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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1211334 
審判番号 不服2008-31885
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-17 
確定日 2010-01-26 
意匠に係る物品 デジタルオーディオプレーヤー付きポータブルナビゲーション 
事件の表示 意願2007- 28831「デジタルオーディオプレーヤー付きポータブルナビゲーション」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2007年(平成19年)10月19日に意匠登録出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「デジタルオーディオプレーヤー付きポータブルナビゲーション」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書に添付した図面に記載のとおりのものである。(別紙第1参照)


第2 拒絶の理由及び引用意匠
原審は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとし,本願意匠に対して拒絶の理由として引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,2007年(平成19年) 7月30日に日本国特許庁が発行した意匠公報記載,意匠登録第1306764号の意匠であって,同公報の記載によれば,意匠に係る物品は,「デジタルオーディオプレーヤー付きポータブルナビゲーション」であり,その形態は,同公報の図面に記載のとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断
1.両意匠の対比
本願意匠と引用意匠を対比すると,両意匠は,意匠に係る物品が一致する。

形態については,基本的構成態様について,両意匠は,
(A)筐体全体を,略横長隅丸矩形状の厚板状とし,正面視,下端部左右の両角部を,上端部左右のそれよりも,曲率の大きな隅丸状としたものである点,
(B)筐体は,横長矩形状の画面表示部周囲の四辺の縁部(以下,単に「縁部」という。)を主体とした「正面側筐体」と,スタンド部,スピーカー孔部などを形成した「背面側筐体」によって構成されており,背面側筐体の側面視下端部と平面視後端部左右の両角部の各稜線部に大きな丸みを持たせたものである点が主として共通し,
具体的構成態様について,
(C)筐体全体は,横幅,縦幅及び奥行きの比を約6:4:1としたものである点,
(D)正面側筐体について,画面表示部の周囲四辺を幅広の額縁状に構成している点などが主として共通する。

他方,両意匠は,
(ア)画面表示部の周囲の額縁状の縁部の態様について,本願意匠は,縁部の上辺部と下辺部,左辺部と右辺部の幅がそれぞれにほぼ等しく,左右両辺が上下両辺よりやや広く,また,縁部の外周の内側と縁部の内周の内側(画面表示部近傍)にそれぞれ全周にわたる細い稜線が設けられているのに対して,引用意匠は,縁部の幅が上辺部が最も狭く,左辺部と右辺部がそれよりやや広く,下辺部が最も広く,また,縁部のほぼ中央を全周にわたって通る細い二重線が設けられ,下辺部には,幅広扁平な略「U」字状の細い線により区切られた領域が形成されている点,
(イ)筐体の構成態様について,本願意匠は,筐体全体が側面視,扁平な略隅丸台形状をなし,正面側筐体と背面側筐体の厚みの比が約2:3であり,また,正面側筐体の左辺部と右辺部は,平面視,背面側方向に緩やかに湾曲しているのに対して,引用意匠は,筐体全体が側面視,扁平な隅丸矩形状をなし,正面側筐体と背面側筐体の厚みの比が約1:1であり,また,正面側筐体は周囲の縁部が隅丸に形成され,右側面視,上端部を大きな隅丸状としている点,
(ウ)正面側筐体と背面側筐体の接合部分の態様について,本願意匠は,両筐体の接合部分が,左右両側面において,操作ボタン部が背面側に略扁平「U」字状に入り込み,左右両側面の上下両端部において,正面側方向に緩やかに湾曲し,平面及び底面の左右両端部において,背面側方向に緩やかに湾曲しているのに対して,引用意匠は,両筐体の接合部分が右側面において操作ボタン部が背面側に略扁平「U」字状に浅く長く入り込んでいるが,左側面及び平面においては直線状に接合している点,
(エ)筐体底面の態様について,引用意匠は,筐体底面に,その大半を占める大きさの略細長長方形状の台座部を形成しているが,本願意匠は,これがない点,
(オ)筐体背面の態様について,本願意匠は,背面中央下部に収納されたスタンドを設けているが,引用意匠にはこれがない点,
(カ)操作ボタン・接続孔などの態様について,本願意匠は,正面側筐体の左右両側面のやや上側にそれぞれ大きな縦長状の操作ボタンがあり,また,平面中央に横長に3連に配置された操作ボタンがあり,背面側筐体の左右側面の下側にはそれぞれ2つずつ操作ボタン・接続孔があるのに対して,引用意匠は,正面側筐体の右側面のやや上側に大きな縦長の操作ボタンがある他,筐体底面の台座の内側に接続孔などが2つ設けられているものである点,
(キ)本願意匠は,正面側の縁部の左上角部に細い横長のインジケーターが設けられているのに対して,引用意匠にはこれがない点などが主として相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断すると,両意匠の前記共通点に係る構成態様は,従前のこの種意匠に照らすところ,他にも見られる類型的な態様であって,両意匠のみの特徴を形成するものとはいえず,よって,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響力を大きいということはできない。

これに対して,前記各相違点,とりわけ,相違点(ア)ないし(ウ)については,目に付きやすい箇所であると同時に,一般に割合シンプルな形態が多くみられるこの種物品分野の意匠においては,デザイン上のポイントとして注目される箇所であって,これらの点が両意匠の類否判断に大きな影響力を及ぼす相違であるというべきである。また,相違点(カ)の筺体の周側面などおける操作ボタン・接続孔などの有無差・相違については,この種物品分野においては,その機能上の相違の表出であって,かつ,操作ボタンなどが各面に一定のまとまりを形成し,その視覚的効果も明確に異なるから,これらの相違も一定の影響力を持つものというべきである。

そうすると,それぞれある程度の影響力のあるこれらの相違点を総合すれば,もはや相違点が前記の影響力の大きくない共通点を圧しているというべきである。

したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が微弱であるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,相違点(ア)ないし(ウ)が大きな影響を及ぼす他,他の相違点もそれぞれ一定程度あり,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点が生じさせている共通感を凌駕しており,意匠全体として観察した場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。


第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原審の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書の規定によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-01-14 
出願番号 意願2007-28831(D2007-28831) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松尾 鷹久内藤 弘樹加藤 真珠 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 淺野 雄一郎
杉山 太一
登録日 2010-02-05 
登録番号 意匠登録第1381733号(D1381733) 
代理人 西脇 民雄 

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