願意匠は,正面上辺より左右両辺にかけて施された2つの三角形状の面取り部と,正面下辺より左右両辺にかけて施された2つの三角形状の面取り部と,正面左右両辺に施された2つの台形状の面取り部と,を備えます。
該面取り部の各々は全て,傾斜角度が小さく形成された面取り部です。
該筐体の正面平面部において,該台形パネルは,正面上辺より施された面取り部の三角形の斜辺と平行となる斜辺を有します。
該台形パネルに囲まれた該ツイーターは,波状のリング部と,砲弾形状のイコライザ部とを備えて構成されます。
該台形パネルに囲まれたスコーカーは,略半球状の振動板を有するスピーカーユニットが配されて構成されます。
ウーハーは,略半球状の振動板を有するスピーカーユニットが配されて構成されます。
ダクトは,縦寸が筺体の高さの略1/45,横寸が筺体の幅の略1/2の寸法で,扁平横長方形状に形成されています。
側板は,正面部側と背面部側に曲面が施され,漸次,板厚が薄くなる構成を有しています。

(2)引用意匠の要旨
引用意匠は,物品「スピーカーボックス」に関するものであり,要旨は以下の通りです。
(ア)基本的構成態様
引用意匠は,縦長の直方体形状の筺体を備え,筺体正面に,ツイーターと,スコーカーと,ウーハーと,ダクトとが上から順に配されて構成されます。
(イ)具体的構成態様
引用意匠は,正面上部に,上辺が面取りされ平面部に延設される台形状の面取り部と,該台形状の面取り部より,左辺および右辺にかけて面取りされた,2つの三角形状の面取り部と,正面下辺より,左辺および右辺にかけて面取りされた,2つの三角形状の面取り部と,を備えます。
正面上部と正面下部に形成された三角形状の面取り部の各々は,傾斜角度が大きく形成した面取り部です。
ツイーターは,すり鉢状に形成されたラジエータ部と,すり鉢状のラジエータ部の内部で砲弾状に突出したイコライザ部とから構成されます。
スコーカーは,すり鉢状に形成されたラジエータ部と,該ラジエータ部の内部に円形の振動部が配されて構成されます。
ウーハーは,正面略中央に正円形状に形成され,センターキャップを有するコーン形振動板を備えたスピーカーユニットが配されて構成されます。
ダクトは,縦寸が筺体の高さの略1/20,横寸が筺体の幅の略1/2の寸法で横長のトラック形状に形成されています。

(3)本願意匠と引用意匠の類否判断
(ア)共通点について
両意匠の共通点は,縦長の直方体形状の筺体を備え,筺体正面の上部より,ツイーター,スコーカー,ウーハー,ダクト,が順に配される基本的構成態様は共通します。しかしながらこれらは,この種意匠の全体の態様の標準または,ありふれた構成であって,類否判断に及ぼす影響は微弱なものです。
(イ)差異点について
本願意匠と引用意匠との差異点は,本願意匠の面取り部は,傾斜角度が小さく意匠の骨格形成への影響は微弱ですが,引用意匠の面取り部は,傾斜角度が大きく意匠の骨格形成に大きく影響するほどの形状です。面取り部の具体的態様は大きく異なるので,共通の美感を起こさせるものとは言えません。
本願意匠は丸められた側板を有し,直方体形状の筺体に柔らかみを帯びさせた印象を与えます。一方で引用意匠は,面取り部が外形を構成し,多角形状の筺体である堅い印象を与えます。
また,本願意匠は,ツイーターおよびスコーカーが台形パネル内に配され,各スピーカーユニットの角形状を基調とした枠部と,円形状を基調とした振動部とが組み合わせられた構成で,稜線が複数現れ,正面上部の各部が与える印象は堅いものです。引用意匠は円形状のみから構成され,正面各部が与える印象は柔らかいものです。
したがって,本願意匠は,柔らかな印象を与える筺体に,台形パネルと,ツイーターおよびスコーカーが正面上部に堅い印象与える部分が組み合わせられた意匠であるのに対し,引用意匠は,堅い印象を与える筺体に,柔らかい印象を与える部分が組み合わせられた意匠であることは,特徴を有し,美感を印象づけるに大いに影響する部分であって,看者に与える印象の中で埋没してしまう程度のものとは言えません。
両意匠の差異点は,本願意匠の要部に係るものであって,両意匠の共通点を大きく凌駕し,両意匠から感じられる全体の印象は大きく異なったものであるから,本願意匠と引用意匠とは互いに非類似であると言えます。

