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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 J3
管理番号 1222908 
審判番号 不服2010-5577
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-15 
確定日 2010-08-24 
意匠に係る物品 ハードディスクレコーダー付ビデオカメラ 
事件の表示 意願2008- 32995「ハードディスクレコーダー付ビデオカメラ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は、平成20年12月25日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「ハードディスクレコーダー付ビデオカメラ」とし、その形態を願書及び願書添付の図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。

2.引用意匠
原審において、意匠法第9条第1項の規定に該当するとして、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本願の出願日前、平成19年 12月28日に出願され、平成21年8月7日に設定の登録がなされた意匠登録第1369105号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「ハードディスクレコーダー付ビデオカメラ」とし、形態を願書及び願書に添付した図面代用写真に記載されたとおりとするものである(別紙第2参照)。

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると、いずれも「ハードディスクレコーダー付ビデオカメラ」に係るものであり、意匠に係る物品が一致し、形態については主として以下の共通点及び差異点が認められる。
(1)共通点
(A)全体について、正面側をレンズ部、背面側をファインダー部とする略円筒形状のレンズ鏡筒部に底部を水平とする台部を下から合わせ、本体部を形成し、右側面側に略扁平直方体状の開閉式のモニター部を、左側面側にグリップ部を兼ねた略扁平直方体状のハードディスク部を有する構成とした点、(B)レンズ鏡筒部について、(B-1)上面を背面側にかけて緩やかに立ち上がる上り傾斜状のファインダー部とし、多数の小穿孔によって略方形状とした集音部を上面のレンズ部寄りに設けている点、(B-2)レンズ部左側面側頂部に正面視縦長略矩形状のフラッシュライト部を有する点、(C)モニター部について、本体側の枠部と開閉可能な表示部とで、略扁平直方体状に構成し、右側面視レンズ寄りでヒンジ部を本体側の外枠と表示部側の中央矩形状部とに分割し、左右の短辺は弧状に湾曲させ、上下の長辺は水平直線状とし、上部をレンズ鏡筒部の頂部より下側、下部を本体部の底部近くの位置とし、正面視では、上下を内側に湾曲させた点、(D)ハードディスク部について、略扁平直方体の上面部を、背面側にかけて上り傾斜状とし、上面後端部にレバー操作部等、一部の操作部を有する点、(E)背面側について、背面視中央上部を、角の丸い扁平略五角形状のファインダー部とし、その下に底面側に開放部を有する倒コの字状のバッテリー収納凹部を設け、モニター部、本体部、ハードディスク部の背面側を、左右側面視で略弧状に構成した点、において共通する。
(2)差異点
(a)正面視において、本願意匠は、高さと横幅の長さをほぼ同じとしているのに対し、引用意匠は、横長としている点、(b)レンズ鏡筒部について、(b-1)本願意匠は、レンズ部先端のリング状頭部、上面に集音部を有する胸筒部、そして、ファインダー部を有する腹筒部の三つに分かれ、レンズ部先端からファインダー部後端までの長さの比率を、それぞれ略1:2:6とし、上り傾斜状のファインダー部は、胸筒部と腹筒部の境目から始まり、左右の側壁が長く、目立っているのに対し、引用意匠は、リング状頭部を持たず、胸筒部と腹筒部の2つに分かれ、集音部は、胸筒部と腹筒部にまたがって配され、ファインダー部については、腹筒部の前後略中間地点から上り傾斜が始まり、傾斜部の距離が短いこともあり、左右の側壁部は目立たない点、(b-2)レンズ部左側面側頂部のフラッシュ部について、本願意匠は、リング状頭部の外側に、レンズ鏡筒部から独立して設けられ、ハードディスク部から突出した態様としているのに対し、引用意匠は、レンズ部胸筒部に直接設けられた外縁に組み込まれた態様となっている点、(c)モニター部について、本願意匠は、ヒンジ部をレンズ鏡筒部の胸筒部中程から腹筒部の境界までとし、レンズ鏡等部の先端からやや後退させて配しているのに対し、引用意匠は、ヒンジ部を胸筒部から腹筒部にまたがって配し、本願意匠よりも前方寄りとした点、(d)ハードディスク部の、(d-1)上面部の背面側にかけての上り傾斜状について、本願意匠は、全体が傾斜しているのに対し、引用意匠は、正面側に水平部を有し、ハードディスク部の略半分以降を上り傾斜部としている点、また、(d-2)全体について、本願意匠は、ハードディスク部を平面視で薄く絞り込んだ態様とし、上面にはフラッシュ部の根元から上面のレバー操作部近くまで、曲線を有する稜線による面の切替え部を設けているのに対し、引用意匠のハードディスク部は、肉厚で、上面に本願意匠のような稜線は有していない一方、上面から背面にかけて、帯状部と円形部を結合した鍵穴状の操作部を有している点、(e)左右側面視の背面側形状について、本願意匠は、モニター部を本体部より一段短くしているが、引用意匠は、モニター部、本体部、ハードディスク部がそろって背面側の略弧状を一体的に構成している点、において差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに、共通点の態様は、この種物品分野において、従来から見受けられる態様であり、両意匠のみに格別新規な態様ということはできず、それらの点のみをもって両意匠の類否判断を左右するものとすることはできない。
これに対して、差異点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は、看者の注意を強く惹くものであるから、両意匠の類否判断を左右するものというべきである。
とりわけ(b)及び(d)における、レンズ鏡筒部の構成及びファインダー部の上り傾斜の態様の差異(b-1)、フラッシュ部の態様における差異(b-2)、ハードディスク部の上り傾斜の態様の差異(d-1)、ハードディスク部における操作部の態様の差異(d-2)は、両意匠に異なる視覚的効果を生じさせており、通常手にとって操作をするこの種物品分野における看者にとって、これらの相違は部分的なものに留まるものではなく、(a)における、高さと横幅の比率の差異から生じる、スリムな本願意匠と、幅広でどっしりとした引用意匠といった印象の差異とも相俟って、両者の印象を大きく決定付けるものといえる。また、その他の差異点については、それらのみではいずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいが、上記差異点(b)及び(d)に係る態様と相俟って、意匠の類否判断に影響を与えるものであるから、これらの差異点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は、両意匠の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致するものであるが、その形態において、差異点が共通点を凌駕し、意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しないものである。

5.むすび
したがって、本願意匠は、意匠法第9条第1項の規定に該当するものではなく、原審の拒絶理由によって本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-08-12 
出願番号 意願2008-32995(D2008-32995) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (J3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 宏幸 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 北代 真一
樋田 敏恵
登録日 2010-10-01 
登録番号 意匠登録第1400227号(D1400227) 
代理人 永野 大介 
代理人 藤井 兼太郎 
代理人 内藤 浩樹 

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