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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1212860 
審判番号 不服2008-32242
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-22 
確定日 2010-02-16 
意匠に係る物品 電子複写機 
事件の表示 意願2007- 35893「電子複写機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2007年(平成19年)12月27日に意匠登録出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「電子複写機」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)


第2 拒絶の理由及び引用意匠
原審において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとし,本願意匠に対して拒絶の理由として引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,2005年(平成17年)11月28日に日本国特許庁が発行した意匠公報記載,意匠登録第1256919号の意匠であって,同公報の記載によれば,意匠に係る物品は,「電子複写機」であり,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断
1.両意匠の対比
両意匠は,意匠に係る物品が一致する。

両意匠は,形態について,主として,以下の共通点と相違点がある。
(共通点)
(A)全体を,略縦長四角柱状としたものであって,正面,背面及び左側面は,開口部を除いてほぼ面一に構成されており,全体の構成としては,上から,原稿台の蓋を兼ねた「自動原稿送り部」,その正面側に略横長矩形状の「操作パネル部」を,そして,大きな開口部として形成された「排紙トレイ部」の下に大きな略横長矩形板状の「本体部正面カバー部」を設けた「電子複写機本体部」(以下,「本体部」という。),さらに「用紙カセット部」を積み重ねて配置したものである点,
(B)操作パネル部は,正面側にやや傾斜しており,その左側には横長矩形状の表示画面部を設け,右側には各種の操作キーを配置したものである点,
(C)排紙トレイ部は,正面側と左側面側に開口し,本体部の上段部分で操作パネル部と原稿台部の下側に形成されており,排紙トレイ部の内部下面には正面視扁平な略片側台形状の「トレイ台部」を形成している点,
(D)用紙カセット部において,横長矩形板状の「カセット前板部」が4段重ね状に設けられており,その中央部には正面視横長矩形状の窪み状の引手部がそれぞれ形成されている点,
(E)本体部右側面には,側面視略縦長矩形状で正面視扁平な略台形状の「手差しトレイ部」が設けられている点。

(相違点)
(ア)全体の比率について,本願意匠は,奥行きが浅く,平面視横長矩形状であるのに対して,引用意匠は,奥行きが深く,平面視略正方形状である点,
(イ)平面視態様について,本願意匠は,外周全体にわたって細幅帯状の縁部が形成されているのに対して,引用意匠にはそれがない点,
(ウ)自動原稿送り部の態様について,平面視,引用意匠は,背面側に横長細幅状の筐体部が設けられているのに対して,本願意匠は,それがなく,有孔舌片状のカバーが設けられているだけである他,詳細にみれば相違点が多数ある点,
(エ)本体部の操作パネル部下方の態様について,本願意匠は,操作パネル部下方が垂直平面で縁状に構成され,その右側ではその縁の縦方向の幅が広がっているのに対して,引用意匠は,操作パネル部下方がやや背面側に傾斜した面となっており,排紙トレイ部の開口部を延伸したようになっている点,
(オ)正面側の排紙トレイ部周辺の態様について,本願意匠は,排紙トレイ部の開口部の右側の略矩形状の部分は,前述の操作パネル部の正面側と同様に垂直平面で構成され,本体部の正面側の面を構成しているのに対して,引用意匠は,やや背面側に窪んでいる点,
(カ)本体部正面カバー部とカセット前板部の態様について,本願意匠は,それらが正面視全体の横幅ほぼいっぱいにかつ面一に配置されているのに対して,引用意匠は,本体部正面カバー部と4段のカセット前板部が等幅でかつ面一で配置されてはいるが,横幅は全体の横幅よりやや狭く,電子複写機の正面全体においては左寄りに配置され,それらの右側に縦長細幅帯状の段差部が背面側にやや後退して形成されている点,
(キ)用紙カセット部の態様について,本願意匠は,4段のうち上から1段目が本体部に組み込まれており,2段目から4段目までは,それぞれ独立して本体部の下側に配置されているのに対して,引用意匠は,4段のうちの上から2段目までが本体部に組み込まれており,3段目と4段目は,一つの筐体として本体部の下に配置されているものである点,
(ク)右側面視の態様について,引用意匠は,手差しトレイ部の下に排紙用カバーが上下2連に設けられているのに対して,本願意匠は,前記(キ)で述べた2段目から4段目の用紙カセット部の境界線がそのまま表れているだけである点。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

両意匠の前記共通点に係る構成態様は,従前のこの種意匠に照らすところ,他にもみられる類型的な態様であって,両意匠のみの特徴を形成するものとはいえず,よって,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響力を大きいということはできない。

これに対して,前記相違点(ア)ないし(ク)については,目に付きやすい箇所に係るものであるだけでなく,一般にシンプルな形態が多くみられるこの種物品分野の意匠においては,デザイン上のポイントとして注目される箇所に係り,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を小さいとすることはできない。とりわけ,相違点(エ)ないし(カ)における本願意匠の態様は,正面側の大半を占めるとともに,それらが一体となって,見る者に引用意匠とは異なる美的な印象を強く与えるものであって,これら,相違点(ア)ないし(ク)が相まって生じる視覚的効果は,両意匠の類否判断に大きな影響力を及ぼしているというべきである。

そうすると,両意匠の類否判断に影響力のあるこれらの相違点を総合すれば,もはや相違点が前記の影響力の大きくない共通点を圧しているというべきである。

したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点が生じさせている共通感を凌駕しており,意匠全体として観察した場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。


第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原審の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書の規定によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,さらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-01-29 
出願番号 意願2007-35893(D2007-35893) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
淺野 雄一郎
登録日 2010-03-05 
登録番号 意匠登録第1384460号(D1384460) 
代理人 田畑 昌男 

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