4.当審の判断
そこで,本願意匠と引用意匠を比較すると,まず,両意匠は,意匠に係る物品が共通する。
次に,形態については,主として以下の共通点と差異点がある。
すなわち,共通点として,(1)本体が略縦長の直方体形状であって,本体正面中央に直線状に,上から順にツイーター,スコーカー,ウーハー及びダクトが,配される基本的な構成態様のものである点,また,その具体的な態様において,(2)本体正面の態様につき,左右上部角部を大きく面取りし,左右下部角部を上部のものより小さく面取りし,前平面が縦長八角形になっている点,(3)ツイーター,スコーカー及びウーハーにつき,上から順に小,中,大になる正円であり,ツイーター上端からスコーカー下端長さが本体高さの約3分の1に収まり,ウーハー中心が本体高さ中心よりやや下側に位置する点,(4)ダクトにつき,横幅が,ウーハーよりやや短い横長略長方形である点,がある。
一方,差異点については,(イ)本体正面の左右上部角部と左右下部角部の面取りにつき,本願意匠は,傾斜角度が小さく奥行きが浅いのに対し,引用意匠は,傾斜角度が大きく奥行きが深い点,(ロ)本体正面の左右両辺につき,本願意匠は,面取りしているのに対し,引用意匠は,面取りしていない点,(ハ)本体正面の上辺につき,本願意匠は,面取りしていないのに対し,引用意匠は,面取りしている点,(ニ)ツイーターとスコーカーにつき,本願意匠は,台形パネルに囲まれて,フロントロードが無いのに対して,引用意匠は,台形パネルが無く,フロントロードが設けられている点,(ホ)ウーハーにつき,本願意匠は,前平面に直接設けられているのに対し,引用意匠は,前平面から一段突出したラッパ状開口内に設けられている点,(ヘ)ダクトにつき,本願意匠は,偏平横長方形状なのに対し,引用意匠は,横長トラック形状である点,(ト)本体下部につき,本願意匠は,引用意匠の様な態様が無いのに対し,引用意匠は,本体下辺に帯状の暗部が有り,底面4隅に大振りな脚が設けられている点,(チ)本体側面につき,本願意匠は,前後に曲面を施し,漸次,板厚が薄くなる構成の側板を備えているのに対し,引用意匠は,本体側面にその様な板を設けず,平面である点,がある。
ここで,共通点と差異点について総合的に検討するに,共通点の内,(3)と(4)の点については,この種物品分野に良くある態様であって,両意匠の類否判断に大きな影響を与える,とは認められないが,(1)の点と共に,両意匠の形態の全体にかかわりその骨格を構成するところであって,両意匠の形態全体の基調を顕著に表しており,(2)の点とも相まって,両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものである。
一方,前記差異点について,(イ)の点については,この主物品分野の意匠にかかわる要旨のひとつ,と言える本体正面の態様の違いであり,この傾斜角度がもたらす,立体感の違いは,類否判断に大きな影響を与えると認められる。(ロ)と(ハ)の点については,いずれも,ほんの少しの面取りであって,本体正面の上下左右角部に特徴的な面取りが設けられているため,注視して始めて気付くほどの態様と認められ,類否判断に及ぼす影響は小さいと認められる。(ニ)の点については,本願意匠の様に,パネルを設けた上で,スピーカーを設置することは本願の出願前から見られる手法であって,本願のみの特徴とは言えないが,意匠の要部と認められる本体正面の差異点とも言え,パネルの有無は,無視はできない。また,引用意匠の様に,奥行きの深いフロントロードが設けられていると,その本体正面の形状に特徴をもたらし,本願意匠の平面的な本体正面と引用意匠の立体的な本体正面には,類否判断に影響を及ぼすほどの差異が有ると認められる。(ホ)の点については,直径の大きなウーハーの周辺部の差異であって,この種物品の主要なパーツであるウーハーに属する部分の局部的な差異と認められ,類否判断に及ぼす影響は小さいと認められる。(ヘ)の点については,余り目が行かないであろう本体下方の局部的な部分の形状の違いであって,類否判断に及ぼす影響は小さいと認められる。(ト)の点の内,暗部の有無については,余り目が行かない本体下端部の差異であって,その部分に注目して初めて気付くほどの色彩(明暗調子)の差異で,形状には影響を与えない差異とも言え,両意匠の類否判断に与える影響は小さいと認められる。次に,脚部の有無については,この主物品分野においては,脚を設けることも,脚を設けずに使用する場合も,ごく普通に認められる点を考慮すると,脚の有無が類否判断に与える影響は小さいと認められる。(チ)の点については,本体側面に,前後に曲面を施した板を用いることは,本願出願前より普通に行われている手法であって,本願意匠のみの特徴とは言えず,この有無が,本体正面の共通感を越えて差異感をもたらすとは言えず,類否判断に及ぼす影響は小さいと認められる。
してみれば,本体正面の上下左右角部に面取りを設け,前平面が縦長八角形になっている本体正面の態様の共通感から,この上下左右角部の面取りに奥行きの差があるとしても,同様な面構成という感をぬぐえず,造形処理における根本的な考え方(概念=コンセプト)に共通性がある,とも言え,言うなれば,シリーズ化した商品の,高級大型機,中級中型機,普及小型機などのタイプ別ほどの違い,または,ひとつのバリエーションにも見えるが,(イ)ないし(チ)の大小の差異点をすべて考慮し,相互の差異点が相まって相乗的な効果が生じることを考慮すると,引用意匠とは異なる本願意匠独自の形態を表しているものであることから,総合的には僅かな相違とは言えないものであり,これらの類否判断に及ぼす影響は有る,と言うことができる。
以上のとおりであって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,その形態については,両意匠の共通点及び差異点の視覚的効果を総合的に判断すると,両意匠は類似しないものと言わざるを得ない。

5.結び
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2009-10-21 
出願番号 意願2008-26128(D2008-26128) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久木 真子木村 智加 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2009-12-04 
登録番号 意匠登録第1377134号(D1377134) 

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