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審決分類 |
審判 B5 |
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管理番号 | 1218161 |
審判番号 | 無効2009-880005 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-04-10 |
確定日 | 2010-03-16 |
意匠に係る物品 | サンダル |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1334220号「サンダル」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1334220号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の請求の趣旨および理由 請求人は,「登録第1334220号意匠登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,本件登録意匠(意匠登録第1334220号の意匠)は,その出願前に外国で頒布された刊行物に記載された意匠と類似であることにより,無効とされるべきであると主張し,証拠方法として,甲第1号証を提出した。 [1]意匠登録の無効理由の要点 本件登録意匠は,甲第1号証の意匠と類似のものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。 [2]本件登録意匠を無効とすべき理由 1.甲第1号証の意匠 甲第1号証の意匠は,本件登録意匠の出願前に中華人民共和国国家知識産権局が発行した中国意匠登録出願公報に記載の,中国における意匠登録出願(申請番号 第200630119985.6号,2006年(平成18年)10月26日出願,2007年(平成19年)8月22日公開)の図面およびこれに関連する記載の内容によって表された「サンダル」の意匠(以下,「甲第1意匠」という。)である。 2.本件登録意匠と甲第1意匠との対比 (a)物品について 両意匠に係る物品は,ともに「サンダル」であり,一致している。 (b)形態について 両意匠は,主として,以下の共通点および差異点が認められる。 〈1〉共通点 〈A〉両意匠は透明乃至半透明であり,サンダル台および甲被からなり,甲被の両側縁の一部を切り欠くことにより,切り欠いた部分の縁においてサンダル台と接していない(本件登録意匠の右側面図および左側面図,甲第1号証の主視図および后視図参照),という基本的構成態様が共通する。 具体的構成態様において, 〈B〉サンダル台は,サンダル台の外周を形成する枠,突起部材,およびリブからなり, 〈C〉突起部材は,つま先側からかかと側の間に17列配設され,最もかかと側に位置する1列と最もつま先側に位置する1列には3個,つま先側から2列目には4個,それ以外の列には5個,の計80個が所定の間隔を空けて配設され, 〈D〉突起部材が,縦横直行する複数のリブによって保持され,リブがサンダル台の外周を形成する枠に固定され, 〈E〉〈B〉?〈D〉の構成態様とすることによって,サンダル台には靴底側に通じる複数の空隙部を有する,という様態が共通する。 〈2〉差異点 〈a〉本件登録意匠は,サンダル台および甲被が同一色彩で表されているのに対し,甲第1意匠では,サンダル台と甲被が異なる色彩で表されている点に,差異がある。 3.類否判断 両意匠の共通点と差異点を総合し,両意匠の類否を全体として検討すると,両意匠の共通する基本的構成態様〈A〉は,両意匠の造形的骨格を形成し,看者の注意を惹くものであり,また,両意匠は,〈B〉?〈D〉に列挙したように,各部の具体的構成態様においても共通性が顕著であり,これら〈B〉?〈D〉の共通する具体的構成様態は,本件登録意匠の願書の「意匠に係る物品の説明」における,「使用者の足を乗せる部分を,上方向きに突出する複数の突起部材を所定の間隔を空けて配設して,これらの突起部材をリブによって保持させることにより靴底側に通じる複数の空隙部を設けた構成としたもので,突起部材によって使用者の足の裏を刺激することができるようにすると共に,上記空隙部を通じて水や汗,塵埃等を靴底側に排出させて,通気性や通水性を向上させている」との記載に対応するものであり,本件登録意匠の出願人が本件登録意匠の要部であると認めるところである。そして,これら共通する点は,形状同一,個数同数,意匠的にまとまりがあって,形態全体の大部分を占めるものであるから,需要者に強い共通する美感を起こさせるものと認められる。 これに対し,差異点〈a〉について,当該分野において同一形態の商品を色彩のみ変えて生産することが通常であり,意匠の要部であるとはいえず,類否判断を左右するものではない。 したがって,本件登録意匠と甲第1意匠は,両意匠の最も特徴的な部分であり看者の注意を強く引くものであると認められる共通点を有しており,差異点は,これらの共通点を凌駕するものとはいえず,両意匠が意匠全体として異なる美感を起こさせるものと認めることはできないから,両意匠は類似すると認めるのが相当である。 4.むすび 以上のとおりであるから,本件登録意匠は,無効とされるべきである。 第2.