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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7 |
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管理番号 | 1219796 |
審判番号 | 不服2009-25229 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-21 |
確定日 | 2010-07-20 |
意匠に係る物品 | 椅子 |
事件の表示 | 意願2009- 6644「椅子」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし、本意匠を意願2008-30195号とし、物品の部分について意匠登録を受けようとする平成21年(2009年)3月25日の意匠登録出願(意匠に係る物品「椅子」)であり、その意匠は、願書の記載及び願書に添付した写真に現されたとおりとしたものであって、緑色に着色した箇所を除いた部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である(以下、意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠」という。別紙第1参照。)。 これに対して、原審は、拒絶の理由について、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2006年11月16日に受け入れた「ELEMOND S.P.A.」が発行した外国雑誌(発行国:イタリア)である「INTERNI」566巻(2006年11月号)の第124頁に所載された一人掛け用いすの意匠(同頁の中段右の表示符号2が付されて現されている椅子の意匠であって、類否判断の対象は、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分であり、以下、当該部分を「引用意匠」という。別紙第2参照。)に類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条の規定により意匠登録をすることができないものであるとしたものである。 そこで、原審が拒絶の理由において本願意匠が類似するとした引用意匠との類否判断について検討すると、両意匠の形状について、主な共通点として、(A)全体は、略縦長矩形状板体を側面視略「L」字状に屈曲させて背もたれ部と座部とで構成し、(B)背もたれ部を、座部との屈曲部から上方へと後方への膨らみが漸次大きくなる緩やかな湾曲面状に形成し、その板体の左右両端が、側面視前方へ僅かに膨らむ緩やかな弧状にして垂直状に立ち上がり、縦中央部分が、左右両端とほぼ同率の弧状として、上方がやや後方へ傾く傾斜とし、(C)座部を、背もたれ部との屈曲部から前方へと下方へ膨らむ極緩やかな湾曲面状を形成しながら、その前端部を丸面状に下方に垂れ下げた点が認められる。 ところで、これら共通点(A)ないし(C)の形状は、椅子における背もたれ部と座部とが一体となるものの殆ど全体を占めて、かつ、背もたれ部と座部とにそれぞれ湾曲面状を形成し、足の膝裏が当たる座部の前端部を丸面状として、椅子として人が直接触れる部分の曲面に共通性を持たせるものであって、他に格別の相違点も無く、これらの共通点だけに限られれば、両意匠の類否判断を決定付けるものとも言える。しかし、背もたれ部と座部とに形成される湾曲面状や座部の前端部の丸面状は、人が腰掛けて触れる腰、背中、足等の身体の態様に対応しただけとも言え、また、背もたれ部と座部とを一体とすることも、この種の椅子の分野において極ありふれた手法であり、一般にこの種の椅子が、座り心地等はもとより、長時間の使用に当たっての腰、背中などにかかる負担や作業のし易さ等も十分配慮するものであることを考慮すれば、背もたれ部や座部のより具体的に変化する面の構成も、使用者が注意を惹かないものとは必ずしも言い切れない。 そして、一方で、主な相違点として、(ア)背もたれ部と座部との屈曲部を、正面側方向から見て、本願意匠は、左右両端を円弧状とし、背もたれ部との繋ぎ部分に、下方へ僅かに膨らむ緩やかな弧状の縫合線を、ほぼ横幅いっぱいに形成し、座部との繋ぎ部分にも、背もたれ部との縫合線より下方への膨らみをより大きくした縫合線を、ほぼ横幅いっぱいに形成し、その2本の縫合線間を、中央部分がやや拡幅する平坦面状の傾斜面としたのに対して、引用意匠は、水平状に丸凹面状とし、(イ)座部につき、本願意匠は、座部の前端部を除く左右両端に、細幅帯状の平坦面を形成し、下方へ膨らむ湾曲面状を、前端部側を極緩やかな湾曲面状として、後方の屈曲部との下側縫合線に向けて、左右両端の平坦面からの下方への下りを漸次やや急としながら、湾曲面状の下方へ膨らみも漸次大きく深く形成したのに対して、引用意匠は、左右両端部に、細幅帯状の平坦面を形成せず、湾曲面状を、屈曲部から前端部側への下方への膨らみを、ほぼ一定に浅く形成した点に相違が認められる。 これらの相違点について、(ア)屈曲部の形状の相違は、背もたれ部と座部とを繋いで、背もたれ部と座部との各面が、側面視略「L」字状に屈曲して大きく切り替わるところであり、本願意匠が、2本の縫合線が明確に視認され、2本の縫合線との間を中央部分がやや拡幅する平坦面状の傾斜面とし、屈曲部を介して3つの面が段階的に変化する面を構成するものであり、一方の引用意匠が、単に一枚の板体を折り曲げてできるように、背もたれ部と座部とを丸凹面状に繋げて連続して変化する面を構成するものとは、面の構成が明らかに異なるものである。そうして、この相違は、単に背もたれ部と座部とを繋ぐ部分的な箇所の相違に留まらず、屈曲部が背もたれ部や底部と繋がることによって、自ずと背もたれ部や底部の面の構成とも強く関連付けられ、すなわち、(イ)座部の形状の相違は、本願意匠が、屈曲部の下側縫合線によって、湾曲面状が前端部側から後方の屈曲部との下側縫合線に向けて、左右両端の平坦面からの下方への下りを漸次やや急としながら、湾曲面状の下方へ膨らみも漸次大きく深くして、素材の伸張される状態を表現し、湾曲面状の曲率も、一定ではなく、漸次変化し、さらに、この伸張状態によって、左右両端の平坦面が湾曲面状から浮き出ることとなって、平坦面から湾曲面状へと独自の変化する面構成を形成するものであり、一方の引用意匠が、屈曲部から前端部側へとほぼ一定の曲率を持って浅く湾曲面状としたものとでは、たとえ共通点として、人が直接触れる部分の曲面に共通性を有しているとしても、単に面構成を極緩やかな湾曲面状に形成したものと一括りにできるものではなく、両意匠の座部の具体的な面構成は異なるものと言わざるを得ない。 そして、これらの相違点(ア)及び(イ)の相俟って生じる視覚的効果は、略縦長矩形状板体を側面視略「L」字状に屈曲させたシンプルな構成の中にあって、使用者の格別の注意を惹くものであり、本願意匠の屈曲部から底部へと面に多様な変化を付けたものと、引用意匠のほぼ一定に滑らかに連続するものとでは、両意匠に異なる印象を強く与え、既に共通点を越えて、両意匠の類否判断を決定付け、意匠全体として両意匠に異なる美感を起こさせるものである。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致するとしても、形状において、相違点が共通点を凌駕し、意匠全体として両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 以上のとおりであり、両意匠は類似しないものであるから、本願意匠は引用意匠に類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条の規定により意匠登録をすることができないものであるとした原審の拒絶の理由によって、本願について拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2010-07-06 |
出願番号 | 意願2009-6644(D2009-6644) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松尾 鷹久、加藤 真珠 |
特許庁審判長 |
遠藤 行久 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 市村 節子 |
登録日 | 2010-07-30 |
登録番号 | 意匠登録第1396090号(D1396090) |
代理人 | 永芳 太郎 |
代理人 | 水野 尚 |
代理人 | 南部 さと子 |