被請求人の答弁 当審では,被請求人に対して,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,その期間を経過しても,被請求人からは,答弁書の提出がなかったものである。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受ける,2007年(平成19年)10月16日の出願に係り,2008年(平成20年)5月23日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1334220号の意匠であって,願書の記載および願書に添付した写真によれば,意匠に係る物品を「サンダル」とし,その形態を,願書に添付した写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 すなわち,本件登録意匠の形態は,基本的構成態様を,〈a〉全体を透光性を有する材質を用いた薄い灰色でかかと部がない平底状のサンダル台部とつま先部分が開口した甲被部からなり,〈b〉甲被部は略半円柱状で,サンダル台部の前半分両側端部に接合されており,甲被部の両側縁の一部を略半円状に切り欠いて側面視略「ハ」の字を呈している。また,具体的構成態様において,〈c〉サンダル台は,サンダル台の外周を形成する枠,突起部材,およびリブからなり,〈d〉突起部材は,枠内に,つま先側からかかと側の間に17列配設され,最もかかと側に位置する1列と最もつま先側に位置する1列には3個,つま先側から2列目には4個,それ以外の列には5個,の計80個が所定の間隔を空けて配設され,〈e〉突起部材が,縦横直行する複数のリブによって保持され,リブがサンダル台の外周を形成する枠に固定され,〈f〉これらにより,サンダル台には底側に通じる複数の空隙部を有するとしたものである。 2.甲第1意匠 甲第1意匠は,中華人民共和国国家知識産権局が2007年(平成19年)8月22日に公開した中国意匠登録出願公報に記載の,中国における登録意匠第CN3680590号(申請番号 第200630119985.6号,2006年(平成18年)10月26日出願)の写真およびこれに関連する記載の内容によって現された「サンダル」の意匠であって(別紙第2参照),その形態は,〈a’〉全体を透光性を有する材質を用いた,赤色でかかと部がない平底状のサンダル台部と,白色でつま先部分が開口した甲被部からなり,〈b’〉甲被部は略半円柱状で,サンダル台部の前半分両側端部に接合されており,甲被部の両側縁の一部を略半円状に切り欠いて側面視略「ハ」の字を呈している。また,具体的構成態様において,〈c’〉サンダル台は,サンダル台の外周を形成する枠,突起部材,およびリブからなり,〈d’〉突起部材は,枠内に,つま先側からかかと側の間に17列配設され,最もかかと側に位置する1列と最もつま先側に位置する1列には3個,つま先側から2列目には4個,それ以外の列には5個,の計80個が所定の間隔を空けて配設され,〈e’〉突起部材が,縦横直行する複数のリブによって保持され,リブがサンダル台の外周を形成する枠に固定され,〈f’〉これらにより,サンダル台には底側に通じる複数の空隙部を有するとしたものである。 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,意匠に係る物品は,「サンダル」であって一致し,形態については,本願登録意匠は,サンダル台部と甲被部の全体が透光性を有する薄い灰色であるのに対して,甲第1意匠は,サンダル台部が透光性を有する赤色であり,甲被部が透光性を有する白色である点に関しのみ異なり,その他の形状はほぼ一致しているものである。 4.類否判断 そこで,以上の共通点と相違点を総合し,両意匠の類否を全体として検討すると,この種サンダルの属する履物の分野においては,同一形状の商品に各種色彩を施したり,その構成部材ごとに色彩を異なるものとして商品にバリエーションをもたせることは,広く一般的におこなわれており,上記両意匠の対比において述べた差異点が,需要者に強い印象を与えることはなく,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるから,両意匠の共通点は圧倒的であって,意匠全体として美感が共通し,両意匠は類似すると言わざるを得ない。 5.むすび したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し,同条の規定に違反して登録されたものであるので,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,その意匠登録は無効とすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2009-12-24 |
結審通知日 | 2010-01-04 |
審決日 | 2010-02-01 |
出願番号 | 意願2007-28285(D2007-28285) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(B5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 斉藤 孝恵 |
特許庁審判長 |
瓜本 忠夫 |
特許庁審判官 |
淺野 雄一郎 杉山 太一 |
登録日 | 2008-05-23 |
登録番号 | 意匠登録第1334220号(D1334220) |
代理人 | 吉川 俊雄 |